自分時間を楽しく過ごす 再婚承認を要求しますの先読みネタバレ付き

子供の頃からマンガが大好き。マンガを読むことで自分時間を楽しく過ごしています。再婚承認を要求します、ハーレムの男たちを初めとして、マンガのネタバレを書いています。

バスティアン 71話 ネタバレ ノベル あらすじ マンガ 54、55話 ようやく見つけた答え

71話 オデットとバスティアンは遊園地を訪れています。

オデットは、

バスティアンと手を繋ぎながら、

ピクニックに来た子供のように

祭りの雰囲気が漂っている遊園地を

散策しました。

 

オデットは、夢を見ているかのように

ぼんやりとした目を下ろして

ティラの代わりにもらった

綿あめを見ました。

一口くらい、

味わってみたいという好奇心が

湧いて来ましたが、どうしても

その気になれませんでした。

だからといって

捨てるわけにもいかないので、

非常に困った立場でした。

 

静かにため息をついたオデットは

漠然とした気持ちが滲み出ている

目を上げて、

バスティアンを見つめました。

色とりどりの明かりに染まった彼の顔は

普段とあまり変わらないように

見えました。

適度に穏やかでありながら、

一方では無情でした。

 

なぜ、まだ出征の事実を

知らせてくれないのか。

まさか、その程度の礼儀を

わきまえる必要もなく、

終わらせていい関係だと

思っているのだろうか。

それなら、なぜ、

このような好意を示してくれるのか。

 

次から次へと疑問が湧き起こる間、

二人は、遊園地の中心部に

たどり着きました。

鉄骨で作られた

宮殿のような形をした構造物が

立っている広場は、

多くの行楽客で賑わっていました。

 

思わず、そこに目を向けたオデットは

思わず感嘆の声を漏らしました。

多彩な光が宮殿を照らしていて、

メリーゴーランドから流れてくる

音楽と楽しい子供たちの笑い声が

加わると、深まる秋の夜が

さらに美しくなりました。

 

オデットは立ち止まったまま

その風景を見守りました。

まるで童話のワンシーンの中に

入り込んだような気がしました。

 

ついに、全ての試練を乗り越えた

主人公に与えらえる贈り物。

いつまでも幸せに生きていく

バラ色の未来が繰り広げられる

結末の場所。

その儚い想像に終止符を打ったのは

風に乗って漂って来た

甘い綿あめの香りでした。

 

オデットは、ようやく

再び足を踏み入れている現実に

目を向けました。

手に持った綿あめを

じっと見下ろした後、

再び視線を上げて

バスティアンを見ました。

 

バスティアン」

そっと名前を呼ぶと、

彼が顔を向けました。

これといった表情のない顔でしたが

オデットを見る目つきは

優しいものでした。

しかし、それが特別な親密さだとは

考えられませんでした。

 

バスティアン・クラウヴィッツ

処世術に長けた男でした。

概して、礼儀正しく親切な方だけれど

適正ライン以上の感情を

表に出すことは、

滅多にありませんでした。

単に、上辺だけの感情だからこそ

可能なことなのだと、

オデットはよく分かっていました。

自分も、そのような心構えで

この結婚に臨んでいるから。

 

もちろん、

本心が現われた瞬間もありました。

裏通りの賭博場で勝ち取った賭け金が

皇帝が取り持った縁談の相手だという

事実を知った春の日。

勝利のお守りとして渡したけれど

結局、泥の中に捨てられてしまった

リボン。

二年契約の雇用を提案する契約書を

差し出していた無情な手つき。

荒々しい欲情を、

憚ることなく露わにした

深い山奥の夜。

 

ありのままのバスティアンの感情には

いつもオデットの心を傷つける

刃が立っていました。

しばらく続いた平穏な日々のせいで、

忘れていた真実が、

バスティアンの静かな顔の上に

浮かび上がりました。

 

それでも比較的順調に

契約を履行してこられたのは、

この契約を成功裡に

終えなければならないという

共通の目標のために、

お互いが努力したおかげでした。

 

一緒に過ごした時間の中で芽生えた

理解と憐れみも

全くないわけではありませんでしたが

それは、まるでこの綿あめのような

一時の幻想に過ぎませんでした。

だから・・・そんな疑問は

無意味なように思えました。

 

もつれた糸のようだった心が

整理された瞬間、

何かが肩にぶつかりました。

宮殿を見物するために集まった

見物人たちが、オデットを押し退けて

通り過ぎました。

バスティアンが支えてくれたおかげで

転ばずに済みましたが、

手から離れた綿あめは、

すでに地面に転がっていました。

 

バスティアンは、

新しいものを買ってあげるので

捨てるようにと言って、

落ちた綿あめを拾おうとする

オデットを引き止めて

笑いました。

子供でもなだめるような

優しい態度でした。

 

しかし、踏まれて汚れた綿あめを

見下ろしていたオデットは

それを断り

小さく首を振りながら微笑みました。

 

雲の欠片のようだった

妖精の糸が消えた場所には

むやみに踏みにじられて、

みすぼらしくなった砂糖の塊だけが

残っていました。

残念だけれど、

未練はありませんでした。

 

オデットは、

むしろすっきりした気持ちで

バスティアンと向き合いました。

バスティアンが、ある日、

突然、戦線に行ったとしても、

自分たちの契約に支障が生じるわけでは

ありませんでした。

約束した期間内に戻って

報酬を支払ってさえくれれば

済むことだから。

だからオデットは、

どんな決定でも謙虚に受け入れ、

与えられた義務を

果たせば良いだけでした。

 

オデットは、

「人が多過ぎるので、

あちらへ行ってみましょう」

と言うと、すでに形がなくなった

綿あめを残して背を向けました。


最善を尽くして、

この幻想的な夜を楽しむつもりでした。

それがバスティアンが施してくれた

好意に対する報いだろうから。

ちょうどジャケットの最後のボタンを

外した瞬間、

「いい加減にしなさい」と

突然の警告が聞こえて来ました。

フランツは、

疲れた体をゆっくり回して

母親と向き合いました。

テオドラ・クラウヴィッツ

暖炉の前に置かれた椅子に

ゆったりと寄りかかって

座っていました。

真夜中に、

息子の部屋に攻め込んで来た

招かれざる客らしくない態度でした。

 

フランツは、

頭のてっぺんまで

こみ上げて来た怒りを

必死で抑えながら、

ついさっきまで、エラによくしろと

忠告していたような気がすると

返事をしました。

 

ひどく疲れた一日でした。

証券取引所や銀行、

そして数多くの協力会社まで。

終日、ラッツの金融街

歩き回りながら、会社の仕事を学び

身につけなければなりませんでした。

複雑な数字と計算に苦しめられ、

吐き気がするようでしたが、

父は簡単には

引き下がりませんでした。

満足できない後継者へ

不満と暴言を浴びせながら、

フランツを責め立てました。

あの卑しい獣に

鉄道敷設権を奪われてからは、

毎日、このような地獄の日々の

連続でした。

 

テオドラは、

もちろんエラには、

よくしてやらなければならない。

こんな時こそ、あの子の心を

しっかり掴んでおかなければならない。

クライン伯爵が自分たちを侮り

別の考えを

抱かないようにするためだと言うと

キセルを下ろして

椅子から立ち上がりました。

 

ギュッと閉じた目を開けたフランツは、

苛立たしげに脱いだジャケットとタイを

ベッドの上に叩きつけました。

 

エラ、エラ、エラ。

今は婚約者の名前を聞いただけで

うんざりするほどでした。

 

母親は、

自分の翼になってくれる女だと

言いました。

フランツもそう信じていたので、

エラ・フォン・クラインとの婚約を

受け入れました。

まさか、こんなに、うんざりする程

甘えん坊だとは

夢にも思いませんでした。

 

エラは何かにつけて

フランツの愛と関心を要求しました。

そして、それが満たされなければ、

ちょろちょろと母親の元へ駆けつけ

告げ口をしました。

名門貴族の家の令嬢らしい

品位と自尊心は、

なかなか見られない女でした。

 

眼鏡と時計も無造作に脱ぎ捨てた

フランツは、ベッドの端に腰かけて

荒い息を整えました。

テオドラは、いつの間にか

目の前まで迫っていました。

 

彼女は、

ほどほどにすべき女は

別にいるようだと言うと、

息子の疲れた肩を撫でていた手に

ぐっと力を込めました。

オデットの肖像画を隠しておいた

引き出しの一番下の段を

そっと指差すと、

フランツの顔色が青ざめました。

 

彼は、

まさか・・・

また自分の部屋を漁ったのかと

非難すると、テオドラは

あなたが口を開かないから、

仕方がないのではないかと

言い返しました。

 

フランツは、

とんでもないことだと抗議しましたが

テオドラは、

そのおかげで、急にあなたが

婚約者を疎かにするようになった

理由を理解した。

よりによって、

バスティアンの妻という事実に

がっかりしたけれどと、

驚愕するフランツを前にしても

眉一つ動かすことなく

平静さを保ちました。

 

彼女は、

どの程度の仲なのかと尋ねました。

フランツが答えないでいると、

テオドラは、

あの女の跳ね飛ばした泥水が

あなたに付くほど

近くないことを願っていると

言いました。

 

それでも、フランツが黙っていると

「答えなさい。

フランツ・クラウヴィッツ!」と

叫びました。

 

しかし、テオドラの一喝にも、

フランツは、ただ唇を

固く閉ざしたままでした。

青白かった顔が、いつの間にか

赤くなっていました。

 

息子の落ち着かない目つきを見た、

テオドラは、眉間にしわを寄せながら

まさか、片思いなのか。

あの子が咥えた肉の塊を見て

自分の息子が涎を垂らすような

身の上だったなんて。

これは実に幸いな悲劇だと言うと

呆れて失笑して、

フランツのそばに座りました。

 

神様が与えてくれた祝福のような

あの手紙を、どのように利用するか

今、ようやく目処がつきました。

それ以前に、

確認しなければならなかった

小さな問題も解決したので、

残るは、バスティアンの妻が

帰って来るのを待つだけでした。

 

テオドラは、

そんなはずはなさそうだけれど

それでも、この件が終わるまでは

絶対に彼女のそばに

近寄らないようにしろと警告しました。

 

フランツは、

もしかして、オデットに

何かあったのかと尋ねました。

魂が抜けたように

ぼんやりしていたフランツの瞳が

焦点を取り戻しました。

突き刺すような視線は

切迫していました。

自分の婚約者について話していた時には

見られなかった熱意でした。

 

テオドラは、

あなたが関与することではない。

ただ、あなたは、自分のことを

一生懸命やっていればいいと

告げました。

 

フランツは、

「でも、お母さん・・・」と

言いかえしましたが、テオドラは

あの女は、自分たちの大切な

チェスの駒なので、

傷つけるようなことはしないから

心配しないようにと言うと

冷や汗で濡れた息子の手を

包み込みながら微笑みました。

 

そして、テオドラは、

当分の間、バスティアンの妻のことは

忘れるように。

最善を尽くして会社の仕事を学び、

困っている父親を助けるように。

もちろんエラにも

忠実な婚約者の役割を

果たさなければならないと

忠告しました。

 

フランツは、

一体どういうつもりなのか。

バスティアンが、どんな人間なのか

知っているはずなのに。

下手をするとオデットが

危険になるかもしれないと

訴えました。

 

しかし、テオドラは

しっかりするように、

今、あの女の心配をしている時だと

思うのかと尋ねると、

地面が沈むほどの深いため息をついて

立ち上がりました。

気弱極まりないフランツが情けなく、

一方では可哀想でした。

これは全て、

あの女の息子が垂らした

影のせいに思えました。

 

それでもテオドラは、

愛おしい息子の顔を

大切に包み込みながら、

あなたは一歩離れた所で、

あなたの人生だけを

一生懸命に生きていればいい。

この件がうまくいけば、

あの肉の塊は、

自然にあなたのものになるだろうから

焦らないようにと言いました。

 

バスティアンは、

決して馬鹿ではありませんでした。

あの子の妻を自分たちの味方として

使えるようになったとしても、

永遠に秘密を守り続けることが

できないのは明らかでした。

 

どうせオデットは、

一時的に使って捨てるカード。

もし、バレたとしても、

バスティアンが、きちんと

処理するはずでした。

運良く、

ただ離婚される程度で済むなら、

あの子を、

フランツにプレゼントできない理由は

ありませんでした。

バスティアンのものだった女である点が

気に障るけれど、別の考え方をすれば、

さらに貴重な

トロフィーでもありました。

結局、あの子のものを

フランツが奪っていくわけだから。

 

テオドラは、

あの女が欲しいなら、

それだけの資格があるということを

証明してみせるように。

分かったかと、テオドラは

力を入れて、

息子の肩を握りしめることで、

念を押しました。

 

大きな衝撃に包まれた

顔をしていましたが、

フランツは拒否できませんでした。

じっとテオドラを見つめた後

カーテンを開けておいた

窓のある方向に首を回しました。

そして、再び自分を見る

フランツの目に向き合った瞬間、

テオドラは、この子が今回のことを

台無しにするはずがないということが

分かりました。

 

フランツは色々な面で

自分に似ている子供でした。

盲目的な愛もまた同じでした。

観覧車の前に到着したのは

約束の時間の30分前でした。

腕時計を確認したバスティアンの目が

細くなりました。

 

大丈夫です。

一緒に遊園地を歩いている間、

オデットは、

ただその答えだけを繰り返しました。

乗り物。 おやつ。人形劇。お土産。

いろいろ勧めてみましたが、

返ってくる答えは同じでした。

おかげさまで、ただ目的もなく

遊園地を徘徊しているうちに

いつの間にか、

約束の時間になりました。

こんなことをするなら、一体、何が

そんなに気になっていたのか。

まったく理解しがたい女でした。

 

「乗ってみますか?」

バスティアンは、

あまり期待をすることなく

儀礼的に尋ねました。


大丈夫です。

礼儀正しく微笑みながら、

返事が聞こえてくる番でしたが、

今度は、

なぜか沈黙が長引きました。

 

不思議に思ったバスティアンは、

そばに立っているオデットの方へ

そっと視線を落としました。

彼女は、かなり真剣な眼差しで

観覧車を見つめていました。

 

しばらくして、

ようやく顔を上げたオデットは

30分以内に終わるかと

慎重に問い返しました。

両頬が瑞々しく輝いている理由は、

秋の夜の寒さのためだけでは

なさそうでした。

 

「たぶん」

乗り物の乗車時間については

全く知りませんでしたが、

バスティアンは迷わずに答えました。


あなたさえ良ければ乗りたいと

もう一度観覧車を注意深く見た

オデットが頷きました。

気前よく振る舞うかのような

淑女のプライドに、

バスティアンはクスッと笑いました。

じっと彼の表情を見ていた

オデットの顔にも

静かな笑みが広がりました。

花が咲く瞬間を見ているような

気分にさせる表情でした。

 

バスティアンは返事の代わりに

オデットの手を取って

大きな一歩を踏み出しました。

最後の一つの乗り物、

ようやく見つけた正解に向かって。

f:id:myuieri:20210206060839j:plain

f:id:myuieri:20210206071517p:plain

リボンを泥水に落としたのは

サンドリンだという誤解が

解けて欲しいと切に願っています。

 

一緒に遊園地の中を歩いているだけで

仲の良さそうなカップルに

見えると思いますが、

わざわざ手を繋いでいるのは、

バスティアンが、

そうしたかったからなのに、

きっと、オデットは、それも

偽者の妻の役割なのだと

思っているのでしょう。

普段のバスティアンの振る舞いを見れば

そう思うのも

仕方がないのでしょうけれど。

 

オデットは、

自分のやりたいことを

ひたすら我慢し続けていたから

常に遠慮することが

染み着いているのではないかと

思います。けれども、

そうすることができないくらい、

観覧車は魅力的だったのでしょう。

ようやく答えを見つけた

バスティアンの笑顔が

目に浮かびました。

 

オデットがバスティアンと離婚したら

フランツと結婚させてもいいと

思うなんて、テオドラにとって

オデットが皇帝の姪であることが

やはり魅力的なのだと思いました。

f:id:myuieri:20210206060839j:plain