自分時間を楽しく過ごす 再婚承認を要求しますの先読みネタバレ付き

子供の頃からマンガが大好き。マンガを読むことで自分時間を楽しく過ごしています。再婚承認を要求します、ハーレムの男たちを初めとして、マンガのネタバレを書いています。

バスティアン 63話 ネタバレ ノベル あらすじ マンガ 50話 離婚した後の人生

63話 オデットは野良犬にマルグレーテと名付けました。

マルグレーテは、

オデットの影のようでした。

ただオデットだけを見つめて、

オデットの後だけに付いて行きました。

 

オデットが他のことに

夢中になっていた時もそうでした。

ふと視線が感じられて、頭を下げると

そこには間違いなく

マルグレーテがいました。

まるで今のように。

 

足元に座ったマルグレーテが

澄んだ目を輝かせながら

オデットを見つめていました。

絶対的な信頼と愛を込めて。

彼女が、

世界の全てでもあるかのように。

 

オデットは、

思わず笑みを浮かべながら

針を下ろしました。

興奮したマルグレーテは、

まだ成長し切っていない短い尻尾を

せっせと振りながら、

ピョンピョン跳ねました。

抱っこして欲しいという要求でした。

 

「待って、マルグレーテ」と

子犬をたしなめたオデットは、

まず完成したリボンの

仕上げをしました。

今やマルグレーテは、哀れにも

クンクン泣きながら、

彼女の足を引っ掻き始めました。

 

オデットは、

「ごめんね。もうできあがったわよ」

と言って、縫い物を片付けたオデットは

ふてくされている子犬を

膝の上に抱き上げました。

すぐに機嫌が良くなったマルグレーテは

全身で、天真爛漫な愛情を注ぎました。

小さな体のどこから、

こんな元気が出て来るのか

驚くほどでした。

 

その騒々しい可愛い仕草を

見守っていたオデットが

爆発させた笑い声が、

午後の日差しの中に響き渡りました。

 

思いっきり顔を舐めたマルグレーテが

静かになると、オデットは、

テーブルの上に置いておいた

リボンを手に取りました。

本来は、

あちこちから飛び出している伸びた髪を

束ねるためものでしたが、

どうもそれは難しそうでした。

どうにも手の施しようがないほど

もつれた毛を、

切り取ったためでした。

 

しばらく悩んだオデットは、

代わりに、そのリボンを

首に巻くことにしました。

小花柄が刺繍されたピンクのリボンは

雪のように真っ白な毛を持った子犬と

かなりよく似合っていました。

 

今、この邸宅にも自分の家族ができた。

オデットは、初めて実感した

その事実を繰り返し思い起こしながら、

リボンを付けた

マルグレーテを見つめました。

 

このような状況で、家族を増やすのは

あまり賢明ではありませんでしたが、

それでも、この小さな子犬一匹の

世話ができない状態では

ありませんでした。

選択したのだから、

これから努力する番でした。

 

リボンの形をきれいに整えたオデットは

甘えるティラに、

時々そうしてあげていたように、

はあはあ息を切らしている

マルグレーテの鼻にチュッと、

優しくキスをしました。 

そういえば、明るい性格が

あの子と似ているような気がしました。

 

オデットは、

欠伸をするマルグレーテを抱いて

窓際に近づきました。

フリル付きのクッションと

レースで飾られた柳の籠が、

暖かな日差しの下に

置かれていました。

オデットが直接飾った

簡易ベッドでした。

 

うとうとし始めたマルグレーテを

そこに降ろしたオデットは、

机の前に行って

午後の仕事を始めました。

クラウヴィッツ夫人宛に届いた

手紙と招待状に返事を書いた後、

インテリアコーディネーターが

送って来た、

来客用の家具のカタログの検討を

終えました。

最終的な選択には、

この邸宅の本当の女主人となる

サンドリンの好みを反映しました。

美術品を始めとする各種装飾品も

同様の基準で選びました。

 

メイド長が入って来たのは、

最後の手紙の密封を終えた頃でした。

発送する郵便物を持って

振り返ったドーラは、

バスティアンが

会社のパーティーに参加した後に

帰宅する予定であることを

先程、随行人が

電話で知らせて来たようだと

慌てて、伝言を一つ付け加えました。

 

オデットは穏やかに微笑みながら

それを教えてくれたドーラに

お礼を言うと、

夕食は簡単にして欲しいと、

頼みました。

硬直していたメイド長の唇も、

そっと弧を描きました。

 

そう伝えておきますと、

丁重に挨拶をしたドーラは、

何も知らずに眠っている

子犬をチラッと見た後、

書斎を去って行きました。

 

再び一人になったオデットは、

椅子の背に深くもたれかかって座り

向かい側の窓の向こうの

海を眺めました。

濃い水色の穏やかな海の上で

水面が眩しく煌めいていました。

 

いつの間にか秋。

この結婚式を挙げてから

もう一つの季節が過ぎました。

このまま雪が降り、花が咲いたら、

また夏。

このペースで、また一年が過ぎれば

この結婚は終わる。

そろそろ契約が終わった後の

人生に向けた準備を始める時でした。

 

覚悟を決めたオデットは

急いで紙を一枚、机の上に広げて

ペンを握りました。

ティラ。マルグレーテ。

まずは、責任を負うべき家族の名前を

力を込めて書きました。

 

オデットは静かな小都市で

新しい人生を始めたかったけれど、

ティラの気が向かなければ

譲歩するつもりでもありました。

 

誰も自分たちを知らない所で

新しい人生を始められるように、

新大陸に移住するのも

悪くないと思いました。

 

家。

長年悩まされて来たその問題は、

むしろ、

最も簡単に解決されました。

バスティアンが約束した報酬で、

小さな家一軒は、

十分に用意できるだろうから。

 

生活費。

ペンを取り直したオデットは、

次の課題を、力を込めて書きました。

 

家庭教師?

一時、真剣に考えていた職業も

そのそばに小さく書き入れました。

まとまったお金を預金すれば

利子収入があるだろうけれど、

それだけに依存するのは

難しいと思いました。

 

以前の実力を取り戻せたら、

ピアノを教えることが

できるかもしれない。

もちろん、そのためには

今よりもっと真剣な心構えで

努力しなければならないけれど。

 

オデットは見込み予算と、

それに基づく計画を、

いくつかのケースに分けて

じっくりと整理していきました。

家族と一緒に

平安な人生を送っていけると

確信できると、

心が一層楽になりました。

 

これくらいなら、

ピアノ1台分の費用は

用意できるのではないか。

 

ペンを置こうとした

オデットの視線が、

突然、結婚指輪に向けられました。

 

他の宝石は、

この家門の所有だけれど、

少なくともこれ1つは、

自分の所有と言えそうでした。

まさかサンドリンは、

前妻と分かち合った結婚指輪まで

望まないだろうから。

 

煌びやかに輝く

プラチナとダイヤモンドを

注意深く見ていたオデットは、

計画書の片隅に

短いメモを一行追加しました。

 

新しい人生が始まる家に、

今、ピアノが一台増えました。

あとは練習、

勤勉に練習するだけでした。

オデットの書斎は

がらんとしていました。

バスティアンは、

ゆっくりとした足取りで

部屋を横切りました。

 

カーテンを開け放した窓から

注ぎ込む午後の日差しが

波のように揺らめいていました。

鮮やかに澄み切った秋の光でした。

 

バスティアンは窓枠にもたれかかって

妻を待ちました。

しかし、時間が経っても、

オデットは戻らず、

静寂だけが、さらに深まりました。

そういえば、

大事にしている犬を入れて歩く籠も

見当たりませんでした。

 

オデットは、この場所を離れたと

結論を下したバスティアンは、

姿勢を正しました。

パーティーの主役の座を断って

帰って来た代償がこれだなんて。

失笑混じりのため息が漏れました。

 

ベルクの鉄道王の座を簒奪した

記念すべき日でした。

南部と北部を一つに結ぶ

内陸鉄道の敷設権は、最終的に

バスティアンのものになりました。

すでに予見されていた結果でしたが

父親は、

簡単に敗北を受け入れることが

できませんでした。

発表会場で大声を出す醜態まで

晒したのを見ると、

命のように大切にしている

クラウヴィッツの品位さえ

忘れてしまうほど

衝撃が大きかったようでした。

残念なことでした。

 

それでも幸いなのは、

何とか損失を挽回しようとする

ジェフ・クラウヴィッツの執念が

まだ折れていないことでした。

丹念に撒いておいた餌を

追いかける準備ができたようで、

そろそろ次の章の幕を上げる番でした。

 

海運株を現金化してくれれば

一番、有難いけれど、

鉄鋼や造船も悪くはありませんでした。

 

どうか一日も早く、

新しい事業の投資金を

用意してください。

 

呪いに近い悪口を浴びせる父親に

伝えた言葉は、

真心から出たものでした。

 

今頃、会社では、

盛大な祝賀パーティー

開かれているはずでした。

本来は、

その席に出席する予定でしたが、

発表会場を出ると

考えが変わりました。

 

快晴の秋の空を見上げていた

役員の誰かが、

狩りをするのに良い季節だと

言い出すと、

ふと、オデットのことが

思い浮かびました。

正確には彼女が持ち歩いている

情けない武器のことが。

 

あの古い小刀一本を頼りに

夜道を歩き回っていたに違いない

オデットの過去を描いてみると、

呆れた笑いが出ました。

結婚前に、あの女が住んでいた

町の様子を考えると、

なおさら呆れました。

それでも、何とか

自分の身だけは守り抜いたのは、

まさに天運でした。

 

そこまで考えが及んだ時、

バスティアンは、すでに丁重に

欠席の意思を伝えていました。

どうやら休息が必要だという言葉で

理解を求めると、

誰も異議を唱えませんでした。

息子の命を奪うような勢いで

暴れた父親からの贈り物でした。

 

庭園の散歩道、

あるいはサンルームのピアノ。

この時間に、

オデットがいそうな場所を

思い出したバスティアンは、

止めていた足をぐっと踏み出しました。

 

机の前を通りかかった瞬間、

何気なく目を向けた所に、

片付けていない紙とペンが

置かれているのに気づきました。

オデットらしくないという考えが

バスティアンの足を

そこに導きました。

 

新しいスタート。

あれこれ落書きを書き留めた

紙の上段には、

そのように大袈裟なタイトルが

大きく書かれていました。

 

バスティアンは机の端に腰掛けて

それを広げました。

なかなか可愛い面がある女だという

考えは、どうも

訂正しなければならないようでした。

その紙を、

ぎっしり埋め尽くしている計画は、

極めて冷静で現実的でした。

 

新大陸、あるいは帝国の辺境地。

オデットは、離婚後の人生の方向を

大きく二つに分類していました。

どこにもバスティアンの名前は

ありませんでした。

あえて微かな痕跡を探すなら、

支払い予定の報酬くらいでした。

 

その横の数字の方へ目を向けた

バスティアンは、

思わず空笑いをしました。

 

慰謝料。

力強く書かれた端正な文字から

滲み出ている真剣な欲が、

並んで書かれている数字を

さらにみすぼらしく見せました。

取引の代償として

受け取ることになるお金を

計算してみたようでしたが、

確信が持てないのか、下向きの矢印が

一つ添えられていました。

これくらいが、慰謝料の上限だと

考えているようでした。

 

「思ったより少ないですよ」

バスティアンは、

不機嫌な笑みを浮かべながら

その紙を元の場所に戻しました。

 

オデットは、

この結婚に何の未練もない。

バスティアンは、

それを両目で直接確認すると、

少し虚しい気分になりました。

 

あなたは自分の雇い人に過ぎないと

釘を刺したのは彼でしたが、

その命令に忠実に従っているオデットが

このように不埒に思えるのは

彼女の夢が、あまりにも

取るに足らないからのようでした。

 

家庭教師より劣る

クラウヴィッツ夫人の席。

あの女の立派な自尊心には

到底理解しにくいところが

たくさんありました。

そんな中でも、

私生児の妹と拾って来た犬を

必ず面倒を見るという意志も

そうでした。

ある意味、母方の祖父と、非常に

通じ合うような女でもありました。

結婚指輪まで売り払うという

非情な決意の前では 、祖父も

一歩譲らなければならないかも

しれませんが。

 

サンルームのピアノの前。

オデットの居場所を

確信するようになったバスティアンは

遅滞なく小さな書斎を去りました。

長い廊下を通って角を曲がると、

ピアノの音が

微かに聞こえて来ました。

その野望の旋律に合わせて、

バスティアンは歩幅を広げた歩みを

つかつかと踏み出し始めました。

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オデットはバスティアンに対して、

少しは好意を

抱いているかもしれませんが

雇われた妻だという自覚を

しっかり持っていると思います。

だから、引き続き

サンドリンの好みに合わせた

インテリアを用意しているし、

二年間の雇用期間が終わった後に

オデットの人生に

バスティアンがいるわけがないのです。

でも、バスティアンはそうではなく

オデットの過去のことまで心配するほど

彼女のことを気にかけている。

今のところ、バスティアンの気持ちが

一方通行ですが、オデットが、

どのようなことがきっかけで

バスティアンへ気持ちが傾くのかが

楽しみです。

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