自分時間を楽しく過ごす 再婚承認を要求しますの先読みネタバレ付き

子供の頃からマンガが大好き。マンガを読むことで自分時間を楽しく過ごしています。再婚承認を要求します、ハーレムの男たちを初めとして、マンガのネタバレを書いています。

バスティアン 100話 ネタバレ ノベル 原作 あらすじ 葬儀場での再会

100話 バスティアンが帰って来ました。

葬儀は正午に始まる予定だと

聞きました。

 

腕時計を確認したバスティアンは

それほど急いでいない様子で

コートのポケットから

タバコの箱を取り出しました。

1本取り出したタバコの先に

火を点けている間に、

ちょうど15分前を知らせる

予告の鐘が鳴りました。

空高く舞い上がったカラスの群れは、

まもなく、

再び、うら寂しい墓地の上に

舞い降りました。

 

バスティアンは眉を顰めて

礼拝堂を見つめました。

ひどく老朽化してはいるものの

かなりの格調をもって

建てられた建物でした。

かつては輝かしかった過去が、

つまらない現在を、さらに惨めに

させるようなものでした。

貧乏公爵の最期に

非常に相応しい場所でした。

 

バスティアンは深く吸い込んだ煙を

ゆっくりと吐き出し、

レインコートの襟を立てました。

依然として視線は、

雨のカーテンの向こうに立っている

礼拝堂に向けられたままでした。

 

帰国船がベルク海峡に入った頃

ディセン公爵の訃報が伝えられました。

軍事通信で伝えられた急報には、

できるだけ早く下船して

葬儀に参列することを望むという

命令が添えられていました。

差出人はデメル提督。

親友の口を借りて伝える

皇帝の命令と言っても

過言ではありませんでした。

 

オデットの父が亡くなった。

その事実が何を意味するのかを

認知するまでに、

少し時間が必要でした。

ついに明瞭な結論が下されると、

呆れた笑いが漏れ出ました。

最後まで、

何の役にも立たない男でした。

その素晴らしい一貫性に、

いくらかの畏敬の念すら

覚えるほどでした。

 

長く伸びた灰とともに

想念を払い落としたバスティアンは

微かに傾いた唇の間に

再びタバコをくわえました。

雑草だらけの墓地を見つめる視線から

微かな冷笑が滲み出ていました。

 

ディセン公爵の死のせいで

計画が狂うことになりましたが、

あまり気にするほどのことでは

ありませんでした。

少し遠回りをすることになっただけで

結末は変わらないだろうから。

ただ、再び、このようなぬかるみに

足を踏み入れるようになった現実が

少し滑稽に思えただけでした。

 

英雄に下される皇帝の褒章。

あれほど煌びやかな名分を

前面に出した結婚でしたが、

実状は、いつもこのように

取るに足らない

みすぼらしいものでした。

事新しくはありませんでした。

父の賭博の借金のせいで売られた女と

皇帝が取り持った縁談の相手として

再び出会ったあの春の日に、

すでに予見されていた

未来だったので。

 

高貴な血統の妻を得る光栄など

とんでもない。

バスティアンは、

のんびりとタバコを吸いながら

礼拝堂の出入り口の前に近づきました。

 

借りた服を着て社交界を渡り歩いた

オデット嬢の記憶が

廃墟のような風景の上に

浮び上がっては消えて行きました。

あの女が皇族として認められていたら

決してあり得ないことでした。

このみっともない葬式も同様でした。

 

バスティアンは、

嘲笑を浮かべた唇から、新たに

ゆっくりと煙を吐き出しました。

 

皇室は、

もう、あの女を必要としない。

その明白な証拠を前にすると、

かえって、

ほっとした気分になりました。

おかげで離婚が

ずっと楽になるだろうから、

彼としては喜ばしいことでした。

 

夫としての役割を果たすよう

促して来たのを見ると、

このようなみすぼらしい状況で

放っておいたことが、

やはり気がかりなようだけれど。

だから、もう一度、皇帝の犬に

なってやれない理由はないと

バスティアンは、

簡潔な結論を下しました。

 

どうせ全てを承知の上で、

足を踏み入れた状況でした。

皇帝との取引のための手段であり

もう、その結果が

目前に迫っていました。

ちょうど過去の海外服務期間中の

行動に対する疑念を払拭するような

芝居が必要な時でもありました。

 

短くなったタバコを消した

バスティアンは、

最後の一服の煙を吐き出しながら

将校帽をかぶりました。

不必要な感情を消した瞳は、

雨をいっぱい含んだ

灰色の雲のように

静かに沈んでいました。

 

制服の身だしなみを整えた

バスティアンは、葬儀場に向かって

大股で歩き始めました。

いつのまにか正午。

貧乏姫の夫の役割を

始めなければならない時でした。

正午を告げる鐘の音が止むと、

葬送曲の演奏が始まりました。

居眠りをしていたアルマは

その音に驚いて、

パッと目を覚ましました。

オデットは、懐に抱いている子供が

楽に眠れるように姿勢を正しました。

ぐずりながら寝言を言っていた

アルマは、幸いにも

すぐに、おとなしくなりました。

 

マクシミンは遺族席の後方に座って、

その姿を見守りました。

もうすぐ葬儀が始まるというのに、

アルマは全く、オデットから

離れる気配を見せませんでした。

それほど頻繁に

交流しているわけではないのに、

子供は特にオデットが好きでした。

もう、そろそろ、その愛情が

心配になって来ました。

 

悩んでいたマクシミンは

席から立ち上がって遺族席に近づくと

アルマに、

もうお父様の所へ来るようにと

促しました。

手を差し出す彼を見たアルマは

イヤイヤしながら

オデットの懐に潜り込みました。

何度も言い聞かせてみても

結果は変わりませんでした。

 

無理をしないように。

眠ったら渡すのでと

低く囁くオデットの声が

オルガンの旋律の中に染み込みました。

 

悩んでいたマクシミンは、オデットに

もう少し面倒をおかけしますと

告げると、オデットの隣の席に

静かに着席しました。

大きな無礼を働いてしまうけれど

少なくとも子供を泣かせて

葬儀を台無しにするよりは

ましなはずでした。

 

マクシミンは、

子供を連れて来るべきではなかった。

自分の考えが浅はかだったと

オデットに謝罪しました。

オデットは、

アルマがいてくれるので嬉しい。

細やかな心遣いをしてくれる

ジェンダス卿にも、心から

深く感謝していると告げると、

微かな笑みを浮かべた顔で

マクシミンに向き合いました。

 

ティラには

遺族席が許されませんでした。

父親の姓をもらえなかった

私生児というのが、その理由でした。

何とか教会側を説得しようとする

オデットとは違って、

ティラは素直に現実を受け入れました。

父の子としての役割を

果たさなくて済むことに、かえって、

ほっとしている様子でした。

 

これ以上、意地を張れなくなった

オデットは、結局、空っぽの遺族席を

一人で守ることになりました。

もし影のように付いて回る

アルマがいなかったら、

もっとずっと、凍えるように辛く、

先の見えない時間を

過ごさなければならなかっただろうと

思いました、

 

しばらくぼんやりと

オデットを見つめていたマクシミンは

この頑固者が、

ようやく眠ったようだと言って

沈黙を破りました。

オデットは、

いつの間にか熟睡した子供の頬に

慎重に別れのキスをしました。

 

アルマを父親の胸に返した瞬間

固く閉ざされていた扉が開くという

予期せぬ騒ぎが起こりました。

 

オデットは、

ゆっくりと首を回して、

そちらを見つめました。

慌てた弔問客がざわついている間に

海軍の制服を着た長身の将校が

礼拝堂に入って来ました。

葬送曲が止んだ礼拝堂の中に

規則正しい足音が響き渡りました。

会衆席の間にある通路を

歩いていたバスティアンは、

祭壇から、少し離れた所で

しばらく立ち止まりました。

 

ディセン公爵が安置されている棺は、

この葬儀場の

みすぼらしい様子と同じくらい

情けないものでした。

色あせた聖画と錆びた十字架の事情も

大差はありませんでした。

 

大まかな状況を把握したバスティアンは

歩幅を広げて、

礼拝堂を横切って行きました。

祭壇に近づくと、むせ返るほど、

強烈な百合の香りが漂って来ました。

その中に横たわるディセン公爵は、

今まで見た中で、

最も立派な姿をしていました。

もう、そのやかましい口を

利けなくなった点が

特に気に入りました。

 

顔を上げて、祭壇に向かい合った

バスティアンは、

自分の名を名乗った後、

到着が遅れて申し訳なかったと

丁重に了解を求めました。

混乱に陥っていた司祭は、

ようやく安心して

胸を撫で下ろしました。

 

バスティアンがオデットの夫であると

認めた司祭は、

遠い所まで来てくれたことを労い、

慈しみ深い笑みを浮かべながら

助祭を通じて献花用の百合を

渡しました。

バスティアンがその花を

故人の霊前に捧げると、

しばらく中断していた葬送曲の演奏が

再開されました。

礼拝堂いっぱいに響き渡る

オルガンの旋律は、

陰鬱ながらも美しいものでした。

 

オデットは、ぼんやりとした目で

その光景を見つめました。

一体何が起こっているのか

よく理解できませんでした。

この全てが

夢かもしれないと思った瞬間、

バスティアンが遺族席の方を

振り返りました。

ゆらゆら揺れるろうそくの光の中で

二人の視線がぶつかりました。

 

オデットは思わず息を殺し、

両手を組みました。

より鋭く引き締まった

バスティアンの顔は、以前よりも

成熟した印象を与えていました。

日焼けした肌と

静かな眼差しもそうでした。

2年という時間の隔たりを

実感させる変化でした。

 

夫が帰って来た。

もはや、その事実を

否定する術がなくなった頃、

ゆっくりと近づいて来た

バスティアンが足を止めました。

紺色の制服を飾っている

徽章と金色のボタンを遡った

オデットの視線は、すぐに

見覚えがあるようで見覚えのない顔に

たどり着きました。

 

オデットは、時々、

帰って来たバスティアンに

出くわす瞬間を考えました。

数多くの仮定をしてみましたが

結論はいつも同じでした。

憎悪と軽蔑。

それが当然だったので、

謙虚に受け入れられるよう

心の準備をして来ました。

そのため、

静かな水面のような

バスティアンが与えた混乱は

さらに大きいものでした。

 

何の感情も読み取れない青い瞳に

向けていた視線をそらした

オデットは、まず立ち上がって、

バスティアンと向き合いました。

ゆっくり息を整えている間に、

彼が最後の一歩を縮めて

近づいて来ました。

 

バスティアンが黙礼すると、

オデットも礼儀正しく答礼しました。

驚いたり戸惑ったりする様子は

見られませんでした。

 

慎ましやかに頭を下げたオデットを

かすめて通り過ぎた

バスティアンの視線は、

遺族席に座っている男の顔の上で

止まりました。

彼は眠っている小さな女の子を

腕に抱いていました。

 

マクシミン・フォン・ジェンダス。

バスティアンは、

そう長くは経たないうちに、

1人で娘を育てている、

あの植物学者の名前を

思い出しました。

探偵の報告書に

しばしば名前を連ねていた

オデットの数少ない友人の1人でした。

夫の代わりを務めさせるほど、

その友情は、

予想よりはるかにすごいようでした。

 

バスティアンは、

微かな冷笑が滲み出る視線で

オデットを見つめました。

相変わらず、実に

ずる賢くて憎らしい女でした。

機転を利かせて媚びへつらい、

生き延びる道を模索したという評価は

訂正した方が良さそうでした。

 

錆びついていない演技力に

改めて感嘆させられた瞬間、

オデットが

喪服のベールをまくり上げました。

細くて長い首と力強く結ばれた唇。

端正な鼻筋。

 

隠されていた顔が

次第に露わになるにつれ、

バスティアンの眼差しは、

さらに深く、静かになって行きました。

 

赤くなった目頭の上に

留まっていた黒いレースは

葬送曲が止む頃になって

再び動き出しました。

 

帽子の上にまくり上げたベールを

整えたオデットは、その余韻の中で

ゆっくりと頭を上げました。

かましいほど澄み切っていて

超然とした青緑色の瞳に、

バスティアンは

喜んで向き合いました。

 

オデット嬢は、相変わらず

強情な性格をしている。

これくらいなら、

期待以上の楽しみを与えてくれた

再会と言えました。

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帰還しているにもかかわらず

帝国の英雄が、妻の父親の葬儀に

参列しなかったという噂が立てば

バスティアンの輝かしい名誉に

傷がつくかもしれないので、

彼がディセン公爵の葬儀に参列するのは

必須だったのではないかと

思いました。

 

バスティアンは、オデットのことを

ひたすら悪く考えているけれど

それは、自分を裏切ったオデットに

心を許すことがないよう、

自分に言い聞かせるために、

そうしているのではないかと

思いました。

 

オデットの顔を見なかった時は、

それが、比較的楽にできたけれど、

彼女と初めて会った時と同じ状況で

オデットと再会した後は、

難しくなるのではないかと思いました。

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