自分時間を楽しく過ごす 再婚承認を要求しますの先読みネタバレ付き

子供の頃からマンガが大好き。マンガを読むことで自分時間を楽しく過ごしています。再婚承認を要求します、ハーレムの男たちを初めとして、マンガのネタバレを書いています。

泣いてみろ、乞うてもいい 156話 外伝4話 ネタバレ 原作 あらすじ 特別な瞬間

156話 外伝4話 マティアスはレイラに、もう脱げと言いましたが・・・

 

驚いて、振り向いたレイラは

何の動揺も見せていない

青い目を見ました。

一体、あの男に、

感情というものがあるのだろうかと

思ったあの頃のように

無情な顔でした。

 

「何ですって?」

真顔で尋ねるレイラの声が

森の平穏を乱しました。

フェリックスの耳を塞いだ両手も

細かく震えていました。

 

レイラは、

どうしてそんなことを言うのか。

こんなところで、

フェリックスもいるのにと

レイラが言い返す言葉を悩んでいる間に

彼の手が突然近づいて来ました。

そして、顎の下で結んでいる

帽子のリボンの結び目を解きました。

 

反射的にギュッと閉じた目を開けてから

レイラはその事実に気づきました。

マティアスは、

これ見よがしにゆったりとした動作で

脱がした帽子をレイラに渡しました。

そして再び平然と、

先程のカップを手に取りました。

 

遅ればせながら、

この状況を理解したレイラは、

少しぼんやりとした気分で

彼を見つめました。

まるで、自分が

悪い人になったような状況が

悔しかったけれど、

彼を問い詰めてみるのも滑稽でした。

 

森の風景に向き合いながら

ゆっくりお茶を飲むマティアスの姿は

そのため、

さらに現実離れしているように

見えました。

 

鬱蒼とした木の枝の間の空を

見上げながら、

帽子以上は困ると、

彼が口にした言葉は、一見すると、

冷たいようにさえ感じられました。

 

「君が何であれ、私は紳士だ」

その言葉が想起させた記憶に、

レイラの眉間に、

ぐっとシワが寄りました。

 

レイラは、

こんな悪戯をするのが面白いのかと

抗議しました。

マティアスは目を細めて、

再びレイラを見ると、

面白いし、きれいだからと

返事をしました。

そのように、

恥ずかしい言葉を口にする瞬間も、

彼は、笑み一つ

浮かべない顔をしていました。

 

マティアスは、

君が赤くなると、

もっと、きれいなると言いました。

レイラは、

真昼にこんなことを言うなんて

とても紳士的だと皮肉を言いました。

マティアスは「紳士だ」と

かましい返事をすると

クッションの山に寄りかかって座り

お淑やかな女王様にお似合いの紳士だと

言いました。

木の葉の間を通り抜けた光の影が、

彼の顔の上で、のんびり揺れました。

 

きちんと正していた姿勢が

崩れたせいか、

刃が立っていた雰囲気も

一段と和らぎました。

ただ自分だけが知っている、

あの男の姿に向き合う瞬間が、

レイラは

あまり嫌ではありませんでした。

このように変な気持ちと

少しの悔しさも、またそうでした。

 

レイラは、

熱くなった頬を擦りながら、

自分は間違っていない。

科学者は、

経験から判断するものだそうだと

堂々と反論しました。

マティアスは

「経験?」と聞き返しました。

レイラは、

今までの経験からすると、

あなたが言ったその言葉はいつも

自分が誤解したような意味だった。

自分は、

その積み重ねられた経験をもとに

科学者らしく判断しただけだと

とんでもないことを呟きました。

 

妻を見るマティアスの目つきが

興味深そうに細くなりました。

彼は、

「それで、科学者らしい結論は?」

と尋ねました。

レイラは

「悪いのはあなただということ」

と答えました。

眼鏡の向こうの大きな目は、

かなり明晰に輝いていました。

そして「カラス公爵!」と

依然として、

彼の色に美しく染まったまま

力強く叫びました。

 

すぐにマティアスが爆発させた

笑い声を乗せた風が小川を越えて

深い森の中に広がって行きました。

 

笑えと言ったわけでは

ありませんでしたが、

レイラは、これ以上

問題にしないことにしました。

マティアス・フォン・ヘルハルトは、

ただ彼女の前だけで、

このように笑う男だったし、

二人だけの秘密のようなその笑いも、

やはり、

それほど嫌ではありませんでした。

それほど特別なことや

素晴らしいことがある

ピクニックではありませんでした。

つまらない話を交わして、

美味しい食べ物を一緒に食べました。

のんびりと

散歩を楽しんだりもしました。


誰の目も気にせず並んで、

真昼の時間を一緒に過ごす。

そのように些細な瞬間を

一つずつ作りながら、レイラは

マティアスが与えた傷の裏に

隠されていた自分の願いを

改めて気づくようになりました。

 

そうしてはいけないと知りながら期待し

その望みが恥ずかしくて

むしろ憎んだ数多くの日々。

けれども、一番憎んでいたのは、

もしかしたら自分の心だったのかも

しれませんでした。

 

ビルおじさんの期待を

裏切ることだということを

あまりにもよく知っていたけれど

捨てることができなかった、

憎むに値する男を愛してしまって

苦しんでいた、あの愚かな心。

 

レイラは遠くの空を見ていた目を

木々の影が長くなった小道に

向けました。

いつの間にか

帰る時間が近づいていました。

 

時間を確認したレイラは

そろそろ帰る時間ですねと

残念そうに囁きました。

母の胸に抱かれたフェリックスは

ぐっすり眠っていました。

 

一日中楽しく遊び回ったので

疲れるのも無理はありませんでした。

子供の服のあちこちに、

森で摘んだ野いちごを

食べる時に付いた赤いシミが、

楽しかったピクニックの記憶のように

残っていました。

 

マティアスは、

遠くの空を眺めていた視線をそらし

レイラに向き合いました。

何か深く考えているかのように、

物思いに耽っていたレイラの眼差しは

すぐに、いつものように

穏やかになりました。

 

レイラは、

一日が短すぎる気がする。

残念だと嘆きました。

また来ればいいと、

まくっておいた袖を下ろして

カフスを整えたマティアスは

普通に答えました。

 

「本当ですか?」

期待のこもった顔で、

レイラは真剣に問い返しました。

彼女が、そのように言うのは

約束を確認してもらいたくて

ある種の

駄々をこねているということを

もうマティアスは知っていました。

 

「本当に」と彼が約束すれば、

今みたいに、レイラは、

日光のように、

明るい笑みを浮かべました。

そして、このような瞬間、

マティアスは、

自分だけで満たされている、その瞳より

美しいものを知りませんでした。

 

マティアスがタイの形を整えて

ジャケットを羽織った頃、

使用人たちが戻って来ました。

ヘルハルト公爵夫妻になる時でした。

 

ここへ来た時のように

二人は並んで森の道を歩き、

眠っているフェリックスを抱いた乳母と

使用人たちが後に続きました。

 

そうして終わりを迎えるようだった

公爵一家の夏のピクニックに、

もう一つの常軌を逸したことが

起こったのは、

一行が待機中の車が停まっている道端に

到着した時でした。

 

後部座席のドアを開けて

待機する運転手に向かって、公爵は

先に帰るようにと、

思いがけない命令を下しました。

「えっ、それは・・・?」と

運転手が困惑すると、マティアスは

自分たちは歩いて行くと答えて

子供を抱いている乳母に

目で合図を送りました。

頭を下げることで、

その意思を受け入れた乳母は、

すぐにフェリックスと一緒に

車に乗り込みました。

 

レイラは当惑して彼を見ましたが、

何も変わることはありませんでした。

その間に、

フェリックスと乳母を乗せた車が

去りました。

見守っている使用人たちの目がなければ

慌てて、マティアスを

問い詰めていたかもしれませんでした。

言いたいことをぐっとこらえながら、

レイラは、

まず、マティアスが差し出した手を

握りました。

 

彼は、金色に輝いている

シュルター川のほとりへ

自然にレイラを導きました。

 

「マーティ」

角を曲がると、レイラは

力を込めて彼を呼びました。

「残念なんでしょう?」

何気ないマティアスの返事に

レイラは、多少虚しくなりました。

 

「でも、これは・・・」と

呟くレイラの視線は、

穏やかな川の流れと対岸の森、

そして眩しい空を通り過ぎた後、

再びマティアスの顔の上で

止まりました。

 

フェリックスは疲れているだろうから

休まなければならないと、

彼が先に切り出した言葉に、

レイラはクスクス笑いました。

 

レイラは、

もしかして、フェリックスが

嫌いとかいうのではないですよねと

尋ねました。

マティアスは、

君が産んだ自分の息子を

なぜ、嫌いになるのかと答えると

眉を顰めて首を傾げました。

 

彼は当然、自分の息子を

とても愛していました。

ただ、その愛の質は

レイラへの愛とは異なり、

それを、あえて否定するつもりは

ありませんでした。

レイラのように愛せる存在は

レイラだけ。

彼の全生涯に、この女一人だから。

 

しばらく彼をじっと見つめていた

レイラは、納得するように頷きながら

微笑みました。

 

おとなしくなったレイラの手を握って

マティアスは、シュルター川沿いを

ゆっくり歩きました。

レイラは、しばしば足を止めて、

川沿いの鳥たちを指差しました。

名前と特性を知らせる声は、

さえずる鳥たちの歌のように

澄んだ響きを持っていました。

 

「ねえ、あの鳥、見えますか?

あそこ!早く!」

 

華やかな色の羽を持つ鳥が

舞い上がる空に向かって、

レイラは急いで手を伸ばしました。

しかし、

マティアスに見せたかった鳥は、

すぐに川の向こうに姿を消しました。

 

レイラは、

行ってしまったとぼやくと

膨れっ面で、

鳥が飛んで行った川岸を眺めました。

 

レイラは、

アルビスに、珍しい花と鳥が

多いということを知っていますか?

ローレンツ教授が、ここを見たら

天国だと言うだろうと告げると

空を指していた手で、

再びマティアスの手を握りました。

マティアスも、

自分の手の半分にもならないような

手を力いっぱい握りしめました。

 

レイラは、

先程の鳥も、本当に珍しい鳥だったと

嘆くと、マティアスは

「捕ってやろうか?」と

抑揚のない低い声で尋ねました。

鳥が飛んだ方向を凝視する視線は

とても鋭さがありました。

 

「剥製にできるように」と

付け加えた言葉は、

さらに淡々としていました。

丸く大きくなった目で

彼を見ていたレイラは、

背中を丸めて首を横に振り、

「いいえ!」と拒否しました。

 

マティアスは、

普通、鳥類学者は、

そのようにしないかと指摘しました。

レイラは

「そうではあるけれど・・・」と

呟きました。

 

マティアスが言うように、

珍しい鳥を捕まえて剥製にすることは

研究の一手段でもありました。

レイラが最も尊敬するローレンツ教授も

かなり多くの鳥類の剥製を

所蔵していました。

 

レイラは

それでも、そんな冗談は遠慮すると

返事をしました。


冗談のようには聞こえませんでしたが

レイラはそう思うことにしました。

研究のために必要なことだとしても、

マティアスが狩った

アルビスの鳥の剥製のようなものは

持ちたくありませんでした。

 

幸い、マティアスは、

軽く微笑むことで、

彼女の意思を尊重してくれました。

その間に二人は、いつの間にか

レイラが愛する川辺の木の前に

到着していました。

 

懐かしがっていた恋人と

再会でもしたかのような目で

木を眺めていたレイラは

本当に一度登ってみないか。

あそこから見るシュルター川が

この世で一番美しいシュルター川だと

突然、提案しました。

 

マティアスは、

断言できるのかと尋ねると、

一層、穏やかなになった目で

レイラが登って腰掛けていたりした

木の枝を、チラッと見ました。

 

レイラは快く頷きながら

「いくらでも」と答えると

木の前に歩み寄りました。

周囲を見回す慎重な表情とは裏腹に

木に登る身のこなしは、

かなり大胆で敏捷でした。

 

川辺に長く伸びた太い枝の上に

腰掛けたレイラは、

にっこりと笑いながら

彼を見下ろしました。

 

彼女は、本当に木登りの仕方を

教えるつもりなのか、

自分のようにすればいいと

かなり真剣に言いました。

手を握ってあげると言って

身を屈めて差し出した

その途方もなく小さな手に、結局、

マティアスは笑ってしまいました。

 

頷いたマティアスは、躊躇うことなく、

一歩踏み出しました。

そして、レイラが助言をしたり、

手助けする暇もなく

一気に木の上に登りました。

 

木の幹にもたれかかって座った彼は、

ぼんやりしているレイラを

胸の奥深くまで引き寄せました。

マティアスの胸に触れた背中から、

彼女のものと同じ速度で波打つ

心臓の鼓動が感じられました。

 

レイラは首をくるっと回して

マティアスに向き合うと、

木に登るのは初めてではないと

正直に打ち明けるよう促しました。

答える気がないのか、

今回もマティアスは笑うだけでした。

 

その爽やかな笑い声が

レイラの恥ずかしさを消しました。

嫌いではありませんでした。

いえ、良いと思いました。

このように笑うマティアスも、

自分を包み込んでいる

大きくて堅い体の温もりも、

この男と一緒にいる、

今、この瞬間の全てが

良いと思いました。

これ以上、隠したり否定したくない

最も率直な心でした。

木の上に座って交わした話も、

やはり、それほど特別なものでは

ありませんでした。

だからこそ、さらに特別なその瞬間は

夕日が沈む頃まで続きました。

 

その空を映した川の水がバラ色に染まり

群れを成した鳥たちが

ゆったりと水面上を旋回しました。

 

「どうですか?」

自分の腰を包んでいる

マティアスの腕をいじりながら、

レイラは期待を込めて

慎重に尋ねました。

 

「美しいでしょう?」

この風景に対する誇りが

如実に滲み出ている緑の目を

マティアスは、じっと見つめました。

いくらでも彼は、その見解に

同意することができました。

 

「美しいです。この世で一番」

優しく囁いたその言葉は、

レイラの唇の間に染み込みました。

突然のキスに驚いたのか、

レイラはビクッとしましたが

彼女は彼を拒否しませんでした。

息が乱れる頃には、

そっと手を近づけて、

マティアスの頬を包みました。

そっと顔の輪郭を

なぞっていたその手は、すぐに

彼の髪の毛の間へ滑り込みました。

 

静かな水の流れのように続いていた

長いキスが終わった時、

レイラは彼の色、

この世で最も美しいバラ色に

染まっていました。

 

マティアスはハンカチを取り出して

妻の濡れた唇を拭いてやりました。

彼の口元に浮かぶ満足げな笑顔は、

夏の夕方の空気のように柔らかでした。

 

マティアスは、

週末に、水泳を教えてやると

言いました。

レイラが「水泳?」と聞き返すと

マティアスは

約束したからと答えると、

しばらく水面を見つめていた目を、

すぐに再びレイラに向けました。

 

レイラは「うーん」と考えた後に

それは、覚えていなくても

大丈夫なことだと、

こっそり言い逃れをしてみましたが、

マティアスは、

退く気がなさそうでした。

 

「教えます。

ちょうど、ここシュルター川で」

と言う彼の顔の上に

少年のような笑みが浮かびました。

断りの言葉を思い出させない

美しい笑顔でした。

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マティアスは、

以前のレイラとカイルのように

レイラと二人で楽しく話しながら

森の中を歩くという

マティアス自身の夢を叶えたくて

自分とレイラ以外の人たちを

先に帰らせたのではないかと

思いました。

マティアスは

レイラの望みを何でも叶えるのと同時に

自分自身の叶えられなかった望みを

一つずつ叶えているように

思いました。

 

レイラも、

過去の自分の辛かった気持ちの

本質が何だったのかを認めることで

少しずつ、心が解放されているように

思いました。

 

マティアスは、

由緒正しいヘルハルト家の

傑作と呼ばれる公爵なので、

人前で木に登ったりしたことは

なかったでしょうし、

高貴で上品な彼が、

木に登るという野蛮な行為を

できるはずがないと、レイラは

思い込んでいたのではないかと

思います。

 

マティアスがレイラのために

木に登ってくれたことで、

二人でロマンチックな時間を

過ごすことができました。

今度は三人で、美しいシェルター川の

風景を見られるといいですね。

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