自分時間を楽しく過ごす 再婚承認を要求しますの先読みネタバレ付き

子供の頃からマンガが大好き。マンガを読むことで自分時間を楽しく過ごしています。再婚承認を要求します、ハーレムの男たちを初めとして、マンガのネタバレを書いています。

バスティアン 52話 ネタバレ ノベル あらすじ マンガ 40話 ろくでもない奴の妻

52話 バスティアンはオデットの寝室へ入りました。

オデットの部屋は空っぽでした。

浴室のドア越しに

微かに水の音が聞こえてくるので

まだ、お風呂が

終わっていないようでした。

 

バスティアンは、

最後の一歩を踏み出して敷居を跨ぎ

二つの寝室をつなぐ通路のドアを

閉めると、

さらに沈黙が高まりました。

 

夜も更けた時間でしたが、

オデットの部屋は、真昼のように

明るくなっていました。

おそらく彼女は、

明るいのを好むようでした。

最小限の照明しか使わない

バスティアンとは、

正反対の趣向でした。

 

バスティアンは、その光の中へ

コツコツ歩いて行きました。

注意深く観察した女主人の寝室は、

インテリアコーディネーターが

手がけた当初と、

大きく変わった所はありませんでした。

 

一見、物がたくさんあるように

見えましたが、ほとんどが最初から

ここに属していたものでした。

オデットの持ち物と呼べるものは

稀でした。

それさえも、

ほとんど完璧に整理されているので、

生活感がなく、

いつでも出発する準備ができている

空間でした。

軍艦の船室や官舎を連想させる

光景でした。

 

化粧台の上に置かれている

色とりどりのガラス瓶の上を

通り過ぎたバスティアンの視線は、

オデットがよく使う

金の櫛の上で止まりました。

 

H。

持ち手に刻まれた、

しゃれた頭文字が誰のものなのか

推測するのは、

それほど難しくありませんでした。

 

皇女が娘に残した遺品は、

たった古い櫛一本だけでした。

ディセン公爵が、家族の生活を

どこまで台無しにしたかを示す

証拠でした。

 

櫛を元の場所に戻したバスティアンは

ゆっくりとした足取りで

ベッドに近づきました。

ノックの音が聞こえて来たのは、

きちんと畳んである

ガウンとショールが置かれた

フットベンチの前に

立ち止まった時でした。

 

奥様宛の手紙が一通抜けていたと

頭を下げながら謝罪した執事が

持って来た手紙を差し出しました。

淡々とそれを受け取った

バスティアンの眉間に

しわが寄りました。

病院に閉じ込めておいた

ディセン公爵からの手紙でした。

 

執事が退くと、

バスティアンはその手紙を握ったまま

窓際のテーブルの前に近づきました。

タバコを一本取り出し、咥えて火を点け

深く吸って吐いた煙が

空中に散らばっていく間、

彼の視線は、その分厚い封筒にだけ

釘付けになっていました。

 

まだ娘に言いたいことが、

これほど多く残っているということが

滑稽になった瞬間、

バスティアンは決定を下しました。

躊躇なく封筒を開けて手紙を開く動作は

当然の権利を行使するかのように

大胆でした。


ろくでもない奴とつるんで

家門の名を汚しても

恥を知らないなんて、

実に嘆かわしいことだと、

ディセン公爵の手紙は、

安否を問う

ありふれた挨拶の一言もなく

始まっていました。

自分が反対する結婚を強行した娘と

婿として認められない成金に向けられた

厳しい叱責と悪口。

そして今まで送った手紙を

無視されたことに対する激しい怒りが

大きな紙にぎっしり書かれていました。

 

これ以上読む価値がなさそうな

手紙を下ろしたバスティアンは、

タバコの煙を深く吸い込みました。

折れたのは腰だけだという事実が

残念でした。

どうせなら、こんな手紙を

書き散らさないよう、手首も一緒に

砕けていればよかったのにと

思いました。 

 

吸い殻になったタバコを

灰皿に投げ入れたバスティアンは、

ライターと手紙を持って

立ち上がりました。

火を点けた手紙を

暖炉の中に投げ込んだのと同時に、

バスルームのドアが開きました。

ニッコリと笑ったオデットは、

世話をしてくれるメイドと一緒に

化粧台の前に近づきました。

以前のように、

驚いたり、戸惑ったりする様子は

見られませんでした。

 

灰になって消えた手紙を確認した

バスティアンは、

ドレッサーと向かい合うベッドの端に

ゆったりと腰を下ろしました。

若いメイドが、

まだ湿っている髪を乾かしている間、

オデットは、

華やかに装飾されたガラス瓶に

入っているものを

丁寧に顔に塗りました。

鏡の中で目が合ったのは、

スミレの花が細工された

陶器の瓶の蓋を開けた瞬間でした。

 

オデットはそっと目を伏せて

バスティアンの目を避けました。

どうか、いつものように

先にベッドに入ってくれることを

願いましたが、

彼はなかなか動く気配を

見せませんでした。

 

無駄な期待を捨てたオデットは、

再び自分の仕事に励みました。

慎重にすくったクリームを塗り、

再び最初の状態に戻すように

左から右へ、使用する順序に合わせて

化粧品の瓶を整理しました。

母に教わった通りに身に付けた

習慣でした。

 

自分の仕事を終えたメイド長は、

それでは自分たちは

この辺で失礼すると

丁重に告げました。

浴室の片づけを終えて

戻って来たモリーも、

彼女のそばに近づき、

頭を下げました。

 

二人きりになる状況が負担でしたが、

オデットは、これ以上、

彼女たちを引き留める口実を

見つけることができませんでした。

その間にドアが開き、

また閉まりました。

 

バスティアンは、

相変らずその場所に座って

鏡の中のオデットを眺めていました。

オデットは彼と目が合わないように

慎重にブラッシングをしました。

髪の間を滑る櫛の音が

深みを増していく沈黙の中に

溶け込みました。

 

何か言わなければならないという

義務感に囚われたオデットは、

適当な話題を探しました。

実はバスティアンが燃やした手紙が

気になっていましたが、

余計な話をすることで、

雰囲気を台無しにしたくは

ありませんでした。

ぼんやりと、

その返事も察しているので、

なおさらでした。

あの男の口からサンドリンの名前を

わざわざ聞く必要はありませんでした。

 

もう横になりたかったけれど、

オデットは

簡単に櫛を放せませんでした。

まだその場にいる

バスティアンのせいでした。

 

オデットは

息が詰まりそうな静寂の中に

閉じ込められたまま、

永遠に終わらないようなブラッシングを

続けなければなりませんでした。

バスティアンは、

一編の興味深い演劇でも観覧するように

ゆっくり、その光景を見守りました。

本当に気まずくて変な男でした。

バスティアンがシャワーを終えて

出てきた時も、

オデットは屈することなく

化粧台の前を守っていました。

まだブラッシングをしている執念が

驚異的でした。

 

バスティアンは苦笑いしながら

ベッドへ行きました。

自分が先に寝てやらなければ

夜が明けるまで

ブラッシングをする女でした。

理解しがたい意地でしたが、

適当に

合わせてあげることにしました。

無意味に対峙し続けるのは、

彼としても

気が進まないことだからでした。

 

バスティアンは、

自分の場所に横になって

目を閉じました。

オデットはしばらくしてから

櫛を置いて立ち上がりました。

静かに軽やかに動く女でしたが、

バスティアンは、難なく

彼女の気配を感知しました。

 

オデットは、パトロールするように

部屋の中を回って明かりを消しました。

寝る前に行う一種の儀式でした。

 

電気で灯したシャンデリアと壁灯。

石油ランプ。 燭台。

その明かりが一つずつ消えると、

静かで穏やかな闇が

寝室を包み込みました。

 

最後に

サイドテーブルの明かりを消した

オデットは慎重にベッドに入りました。

広過ぎて、人を寂しくさせるような

ベッドでしたが、大きな男と一緒に

使うようになってからは

考えが変わりました。

 

オデットは自分の場所に横になり、

布団を引っ張り上げました。

バスティアンの体温が染み込んだ

ベッドは温かでした。

ティラを胸に抱いて眠ろうとした過去を

思い出させる温もりでした。

 

余計な感傷に

浸りたくなくなったオデットは、

急いで目を閉じて眠りにつきました。

しかし、時間が経つにつれて、

むしろ意識は冴えて行きました。

 

諦めたように目を開けたオデットは

隣の方へ、

そっと首を回しました。

すでに眠っていると思っていた

バスティアンは、驚くべきことに

目を覚ましていました。

闇の一部のように、

静かな両目いっぱいに

オデットを湛えていました。

 

必死に悲鳴を飲み込んだオデットは

「眠れないのですか?」と

落ち着いて質問しました。

 

クスっと笑ったバスティアンは

「あなたは?」と聞き返しました。

幸いなことに、以前のような

不祥事を起こしそうにない態度でした。

ようやく警戒心を解いたオデットは

長いため息をついて頷きました。

 

オデットは、

とても疲れているのに

よく眠れないと返事をすると、

両手を胸の上に重ねて、

再び天井を見つめました。

 

オデットは、

「今日はありがとう」と

遅ればせながら、言えなかったお礼を

伝えました。

視線は依然として

夜の闇の向こうに向けられていました。

 

オデットは、

あなたのおかげで、

久しぶりに乗馬ができて良かった。

幼い頃のことも

たくさん思い出したと言いました。

バスティアンは、その理由を尋ね、

あの時に戻りたいと思うのかと

尋ねました。

オデットは、

それは何の意味もない仮定ではないかと

答えました。

そして、ここまでと

さりげなく線を引いたオデットは、

その辺で自然に、

最近の天気と社交界の動向、

今月の予定など、適度に表面的で

安全な話題に変えました。

 

オデットは、

今週末に開くことにした

ガーデンパーティー

ジェンダス卿も招待したらどうかと

思いがけない提案をしました。

再びバスティアンに向き合った顔には

かつてない穏やかな笑みが

浮かんでいました。

 

バスティアンは、

ジェンダスといえば、

あの植物学者かと尋ねました。

オデットは「はい」と返事をすると

ジェンダス家も

アルデンに別荘を所有していて、

先週末に、

そこに到着したという連絡を受けた。

一度自分たちと食事をしたいという

意向を、先に伝えて来たので

招待を断らないつもりだと

話しました。

 

バスティアンは、

招待リストになかった名前を、

今さら追加しなければならない理由は

何なのかと尋ねました。

オデットは、

ジェンダス家は、

帝国貴族年鑑の前列を逃したことのない

名門だ。

その人と親交を深めれば、

社交界で地位を固めるのに

大いに役立つと、

バスティアンの冷淡な反論の前でも、

なかなか意思を曲げませんでした。

マクシミン・フォン・ジェンダスに

向けた信頼と好意が

はっきりと表れた態度でした。


一体誰が誰を助けるというのか。

オデットの恩を施すような態度が

滑稽でしたが、バスティアンは

これ以上、言葉を加えませんでした。

それは、どうせ女主人の仕事。

特別な欠格事由がなければ、

誰を招待しても、彼の知ったことでは

ありませんでした。

 

オデットは、

もうそのパーティーの進行順序と

食事に出すメニューについて

話し始めました。

その無意味な報告が終わる頃になると

声から、明らかな眠気が

滲み出て来ました。

 

自分はもう

寝なければならないようだと

うつらうつらしていた目を開けた

オデットが、そっと囁きました。

細かい睫毛の影が、

赤い目頭の上でゆっくり揺れました。

 

オデットは、

「おやすみなさい、バスティアン」

とため息のように呟いた挨拶を最後に

目を閉じました。

そして、しばらくすると、

穏やかな呼吸の音が

聞こえて来るようになりました。

 

バスティアンは、

片腕で頭を支えて横になったまま

ぐっすり眠っている女を

見下ろしました。

世の荒波に揉まれて、

疲れた目つきが消えたオデットの顔は

とても清らかで若々しく、

懐かしい時代に戻ったような

気がしたという

今日の午後の一時のようでした。

 

この結婚が終わったら、

あなたの人生は

どのように流れていくのだろうか。

 

バスティアンは初めて

オデットの将来を考えました。

賢くて真っ直ぐな女でした。

金と父親。

彼女を奈落に引きずり下ろした

足枷さえ断ち切れば、

誰よりも堅実な人生を

送ることができるだろう。

もしかしたら、まともな結婚をして

新しい家庭を築くことに

なるかもしれませんでした。

 

離婚した女という

レッテルが貼られるとしても、

適当に名望のある貴族の家柄の

再婚相手なら無難かもしれない。

たとえば、

次期ジェンダス伯爵夫人のように。

 

そんな人生が

似合う女だということを

バスティアンは素直に認めました。

どういうわけか、

うんざりした気分になるのは

別問題でしたが。

 

バスティアンの息づかいに、

微かに熱気が漂い始めた頃、

小さく寝返りを打ったオデットが

体を回して横になりました。

距離が近づいた分、

肌の匂いが濃くなりました。

 

バスティアンは、

オデットの片方の頬と首筋を覆う髪を

ゆっくりとかき上げました。

丁寧にブラッシングした髪の毛が

ベルベットのように柔らかでした。

思いがけず触れた肌の感触も

そうでした。

 

意外と、

人を簡単に信じるタイプなのか。

熟睡しているオデットを

眺めていたバスティアンの唇が

斜めに傾きました。

ブルブル震えながら

棘を立てていた時よりは

遥かにマシでしたが、

このような姿にもまた

心を掻き立てられるのは同じでした。


熱くて湿ったため息を長く吐いた

バスティアンは、諦めたように

ベッドから立ち上がりました。

テーブルに置かれた

タバコの箱を開ける音の後に、

ライターのカチッという音が

続きました。

 

月明かりが差し込む

窓際に寄りかかったバスティアンは

頬が深くへこむほど、

タバコを深く吸い込みました。

狂ったように引っ張られている下に

視線を落とすと、

失笑が溢れ出ました。

低い悪口とともに吐いた青い煙が

闇の中にゆっくりと立ち上りました。

ろくでもない奴の妻は、依然として

深くて穏やかな眠りに

ついていました。

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オデットが

ジェンダス伯爵の名前を出した時、

バスティアンは少し

イラッとしたような気がしますし、

ジェンダス伯爵への信頼と好意が

自分に向けられていないことには

少しムッとしたのではないかと

思います。

そして、バスティアンが

自分と離婚した後の

オデットの先の人生のことを

考えてあげたのは、

思いやりのある行為だと思いますが、

彼女が再婚するのに

ふさわしいのがジェンダス伯爵だと

思った時に、

うんざりした気分になったのは

彼への嫉妬心ではないかと

思いました。

そして、体が反応しても、

自制心を保っているバスティアンは

優しいと思います。

 

オデットに内緒で

ディセン公爵からの手紙を

燃やしてしまったのは

どうかと思います。

契約上の夫だと言いながら

そういう時は夫の権利を前に出す

バスティアンに賛成できません。

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