自分時間を楽しく過ごす 再婚承認を要求しますの先読みネタバレ付き

子供の頃からマンガが大好き。マンガを読むことで自分時間を楽しく過ごしています。再婚承認を要求します、ハーレムの男たちを初めとして、マンガのネタバレを書いています。

泣いてみろ、乞うてもいい 117話 ネタバレ 原作 あらすじ 公爵に与えたい罰

117話 カイルがカルスバルに戻って来ました。

 

カイル・エトマンが現れたという噂は

たちまちアルビス中に広まりました。

すると、アルビスの人々は、

再び混乱に陥りました。

カイルが、

庭師とレイラを連れ去ったという噂が

固まりつつあったからでした。

 

母親の反対で結ばれなかっただけで、

カイルの気持ちは、

長年、変わらなかったから

諦め切れなかったのだろう。

多少、疑わしい点があったとしても、

皆そのように信じようと努めました。

今のところ、それが、

一番幸せな結末だったからでした。

しかし、レイラを探し回るカイルの姿は

その希望さえ打ち砕きました。

 

カイルがアルビスに来たという

知らせを聞いて、

駆けつけて来たモナ夫人は、

声を張り上げてカイルを呼ぶと、

本当にカイルさえも、

レイラとレマーさんの行方を

知らないのかと尋ねました。

カイルは、ぼんやりと

彼女を見つめるだけでしたが

その答えを読み取るのは

難しくありませんでした。

 

前日の朝、

カルスバルに到着したカイルは、

今すぐ学校に戻れと、

父親に戒められらにもかかわらず、

レイラを探すと言いました。

 

カイルはモナ夫人に謝りました。

モナ夫人は、

謝ったりしないように。

軽率にも、カイルをつかまえて、

こんなことばかり言ってしまって

申し訳ないと謝ると、

赤くなった目を手で擦りました。

 

カイルは頭を下げて彼女に挨拶すると

無我夢中で庭を駆け抜けました。

森に入ると、

もしかして、小屋へ行けば

帰って来たレイラとビルおじさんに

会えるのではないかという

漠然とした希望が

生まれたりもしました。

しかしカイルは、すぐに厳しい現実と

向き合わなければなりませんでした。

 

「レイラ・・・」

雑草が生い茂る

古い小屋の前庭を見たカイルの目つきが

とめどもなく深まりました。

周辺を隅々まで見回し、

家の中まで見回した後は、

両足で体を支えることも

難しくなりました。

 

カイルは大声で叫ぶように

レイラの名前を呼び続けました。

しかし、驚いた鳥たちが飛び立つだけで

レイラを失った森は静かでした。

マティアスは当てもなく歩きました。

 

あんな風に飛び出しておきながら、

できることが、

たった、これだけだなんて。

自分自身をあざ笑っている瞬間にも、

マティアスは歩くのを

止めませんでした。

 

毎日のように飲んでいた睡眠薬のせいか

確かに、両足で地面を踏んでいるのに

浮遊感がありました。

頭が割れるように痛く、

全身がズキズキと痛み

焼けるように熱が上がりました。

そのため、さらにマティアスは、

止まることができませんでした。

この苦痛があるからこそ耐えられました。

これさえ消えてしまったら、

あの女の記憶が、彼を飲み込んで

壊してしまいそうでした。

それは、

マティアスが生まれて初めて感じた

絶望的な恐怖でした。

 

だから戻って来い、レイラ。

 

熱い息が乾いた失笑と共に

噴き出しました。

この姿が見たくて、

あんなに努力したなら、

君が作った作品を鑑賞する程度の

寛容は施さなければならない。

 

だから、戻って来て、

思いっきり笑って、喜べ。

君が壊した私を見て、

もう一度女王のように微笑んでみろ

お願いだからもう一度だけ、私を・・

 

マティアスは歯を食いしばりながら

足を速めました。

いつの間にか、

アルビスへと続く道に入りました。

角を曲がると広がるプラタナスの道は

レイラの最後の姿を留めたまま、

依然として平穏でした。

 

よろめきながらも、必死に

一歩一歩進んで行ったマティアスは、

レイラが最後にいた、その道の上で

ついに立ち止まりました。

蘇った幻聴が、美しい音楽のように

聞こえて来ました。

 

息を切らしていたマティアスは、

充血した目をゆっくり下ろして

自分の影を眺めました。

 

レイラはいない。消えてしまった。

もう二度と戻って来ない。

決して認めたくなかった

その事実を受け入れると、

ククッと笑いが漏れました。

泣きたいような気がするのに、

いざ唇から新たに出て来るのは

笑いだけでした。

 

アルビスに入ったマティアスは、

再びレイラの世界だった森へ向かって

歩きました。

あのヒヤッとした初めての出会いの後も

度々、この森で、あの子に会いました。

その度に、レイラは怖がって

隠れたり逃げたりしました。

 

ある日、それが気に障り、

何の考えもなく馬を追い立て、

子供の前に立ちはだかったことが

ありました。

しばらく凍りついていた子供は、

すぐに泣きそうになり、

道端の草むらに逃げ込みました。

足がもつれたせいで転び、

コロコロ転がっても、

起き上がって、また走りました。

マティアスが

追いかけて来ないことが分かり

再び道に戻った子供は、

さっと首を回して彼を見ました。

かなり遠い距離でしたが、

あの子が自分を睨んでいるのが

感じられました。

 

それに呆れたマティアスが

失笑している間に、子供は、

小屋に向かって

たくましく歩き始めました。

道に散らばっている石ころと

木の枝をポンポン蹴ることで、

小さな腹いせをしながら。

 

その大胆な臆病者が面白くて、

その後も度々、

そのようないたずらをしました。

それを止めることになったのは、

あの幼い子供が、

鹿がぴょんぴょん跳ねるように

成長したことに気づいた

ある日からだったようでした。

 

それからは、徹底的に

あの子に無関心でした。

確かにそうでした。

あの夏の日、

成長した女になって現れたレイラに

向き合うまでは。

 

だから、一目惚れしたという言葉は

馬鹿げていました。

マティアスは、

出発点がどこだったのか、

そういうものが存在していたのかも

分かりませんでした。

 

子供が育って女になったように、

彼の心も、

それなりに流れて行きました。

面白がっていじめたかった子供は、

気に障る少女に育ち、

その少女は女に育ち、

美しい彼の支配者になりました。

 

その始まりが分からず、

終わりも分からないのに、

君はいない。

 

それでは、君がいなくても

終わっていない自分は

これから、どうすればいいのか。

 

マティアスは途方に暮れた目で

あたりを見回しました。

そこには、

レイラの記憶ばかりありました。

その無数の記憶の中で、

どれも輝いていないものは

ありませんでした。

しかし、その記憶を一つずつ

辿って行き始めると、

再び笑いが漏れました。

 

レイラは、いつも

彼から逃げようとしたり、

怯えて泣いていました。

恋人として過ごした時間、

あのすべての瞬間が

復讐のためにでっち上げた嘘に

過ぎなかったとすれば、

彼が手に入れたのは、

結局レイラの苦痛と涙だけでした。

それは耐え難いほど空虚で悲惨だけれど

それでも、

手放すことはできませんでした。

 

いつもそうでした。

何でもない女一人が、身の程知らずに

彼の人生を揺るがすことに

耐えられませんでした。

だから否定し、苦しめました。

泣かせると、ほっとしました。

自分の人生が無事だということを

その涙が、確認させて

くれるような気がしました。

 

しかし、一瞬たりとも、

あの女が消えることを

望んだことはありませんでした。

今になって振り返ってみると

実に馬鹿げたことでした。

気に障るなら

捨ててしまえばいいのに、

そんな簡単な方法は

考えたこともありませんでした。

彼のレイラとして、永遠に

そばで泣くことを願いました。

 

当てもなく森を彷徨っていた

マティアスの視線は、

森の道の端でピタッと止まりました。

そこに立っていた男も足を止めたまま

彼を見つめていました。

彼のレイラが愛した男。

カイル・エトマンでした。

カイルは興奮しませんでした。

不思議なことでした。

会えば命を奪うことさえできそうな

奴でしたが、

いざ公爵を目の前にすると、

心が限りなく冷たく沈みました。

 

カイルは、

立ち止まっているマティアスに、

ゆっくりと一歩ずつ近づきました。

あの男のせいで泣いていたレイラが

真っ白になった頭の中に

浮かび上がりました。

 

「好きなの」

公爵から彼を守るために

ついた嘘のようでしたが、

そこに込められていたレイラの気持ちに

カイルは、

とっくに気がついていました。

 

ビルおじさんの小屋を訪ねた日、

あの男と一緒にいたレイラを見た瞬間

あの子が公爵を愛しているということが

分かりました。

公爵がどんな策略を使っても、

好きでもない男に抱かれるくらいなら

むしろ死んでしまう女。

それがまさにレイラでした。

 

私が、あの人のことを好きなの。

その言葉が、カイルの胸に

あれほど痛く刺さった棘になったのは

そのためでした。

その言葉を言ったレイラ自身さえ

気づいていなかったかもしれない

気持ちをカイルは知りました。

それを聞いていた、あの男も

知らなかった彼女の本心を

よりによってカイルが知りました。

カイルは、

その全てを知っていました。

 

自分が失わなければならなかった

レイラを、

何も知らないあの男が手に入れ、

手に入れたのに、

自分の持っているものが

何なのかも分からなかったあの男は

彼女を壊して、結局失った。

まったく滑稽な話でした。

 

カイルは力を入れて拳を握り締め

歩幅を広げて歩き始めました。

 

お互いの表情が分かるくらいの距離で

立ち止まった時、

カイルは少し驚きました。

酒に酔っているというには

あまりにも鋭い姿でしたが、

そうでないと言うには、

あまりにも彼らしくありませんでした。

 

カイルはマティアスに、

レイラの人生をこんなに台無しにして

とても満足しているだろうと

怒りを抑えながら皮肉を言いました。

 

今さら後悔でもしているのだろうか。

もしそうなら、

さらに憎たらしいと思いました。

 

カイルは、

立派なヘルハルト公爵の人生の

汚点として残る前に、

自ら消えてくれて、

気が楽にでもなったかと尋ねました。

 

無表情で彼を見ていた公爵は、

レイラがどこに消えてしまったのか

結局、お前も知らないのだろう?と

静かに尋ねると微笑みました。

 

背筋がゾッとするような感じに

カイルは思わず唇を噛みました。

少し前まで、

病人のようにぼんやりしていた男が、

今は本当に、

楽しそうに笑っていました。

 

狂った奴と、

葉を食いしばりながら吐いた言葉にも

公爵は、ただクスクス笑いました。

窮地に追い込まれたレイラが

自分の人生の基盤を捨てて

逃げたという事実より、

カイルの所へ行かなかったということが

もっと重要でもあるかのように。

相変わらず、どんな手を使ってでも

自分の手に握り締めさえすれば

それで終わりというように。

 

最後の戦意さえ捨てたカイルは

幻滅に満ちた声で、

あなたの目には、一瞬でも、

レイラが人に映ったことがあったのかと

冷たく尋ねました。

そして、

手に入れてみたい存在ではなく

感情があり、考えがあり、夢があり、

本当に一生懸命生きようと

努力していた人に

見えたことがあるのかと叫びました。

 

公爵は、一瞬笑いが消えた顔で、

叫ぶ彼を

じっと見つめるだけでした。

何の感情の欠片もないまま

輝く青い目が

鳥肌が立つほど冷ややかでした。

 

一体、どんな答えを

期待していたのだろうか?

カイルは自嘲しながら

深呼吸をしました。

必死に堪えて流した涙の量ほど、

公爵に対する憎悪は

さらに大きくなりました。

 

カイルは、

どうして、そんなことができるのか。

あの子は・・・と言いかけたところで

レイラはあなたを愛していたという

言葉を、ため息と共に飲み込みました。

 

今からでも止めることはできないの?

あの男は、結局君を壊すよと

彼は訴えましたが、レイラは

自分も分かっていると答えました。

うなだれたあの子の顔から

流れ落ちた涙を覚えていました。

全てを知っていながら

たかが、こんな男に馬鹿みたいに。

 

カイルは、

あなたはレイラを見つける資格もない。

だから、今までそうしてきたように、

立派なあなたの人生を生きろと言うと

カイルは、軽蔑の目で彼を見ました。

 

それからカイルは、

微動だにしない公爵に向かって

確か結婚式は、来月だったでしょうか。

喜んでヘルハルト公爵夫妻の

輝かしい未来を祝福すると言うと

頭を下げて見せました。

 

そして、

高潔で優雅に、豊かに暮らせ、

このろくでなしめと一喝したのを最後に

カイルは公爵の横を通り過ぎました。

 

彼は、公爵が永遠に

レイラの気持ちを知らないことを

祈りました。

カイルが、あの男に与えたかった

罰でした。

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レイラのために

一番幸せな結末を願ってくれる

アルビスの人々。

レイラが子供の頃から、

何やかやと面倒を見てくれて

今も、レイラのことを

とても心配してくれている

モナ夫人。

誰からも愛されず、

心配してもらえなかったレイラを

ビルおじさんの所へ送り出し、

彼女のことを愛する人

たくさん与えてくれた親戚のおじさんは

本当に良い仕事をしたと思います。

 

カイル、よく言いました。

結婚を祝福する痛烈な皮肉も

小気味よかったです。

レイラの気持ちが自分になくても

カイルが、レイラのために

何かしてあげたいという気持ちが

痛いほど伝わって来ました。

 

マティアスは、

カイルから、それくらい罵倒されても

仕方がないことを、

レイラにしたのです。

マティアスはレイラに対して、

自分のしたいようにするのではなく

自分には望みがなくても、

レイラに無償の愛を捧げる

カイルのようになれればいいのにと

思います。

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