自分時間を楽しく過ごす 再婚承認を要求しますの先読みネタバレ付き

子供の頃からマンガが大好き。マンガを読むことで自分時間を楽しく過ごしています。再婚承認を要求します、ハーレムの男たちを初めとして、マンガのネタバレを書いています。

泣いてみろ、乞うてもいい 138話 ネタバレ 原作 あらすじ 全てが始まった日

138話 マティアスはレイラを手放すことにしました。

熱は下がったものの、

レイラが、

はっきり意識を取り戻して

起きている時間は

それほど長くありませんでした。

ほとんどの時間、レイラは

ぐっすり眠っていました。

 

もう大きな峠は越えたと

言われているけれど、

カイルは簡単に

安心できませんでした。

まだ青二才の

医大生に過ぎませんでしたが、

それでも父親を見守ってきた

長い歳月がありました。

レイラのような体調の患者を、

ただ熱が下がったという理由で

全快したと

楽観視することはできませんでした。

 

小さく寝返りを打っていたレイラが

「おじさん・・・」と囁きました。

再び過去の夢を見ているようでした。

カイルにできるのは、

ただレイラのそばに

いてあげることだけでした。

 

レイラの病状が良くなったとしても

その先は、どうすればいいのか。

そのことを考えると、カイルは

息が詰まって来ました。

 

レイラを

このまま公爵のそばに置くのは、

あり得ない。

しかし、あの男が決してレイラを

手放さないのは明らかでした。

 

脱走でもして

レイラを連れて逃げようか?

 

そんな極端なことまで

考えてみましたが、

絶望だけが、さらに深まりました。

大陸全体が戦争に巻き込まれた今、

彼らが逃げられるような場所は

存在しませんでした。

しかもレイラのお腹の中には

子供までいました。

 

「ビルおじさん」

カイルは涙声で、

レイラが必死に探している

その名前を呼んでみました。

ビルおじさんが生きていたら

何を望んでいただろうか?

 

いくら考えてみても、

頭の中は真っ暗でした。

しかし、レイラを連れて

ここまで逃げて来た彼は、

レイラが、

再び公爵の手中に捕らえられた身に

転落することを

望んでいないということだけは

確信することができました。

だから、どうか、方法を考えてみろ。

カイル・エトマン。

 

一握りの髪の毛でも

むしり取りたくなった瞬間、

客室のドアが開きました。

予想通りの顔、

マティアス・フォン・ヘルハルト

でした。

 

カイルは挨拶をしないことで

意図的に無礼を働きましたが、

彼は気にしませんでした。

いや、そもそも、その男は

カイルを見てもいませんでした。

部屋に入った瞬間から、

彼の視線は、ただレイラだけに

向っていたから。

 

いつの間にか、

ベッドのそばに近づいてきた彼が、

眠っているレイラの頬を撫でました。

自分のものに接するような

その親密な手と目つきが

カイルは耐えられないほど嫌でした。

 

彼が口を開こうとしたところ

少し話でもしないかと

公爵が先に話しかけました。

カイルは「お話ください」と

返事をしましたが、

レイラの髪を耳の後ろに

流してやっていたマティアスは

ここでする話ではないようだと

言うと、

腰をまっすぐに立てました。

 

しかし、カイルは

レイラを一人にしておくのは・・

と反論しかけている途中で、

閉じていなかったドアから、

若い看護将校が入って来ました。

カイルは当惑しながら

マティアスを見ました。

 

彼は、

もう大丈夫みたいだから出ようと

告げました。

カイルは、

ヘルハルト少佐と話すことなどないと

拒否しました。

しかし、マティアスは、

エトマン一等兵

何か勘違いしているようだけれど

自分は今

お願いなんかしているのではなく

命令をしている。

厳格な軍律下での上官の軍命だと

告げました。

 

カイルの口から

軍人の階級が流れた瞬間、

マティアスの顔色が変わりました。

カイルは、自分の手で

罠を仕掛けたということに

後で気づきましたが、

取り返しはつきませんでした。

 

カイルが何か言い返す前に、

マティアスは先に背を向けました。

躊躇っていたカイルも、

結局、彼の後を追いました。

全く予期していなかった会話は、

思ったよりも長い時間続きました。

第6軍司令部で開かれた

会議の雰囲気は、かなり

和気あいあいとしていました。

戦争に備えて数年間準備した軍事計画は

滞りなく進んでおり、

シエン占領という重要目標を

早期に達成したからでした。

何とか戦争を避けようと努めてきた

臆病者たちを、

思う存分あざ笑うに値する成果でした。

 

今、第4軍が

西部戦線に進撃しているところなので

ここの部隊は、当分の間、

占領地を中心に、後方補給線の

安定化を担う予備戦力として

置くことにしたと

地図の前に立った司令官が

力強く言いました。

片眼鏡をかけ、ほっそりした体格の

フォン・デルマン将軍は、

60歳を過ぎた年齢とは思えないほど

元気でした。

 

彼は、頭の痛いゲリラを

きちんと制圧する必要があると言うと

目を細めながら、ベルクから

ロビタの南部へと続く補給路を、

指揮棒の先でなぞりました。

 

占領地の住民たちは、

道路を封鎖したり、

電話線を切断したりして抵抗しました。

時には補給車両を襲撃したり、

ベルク軍を狙撃したりすることもあり

司令官の怒りを煽っていました。

 

だから占領地の管理を

怠ってはいけなかったと、

フォン・デルマン将軍は

残念そうに呟きました。

彼は一貫して、恐怖で占領地を

治める必要があるという意思を

表明していましたが、

皇帝と皇太子は

国際条約に明記された規律通りに

行動しろという峻厳な命令を

撤回しませんでした。

 

マティアスは姿勢を正して座り、

今後の作戦と計画に対する

司令官の説明を傾聴しました。

戦場の状況が急変しなければ、

少なくとも数週間は、

さらにシエンに駐留することになる。

その間に、レイラを

送り出さなければなりませんでした。

しばらく呼吸が乱れましたが、

マティアスは、

すぐに落ち着きを取り戻しました。

 

指揮官たちを見回していた

司令官の目が、

マティアスの顔の上で止まりました。

彼は「ヘルハルト少佐」と呼ぶと

国際条約で保護されているゲリラたちが

通信網を遮断したせいで、後方に、

この戦線の状況を報告する

伝令が必要だ。

皇太子殿下と親しい間柄でもある君が

最も適していると思うと告げました。

 

マティアスの意思とは関係なく、

司令官はすでに

心を決めた顔をしていました。

後方の第8軍は、

皇太子が直接指揮を執っていました。

司令官にとって

一番扱いにくい相手なので、

伝令を選ぶのも、

かなり神経を使うことでした。

 

マティアスは躊躇うことなく

「はい、将軍」と

彼の意思に従いました。

しばらく席を外した方が、

レイラにとっても、

何よりマティアス自身にとっても

良いことだと思いました。

 

「承知しました」と

マティアスが快諾すると

司令官は胸を撫で下ろした表情で

背を向けました。

あまりにも奇怪な行動をしていて、

本当に噂通り、

頭がどうかなってしまったのでは

ないかと心配していましたが、

幸いそれは杞憂だったようでした。

 

貴族将校の品位に関する説教を

しようとしていた気持ちを変え、

司令官は、少し早めに

会議を終わらせました。

ベルクの若い将校たちは、

今日の午後だけは、

敵に感謝しなければ

ならないはずでした。

正確には、このひどい頭痛を与えた

敵国のゲリラたちに。

 

痛む額を押さえた司令官は、

一刻を争うので、

できるだけ早く出発するようにという

命令を最後に会議室を出ました。

 

マティアスは、

脱いでおいた帽子をかぶって

席から立ち上がりました。

すでに十分に整っている身なりを

整えた後、建物の外に出ると

眩しい日差しが降り注ぎました。

 

今日も日が昇り、世界が輝いてる。

その当然の事実を、

改めて再確認する自分が滑稽で、

マティアスはクスッと笑いました。

しかし、その瞬間にも、

直立した姿勢と眼差しは

少しも揺れませんでした。

 

急いで走って来た運転兵は

マティアスに

出発の準備ができたと告げました。

短く頷いたマティアスは

踵を返しました。

彼を乗せた車は、

すぐに広場を離れました。

見知らぬ子供は、

まだ森の中を彷徨いながら

泣いていました。

今では、その泣き声が、

小屋からでも聞こえるほど

近づいていました。

 

お母さんを待っているのだろうか?

レイラは、

ポーチに置かれた椅子に座り

風に当たりながら

じっくり考えてみました。

いくら待っても

母親が帰ってこない悲しみを

レイラはよく知っていました。

本当にそうなら、

子供がとても可哀想だと思いました。

 

しかし、レイラは、

快く子供の方へ向かって

歩くことができませんでした。

なぜかは分かりませんでしたが、

そうしては、

いけないような気がしました。

 

「ビルおじさん!」

荷車を引いて帰って来た

ビルおじさんの方へ、レイラは

小走りして近づきました。

制服のスカートの裾が翻り

ひらひらと音を立てました。

 

レイラはビルおじさんに、

森に子供がいると告げました。

土のついた道具を片付けながら

ビルおじさんは「ああ、そうか」と

普通に答えました。

 

レイラは、

子供がしきりに泣いているけれど

どうすればいいかと尋ねました。

レイラはしきりに焦って

握り合った両手を

もぞもぞと動かしました。

 

レイラは、

お母さんを探しているみたいだけれど

来てくれないようだと訴えました。

ビルおじさんは、

それなら、お前が一度行ってみろと

返事をしました。

 

その言葉に驚いたレイラは

「私が?」と聞き返し、

でも、知らない子だからと呟きました。

 

じっとレイラを見ていた

ビルおじさんは、

それは本当に変だというと、

からからと大笑いしました。

 

ビルおじさんはレイラに、

本当にあの子を知らないのか。

自分は何となく分かる気がすると

言いました。

 

レイラは、

「本当に?誰?」と聞き返しましたが

ビルおじさんは、「さあね」と言って

いたずらっぽい笑みを浮かべるだけで

明確な答えをくれませんでした。

 

ビルおじさんは、

一度行って会ってみろ。

見れば分かるだろうからという

言葉を残し、

道具を持って倉庫に入りました。

 

彼の後を追おうとした気持ちを変え、

レイラは、

子供の泣き声が聞こえて来る

森の道の方へ足を向けました。

小さな子供は、

鳥たちが歌う夏の森の道端にうずくまり

すすり泣いていました。

 

何から話せばいいのか

迷っていたレイラは、まず

「こんにちは」と

優しい挨拶で子供を呼びました。

子供は

涙でびしょ濡れの顔を上げて

レイラを見ました。

真っ青で澄んだ瞳が

ガラス玉のようにきれいでした。

 

「なぜ、一人でいるの?

お母さんは?」と尋ねると、レイラは

慎重に、もう一歩踏み出しました。

子供は返事もせずに

レイラを見つめてばかりいました。

 

一体、この子は誰なのか。

考えれば考えるほど、混乱だけが

ますます深まって行ったある瞬間、

レイラは突然立ち止まりました。

胸がドキドキして呼吸が乱れました。

 

レイラは首を回して、

道の先の小屋を見つめました。

ここでは、昨日のような今日が、

今日のような明日が続くだろうと

レイラは思いました。

 

毎日が夏の始まりでした。

花は蕾のままで、

水鳥の巣の中の卵も

そのまま残っている。

海外戦線の服務を終えた

ヘルハルト公爵の帰還を控えた

公爵邸の騒々しい雰囲気も

同じでした。

 

この居心地の良い時間の中で、

レイラは永遠に18歳の初夏を

生きたいと思いました。

だから子供を知らないはずなのに、

レイラは何度も振り返って、

結局、再び子供に向き合いました。

 

小屋に戻らなければならない。

夕食の準備をしなければならないし、

その後は、カイルと一緒に

試験勉強もする予定でした。

しかし、

子供を知っているような気がしました。

正確には、二十年ほど後のあの子を

知っているような気がしました。

レイラがこの世で一番憎んでいて

そして憎むほど好きなその人に

そっくりな姿でした。

 

レイラは躊躇いながらも

子供に向かって歩み寄りました。

一歩、また一歩近づくにつれ

次第に歩みが速くなって行きました。

 

わんわん泣きながら

自分の所に走ってきた子供を

レイラは両腕を広げて抱き締めました。

森を揺るがす風が

そんな二人を包み込みました。

 

そして再び目が覚めた時、

レイラは自転車に乗って

アルビスに続く道を走っていました。

角を曲がると、

緑色に染まったプラタナスの道が

広がっていました。

そして、ベルク帝国の将校服を着た

ある長身の男が、

その道を悠々と歩いていました。

 

シャーッと

自転車のチェーンが回る音が

木の葉を揺らす風の音と

重なった瞬間、

レイラが乗っている自転車が

その男の横を通り過ぎました。

 

そうしてはいけないと思いながらも

レイラは取り憑かれたように

後ろを振り返りました。

そして、やはり自分を見ていた男と

目が合いました。

胸の高鳴る音が、

他の全ての音を消してしまった瞬間、

レイラは、うっかり

バランスを崩してしまいました。

倒れた自転車の車輪が空回りしていて

どれだけ良かったか

分かりませんでした。

そうでなければ、

騒がしい心臓の鼓動が

ばれてしまっただろうから。

 

倒れたレイラに

彼が近づいて来ました。

そして、もしかしたら

あの瞬間、あの夏の初め、

あれほど美しかった日は、

レイラにとっても

全ての始まりだったのかも

しれませんでした。

 

レイラは、その鮮明な記憶の中で

ゆっくりと目を覚ましました。

真っ先に、

膨らんだお腹を撫でてみました。

子供は穏やかな動きで

答えてくれました。

 

レイラは「ごめんね」と

何度も謝りながら

体を起こして座りました。

「あなたのことを知らないと言って

本当にごめんなさい」と謝ると

レイラは息を整えて顔を上げました。

あの日のように、

胸がドキドキしました。

彼の前に立つと、いつもこうでした。

とても怖くて、不安だったからだと

思いましたが、

それが全てではありませんでした。

今はそれが分かるような気がしました。

 

ドアが開き、

カイルが明るく笑いながら、

「レイラ!起きていたんですか!」

と叫んで、中へ入って来ました。

彼は足早に近づき、

ベッドの横に置かれた椅子に

座りました。

 

彼は、

良かった。見せたいものがあると

言いました。

カイルが差し出した物を、

レイラは、ぼんやりとした目で

見下ろしました。

あの男の署名が入った書類でした。

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夢でも幻影でも何でも

ビルおじさんが登場すると

涙腺が緩みっぱなしになります。

ビルおじさんのレイラへの

深い愛について考えると、

涙が止まらなくなります。

レイラはビルおじさんに

育ててもらったおかげで

幸せな人生を送れました。

前にも書いたと思いますが、

レイラの引き取り手として

親戚の男性が

ビルおじさんのことを思い出したのは

レイラにとって、

本当に幸運だったと思います。

 

自転車に乗っていて転んだ日が

全ての始まりだと

レイラは思っていますが、

本当の始まりは、

木に登っていたレイラにマティアスが

猟銃を向けた時ではないかと思います。

 

ご存じの方もいらっしゃるかと

思いますが、

カナダの心理学者である

ダットンとアロンによる

吊り橋理論というものがあります。

これは、

人が不安や恐怖を感じる状況

(例えば、高い吊り橋の上など)で

ドキドキする時の感情を

恋愛感情と勘違いしてしまう

心理現象ですが、レイラは、

マティアスに猟銃を向けられて

心臓がドキドキしている最中に、

彼女の母親の思い出の

青い飴に似ている目と、

水鳥の羽ような声を持つ

マティアスを見たことで、

別の意味で心臓がドキッとし

レイラは、彼に対して、

ほのかな恋心を

抱くようになったのではないかと

思います。

けれども、

マティアスは雲の上の存在ですし

美しき鳥たちの虐殺者なので

いったん、その気持ちは

封じ込められてしまった。

しかし、18歳のレイラが

自転車を走らせてて、

心拍数が上がっている時に

将校服を着たマティアスを

偶然見かけてしまった。

その上、レイラは

マティアスの前で派手に転び、

それを彼に見られたことで

さらに心臓がドキドキしている中

彼の青い目を見てしまった。

この時点で、

レイラのマティアスへの恋心が

決定的になったのではないかと

思います。

 

私は、なぜレイラが

ここまでマティアスに

酷いことをされているのに、

マティアスのことを好きなのか

理解できませんでしたが

彼の前に立つと、不安と恐怖で

心臓がドキドキすることと、

思い出の飴のような

マティアスの青い目と、

水鳥のような声を聞いて

心臓がドキドキすることとの

相乗効果があったのではないかと

思いました。

もちろん、その後、マティアスに

優しくされたことで、

レイラの気持ちが、

より彼に傾くきっかけになったとは

思います。

 

反対のご意見もあるかもしれませんが

これは、あくまで私の考えであり、

吊り橋理論を念頭におくことで

レイラがマティアスを

愛し続けた理由が、

ある程度、納得できただけですので

もっと、ロマンティックな理由があると

考えていらっしゃる方は、

私の意見はスルーしてください。

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