自分時間を楽しく過ごす 再婚承認を要求しますの先読みネタバレ付き

子供の頃からマンガが大好き。マンガを読むことで自分時間を楽しく過ごしています。再婚承認を要求します、ハーレムの男たちを初めとして、マンガのネタバレを書いています。

泣いてみろ、乞うてもいい 143話 ネタバレ 原作 あらすじ クロディーヌの願い

 

143話 レイラが救急車から降りて走って来ました。

夢中で走って来るレイラに向かって

マティアスも急いで走りました。

よろめきながら、

倒れそうになる彼女を支える

マティアスの手も、

彼女のように震えていました。


マティアスは、

何と言ったらいいのか分からず

漠然とした気持ちで、

「レイラ」と、

その名前だけを囁きました。

 レイラは目を見開いて

彼をじっと見つめました。

涙が溢れたエメラルド色の瞳が、

明るい朝の日差しの中で

宝石のように輝きました。

 

何も言わずに息を深く吸い込み、

吐き出すことを繰り返していた

レイラは、編んだ髪の先に

結んでいたリボンを

急いで解きました。

マティアスは、その行動の意味を

すぐに理解しました。

レイラは、

むんずと掴んだ彼の手首に

アルビスの鳥たちと同じように

リボンを結びつけました。

それが全てでした。

 

レイラは何も言えませんでした。

口を開けば、

馬鹿なことを言ってしまうと

思ったからでした。

 

自分の手首に縛られた白いリボン

レイラの顔を

交互に見ていたマティアスは、

笑いながら頷きました。

思わず息を殺して

見つめてしまう瞬間が多かった

ちょっとした茶目っ気と

傲慢さが伴った、

まさにその微笑でした。

 

軍隊の集結を知らせる警報音が

再び鳴り響いて来ました。

口をつぐんだレイラの唇が

震え始めました。

それでも最後まで泣かないレイラの 

バラ色の頬を撫でながら、

マティアスは、もう一度頷きました。

そして「行け、レイラ」と告げると

風に乱れた髪を撫でながら笑い、

頭を深く下げて

涙の跡で汚れたレイラの頬に

そっとキスをしました。

 

サイレンの音の中でもレイラは

耳元で囁く、

「愛している」と言うその低い声を、

はっきりと聞くことができました。

それが最後でした、

 

レイラは、このくらいで、

差し迫って自分の名前を呼ぶ

カイルとリエットの方へ、

戻らなければなりませんでした。

マティアスも、

サイレンの音が鳴り響く

広場に向かって歩き出しました。

 

彼に背を向けた瞬間、

始まったレイラのすすり泣きは、

すぐに熱い涙となりました。

子供のように、

わあわあ泣きながらも、

レイラは立ち止まることも、

振り返ることもなく歩きました。

マティアスの足取りが

重くなるのは嫌だから。

気軽に去ってこそ、

気軽に戻って来ることが

できそうだから。

待っていれば、

間違いなく戻って来てくれた

レイラが愛した

アルビスの鳥たちのように。

 

廃墟と化した都市が、

晴れた朝の日差しの中で

その残酷な姿を現しました。

マティアスは壁の角を曲がる前に

首を回してレイラを見ました。

彼女の背中には、

金色の解けた髪が

羽のようになびいていました。

灰色になった廃墟の中の

その美しい金色の波を

マティアスは、

両目に深く刻み込みました。

そして再び、

まもなく戦場となる

世界に向かって走り出しました。

エタールの大軍が参戦した

南部連合軍はその朝、

北部連合軍の阻止線を突き抜けて

上陸しました。

シエンの秋の空が眩しく晴れていた

開戦以後、最大規模の戦闘が

始まった日でした。

 

号外を配る新聞配達の少年たちが

夢中でラッツの繁華街を

駆け抜けました。

クロディーヌは、

カフェの窓の向こうに、

今では慣れてしまった憂鬱な風景を

眺めました。

彼女の向かいに座っている

女性たちの表情も

変わりませんでした。

 

最近になって聞こえてくる

前線の消息は、

ほとんどが暗いものでした。

開戦後ずっと好調だったベルク軍は

秋にエタールが参戦した

シエン奪還戦で敗北して以来

苦戦を強いられていました。

 

前線は、

次第に北へ後退して行きました。

それでも先日、北部連合の総攻撃が

かなり大きな成果を上げ、

再び戦勢は、

五分五分になったようでしたが

楽観視できるようなニュースでは

ありませんでした。

 

帝国の息子たちが

勝利の栄光の中で帰還する奇跡が

起きないまま、

新年が近づいていました。

皇帝の約束は

守られなかったというわけでした。

 

「そんなに心配しないで。

ヘルハルト公爵は無事でしょう。」

「もちろんです。

いくら激しい戦闘が起きたとしても

公爵は、間違いなく

無事に帰還されるでしょう。」

 

クロディーヌの顔色を窺った一行が

一言ずつ言葉を加えました。

 

ヘルハルト公爵。

ああ、そうか。

私の高貴な婚約者。

 

その名前を心の中で繰り返した

クロディーヌの口元に

曖昧な笑みが浮かびました。

彼らは、

まだ正式に婚約していたので

クロディーヌ・フォン・ブラントは

マティアス・フォン・ヘルハルトの

安否を気遣うべき女性でした。

今や、彼の生死は

どうでもよいことになったとしても

表面上は、

そうでなければなりませんでした。

 

クロディーヌは偽悪的に

マティアスが必ず生きて帰って来て

自分の夫になることを願ったけれど

季節が流れるにつれて、

それは姿を消しました。  

今では、彼女自身が

何を望んでいるのか

依然として

この見せかけだけの婚約を

続けている理由が何なのかも

分かりませんでした。

 

時には、むしろ

あの男の戦死の知らせが

届くことを望んだりもしました。

それこそ、この婚約を

最も優雅に解消する方法だろうと

思いました。

 

それで、その次は?

習慣的に投げかけた自問に

クロディーヌの眼差しが揺れました。

 

度々、戦場から手紙が届きました。

差出人はリエット、

いつも彼でした。それが当然でした。

マティアスとは、そんな物を

やりとりする仲だったことは

一瞬たりともなかったから。

 

クロディーヌはリエットの手紙で

レイラの消息を知りました。

あの男がシエンに行った理由が

本当に、

あの孤児だったことを知ると

もはや怒りすら湧きませんでした。

 

レイラが彼の子供を

妊娠したという知らせを聞いても

ただ冷めた笑いを

漏らしただけでした。

 

この婚約は終わった。

クロディーヌは、

すでに知っていながらも

必死に否定していた事実を

素直に受け入れました。

しかし、決して

彼に利益になる方法で

終わらせたくはありませんでした。

汚いのは彼らなのに、

損をする側が自分になることは

できませんでした。

だから死んでしまえばいいと、

今や淡々と、

その願いを繰り返しました。

彼も、あの卑しい孤児も、

彼らの子供も皆、

この世から消えて欲しい。

そのようにして、自然に

この婚約が破談になれば

クロディーヌは完全に、

何の欠点もなく、

新しい出発をすることができました。

 

死んだ婚約者の従兄と

結婚するというのは

あまり愉快なことではないけれど

その程度のことで、

彼女の評判と名誉が崩れることは

ありませんでした。

そうなれば、その時は

返事ができるはずなのに。

 

自然にテーブルの会話に

参加しながらも、クロディーヌは

リエットの手紙のことだけを

考えました。

正確には、その手紙に込められた

リエットの告白を。

 

永遠に失ったと思っていた

彼の心が依然として

自分に向かっていることを知った時

クロディーヌは喜びのあまり

泣きました。

しかし、気軽に返事を書くことは

できませんでした。

今度こそ完璧にしたいと思いました。

外見だけが華やかだった婚約とは 

比べ物にならない、

愛と名誉を全て持った

そんな結婚を望みました。

そのために、

マティアスが死んでくれれば、

彼の葬儀で、クロディーヌは、

誰よりも熱い涙を

流すことができました。

その理由は悲しみではなく

喜びだろうけれど。

 

その後、いくつかの

形式的な話を交わした女性たちは、

この辺で立ち上がりました。

戦時中であるだけに、

社交界の華やかな集まりは

全て姿を消しました。

参戦した貴族の息子たちの

戦死のニュースも

しばしば聞こえて来ました。

哀悼と葬式が繰り返される、

とても陰鬱な冬でした。

彼女たちが、

ラッツで会うことになった理由も

その葬儀の一つに

参加するためでした。

 

待機中のブラント家の車は

クロディーヌを乗せて

繁華街を去りました。

静かに物思いに耽っていた

クロディーヌは、

車が自然史博物館と

美術史博物館の間の

大通りに入った頃、突然、

窓の向こうに目を向けました。

 

眼鏡をかけた金髪の女性が

その道を歩いていました。

顔立ちを詳しく見るには、

かなり遠い距離でしたが、

その姿に馴染みがありました。

 

メイドは、何かあったのかと、

クロディーヌの顔色を窺いながら、

それとなく尋ねました。

悩んでいたクロディーヌは、

小さく首を横に振ると、

車の座席の奥深くにもたれかかり

「いいえ、何でもない」と答えました。

 

レイラだろうか。

リエットの手紙で伝え聞いた、

あの子の最後の知らせは、

マティアスが、

自分の子供を妊娠したまま逃げた

レイラを捜し出し、

ついに捕まえたということでした。

ところで、まさか、あの子を

ここへ送ったのだろうか?

あの男が?

 

いずれにしても、クロディーヌは

これ以上、

彼らのごちゃごちゃしたことに

関わりたくありませんでした。

戦争の砲火に包まれて

消えてほしいという願い以外、

もう何も残っていませんでした。

そんな平凡な一日でした。

 

クロディーヌは、寝る前に

リエットの手紙が届くといいなと

一つの願いを

抱いてみたりもしました。

そうすれば、今回は

短い返事でも書けるのではないかと

思いました。

そして奇跡のように、

その願いが叶いました。

 

郵便物を持って来たメイドが

満面の笑みを浮かべながら

クロディーヌの寝室に入って来て

リンドマン侯爵からの手紙が

届いたと伝えました。

 

ベッドに寄りかかって座って

モーニングティーを飲んでいた

クロディーヌは、

浮かれた少女のように

立ち上がりました。

自分が裸足でメイドの元へ 

駆けつけるという

情けないことをしてしまったことは

手紙を受け取った後に

気がつきました。

 

クロディーヌは、

少し頬を赤らめながら

スリッパを探しました。

メイドが主人のミスを

要領よく無視している間に、

突然、ノックもなしに

ドアが開きました。

意外にも、娘と同じくらい

品位と礼法に厳しい

ブラント伯爵夫人でした。

 

「ねえ。クロディーヌ

どうしましょう。」

彼女は驚いたクロディーヌが

口を開く前に泣き出しました。

彼女は震える手に、今日の新聞を

ギュッと握ったままでした。

クロディーヌの胸が

期待感でドキドキし始めました。

新聞配達の少年が来る時間になると、

レイラは決まって

胸がドキドキしました。

時間を確認しなくても

自然にそうなりました。

 

今日もレイラは、

苛立たしげな表情で家の前を

うろうろしていました。

まもなく新聞配達の少年が

駆けつけて来る、

街の向こうを見る大きな瞳が

苛立たしげに揺れました。

 

あの晴れた秋の日、

レイラを隠した救急車は

無事に封鎖されたシエンを

抜け出しました。

後方の補給部隊で

リンドマン侯爵と別れ、

ロビタとベルクの国境を越えた先の

軍病院では

カイルとも別れました。  

そしてレイラは、

見知らぬ住所が書かれた紙一枚を頼りに

ラッツ行きの汽車に乗りました。  

まるでアルビスを訪ねた

過去のあの幼い少女のように。

 

喉元まで上がって来た悲しみが

ゆらゆら揺れて

溢れ出そうになりましたが、

レイラは泣きませんでした。

子供がいるので、

一人ではありませんでした。

そしてマティアスがいました。

 

もう少し待てば戻って来てくれる人。

だからレイラは健康を回復して

子供を無事に出産し、

その子と一緒に

彼を待てば良いだけでした。

そんなに易しいことなので、

いくらでもうまく

やり遂げることができる。

レイラは毎日、何度も

その誓いを繰り返しました。

そして、レイラはそれに力を得て

一日を、そして、また一日を

耐えることができました。

 

その間に季節が変わり、

子供が成長しました。

もうすぐ、

赤ちゃんに会えることになる。

奇跡のように、

それまでに戦争が終わって

彼が戻って来てくれたら

どんなにいいだろうか。

とても切実な儚い願いでした。

 

いくらでもうまくやれるけれど、

もし出産中に自分に何かあったら、

子どもを守ってくれる人が

いないという事実に、

少しは恐怖を感じました。

 

もちろん、この家を探して

生活できるように助けてくれた

公爵家の執事と弁護士がいるけれど

心から頼れる相手では

ありませんでした。

 

レイラは、

大丈夫、全て大丈夫と、

彼が自分に言ってくれたように

お腹の中の子供に囁きました。

その時、軽やかで速い足音が

聞こえ始めました。

冷たい街の向こうから

新聞配達の少年が走って

近づいて来ました。

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戦争のせいで苦しむのは、

戦争を起こした人たちではなく

実際に戦地で戦っている人々と

その家族や、彼らを愛する人たち。

一部の人々の利益や見栄や

プライドのために

戦争が起きることを

腹立たしく思いました。

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いつもたくさんのコメントを

ありがとうございます。

 

昨日は、私が投稿予約時間を

間違えるというミスをしたため

皆様にご心配をおかけしました。

私の体のことまでお気遣いいただき

ありがとうございます。

 

easterlily_st様

私は全然、

不快な思いをしていませんので

お気になさらないでください。

朝起きた時、いつもと違って

コメントが書かれていなかったので

不思議に思っていたところ、

easterlily_st様に

教えていただいたおかげで

記事がUPされていないことに

気づきました。

本当に有難いと思っています。

 

記事の予約時間を間違えたのは

今回が初めてですが、

時々、カテゴリー分けを忘れたり

間違ったカテゴリーに

入れてしまうことがあるので、

気づかれた方は教えていただけると

助かります。

皆様の温かいお心遣いに

心から感謝申し上げます。

 

ところで、142話で

マティアスが口にした「レア」は

皆様のご指摘通り

子供が女の子の場合の

名前のようですね。

改めて読み直してみて、

私も、そう感じました。

自分で「こうだ」と思い込んでしまうと

なかなか考えを修正できないことが

ありますので、

ご指摘いただくことで、

考え直すことができることに

感謝しています。

本当に、いつもありがとうございます。

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