自分時間を楽しく過ごす 再婚承認を要求しますの先読みネタバレ付き

子供の頃からマンガが大好き。マンガを読むことで自分時間を楽しく過ごしています。再婚承認を要求します、ハーレムの男たちを初めとして、マンガのネタバレを書いています。

泣いてみろ、乞うてもいい 127話 ネタバレ 原作 あらすじ 悪魔のような笑顔

 

127話 マティアスはレイラを発見しました。

 

マティアスは急ぎませんでした。

初めてレイラを発見した瞬間、

爆発しそうなほど、鼓動していた胸は、

一歩ずつ進むごとに落ち着き、

今はむしろ冷たく沈んでいました。

 

一目で分かりました。

目の前に立っている女は

レイラ以外の誰でもないことを。

彼女は間違いなく彼のレイラでした。

 

名前を呼ぼうとした瞬間、

レイラが背を向けて逃げ出しました。

またしても、彼から再び。

 

何の役にも立たないことをする姿が

それなりに可愛くて、マティアスは

喜んで応じることにしました。

すぐにでも、あの細い首を掴んで

折ってしまわないためには、

彼にも少しの時間が必要でした。

 

レイラが、そんなに早く

逃げられなかったおかげで、

マティアスは、のんびりと

散歩を楽しむことができました。

まるで睡眠薬に浸っていた

春のように、両足が宙に浮いて

フワフワしているような

気がしました。

 

路地の端まで逃げたレイラは、

しばらく、

ギョッとして立ち止まりました。

震える彼女の向こうには、

海岸沿いに長く伸びる道と白い砂浜、

そしてエメラルド色の海が

広がっていました。

思ったより、

ずっと美しい水の色でした。

気軽に行き先を決められず

慌てふためいたレイラは、

白い砂浜の中に足を踏み入れました。

砂に深く足がはまり、

体がふらつきましたが、

止まることはできませんでした。

振り返る勇気もありませんでした。

その将校は急ぐことなく、

レイラを追いかけて来ました。

 

路地を離れて海辺に行けば、

助けを求めることが

できるのではないかという考えは

愚かでした。

カモメの鳴き声と波の音だけが

のんびりと漂っているだけで、

海辺も街のように

がらんとしていました。

 

あの男の目的は一体何なのか。

どう考えても、

見当がつきませんでした。

布告令を破ったのなら、

とっくに警告するか

逮捕したはずなのに、

彼は一言も話さずに、

ただレイラを追いかけて来ました。

そしてレイラは、その点に最も混乱し

恐怖を覚えました。その気になれば、

彼はとっくにレイラを

捕まえることができました。

あんなに壮健な男が、

まともに走ることもできない自分に

追いつけないはずがありませんでした。

 

でも、なぜ?

喉元までこみ上げてきた泣き声が

溢れ出そうでした。

一体、なぜ?

振り返りたい気持ちと同じくらい

振り返りたくない気持ちも大きく、

このとんでもない予感が

現実だということを確認するのと、

結局、錯覚に過ぎないということの

どちらを恐れているのか、自分でも、

よく見分けられませんでした。

 

実際、このような日が度々ありました。

偶然、黒髪の背の高い男を見ると、

反射的に公爵を思い浮かべました。

たまに、彼が

本当にここにいるような気がして、

胸がドキンとすることもありました。

ブルブル震えながら逃げ出し、

気が気ではありませんでした。

 

しかし、結局、全て勘違いでした。

いつもそうでした。

だから今だって同じだろう。

ただ、それを確かめればいいこと。

もしかしたら追いかけて来る男の

存在自体が虚像かもしれない。

 

レイラは、いつの間にか

穏やかな波が打ち寄せる

濡れた砂の上まで追い詰められました。

海の中に歩いて入らない限り、

もう逃げ場は残っていませんでした。

 

その場に立ち止まったレイラは、

靴の先を濡らす泡を

じっと見下ろしました。

これ以上、逃げ場がないという思いが

頭をよぎると、むしろ

心が落ち着くような気がしました。

 

レイラは夢から覚める方法が何かを

よく知っていました。

目を覚ますことでした。

祈るような気持ちで、

遠くの空を見上げたレイラは、

ゆっくりと振り返りました。

男は、あえて距離を縮めることなく

砂浜の上に立ち止まり、

レイラを見つめていました。

 

眩しい秋の日差しが照らしている

彼の顔が、

今は、はっきりと見えました。

マティアス・フォン・ヘルハルト。

残酷で美しいレイラの悪夢でした。

波が砕ける音が微かに聞こえました。

かなり長い時間が流れる間、

二人は微動だにせず、

じっとその場に留まりました。

そして、穏やかで涼しい海風が

吹いて来ました。

マティアスのトレンチコートの裾を

揺らして通り過ぎたその風は、

すぐに海を背に立っている

レイラに届きました。

マティアスは、

その風景を鑑賞するかのように

見つめました。

依然として、

美しい羽のようになびく金髪も、

水気を含んだまま震えている緑色の瞳も

気に入りました。

 

探るように、

ゆっくりとレイラの上を動いていた

マティアスの視線が突然止まりました。

風が吹いて、

薄いワンピースが体に密着すると

細い体の線が、そのまま現れました。

以前より、もっと痩せているせいで、

そっと膨らんでいるようなお腹が

何倍も目立って見えました。

 

マティアスは眉を顰めて

首を傾げました。

視線は依然として、一ヵ所に

向けられたままでした。

錯覚なんかではないということを

知らせたいのか、

風はもう少し速く吹いて来て

レイラを包み込みました。

肉付きのない平らだったお腹が

ぽっこりと膨らんでいました。

 

マティアスの傾いた唇の端に

宿っていた静かな笑みが消えた頃、

無防備に立っていたレイラが

震えるやせ細った腕を上げて

自分のお腹を包み込みました。

びくびくしながら

後ずさりしましたが、

その女が逃げる所なんて

もう残っていませんでした。

 

明確な判断がつくと、マティアスは

くすくす笑い始めました。

長い眠りから覚めたように

意識が徐々に明瞭になって行きました。

戦争が起きて、参戦をし、

いくらか狂気のような熱望に

駆り立てられ、

ここまで走ってきた時間は、一瞬にして

ぼんやりとした夢となって

遠ざかって行きました。

 

この時間が、

現実のものとは思えませんでした。

川の深い所に沈んだまま、

水の流れに身を任せて、

流れて来たような感覚でした。

そして、やがて水面から出てきたような

気分になりました。

シュルター川の深い水の中に沈んだ

あの日以来、初めてのことでした。

輝く日差しと風に揺れる森、

そして美しく歌う鳥のいる世界へと。

 

レイラ。

その甘い名前を舌の上で

じっくり転がしてみると、

マティアスの微笑は、

さらに弱々しくなりました。

 

レイラ。私の小鳥、レイラ。

マティアスは、後ろで手を組んで

首をまっすぐに伸ばしました。

そのまっすぐで優雅な姿勢に

不似合いな、クスクス笑う顔を見る

レイラの目つきが揺れ始めました。

 

口の中がカラカラに乾いて、

少しずつ

息が苦しくなって行きました。

子供も怖がっているのか、

お腹が張るのが感じられました。

しかし、レイラができることは

両腕で必死にお腹を包むことが

全てでした。

 

虚像や悪夢などではなく、

まさに、あの男マティアスが

目の前に立っていました。

存在し得ない場所に存在し、

レイラを圧倒しました。

 

「やあ、レイラ」

静かに囁くように挨拶しながら

彼は笑いました。

無邪気な子供のように。

あるいは悪魔のように。

止めるべきではないのか。

妊娠した女だって?

 

と言う兵士の声は震えていました。

イライラしながら

唇を噛み締めていた

当番兵の眉間のしわが深くなりました。

 

誰だって黙っているよ。

どうやって止めるの?

少佐の部屋に攻め込んで

救出作戦でも展開するのか?

 

そうではないけれど、

何かしなければならない。

これは、どのような状況なの?

 

俺にも分からない。クソッ!

 

一言ずつ言葉が加わる度に、

当番兵の顔色は、

ますます青ざめて行きました。

 

ヘルハルト少佐が、

ある女性の住所を調べろと言うので

快く引き受けました。

ただの遠い親戚や

知り合いくらいだろうと

軽く考えていたからでした。

ところが、まさか、

こんな狂ったことをするなんて!

 

彼が女性を誘拐したという噂は、

一瞬にして部隊中に広まりました。

初めは皆、冗談として片付けました。

あらゆる残酷なニックネームと、

さらには吸血鬼の子孫だという

でたらめな疑いまでかけられている

人物ではあるけれど、

女性問題に関しては、

完璧にすっきりしていました。

近くで見た彼は、その種の欲望が

抑え込まれた部類のようにさえ

見えました。

 

そんな少佐が、

占領地の女性を公然と拉致して

宿舎に連れ込むなんて。

あまりにも滑稽だと思ったけれど

その呆れたことは、

すぐに現実となって、

彼の目の前に押し寄せて来ました。

 

ヘルハルト少佐は一人の女性を抱いて

将校たちの宿舎として割り当てられた

広場のホテルに戻りました。

数多くの目が

見ているという事実などは、

少しも気にしない

堂々とした態度でした。

 

少佐のコートに包まれた女性は、

溺れた人のように

びしょ濡れになっていました。

あまりにも小さく見えたので、

最初は子供かと思っていたら、

近くで見た女性は

幸いにも成人していました。

しかし、妊娠して

お腹が大きい女性を欲しがるのも、

とんでもないことでした。

しかも、その女性は、

少佐の部屋に連れて行かれる瞬間まで

抵抗し、もがいていました。

 

助けてくれという怯えた彼女の叫びを

どうしても

無視することができなかった当番兵は

持てる全ての勇気を振り絞って

少佐の前に立ちはだかりました。

 

しかし、結局は口を開くこともできず

退かなければなりませんでした。

少佐が彼を見て言ったのは

「退け」という一言だけでしたが、

歯がガチガチぶつかるほど寒気がして

これ以上、

持ちこたえることができませんでした。

 

結局、当番兵がたじろぎながら退くと

少佐は自分に割り当てられた客室に

大股で入りました。

続いて乱暴に閉まったドアの

鍵がかかりました。

彼が知っている事実は

そこまででした。

その後に何が起こったかは

明白でしたが、その不快な考えは

あえてしたくありませんでした。

 

上層部に

報告する必要があるのではないか。

 

それで、どうするの?

ヘルハルトなんだけれど。

 

それはそうだけれど。

 

あちこちから出てきた言葉は

結局これといった結論に至らず

散って行きました。

 

女には何の興味もなかったのに、

どうして急に気が狂ったのか。

罪悪感に耐えられなくなった当番兵が

絶叫している間に、カイル・エトマンが

食堂に入って来ました。

野戦病院に連れて行かれて

戻って来たばかりの彼は、

部隊全体をひっくり返した知らせを

まだ知らない様子でした。

 

当番兵の向かいの席に座った彼は

どうしたのかと淡々と尋ねました。

当番兵は、

そういえば君は、

少佐をよく知っているけれど、

元々ああなのかと尋ねました。

カイルは「何が?」と聞き返しました。

 

当番兵は、

今、高邁なヘルハルト公爵が、

妊娠中の女を捕まえて来て、

部屋へ連れて行き

大騒ぎになっていると答えました。

カイルは「そんな馬鹿な」と

しかめっ面で反論しました。

最初に他の兵士たちが見せた反応と

変わりませんでした。

 

当番兵は、

君が驚いているのを見ると、

元々そういうタイプではなさそうだ。

それなのに、どうしてしまったのか?

戦場で頭がどうかしてしまったのか。

こうなることを知っていたら、

ただ、分からなかったと

言えば良かった。

まるで自分の過ちのようではないかと

嘆きました。

 

カイルは当番兵に

何をしたのかと尋ねました。

彼は、

ここに来る否や、

突然、女の名前を一つ渡され、

住所を調べて来いと言われたので

そうしてやった。

あんなことをしでかすとは

誰も思わなかった。

いや、一体、彼女が誰なのか、

それだけでも

教えてくれればいいのにと、

嘆きました。

全く理解できない言葉に

次第に混乱して行ったカイルの瞳に、

ふと冷気が漂いました。

 

カイルは、

少佐が探せと言った女の名前を

覚えているかと尋ねました。

当番兵は、

当然だ。まさに今日のことなんだから。

名前は・・・と答えようとすると、

カイルは

「レイラ」と静かに口にしました。

テーブルを囲んでいる皆の目が

丸くなりました。

 

「レイラ・ルウェリン」

もう一度、力強く語ったカイルの声と

拳を握った手は、

少しずつ震えていました。 

 

なぜ、それを知っているのかと尋ねる

当番兵の驚いた顔を見た瞬間、

カイルは、危うく

息が止まるところでした。

彼がシエンに執着した理由が

まさかレイラだったとは。

レイラがここにいたなんて。

信じられませんでしたが、

信じざるを得ないことでした。

 

当番兵はカイルに

返事をするよう促されましたが、

彼は「あの狂った奴」と

噛み砕くように憎悪の言葉を吐き

飛び上がりました。

カイルを引き留める間もなく、

彼は上の階に駆け上がり始めました。

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無条件降伏すれば

一般市民に手は出さないと

布告したのに、

女性に全く関心がなさそうな

マティアスが、

妊娠中の女性を自分の宿舎へ

連れて来てしまったので、

皆、大騒ぎをしているのですね。

マティアスにしてみれば

自分のものを取り戻しただけなので

自分の行動を

拉致などという不名誉な言葉で

片付けて欲しくないのでしょうけれど。

 

カイルは、マティアスが

女性の名前を提示して探せと

言っただけで、それがレイラだと

気づくなんて、マティアスの性格を

よく分かっていると思います。

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