自分時間を楽しく過ごす 再婚承認を要求しますの先読みネタバレ付き

子供の頃からマンガが大好き。マンガを読むことで自分時間を楽しく過ごしています。再婚承認を要求します、ハーレムの男たちを初めとして、マンガのネタバレを書いています。

バスティアン 76話 ネタバレ ノベル あらすじ マンガ 59話 決まっている選択

76話 オデットはバスティアンに、自分に話すことはないかと尋ねました。

バスティアンを湛えた

大きな瞳が明るく輝きました。

恐怖に怯えて警戒していた時とは

明らかに変わりました。

信頼と呼んでも良い感情が

込められたような目つきでした。

 

バスティアンは、心地よい沈黙の中で

オデットを見つめました。

決定を下した以上、

オデットに知らせるべき時が来ている。

バスティアンは、その事実を

はっきりと認識していました。

 

しかし、

一体、何と言うべきなのだろうか?

一緒に行こう。

喉元まで出かかっている言葉を

出したいと思いました。

 

ベルク領トロサ諸島には

北海艦隊に駐屯する軍人家族のための

官舎が設けられていました。

ここでの生活に比べれば劣るけれど

それでも、大して苦労をするような

環境ではありませんでした。

オデットは、

社交界を離れると生きていけない

花のような女ではないので、

そこでの生活にも、

うまく適応できるはずでした。

周囲の監視と干渉から逃れて

二人きりの新婚を送るには

はるかに

良い場所かもしれませんでした。

 

だから、結局

バスティアンは話せませんでした。

オデットを

赴任地に連れて行くという決定は、

まさに、この結婚を永遠に続けるという

宣言と同じでした。

そのような熱望が

ますます大きくなるほど

疑問も深まっていきました。

 

オデットは美しい女でした。

こんな女に惑わされるのは、

とても簡単であることを

バスティアンはよく知っていました。

いや、もしかしたら、

すでに、そうなってしまったような

気もしました。

 

いつからか、オデットの前に立つと、

感情が理性を超えていました。

このような状態で下した判断で、

残りの人生の方向を決めるのは

愚かでした。

だから、

一人で行くという決意に従うのが、

お互いにとって

有益な選択かもしれませんでした。

 

バスティアンは、再び判断を保留し、

「いいえ、ありません」と

淡々と答えました。

 

オデットは「ああ」と

小さく囁いて頷きました。

バスティアンの袖口から離した指先が

ふと、ヒリヒリしました。

 

バスティアンは、

引き下がろうとした瞬間に

再びキスをしました。

頬に触れた唇は、

依然として温かでしたが、

ただそれだけでした。

 

父は酒に酔うと暴言を浴びせたり、

物を壊したりしました。

一方、バスティアンは

酒に酔うと、よく笑い

優しくなりました。

二人は両極端でしたが、

酒癖が良くないという点は同じでした。

 

結局そういうことだという

事実を受け入れると、

無駄な期待の残像さえ姿を消しました。

 

バスティアンは、いたずらをするように

そっと噛んでいたオデットの頬に

もう一度、

鳥が嘴を擦りつけるような

キスをすることで

酔っ払いの無意味な行動に

終止符を打ちました。

 

ギュッと握っていた

オデットの髪を放してくれた

バスティアンは、彼女に、

寝かせてくれないかと、

とんでもない冗談を言いました。

 

オデットは、

残念だけれど、それをするには

あなたが大きすぎると思うと答えると

慎重に一歩後ろに下がることで

バスティアンとの距離を広げました。

二ヤッと笑った彼は、

納得したように頷きました。

 

バスティアンは、

熱いため息をつきながら

背を向けました。

動作が明らかに遅くて

鈍くなったのを見ると、もう酔いが

限界点に達したようでした。

 

よろめきながら

部屋を横切って行ったバスティアンは

倒れるように

ベッドに横になりました。

オデットは

暖炉の前で立ち尽くしたまま

その光景を見守りました。

針の先一つ入る隙間がなさそうに

徹頭徹尾していた男が、

布団も、きちんと掛けない姿で

眠りにつきました。

 

オデットは、

今日の最後の仕事を処理するために

ベッドに近づきました。

酔っぱらいを相手にするのは

少しも難しくないことでした。

父の世話をして来た時間がくれた

有難くない贈り物でした。

 

オデットは、

まずサイドテーブルの明かりの

照度を下げ、

無造作に脱ぎ捨てたスリッパを

片付けました。

バスティアンをまっすぐ寝かせるには

思ったよりも

長い時間がかかりました。

父とは比べ物にならないほど

大きくて、たくましい肉体を持つ

男だったからでした。

静かに息を整えたオデットは、

仰向けに寝かせたバスティアンの体に

布団をかけてやりました。

 

ティラを守るためには、この男を

裏切らなければなりませんでした。

現実を直視すると、

最後の煩悶さえ取り除かれました。

 

自分の全てである家族と

二年契約の雇用主。

何もない子供と全てを持った男。

どのような選択をすべきかは、

すでに決まっているも同然でした。

そして、オデットは、その決定を

覆すつもりはありませんでした。

 

眠っているバスティアンの顔を

とめどなく見つめている間に

一時を知らせる掛時計の音が

聞こえて来ました。

 

そっと閉じていた目を開けた

オデットは、

このくらいでランプを消して

背を向けました。

 

誰かが

地獄に行かなければならないなら

自分が行く。

オデットは、ティラのために

真実を隠すことを決意し、

約束しました。

だから、もうその言葉の重さに、責任を

負わなければならない時でした。

バスティアンの一日は、

いつもと変わらず始まりました。

決まった時間に目を覚まし、

体を洗って、出勤準備を終えました。

めちゃくちゃに酔った昨夜の痕跡は、

唯一、オデットを探るような

視線程度でした。

 

よく分からない。

バスティアンが下した結論は、

結局、そのように虚しいものでした。

 

オデットは、

朝食が用意されたテーブルの向かいに

おとなしく座っていました。

昨夜のことを不快に思っている様子は

見せませんでしたが、

確信するのは困難でした。

 

オデットは感情を隠すのが上手でした。

たとえ嫌でも、いくらでも優しい笑みを

浮かべられる女だということを

バスティアンはよく知っていました。

しかし、高く評価していたその姿が

突然、窮屈に感じられました。

滑稽な気まぐれでした。

 

今日は占い師の役割を

果たす気はないのかと、

バスティアンが投げかけた、

つまらない質問が静寂を破りました。

オデットは、その時になってようやく

ハッとして、視線を上げました。

寝不足のせいか、

目が少し赤くなっていました。

 

じっとバスティアンを見つめていた

オデットは、

小さく首を横に振りながら

スプーンを握りました。

しばらくして、トントンと

ゆで卵を割る音が響き渡りました。

 

割れた卵の殻を

注意深く調べたオデットは、

お酒を遠ざけると、

幸運が訪れる運勢だと、

でたらめな占い結果を伝えました。

かましく自分を責める姿に、

バスティアンは、つい声を出して

笑ってしまいました。

どうも、優雅な淑女は、

酔っぱらった夫が、

気に入らなかったようでした。

 

笑うのを止めたバスティアンは、

今度は自分が奥様の運勢を

占ってやると告げると、

オデットのエッグカップを握りました。

 

コーヒーを注ぐために近づいて来た

執事は、驚いて足を止めました。

バスティアンは妻の真似をするように

慎重に卵の殻を割りました。

まるで別人になったかのように、

見慣れない姿でした。

 

ロビスは、どんな反応を示すべきか

分からなくて悩んでいましたが

そっと視線を避けることで

窮地を脱しました。

薄いコーヒーを注ぐ音が、

明るい朝の日差しの中に

染み込みました。

 

バスティアンは素早く卵を見ると

「酔っぱらいに気をつける一日を

過ごしなさい」と告げて、

すぐに再びオデットを見つめました。

 

丸くなった目を瞬いていた

オデットの口元に、

プッと笑いがよぎりました。

すぐに消えてしまったけれど

余韻はかなり長く続きました。

 

「オデット」と

衝動的に名前を呼んだのは、

一層、和らいだ雰囲気の中で

続いた朝食が終わる頃でした。

 

オデットは

「はい、どうぞお話しください」と

返事をすると、コップを下ろし、

まっすぐな視線で

バスティアンを見つめました。

 

あなたは、何を聞きたかったのか。

昨夜のオデットの質問が、

ふと頭に浮かびました。

哀願するように

切迫した目つきだった気がするけれど

酔っていた時の記憶を、

むやみに信じるのは難しいことでした。

 

結局、バスティアンは、

あなたも、皇帝の閲兵式に

招待されたと言っていたかと、

意味のない質問でごまかすという

代案を選びました。

まるで、昨夜飲んだ酒の酔いが

まだ続いているような朝でした。

当分は、オデットの影となり、

一挙手一投足を監視し、

詳細に報告しなさいと

モリーは言われていました。

特に、父親と関連した仕事を

注視するようにという特命も

付け加えられていました。

 

モリーは、

繰り返し読んで暗記した手紙を

落ち葉を燃やしているドラム缶の中に

投げ入れました。

ただ各自の業務に熱中しているだけで

どの使用人も、世間知らずのメイドに

関心を向ける者はいませんでした。

モリーは、

淡い日差しが照りつける裏庭を

横切って、邸宅に戻りました。

 

午前の日課はいつもと同じでした。

女主人の装いを手伝い、

マルグレーテの餌を用意しました。

サビネ洋品店から到着した

お祭り用の帽子とドレスまで

整理した後、

待ちに待った休憩時間が訪れました。

 

「奥様の書斎ですね。 私が行きます!」

使用人の休憩室を鳴り響く

呼び出しベルの音を聞いたモリーは、

さっと手を挙げて

席から立ち上がりました。

一口しか飲めなかったお茶が

もったいなかったけれど、

今はそんなことに未練を持つ時では

ありませんでした。

 

メイド長は笑いながら頷くと、

誰かが見たら、

お前が奥様の影にでもなったと

思うだろうと言いました。

内心を悟られたと思い

ドキッとしましたが、モリーは決して

慌てた様子を見せませんでした。

 

「奥様」

無我夢中で、小さな書斎に駆け込んだ

モリーは、できる限りおとなしく

ノックしました。

「入って、モリー

閉じたドアの向こうから、

オデットの落ち着いた声が

聞こえて来ました。

 

嬉しそうに走ってきた子犬を

撫でたモリーは、ニコニコしながら

オデットの机の前に立ちました。

 

オデットは、

今日の午後に訪れる客が

一人増えたので、そのつもりで、

ティータイムの準備をして欲しいと

自分の代わりに

ドーラに伝えてくれるかと頼みました。

そして、最後の手紙を密封すると、

オデットは頭を上げて、

今日、発送する郵便物について

頼みました。

 

モリーは、

他に何か用事はあるかと尋ねました。

オデットは、

明日の午前中に外出すると

ハンスに伝えて欲しいと頼みました。

興味深い知らせに

モリーの目が輝きました。

 

モリーは、

ラッツへ行くのかと尋ねると、

オデットは、それを否定し

父親に会いに行くと告げると

微笑みながら、

ペンとインクを片付けました。

 

オデットは、

夫のために、

父親と距離を置こうとしたけれど、

いくらなんでも、それは

あまりにも非情な仕打ちのようだ。

父親が大怪我をして、

病床に伏せっていると

話したことがあるような

気がするけれど、

あなたは、自分の気持ちが

分かるでしょう?と尋ねました。

 

「それは、もちろんです」と

モリーは、適当に仏頂面をして

肯きました。

酒浸りの人生を送り、

酒瓶を抱えて死んだ父親のことなど、

すっかり忘れて、随分経ちましたが

今はオデットについた嘘に

ふさわしい姿を

見せなければならない時でした。

 

オデットは、

夫と一緒に行った方がいいだろうか。

あなたは、どう思う?と尋ねました。

モリーは、

つまり、ご主人様と一緒に

病院に行って来るつもりなのかと

尋ねました。

 

オデットは、

結婚生活をうまく送っている姿を

父親に見せた方がいいだろうし

二人が折り入って話すことも

多いだろうからと答えました。

 

全く思いもよらない言葉に、

モリーは大きく目を見開きました。

よく分からないけれど、

バスティアン・クラウヴィッツ

この件に首をつっつ込むのは、

あまり良いことではなさそうでした。

 

モリーは、

もちろん、それが一番良いけれど

海軍祭を目前に控えて、

あまりにも忙しいご主人様が

時間を作ることができるだろうかと

答えました。

しかし、オデットは、

幸いにも明日は

時間がありそうだと言っていると

告げると、

机の前から立ち上がりました。

胸に抱いた子犬を撫でながら笑う姿に、

どこにも怪しい気配は

ありませんでした。

 

オデットはモリー

もう下がってもいいと指示して

彼女を労いました。

モリーを見るオデットの目つきは

いつもと変わらず優しいものでした。

 

ぺこっと頭を下げたモリー

急いで小さな書斎を出ました。

どうやら、森をもう一度

走らなければならないような日でした。

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たとえ二年間とはいえ、

契約は契約。

契約よりもティラへの愛情を

優先させてはいけない。

契約とはそういうもの。

一方的に契約を破れば、

相手に何をされても文句は言えない。

オデットは、契約の重要性を

全く理解できていないと思います。

もし、バスティアンが

出征することを話してくれていたら

オデットは

バスティアンを裏切ることを

止めたかもしれませんが、

話してくれないことで、

やはり、この結婚は契約なんだと

改めて実感したのかもしれません。

けれども、契約は

絶対守らなければならないし

その相手に不利益になることを

してはならないのに・・・

オデットは賢いのに、

ティラのこととなると

愚かになってしまうのが残念です。

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