自分時間を楽しく過ごす 再婚承認を要求しますの先読みネタバレ付き

子供の頃からマンガが大好き。マンガを読むことで自分時間を楽しく過ごしています。再婚承認を要求します、ハーレムの男たちを初めとして、マンガのネタバレを書いています。

バスティアン 74話 ネタバレ ノベル あらすじ マンガ 57、58話 見覚えのある便箋

74話 オデットとバスティアンの写真が新聞に掲載されました。

英雄と美女

クラウヴィツ大尉夫妻の写真には、

かなり恥ずかしい賛辞が

添えられていました。

 

テオドラは、

ひねくれた笑みを浮かべたまま、

今日の新聞を広げました。

今年の海軍祭を扱った特集記事は、

バスティアン・クラウヴィッツ

捧げられた詩に他なりませんでした。

古物商の孫を英雄として崇める

海軍省のレベルがあまりにも情けなく

胸が痛むほどでした。

 

テオドラは、

一面が見えないように、

折りたたんだ新聞を

モーニングティーが用意された

テーブルの端に投げました。

 

フランツを陸軍将校にしたがっていた

夫の意思に従っていたら

どうだっただろうか。

 

何の役にも立たない

仮定をしてみた瞬間にも、

テオドラは、

決してフランツが、軍人として

成功できる子ではないということを

知っていました。

父親に強要されるがままに

軍人になっていたとしても

結局、耐えられなかったはずでした。

 

フランツは最善の選択をした。

無意味な煩悶を努めて消した

テオドラは呼び鈴を鳴らして、

メイドを呼びました。

しばらくして、

ナンシーが入って来ました。

 

彼女は、

モリーから連絡があったと

告げると、ベッドのそばに近づき、

袖の中に隠して来た手紙を

差し出しました。

テオドラはカップを置くと

それを受け取りました。

オデット・クラウヴィッツ

今週のスケジュールが、

便箋いっぱいに、細かく整理されて

書かれていました。

一番適しているのは、

どうやら今日の午後のようでした。

 

自分はあなたの姪が

本当に気に入っている。

今回のことがうまくいったら

あの子とあなたの功績を

絶対に忘れないと、

満面の笑みを浮かべて、

忠実なメイドを称えました。

感激に満ちた表情を浮かべた

ナンシーの上に、

晴れた朝の日差しが降り注ぎました。

 

ディセン公爵の手紙を手に入れた日以来

テオドラは

カーテンを閉めていませんでした。

やる気を引き出す要因になるので、

向かい合って立っている双子の邸宅も

それほど悪くはなさそうでした。

 

テオドラは、

正午頃、ラッツへ行くので、

外出の準備をするようにと

命令すると、ベッドから立ち上がり、

だるそうに伸びをしながら

バルコニーに出ました。

 

バスティアンの妻は招待を断りました。

こちらが何を握っているのか

知らないのは確かな様子でした。

モリーと言ったっけ。

その愛らしい者が、

二重スパイをしていないということは

信じても良さそうでした。

ならば、そろそろ動くべき時でした。

 

テオドラは、

太陽の光で温まった大理石の欄干に

背中をもたせたまま

タバコを咥えました。

バスティアンの妻は、今日の午後、

親戚のトリエ伯爵夫人を訪ねるため

ラッツに出かける予定だと

書いてありました。

 

テオドラは、

タバコの煙を深く吸い込みながら

海の向こうの邸宅を眺めました。

 

あなたが来ないなら、

私が行ってあげる。

 

面倒なのは苦手だけれど、

オデット・クラウヴィッツ

それだけの、もてなしを受ける資格が

ありました。

当分の間は、

とても尊い身になる予定だから。

デメル提督の執務室は

海軍本部の三階に位置していました。


最後の階段を上ったバスティアンは、

制服の内ポケットに入れておいた封筒を

もう一度確認しました。

署名を終えた服務申請書でした。

志願先はトロサ諸島。

再び、あの前線でした。

 

時間が必要。

十分に考えた末に下した結論でした。

 

父の没落を早めたからといって、

一気に全てを、元の場所に

戻すことができるわけでは

ありませんでした。

残り火まで消すための後片付けには、

少なからぬ時間がかかるはずでした。

その時間を

どのように過ごすことが

最大の利益を生む商売になるかを熟考し

今は見当がつきました。

この服務志願書が

バスティアンが見つけた最善策でした。

 

母方の祖父の会社で

バスティアンが引き受けた役割は、

父親を誘い込む精巧な罠を

仕掛けることまででした。

それ以降のことは、

実務者のトーマス・ミラーが

処理するのが効率的でした。

バスティアンの不在による

マイナスの損失はないと言っても

差し支えありませんでした。

 

封筒を、再び内ポケットに

突っ込んだバスティアンは、

しばらく止まっていた歩みを

再開しました。

長い廊下に、規則正しい足音が、

コツコツと続いて行きました。

 

悩みが長引いたのは

海軍省の仕事のためでした。

本部で働くことが出世に有利だという

周囲のアドバイスには一理ありました。

バスティアンの考えも同じでした。

高位職は、ただ輝かしい戦功だけで

得られるものではありませんでした。

限られた権力を巡る

政治的な駆け引きは避けられず、

本部の要職は、

その戦いで勝機をつかむための

立派な武器でした。

 

そのように計算するなら

ここに留まるのが正解でした。

しかし、一生軍人として生きないという

バスティアンの決意は

今も有効でした。

ただ、ここで得た名誉を

強固にするためには、

しばらくは軍服を着ていた方が良いと

判断しただけでした。

それならば、輝く勲章を、

いくつか追加できるほどの

戦功をあげれば、

これ以上のことはないだろうと

思いました。

 

そしてオデット。

 

服務申請書を書いては破り、

書き直すことを繰り返している間、

心の片隅に留まっていた、その名前が

バスティアンの足を遅くさせました。

 

もしも、あなたが本当の妻なら。

 

何気なく、

そんなことを考える瞬間が

多くなりました。

漠然としていた想像も、いつの間にか

かなり具体化されていました。

 

オデットは家族に対する

絶対的な献身と愛情を持った女でした。

だから、きっと新しい家庭にも

忠実だろうと思いました。

たとえ自分への気持ちがなくても、

そうするだろうということを

バスティアンは知っていました。

 

ただ、それは時間の問題で

オデットは、結局、

自分を愛するようになるということも

知っていました。

 

睦まじい家庭が、どういうものかは

分かりませんでしたが、

少なくとも、一生、

あの女から搾取するだけの

ディセン一家よりは、良い家族に

なってあげることができると

思いました。

 

バスティアンは、

妻に与えられるものが

たくさんありました。

どんな貴族よりも、

貴族らしい暮らしをさせてやれるし

この世で最も貴重で美しいものを

与えられました。

望むなら何でも、

どんな手を使ってでも。

 

そして、

すでに十分辛い人生を送って来た

彼女が、これ以上傷つかないように

彼女を守る。

バスティアンはそんな夫で、

そんな父親で、そんな家族として

生きていく自信がありました。

だから、いつかは、

きっと心が届く日が来るはず。

オデットは、決して

信義に反する女ではないからでした。

 

そんな人生を手に入れられるなら

ラビエルとの姻戚関係を諦めることが

できそうな気もしました。

 

しかし、これが一時の衝動に

過ぎないかもしれないという事実も

バスティアンはよく知っていました。

もしかしたら、

手に入れたい女への欲望がもたらした

勘違いかもしれませんでした。

 

これもまた、

時間が解決してくれる問題だという

結論に達すると、

初めて服務申請書の署名欄を

埋めることができました。

これ以上、迷うことはないという

確固たる決定でした。

 

デメル提督の執務室の前に着いた

バスティアンは、

まず姿勢を正してからノックしました。

 

「入れ」

閉ざされたドアの向こうから

聞こえてくる提督の声は、

いつものように力強く陽気でした。

これを見て。

こんなに立派な証拠があるなんて

どれだけ素晴らしいことか。


トリエ伯爵夫人は微笑みながら

新聞を広げました。

写真を見たオデットは、

静かな笑みを浮かべながら

視線を落としました。

とっくに砂糖が溶けている

ティーカップをかき混ぜる音が

カタカタと、沈黙の中に

染み込んで行きました。

 

トリエ伯爵夫人は、

結婚写真が一枚もないというのが

ずっと気になっていた。

肖像画家を紹介してあげると言っても

遠慮するばかり。

危うく、

この結婚の証拠を残さないために、

策略を弄しているのだと、

あなたの夫を誤解するところだったと

言いました。

 

オデットは、

「そうではありません。

バスティアンは・・・」

と反論すると、トリエ伯爵夫人は

「そうですね。分かっています。

悪口は言いません。

夫のあんなに愛おしそうな様子を見ると

新婚は新婚なんですね」と返事をすると

新聞を下ろし、

声を出して笑いながら手を振りました。

そして、

悪気があるなら、全帝国の前で

堂々と妻を晒すはずがない。

思ったより、あなたへの気持ちが

深まっているようだ。

これ以上、余計な心配をしなくても

大丈夫だと言うと、

再びティーカップを握りました。

トリエ伯爵夫人の

しわの寄った手の上で、

繊細に細工されたサファイアの指輪が

光りました。

 

ぼんやりとその青い輝きを

見つめていたオデットは、

今度も適当な笑みを浮かべることで

苦境を逃れました。

困った誤解でしたが、

釈明する方法がありませんでした。

 

トリエ伯爵夫人は

バスティアンへの称賛を

並べ立て始めました。

仕方なく引き受けた縁談を

伝えに来た日とは、

ずいぶん変わった態度でした。

 

いじっていたティースプーンを

下ろしたオデットは、

ティーカップに映った自分の顔を

じっと見つめました。

 

トリエ伯爵夫人の言葉のように、

バスティアンは

この結婚の証拠を残さないために

慎重を期してきました。

そんな男が、あまりにもあっさりと

皇命を受けた理由が何なのか、

今になって、ようやく

理解できそうな気がしました。

 

疑いを招くような状況だった。

そこまで思い至らなかったことに

オデットは、

少し気まずくなりました。

一歩先を見通した

バスティアンのおかげで、

雑音を鎮めることができたのだから

幸いなことでした。

 

トリエ伯爵夫人は、

まだ、子供の知らせはないのかと

尋ねました。

オデットは小さく頷いて、

「・・・はい、まだです」と答えると

目を伏せました。

 

トリエ伯爵夫人は、

二人ともまだ若くて元気なので、

あまり焦る必要はない。

それでも一日も早く

あなたの赤ちゃんを抱いてみたい

この年寄りの気持ちを理解して欲しい。

こんなに美しい親を持つ赤ちゃんなら

どれだけ可愛いことかと言うと

再び新聞に載った写真に

注意を向けました。

おかげで、オデットは、

表情を整える時間を

持てるようになりました。

 

最近になって、

めっきり子供の話を持ち出す人が

多くなりました。

そろそろ、そんな時が来たと感じる

雰囲気でした。

 

バスティアンが出征することになれば

このような困った質問からも

逃れることができるだろう。

考えがそこまで及ぶと、

ベルクを離れることにした彼の決定も

理解できるようになりました。

 

バスティアンは

この結婚の有能な指揮官でした。

適切な戦略を駆使しながら、

目的地に向かって

進んでいるところでした。

彼の勝利は

すなわち自分の勝利でもあるので、

オデットは、

ただ信じて従うだけでした。

 

オデットが再びスムーズに

笑えるようになった頃、

オデット宛の固く密封された手紙を

メイドが運んで来ました。

 

とんでもない知らせに驚いたオデットは

自分宛の手紙がトリエ家に届いたのかと

聞き返すと、メイドは大きく頷き、

人づてに届いた手紙だ。

非常に急ぎの伝言のため、

奥様のいる所に

届けることになったということだ、

ラーナー夫人のお使いだと

言っていたと説明しました。

 

ラーナー。

オデットは、初めて聞く

その名前を繰り返しながら

封筒を開けました。

華やかな金箔で飾られた便箋に

見覚えがあることに

気づいたのと同時に、

首が絞められたように

息が詰まってきました。

相手の身元が分かるようなフレーズは

一行もありませんでしたが、

オデットは直感的に

差出人に気づきました。

オーダーメイドであることが明らかな

この便箋に見覚えがあったからでした。

 

家族ではない家族で、

隣人でもない隣人

テオドラ・クラウヴィッツ

先日、彼女が突然送って来た招待状も

これと同じ金箔で飾られていました。

 

大丈夫か。 良くない知らせかと

トリエ伯爵夫人が尋ねると、

衝撃に包まれていたオデットは

我に返りました。

 

オデットは、それを否定すると

急いで小さく折りたたんだ手紙を

しっかりと握り締めました。

 

彼女は、

親しくしている将校の妻からで

海軍祭に関することで

急いで相談したいことがあるそうだと

答えました。

冷たく固まった手を震わせながらも、

オデットは、

もっともらしい笑みを浮かべて

見せました。

幸い、トリエ伯爵夫人は

何の疑いもなく頷いてくれました。

 

トリエ伯爵夫人は、

残念だけれど、

今日はここまでにしよう。

家門の栄光となる日の準備を

疎かにすることはできないと

言いました。

 

オデットは、

伯爵夫人が理解してくれたことに

お礼を言うと、急いで

ティーテーブルから立ち上がり、

丁寧な挨拶をしました。

 

震える両足に気づかれずに

応接室を抜け出すことに成功した

オデットは、走るようにして

トリエ家のタウンハウスを去りました。

戸惑っている使用人の視線を

気にするだけの余力は、

もう残っていませんでした。

 

無駄な疑問は

しばらく消すことにしました。

まず、テオドラ・クラウヴィッツ

会う必要がある。

オデットはその一念を頼りに

走り出しました。

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今は自分への気持ちがなくても

結局、オデットは

自分のことを愛するようになることを

知っている。

少し、自信過剰かもしれませんが

現時点でオデットを守れるのは

バスティアンだけだと思いますし、

彼女が望めば、

何でも買い与えることができると

思います。

それと引き換えではないけれど

バスティアンは、オデットが

ティラに与えているのと同じ愛を

強く求めているのを感じられました。

 

このまま何も起こらなければ、

おそらく、

そうなるのではないかと思いますが、

テオドラの妨害が・・・

「泣いてみろ、乞うてもいい」も

「問題な王子様」も

辛い展開が延々と続きましたので、

このお話しも、そうなるのでしょうね。

読むのが辛くなりそうです。

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