自分時間を楽しく過ごす 再婚承認を要求しますの先読みネタバレ付き

子供の頃からマンガが大好き。マンガを読むことで自分時間を楽しく過ごしています。再婚承認を要求します、ハーレムの男たちを初めとして、マンガのネタバレを書いています。

泣いてみろ、乞うてもいい 154話 外伝2話 ネタバレ 原作 あらすじ 懐かしのアルビス

 

154話 マティアスとフェリックスはパーゴラの下にいました。

 

その笑い声に導かれるように

マティアスは、

ゆっくり首を回しました。

彼のそばに立って

何かを報告していた随行人の視線も、

すぐにレイラに向かいました。

 

二人の男をかすめたレイラの視線は、

反対側のパーゴラの柱の下に立っている

息子に届きました。

手を後ろに組んで父親をじっと見ている

フェリックス・フォン・ヘルハルトの

表情は、まるで二人の会話を

理解しているかのように真剣でした。

 

レイラが見つめている所を

チラッと見たマティアスは、

ようやく、

フェリックスを発見したかのように

短く笑いました。

視線を交わした使用人たちが

静かに退くと、パーゴラの下は

すぐに家族三人だけになりました。

 

「ほらね」

二人の男に近づくレイラの歩き方は、

いっそう軽やかになりました。

そして、

「あなたも、やはり

フェリックスなしではダメでしょう?」

と尋ねました。

 

ニッコリ笑って

両腕を広げている母親を見つけた

フェリックスは、ようやく、

よろめきながら駆け寄り、

その胸に抱き付きました。

 

鑑賞するように母子を

見つめながら、マティアスは、

このくらいで、

軽く握っていた書類を

テーブルの端に置きました。

子供を庭へ連れて来たのは、

純粋に保母の意思だったという話は

あえて伝えないことにしました。

喜ぶレイラが眩しいほど

美しかったからでした。

 

レイラは、

話したいことがあると告げると

子供をギュッと抱き締めて

テーブルの向かい側に座りました。

彼を湛えた緑色の目が

生き生きと輝いていました。


レイラは、一層低くなった声で

当ててみてと言いました。

すでに、全てを露わにした

表情をしているのに、

まるで、すごい謎を出しているような

態度でした。

 

「そうですね」

すでに知っている答えを言う代わりに、

マティアスは眉を顰めました。

母親の三つ編みの髪を引っ張りながら、

キャッキャッ笑っていたフェリックスも

一緒に真剣になりました。

 

「言ってみろ、レイラ」

マティアスは、

体をテーブルの近くに少し傾けることで

妻の話を喜んで聞く意思を

明らかにしました。

恥ずかしそうに笑うレイラの頬は、

いつの間にか彼の色に

鮮やかに染まっていました。

レイラ。私のレイラ。

その名前を口ずさむ

マティアスの口の端が、

柔らかく曲がりました。

首都を出発した列車が

カルスバル駅のプラットホームに

入りました。

 

執事ヘッセンを筆頭とした

ヘルハルト家の使用人たちは

急いで特等車の前に並びました。

彼らをチラチラ見ていた通行人の視線は

約束でもしたかのように

開いた汽車の出入り口に向かいました。

 

しばらくして期待したまさにその顔、

ヘルハルト家の若い主人が

姿を現しました。

それよりもっと大きな注目を集める

公爵夫人と彼らの息子も一緒でした。

 

「お帰りなさい、ご主人様」と

いつものようにヘッセン

礼儀正しく主人を迎えました。

その後、頭を下げる使用人たちも

そうでした。

 

相変わらず慣れていないことに

緊張したレイラは、思わず

マティアスの腕にかけている手に

力を入れました。

 

特等車前のプラットホームは

一人二人と集まった人々で

いつの間にか賑わっていました。

静かに息を整えるレイラのそばに

立っているマティアスは、

短い黙礼で歓待に答えました。

見物人の存在を

認知できないかのように

悠々とした姿でした。

カルスバルの人々がよく見てきた、

まさにその完璧な貴族のようでした。

 

その静けさに圧倒された群衆が

お互いの顔色を窺っている間に、

マティアスが大股で歩き出しました。

前を塞いでいる人波を

全く気にしない遠慮のない態度が、

妻をエスコートする優雅な身振りを、

より一層、際立たせていました。

見物人たちは思わず後ろへ下がり、

彼らが通る道を開けてくれました。

 

依然として気品があり、

傲慢なヘルハルト公爵の姿の

どこからも、

とんでもない結婚と醜聞が残した傷を

見つけることができませんでした。

公爵夫人も同様でした。

水色の夏のドレスを端正に着飾った

レイラ・フォン・ヘルハルトは、

優しくて美しかったアルビスの子、

まさにレマーさんちのレイラのように

ただ、その年頃のお嬢さんのように

見えるだけでした。

 

多少きまりが悪くなった人々の目は、

公爵夫妻の後を追う乳母、

正確には、その乳母の胸に抱かれた

小公爵に向けられました。

周りを見回す子供の青い瞳いっぱいに

明るい笑顔が浮かんでいました。

 

少なくとも、ヘルハルト公爵が

自分の血筋なのかどうか

定かでもない子供を押し付けた妖婦に

翻弄され、家門の名声を

泥沼に突き落としたという、

その一つの噂だけは、

もう完璧に排除できるようでした。

 

プラットフォームを出る前に、

フェリックス・フォン・ヘルハルトは

見物人に向かって

大きく手を振ってくれました。

無邪気なその挨拶に、

至る所から笑顔がこぼれました。

 

カルスバルに夏がやって来たと

誰かが呟きました。

「そうですね」と

喜んで同調する声が相次ぎました。

ヘルハルト家の傑作が帰ってくる季節。

北の都市の夏でした。

窓の外の風景を見るのに夢中だった

レイラが、突然、

マティアスの方へ顔を向けて

約束したプレゼントのことを

覚えているかと尋ねました。

マティアスは、首を軽く傾けることで

疑問を呈しました。

彼の目はずっと妻を映していたので

改めて視線を合わせる必要は

ありませんでした。

 

レイラは、

週末、みんなで一緒に、ピクニックに

行くことにしたではないかと

言いました。

マティアスの沈黙が長くなるほど、

彼をじっと見つめるレイラの目つきが

真剣になりました。

そんな瞬間が来ると、マティアスは

いつもより少し濃い色をしている

エメラルド色の瞳を、楽しむように

じっと見つめました。

 

レイラは、

嬉しそうに成績を自慢していた時

欲しいプレゼントがある。

三人で一緒にアルビスの森へ

ピクニックに行きたいと頼みました。

 

今回は必ず花を見せてあげる。

慎重に付け加えたその言葉が

意味していることに気づくのは、

それほど難しいことでは

ありませんでした。

 

レイラは、

アルビスは、夏にもきれいな花が

たくさん咲くと言って微笑みました。

マティアスは喜んで頷きました。

 

彼は、

あの輝かしい日々が

虚像でも偽りでもなかったという

彼女の言葉が、

どれだけ自分の救いになったのか

レイラは知っているだろうかと

考えました。

 

彼の表情を細かく観察していた

レイラは、目を細めながら

知らんぷりしないでと

文句を言いました。

そして、

フェリックスを叱る時のように

厳格さを滲み出しながら、

「悪ふざけしているのでしょう?」

と、確信のこもった

はっきりした口調で尋ねました。

 

もちろん、息子と違って、父親は

ずうずうしくクスクス笑って、

レイラを虚しくさせるだけでしたが。

 

「覚えているよ、レイラ」

憎らしい態度とは裏腹の

マティアスの優しい声に、

レイラの唇がビクッと震えました。

続けて彼は、

「何でも。君に関するものは全て」と

付け加えました。

もう笑っていない瞳は、

深く静かでした。

 

時折、この上なく物静かな態度で

こんなことを言う彼に向き合うと、

まるで今のように、レイラは

途方に暮れた気分になりました。

 

レイラは、

また、冗談だということを

全部知っていると、

もう一度、先程よりも

さらに力を込めて言いました。

 

「そう?」と

いけずうずうしくそらとぼけて

聞き返す瞬間にも、

彼の目は依然として

レイラを映していました。

彼女は、負けるものかと言わんばかりに

両目を剥いてみましたが、

結局、今回も先に

視線を避けてしまいました。

 

最近になって、

このような瞬間が多くなりました。

楽だけれど居心地が悪いし、

それが、すごく変だけれど、

それほど嫌ではありませんでした。

 

全く明快に定義できない

その気持ちについて考えている間に、

彼らを乗せた車は

邸宅の正門へと続くプラタナスの道に

入りました。

車の窓の外を見るレイラの顔に

明るい笑みが浮かんでいました。

 

「あそこを見て、フェリックス。

とてもきれいでしょう?」

レイラの胸に、

おとなしく抱かれていたフェリックスは

母親の指差す方へ

丸く大きくなった目を向けました。

プラタナスツグミ。 かすみ草。

母親が教えるその名前を

子供は舌足らずの発音で

せっせと喋りました。

 

発音を直してやったレイラが笑うと、

子供も笑い、

二人の笑い声が加わるほど、

アルビスの夏は美しくなりました。

 

心地よい歌のように続く母子の声に

耳を傾けながら、マティアスは

人生が根底から揺さぶられた夏、

自転車が倒れた、まさにその道へ

視線を移しました。

空回りした車輪と木の葉を揺らした風。

そして、それら全てを圧倒した

自分の心臓の鼓動まで、

彼は鮮明に思い出すことができました。

 

一時的なものだと信じていた熱望が

全生涯を支配しました。

そして、マティアスは、

もう自分の一部になった熱望の中で

生きるこの美しい日々を

愛していました。

 

プラタナスの道を離れた車は、

威圧的に輝く正門を通って

領地に入りました。

公爵家の二人の婦人は、

邸宅の中央玄関前まで

出迎えに来ていました。

保母の胸に抱かれて車から降りた

フェリックスは、当然のように

彼女たちの胸に引き渡されました。

 

「お帰りなさい、マティアス」

老婦人は満面に笑みを浮かべた顔で

孫を迎えました。

「それからレイラ」

レイラを見つめる瞬間も、

彼女の眼差しは、

相変わらず慈愛に満ちていました。

去年の夏とは全く変わった歓待でした。

気に入らない嫁に対する反感を

あえて隠そうとしなかった

エリーゼ・フォン・ヘルハルトも、

今日だけは、かなり穏やかな態度を

見せていました。

 

ロビーのホールに入る前、

レイラは思わず階段の下の向こうの

先を見つめました。

恐怖と好奇心の入り混じった目で

若い公爵をチラチラ見ていた、

彼よりはるかに幼い孤児の少女が

立っていたまさにその場所を。

 

その子が公爵夫人になる日が来るなんて

一体、誰が想像できただろうか。

もしも誰かが幼い日の自分に

そんなことを言ったら、

レイラはその人を、

頭がおかしいと思ったはずでした。

 

実はレイラは、

レイラ・フォン・ヘルハルトという

馴染みのない名前で、暗闇の中でしか

一緒にいられなかった男と

このように明るい光に満ちた時間を

生きているなんて、

今でも、よく信じられませんでした。

時には、このすべてが夢のようで、

ぼんやりする瞬間が

訪れたりもしました。

そんなレイラを再び現実に戻すのは、

いつもマティアスでした。

 

「レイラ」

道標のような声に導かれ、

レイラはゆっくり頭を上げました。

深く息を吸っているうちに、

感覚は再び鮮明になりました。

 

二人は並んで

公爵邸のホールに入りました。

煌びやかな大理石の階段と

シャンデリアの明かりは

相変わらず威圧的でしたが、

レイラはこの夏の計画を

思い返しながら、落ち着いて一歩、

また一歩、進んで行きました。

 

三人で一緒にピクニックに行って、

野バラが生い茂った小道を

散歩する。

その先にある白樺の森や

スミレが満開の野原も

絵のように美しい。

そうだ。夕暮れ時の

シュルター川の上を飛ぶ水鳥の群れを

一緒に眺めても良さそう。

 

しかし、

その風景が最も美しく見えるのは、

川辺にある一抱えの木の上でした。

それが

マティアス・フォン・ヘルハルトに

可能なことだろうか?

滑稽な考えだと分かっていながらも、

レイラはかなり深刻に悩みました。

 

「マティ」

レイラは小さな声で名前を囁くと

彼が視線を落としました。

レイラは、

先を行く二人の女主人の耳に届くのを

心配するように、

精一杯声を低くして

木に登れるかと尋ねました。

ずっと悠長にしていた

マティアスの眉間に、

細かいしわができました。

 

レイラは笑顔一つない顔で、

分からなければ教えてあげられるので

一緒に登ってみないかと、

随分、馬鹿げたことを言いました。

今、一体、何を言われているのか

さっぱり分からず、マティアスは

しばらく呆然としていました。

その瞬間も、注意深く彼を見つめる

レイラの眼差しは一様に真剣でした。

 

レイラは、

もちろん強要するわけではない。

あなたの意思を尊重すると、

遅ればせながら、

気まずそうに付け加えました。

話せば話すほど、ますます深い泥沼には

まり込む気がしましたが、

後には戻れませんでした。

 

その間に二人は

中央階段と応接室を結ぶ

廊下の中央に辿り着いていました。

 

マティアスは丁重に頭を下げて

「仰せ通りに従います」と

思いがけない返事をしました。

その底意を読んだレイラの顔に

戸惑いの色が浮かびました。

 

「やめてください!」

声を出さずに叫びましたが、

マティアスは、

全くその気がなさそうでした。

 

「女王陛下」

辛うじて、レイラの耳元にだけ

聞こえるほど

小さく囁いた言葉でしたが、

だからといって、

恥ずかしくないわけでは

ありませんでした。

しかし、

眉を顰めたレイラに向き合っても

マティアスは平気で

ニコニコしていました。

 

とにかく変だ。

もう一度、その見解を固めたレイラも

結局、笑ってしまいました。

先を行く二人の婦人が振り向いたのは

その時でした。

 

彼女たちの視線が

自分だけに集中する理由を

レイラはすぐに気づきました。

たちまち表情を変えた

マティアス・フォン・ヘルハルト公爵は

妻がなぜ笑っているのか

わけがわからないと言うように

まっすぐな姿勢で

彼女を見下ろしていました。

 

「あなたのお母様は、今日、

とてもご機嫌がいいようだ」と

懐に抱いている孫に言うことで

訓戒の代わりをした

エリゼ・フォン・ヘルハルトは

短く舌打ちしながら振り向きました。

一人で笑い転げる愚か者になって

悔しかったけれど、いちいち

釈明することもできませんでした。

 

睨みつけるレイラと目が合うと、

マティアスは、

再び平然とした笑みを浮かべて

見せました。

叫んで皆に知らせたい衝動を抑え、

レイラは憎らしい夫の腕を握った手に

ギュッと力を入れました。

とても長い夏になりそうでした。

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木登りなど、

レイラがお転婆になるようなことを

教えたビルおじさんは、モナ夫人に

小言を言われたことから

責任を感じ、少しでもレイラが

礼儀作法を身に着けられるよう

あえてギリス女学校を選んで

通わせたのではないかと思います。

 

その時に

貴族の令嬢のような礼儀作法を

身に着けておけば、

話をすべきではないタイミングで

突拍子もないことを言い出し

結果的に、

エリーゼから叱責されるようなことは

なかったと思います。

でも、そんなレイラが

マティアスは可愛くて、つい、

からかいたくなるのでしょう。

マティアスの

自分への愛の深さを知ったら

レイラは、それを

重荷に感じるような気がしますが

そのようなことに疎いレイラで

幸いだったと思います。

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