自分時間を楽しく過ごす 再婚承認を要求しますの先読みネタバレ付き

子供の頃からマンガが大好き。マンガを読むことで自分時間を楽しく過ごしています。再婚承認を要求します、ハーレムの男たちを初めとして、マンガのネタバレを書いています。

バスティアン 39話 ネタバレ ノベル あらすじ マンガ 30話 使用人らしい行動

39話 オデットの目の前に夫がいました。

オデットのコーヒーは

一滴も減りませんでした。

豊かな泡が萎み、湯気が消えるまで

最初に置かれた場所に

放置されているだけでした。

チョコレートが溶けている

ケーキも同じでした。

 

テーブルを、じっくり観察した

バスティアンは、

力を入れてカップを置きました。

指先だけを見下ろしていた

オデットは、ようやく

ギョッとして頭を上げました。

 

バスティアンは軽く顎を動かして

手付かずのコーヒーとケーキを指すと 

「食べなさい」と指示しました。

悩んでいたオデットは、

こんな風に、あなたに出くわすとは

思わなかった。

どうやって、ここまで来たのかと

そっと話題を変えました。

ややぎこちない笑みを浮かべた

顔の上で、

木の葉の間を通り抜けて来た

午後の日差しが優しく揺れました。

 

バスティアンは、

近くで約束があった。

通りすがりにあなたを見つけたと

答えました。

オデットは、

「そうだったんですね」と

返事をしました。

 

バスティアンは、

あなたがラッツに来るという連絡は

受けていなかったようだけれど

自分の記憶が間違っていたかと

尋ねました。

オデットは、

特に報告はしなかったと答えました。

バスティアンは目を細めて、

どうして、あなたが

ここにいるのかと尋ねました。

まるで咎められているようで

当惑しましたが、

オデットは巧みに感情を隠しました。

 

彼女は、

壁にかける絵を何点か選んで欲しいと

インテリアデザイナーに依頼された。

本来は、来週、

そうするつもりだったけれど、

今週末は、あなたが来ないという

知らせを聞いたので、

日程を少し繰り上げたと答えました。

 

冷めたコーヒーを一口飲んだ

バスティアンは、それだけなのかと

落ち着いて尋ねました。

適切な答えを見つけられなかった

オデットの眼差しが小さく揺れました。

 

むしろフランツの方が簡単でした。

相手をとても当惑させる

話し方だったけれど、

少なくとも、このように

気まずい相手ではなく、

適当に対応して笑ってあげれば

良かったからでした。

じっと見つめる目だけでも、

このように途方に暮れさせる

バスティアンとは違いました。

 

一緒に過ごした時間が長くなるほど

オデットは、ますますこの男に

難しさと気まずさを覚えました。

息が詰まり、神経が尖り、

水を一口も飲み込めないほどでした。

 

オデットは「はい」と、

結局、嘘の答えを選びました。

バスティアンを刺激することが

明らかな、腹違いの弟の名前を 

あえて言及したくありませんでした。

もしかしたら、

勝手に実家の人に会ったという

誤解を招くかもしれませんでした。

 

オデットは、

画廊に立ち寄って絵を購入した後、

しばらく休憩していた。

久しぶりの外出なので、

このまま帰るのは、

少し残念だったからと答えました。

 

彼女は、滑らかな笑顔で

不安と焦燥感を隠しました。

底まで見抜くような

真っ青な瞳が嫌でしたが、

避けずに黙々と耐えました。

溶けた氷が崩れる音が

張り詰めた沈黙の中に

染み込みました。

 

納得するかのように

頷いたバスティアンは、

氷が半分ほど溶けた水で

唇を潤しました。

 

夕方になって日が傾くと

テーブルの下まで

日差しが伸びて来ました。

ゆらゆらと揺れる夏の光が

甘い嘘の笑みを浮かべている

オデットを包み込みました。

昼が一番長い日に彼の元へやって来た 

あの美しい花嫁のベールのように。

 

水が付いた手を拭いたナプキンを

きちんと畳んで下ろした

バスティアンは、

緩く腕を組んだまま  

オデットを見つめました。

どうやらこの女は、

フランツとのことを、

口外しないつもりのようでした。

 

切なく夫を待っている女主人を

心配していたロビスのことが

思い浮かぶと、

呆れた笑いが噴き出しました。

初めてオデットの頭の中が

真剣に気になりました。

亡国の王女のように

孤高で哀れなふりをする

仮面の下に、

どんな欲を隠していたのか。  

一体何を考えているのか。

あなたにとって、

自分は一体何なのか。

どうしてこんなに不埒で

憎らしいことができるのか。

 

しかし、バスティアンは

何も聞きませんでした。

一枚剥がすとまた一枚。

その一枚の向こうにまた一枚。

まるで千枚のベールの下に

自分を隠しているようなこの女は、 

簡単に、その答えを

明かさないだろうと

考えたからでした。

 

腕時計を確認したバスティアンは、

他に約束でもあるのかと尋ねました。

オデットはニッコリ笑って

首を横に振ると、

六時に市役所前の広場で

ハンスと会うことになっていると

答えました。

 

バスティアンは、

「他の用事は?」と尋ねました。

オデットは、

「ありません」と答え、 

ここでしばらく休憩した後、

アルデンに戻るつもりだったと

説明しました。

「ああ、休憩」と

バスティアンは呟きました。

 

不格好になったコーヒーとケーキ。

そして読んでいない本。

念入りに準備したのに、

最後まで楽しめなかった

ままごと遊びの場を通り過ぎた

バスティアンの視線が

再びオデットに向かいました。

 

彼は、

あの広い邸宅を一人占めして楽しむ

休暇では足りなかったのかと

尋ねました。

辛辣な嘲弄をする瞬間にも、

バスティアンの口調は

極めて穏やかでした。

 

彼は、

奥様は適応力が

並外れた人のようだ。

安アパートを転々としていたのが

つい、この間のことなのに、

その間に贅沢な生活が退屈になり、

このように

勝手に振舞っているからと

非難しました。

 

今、自分を非難しているのかと

尋ねるオデットの口元から、

作り笑いが消えました。

一段と良くなったその顔を

じっと見つめながら、

バスティアンは快く頷きました。

 

彼は、

オデットが言葉の意味も

分からないほど馬鹿ではないのに、

なぜ同じ過ちを繰り返すのかと

非難しました。

オデットは、

たった一度の外出が、こんな侮辱を

受けなければならないほど、

大きな過ちなのだろうか。

あなたが先に約束を破ったから、

ただそれに合わせて

自分のスケジュールを

調整しただけではないかと

反論しました。

 

バスティアンは、

まさか自分たちが

対等な関係だと思っているのかと

非難すると、

柔らかいため息をついて

眉を顰めました。

そして、

自分は妥当な代償を払って

あなたを雇った。

契約が満了するその日まで、

自分があなたの主人という意味だ。

妻の役割をしているからといって

妻の権利を持っていると思ったら困る。

使用人なら、

使用人らしく振る舞うように。

この点だけ気をつけてくれれば、

それほど悪くない二年間を

過ごすことができると思うけれど

どうだろうかと尋ねました。

 

オデットが黙っていると、

バスティアンは

何の感情もこもっていない、

より冷酷に感じられる口調で、

返事をするよう

オデットを叱咤しました。

 

頑固に、沈黙を守っていたオデットは

心に留めておくと、

久しぶりに口を開きました。

力を入れて開けている赤い目には、

不遜な感情が

はっきりと読み取れましたが、

バスティアンは、これ以上、

この話を続ける気はありませんでした。

 

バスティアンは、

「結構です」と返事をすると、

もう行きましょうと言って

立ち上がりまして。

そして、オデットに近づき、

車が待っている所まで送ると

告げました。

 

じっと彼を見つめていたオデットは、

一人でも十分で行けると言ったら、

使用人らしくない答えになるのかと

唐突に質問しました。

傷ついた顔をしていても、

自分の言いたいことは

よくしゃべる女でした。

 

バスティアンは、

その程度の判断ができるなら幸いだと

答えると、歪んだ笑みを浮かべながら

手を差し出しました。

 

オデットは、

褒めてくれてありがとうと、

過度に丁重だけれど、

より挑発的にお礼を言うと、

まるで施しをするかのように

手を差し出しました。

 

レースの手袋に包まれた冷たい手を

バスティアンは、

力いっぱい握り締めました。

握り合った手を通じて、

オデットの震えが伝わって来ました。

イライラしながらも甘美な感覚でした。

いつもより遅くなった夕食は

夜が更けてから終わりました。

オデットは、

半分も食べられなかった皿を

残したまま、

食卓から立ち上がりました。

このような時こそ、しっかり食べて

元気を出さなければ

ならないということを

分かっているけれど

これ以上は無理だと思いました。

 

オデットは、いつもよりゆっくり

静かな廊下を歩きました。

まるで広大な大海を一人で彷徨う

ブイになったような気がしました。

そうは言っても一時的な気の迷い。

日が昇れば消える

雑念に過ぎませんでしたが。

 

今日は一人でやると言って

世話をするために、

後に続くメイドたちを退けた

オデットは、疲れた足取りで

寝室の敷居を越えました。

けちをつけるために血眼になっている

メイドたちの厳しい視線が

感じられましたが、

それを気にするだけの余力が

残っていませんでした。

 

直ちにベッドに身を投げたくなる程

疲れていましたが、

オデットは屈することなく

入浴しました。

清潔なパジャマを着て、

髪を丁寧に編むことも

忘れませんでした。

編んだ髪の先にリボンを結んで

立ち上がった頃には、

気分が、一層良くなっていました。

 

しかし、無実の夫婦の寝室の通路を

じっと見つめていたオデットは、

ふと虚しくなり、

深いため息をつきました。

あまりにも惨めで悔しかったけれど、

バスティアンを

責めたくはありませんでした。

この程度の覚悟もなく、この結婚に

臨んだわけではなかったからでした。

 

もちろん現実は、

漠然とした推測より、

さらに苛酷でしたが、

それでも、この結婚が

オデットが選べる最善だったという

事実は変わりませんでした。

だから、うまくやり遂げなければ

なりませんでした。

 

弱くなりそうな心を抑えたオデットは

郵便物が積まれている

テーブルの前に近づきました。

このような気持ちで

ベッドに入ってみても、

簡単に眠れないはずでした。

どうにもならないことで悩んで

憂鬱になるよりは、

雑多な仕事でもしていた方が

良いと思いました。

 

パジャマの袖をまくり上げた

オデットは、

せっせと手紙を読んで

返事を書きました。

中には父親からの手紙も

含まれていました。

卑しい男と結婚して

家門を汚した娘に対する怒りと

悪口に沸き立つ手紙でした。

 

父親が気力をたくさん回復して

良かったという結論を下した

オデットは、細かく破った手紙を

ゴミ箱に捨てました。

 

自分が好きな家具と宝石、

庭園に植えてほしい草花の名前を

ぎっしり書いて送った

サンドリンの手紙も、

すぐに、その後に続きました。

考慮するに値するいくつかの品目は

記憶しておき、

手帳に書き写しました。

フランツがくれたメモに書かれていた

最高級のフェリアの装飾品を扱う 

商人の名前と連絡先も

その下に付け加えました。

 

これ以上、没頭できる仕事を

見つけることができなくなると、

オデットは諦めたように

ベッドに横になりました。

波の音が夜風に乗って

伝わって来ました。

 

オデットは、

一瞬も頭から離れなかった

醜い男の顔を消し去り、

目を閉じました。

ふと、あまりにも長生きした老人に

なったような気がしましたが、

根に持たないようにしました。

 

小さく丸めた背中を撫でる

月明かりの下で、オデットは

すやすやと眠りにつきました。

唯一の頼りである波の音は、

大丈夫、全て大丈夫と、

優しく慰めてくれる

安息の歌のように。

夜明けが深まるまで、

寂しいベッドのそばに

留まってくれました。

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オデットが自分には見せてくれない

笑顔をフランツに見せたことで

バスティアンは

嫉妬したのだと思います。

せめて、オデットが

フランツと会っていたことを

素直に話していれば、

ここまで意地悪なことを

言わなかったのでしょうけれど・・・

オデットとフランツが会っていた理由を

聞きたかった気持ちは分かりますが

ここは、じっと耐えて、

オデットに普通の態度で

接するべきだったと思います。

 

庭の草花まで支持するなんて

サンドリンは、

かなり図々しいと思いました。

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