自分時間を楽しく過ごす 再婚承認を要求しますの先読みネタバレ付き

子供の頃からマンガが大好き。マンガを読むことで自分時間を楽しく過ごしています。再婚承認を要求します、ハーレムの男たちを初めとして、マンガのネタバレを書いています。

バスティアン 85話 ネタバレ ノベル あらすじ 雨の中の観覧車

84話 バスティアンが席を外した執務室で、オデットは・・・

ドアが閉まり、

バスティアンの足音が遠ざかると、

オデットは急いで

ソファーに隠しておいた鍵を

取り出しました。

まだ服を着ていませんでしたが、

そんなことを気にする余裕は

ありませんでした。

 

最初に、

執務室のドアに鍵をかけたオデットは

すぐに机に近づきました。

鍵がかかっている

一番下の引き出しに鍵を差し込み、

力を入れて回しました。

カチッと滑らかに開く鍵の音が、

荒くなった息遣いの中に

響き渡りました。

 

必死に息を整えたオデットは、

すぐに引き出しを開けました。

最初、ぎっしり詰まった書類に

絶望しましたが、

すぐに希望へと変わりました。

書類は、表紙のラベルに書かれた

頭文字の順に

完璧に整理されていました。

そういえば、

邸宅の書斎にあった書類も

このように整理されていました。

あの男の習慣のようでした。

 

「ダイヤモンド」

オデットは、

その頭文字が書かれたラベルを

急いで探し始めました。

合間合間に、時間を確認することも

忘れませんでした。

時計の針のカチカチいう音が

神経を蝕んでいくような気がしました。

長くても10分。

到底あり得ないことまでしたのに

その間に見つけられなかったら

その甲斐もなく、虚しく、

終わることになりました。

 

それはできないと、オデットは

再び崩れ落ちそうになる心を

引き締めました。

目をギュッと閉じて

視界を曇らせる水気を落とし、

寒気がするように震える指先にも

力を入れました。

 

ダイヤモンド。

やがて、その名前の付いた

ラベルを見つけましたが、

鉱山に関する書類では

ありませんでした。

次々と書類を調べている間に

5分が過ぎました。

 

ダイヤモンド鉱山。

切に願っていた、

そのラベルが貼られた書類を

見つけたのは、目の前が

真っ白になり始めた頃でした。

 

一瞬、緊張が解けたオデットは、

カーペットの上に

座り込んでしまいました。

まるで全力で走ったかのように

息が切れていました。

吐き気がするようで、

泣きたいような気もしました。

 

ようやく、

体を支えられるようになった

オデットは、

引き出しの前まで這って行き

床に散らばっている書類を

整理し始めました。

その引き出しを再び閉めた瞬間、

オデットは、

飾り棚のガラス戸に映った

自分の姿に向き合いました。

何も着ていない、魂が抜けている

1人の女がそこにいました。

依然として体に絡みついている

真珠のネックレスとストッキングが

さらに、その女を、みだらで下品に

見せていました。

 

オデットは大きな波のように

押し寄せて来る幻滅に

努めて背を向けて立ち上がりました。

発見したダイヤモンド鉱山についての

書類と鍵を、

しっかり握ったままでした。

 

まず執務室の鍵を開けると

オデットは、走るようにして

暖炉の前に近づきました。

引き抜いた紙は、小さく折って

外套の内ポケットに入れ、

書類は暖炉の火の中に

投げ入れました。

鍵は、バスティアンが誤って

落としたように見せるために

ソファーの前の適当な位置に

落としました。

あの男の下で息を切らしていた時に

思いついた妙案でした。

 

もう全部終わった。

オデットは、もう一度状況を整理すると

急いで服を着ました。

体をどのように動かしているのか

自分でもわかりませんでした。

まるで奇妙な覚醒状態になった

気分でした。

 

ブラウスの最後のボタンをかけた時

規則的なノックの音が

聞こえて来ました。

「どうぞお入りください」と

用意しておいた返事をすると

オデットは、

何事もなかったかのように

平然と頭を梳かし始めました。

 

ゆっくりドアを開けたバスティアンは

何も言わずに執務室に入りました。

目が合うと、オデットは

にこやかな笑みを浮かべながら、

あと、髪だけ整えれば良いようだ。

申し訳ないけれど、

もう少し待って欲しいと、

手櫛で髪を梳かしながら

了解を求めました。

去年の春、

皇宮で開かれた舞踏会の夜を

思い出させる姿でした。

 

バスティアンは快く頷きながら

ウイングチェアに腰を下ろしました。

頷くことで、

感謝の意を表したオデットは、

一つにまとめた髪を

上手に編み出し始めました。

 

バスティアンは、

肘掛けに斜めにもたれかかって

オデットを見守りました。

忙しく動く白い指が、

夜のように黒い髪の毛と

対照的でした。

彼女は、とりわけ白く、

透き通るような肌をしていました。

今も、その体のあちこちに残っている

自分の痕跡を振り返る

バスティアンの指先に、

そっと力が込められました。

 

オデットは今、三つ編みを

巻き上げているところでした。

手際よくピンを差し込んで固定すると

いつものように端正で優雅な髪形が

完成しました。

 

バスティアンと目が合ったオデットは

もう、できあがったと告げると、

今回も穏やかな笑みを浮かべました。

あのソファの上で、

滅茶苦茶に乱れた女とは

思えない姿でした。

 

自分は一体、あなたの何なのか。

バスティアンは、

虚しい疑問を抱きながら

立ち上がりました。

その時、

カーペットの上に落ちている

机の引き出しの鍵が目に入りました。

オデットと転げ回った時に

落としたようでした。

 

バスティアンは、

さほど気にも留めずに拾った鍵を

ジャケットのポケットに入れました。

じっと彼を見守っていたオデットは

ようやく、

ゆっくりと体を起こしました。

 

ハンガーに掛かっていたコートを

羽織ったバスティアンは、

続いて暖炉の前に干しておいた

オデットのコートを手に取りました。

見たことのない服なので、

おそらく叔母に頼んで

新しく作ったようでした。

サビネの青いコートは、

女の服については何も知らない

バスティアンの目にも

かなり立派に見えました。

何より、とても暖かそうに見える

生地という点が特に気に入りました。

古びたコートを着て、

雪に降られていた女の記憶を、

今では消せるだろうと思いました。

 

驚いた顔をしたオデットが

近づいて来て、

大丈夫、自分でやると言いました。

 

この女は、これほどのマナーも

備えていないのか。

バスティアンは眉を顰めながら

オデットにコートを着せてやりました。

 

何事もなかったかのように

上手く振る舞っていたオデットは

ようやく、

率直な感情を表わにしました。

恥ずかしそうに赤く染まった頬が

きれいでした。

そっと伏せた睫毛の影もそうでした。

 

バスティアンは、妻をエスコートして

執務室を出ました。

並んで歩く二人の影が、

閑散とした会社の廊下に

響き始めました。

よりによって、

あれが、そこに立っていました。

 

オデットは、

ぼんやりとした目を上げて、

観覧車を見つめました。

光り輝く巨大な車輪は、

雨の夜も、悠々と、

都会の夜空を横切っていました。

雨粒がついた車の窓が、

遊具の光を、

より幻想的に見せていました。

 

オデットは懸命に

ため息を飲み込みながら、

運転中のバスティアンの横顔を

探りました。

 

バスティアン・クラウヴィッツは、

皇帝が取り持った縁談を

不満に思いながらも、成功のために

演技を繰り広げた野心家でした。

莫大な利益のために

偽りの結婚を計画した

冷血漢でもありました。

ただ、それだけを

考えられればいいのだけれど。

 

オデットは、

慌てて助手席の車の窓越しに

目を向けることで、

揺れる眼差しを隠しました。

 

バスティアン・クラウヴィッツ

有難い人でした。

世の中が定めた道徳と規範の物差しが

どうであれ、少なくとも

オデットにとってはそうでした。

その好意と親切を享受した日々の記憶が

観覧車の明かりの中に、

一つ二つと蘇りました。

 

バスティアンはまもなく、

父親への復讐が失敗に終わったことに

気付くだろう。

それはテオドラ・クラウヴィッツ

協力することを決意した時点で

すでに覚悟したことでした。

この世に、永遠の秘密なんてないので

いつかは裏切り者の正体が

ばれることになるということも。

 

でも、この結婚が無事に終わる日まで

この男が

それを知らなければいいのにと、

ふと、オデットは思いました。

すべてが片付いた後なら

受ける傷も少ないだろうと

考えたからでした。

もちろん、これら全ては、

恥知らずで利己的な欲に

過ぎないけれど。

 

オデットは、

愚かな感傷を呼び起こす明かりを

避けるために視線を下げました。

車はちょうどフレベ大通りの中心部を

通っていたところでした。

トラムの通行を知らせる鐘の音が、

華やかな夜の街の上に

騒々しく鳴り響きました。

 

車が止まると、

あっという間に通り過ぎた風景も

止まりました。

バスティアンはそっと視線をそらして

オデットを見ました。

窓の外を

注意深く見ているかと思ったら、

今は、ただそこだけに

気を取られていました。

 

一体、何をそんなに

熱心に眺めているのかと思い、

オデットの視線が向いている所を見た

バスティアンの口元に、

ふっと笑みが浮かびました。

豪華なショーウインドーのある

宝石店でした。

日除けに書かれた名前に

馴染みがあったので、

かなり有名なようでした。

もちろん、この通りにある

全ての店がそうだと思うけれど。

 

「オデット」と

静かに名前を呼んでみても、

オデットは振り返りませんでした。

ここまで来ると、

いったい何が、この女を

このように魅了したのか、

気になり始めました。

 

トラムが通り過ぎると、

道路の渋滞が解消されました。

ゆっくりとスピードを上げていた

バスティアンは、

衝動的にハンドルを切りました。

フレベ大通りの高級商店街。

先程の、あの宝石店の方角でした。

遅い時間に来店予約をした

客がいたので、いつもより長く

ドアを開けておいた。

そのおかげで、

大尉を迎えることができたのは

天が与えた幸運だと、

接客をする宝石店の主人の顔は、

心からの喜びに満ちた笑顔で

明るくなっていました。

店を閉めようとした矢先に

店のドアを開けた客がもたらした

苛立ちは、とっくに、

すっかり消え去っていました。

 

しかし、なす術を知らず

おろおろしていた大尉の妻が、

「もう帰りましょう」と

水を差しました。

その美しい顔を有益に使えない

女でした。

そうでなければ、

数歩先を読む達人でした。

 

オデットは、

そういうことではない。

自分は本当に

何も望んでいないと言いましたが

「もう準備ができたようなので

こちらへどうぞ」と

商売を台無しにしようとする客を

急いで阻止した店主は、

店の奥深くにある応接室に

大尉夫妻を案内しました。

 

クラウヴィッツ大尉は、

ショーウィンドウに陳列されている

宝石を見たいと言いました。

紛失を恐れて

模造品を展示しておいたので、

金庫にある本物を持って来るまで

多少、時間がかかりました。

 

店主は、

「さあ、ゆっくりご覧ください」と

告げると、誇らしげな表情で、

宝石が並べられたテーブルを

指差しました。

そこを見たオデットは、

思わず小さなため息を漏らしました。

 

照明の光を反射する

宝石たちの恍惚とした輝きが

目を突き刺しました。

色とりどりの光を放っていましたが

種類はすべて同じでした。

オデットが盗んだ書類に書かれていた

その名前と同じ宝石、

ダイヤモンドでした。

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ティラを守るため、

バスティアンを裏切らざるを

得なかった。

けれども、

バスティアンと結婚したおかげで

地獄の底を這いずり回っていたような

生活から脱出でき、

たくさんの物も与えてもらった。

バスティアンなら、

すぐに損害を取り戻せることができる。

名誉を失うより、

お金を失う方がマシだと

オデットは自分のしようとすることを

正当化して、

とうとう、目的を達したけれど

バスティアンとの思い出のある

観覧車を見て、今更ながら

良心が咎めたのではないかと

思いました。

バスティアンの勘違いが

さらにオデットを

苦しめることになりましたが、

信じていた者に裏切られたことを

バスティアンが知った時の

苦しみよりは、

はるかに小さいのではないかと

思います。

***************

いつも、たくさんのコメントを

ありがとうございます。

 

84話、衝撃的でしたよね。

まさか、

英雄のイケメンバスティアンが・・・

私は言い回しを変えましたが

原文では、

まさに、その言葉が

書かれていました。

作画担当者様は、

これをマンガに描くのは

抵抗があったかもしれませんね。

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