自分時間を楽しく過ごす 再婚承認を要求しますの先読みネタバレ付き

子供の頃からマンガが大好き。マンガを読むことで自分時間を楽しく過ごしています。再婚承認を要求します、ハーレムの男たちを初めとして、マンガのネタバレを書いています。

バスティアン 110話 ネタバレ ノベル 原作 あらすじ 取引の延長

110話 バスティアンはオデットを放って、皇帝の所へ行ってしまいました。

オデットは消え行く夕方の光の中で

目を覚ましました。

窓の向こうの空と海は、いつのまにか

夕日に染まっていました。

もうすぐ夕食の準備について

メイド長が聞きに来る時間でした。

 

早くこの状況を

収拾しなければならないということは

分かっていましたが、

それだけの余力が

残っていませんでした。

汗が冷えて冷たくなった体を

小さく丸めることが、

今のオデットにできる

最善のことでした。

 

ボタンが引きちぎられたドレスと

破れた下着、

それぞれ違う方向に投げられた靴。

乱雑に散らばっている

衣類を見ていたオデットの眼差しが

深まりました。

 

ああ、そうなんだ。

悪い夢を見たのかもしれないという

愚かな期待を捨てたオデットは

淡々と現実を受け入れました。

静かな波のように

押し寄せて来た悲しみは、

すぐに白い泡となって

消えて行きました。

 

オデットは、ただただ疲れていました。

長年に渡って溜まった疲れが

巨大な津波となって

押し寄せて来たようでした。

もう休みたい。

このまま、

とても長い眠りに落ちてしまっても

構わないと思いました。

無駄だと分かっていても、

より切実な願いでした。

 

オデットは水の中のような

静寂の中に横たわり、

日が暮れていく風景を見守りました。

 

澄んだ紫色の夕闇が降りて来る頃

オデットは、カチカチと

枕元から聞こえてくる

規則的な騒音の正体に気づきました。

あの男が外しておいた腕時計でした。

 

やっとの思いで体を起こしたオデットは

静かな眼差しで

バスティアンの時計を見つめました。

 

時計を外していたバスティアンと

目が合った瞬間、オデットは、

彼が以前と変わったことを

直感的に悟りました。

彼は制御不能な欲望に襲われた

過去よりも、はるかに理性的でしたが

それゆえ、さらに脅威的でした。

 

最後の希望であり救いだった男は

もういない。

その絶望的な現実に直面したのと同時に

再び、世界がひっくり返りました。

オデットが完全に思い出すことのできる

最後の記憶でした。

 

「奥様、ドーラです」

薄暗い寝室の向こうから

メイド長の声が聞こえて来ました。

はっと我に返ったオデットは、

慌てて立ち上がりました。

ガウンを取りに行くつもりでしたが、

体は思うように

動いてくれませんでした。

危なげに、ふらふらしていた挙句、

オデットは何歩も踏み出せずに

座り込んでしまいました。

 

うめき声を堪えようと

必死になっている間に、ドーラが、

頭痛のせいで休んでいると

聞いたけれど、もう大丈夫か。

症状がひどければ主治医を呼ぶと

本論を伝えました。

頭痛は、あの男が用意しておいた

言い訳のようでした。

 

オデットは、ようやく一息つくと

その必要はないと答えました。

そして、時間を稼げるような

言い訳をするために、

再び、唇を開いた瞬間、

脚の間を流れる、

ぬるい感触を感じました。

 

それが何かを悟った

オデットの眼差しが、

ゆらゆらと揺れました。

圧倒されるような重みと

馴染みのない熱気。裂けるような激痛。

肌がぶつかり合う音。

 

あの男の下で踏みにじられていた

屈辱的な瞬間のように、目を閉じても

結局、無視できなかった感覚が

突然、今のことのように

生々しく蘇りました。

目元が熱くなり、

息が詰まって来ました。

 

「奥様?本当に大丈夫ですか?」

切羽詰ったメイド長の声が

長引く沈黙の中に流れ込みました。

 

オデットは、

「はい、心配いりません」と答えると

喉元まで込み上げて来た嗚咽を堪え

それほど遠くない所に落ちている

ペチコートを引っ張って来て

恥ずかしい痕跡を拭いました。

 

正常な結婚をしていたとすれば、

とっくに済ませていた手続きに

過ぎませんでした。

もしかしたら、

初めて会った裏通りの賭場で

起きたかもしれないことでした。

だから深く気にすることはないと、

オデットは冷静な結論を下しました。

 

オデットはドーラにお礼を言うと、

助けが必要になったら呼ぶので

これで下がるようにと告げると

汚れたペチコートを抱えて

立ち上がりました。

幸い、メイド長は、

これ以上,、質問することなく

退いてくれました。

 

ゆっくりと息を整えたオデットは、

「考えて」と

何度も自分に言い聞かせながら

浴室へ向かいました。

まだ意識がはっきりせず、

まともな思考をすることは

難しかったけれど、少なくとも、

あの男は狂っているという事実だけは

明らかでした。

それ以外のどんな言葉でも、

復讐のために子供を産めという決意を

説明できそうにありませんでした。

そしてオデットは、何があっても絶対に

あの狂った男が望む罪の代償を

払う気がありませんでした。

北海の情勢と軍事同盟について

議論していた皇帝が、

これは全て君のおかげだと、

突然、話題を変えました。

 

バスティアンは

謙遜する笑みを浮かべながら

グラスを下ろしました。

ベロップ皇太子夫妻を伴った

夕食会と懇談会。

そして皇帝と2人きりで

酒を酌み交わす席に至るまで。

これで、

もう十分、前置きが済んだろうから、

そろそろ本題に入る時でした。

 

皇帝は、

ベロップと軍事同盟を

無事に締結できたおかげで、

北海戦線の防衛線を

強化することができた。

イザベルの政略結婚が

実現しなかったら、

得られなかった栄光だ。

この点に、常に深く感謝していると

告げると、葉巻に火を点け

手で合図を送りました。

遠くで待機していた侍従たちが

退きました。

ドアが閉まる音が次々と続き、

やがて深い静寂が訪れました。

皇帝の書斎は、今や

完璧な密室になっていました。

 

ゆったりと葉巻を吸っていた皇帝は

男爵の爵位までは無理がなさそうだと

単刀直入に提案することで

交渉の口火を切りました。

 

皇帝は、

君に約束した、ご褒美のことだ。

これほどの貢献なら、

帝国の貴族年鑑に名を連ねる資格が

十分あるけれど、どうだろうかと

尋ねました。

バスティアンは、

もったいない言葉だと答えました。

 

皇帝は、

なぜ?末端貴族の爵位程度では

満足しないのかと、

皮肉のこもった冗談を言うと

灰を払い落としました。

そして、

今すぐ、それ以上の爵位を与えれば、

反発が激しくなるだろう。

自分が盾となってやれるのは

男爵まで。

君にとっても、その方が得だろう。

その代わり、今のような調子で

出世街道を走るなら、40歳頃には

伯爵の爵位を持つ海軍提督の座に

就けることを約束すると告げました。

 

しかし、まっすぐな姿勢で座り、

傾聴していたバスティアンは、

申し訳ないけれど、

自分は爵位を望んでいないし、

提督の座も同様だと、

意外な返事をしました。

そろそろ取引を終える準備をしていた

皇帝は驚いて眉を顰めました。

 

皇帝は、

バスティアン・クラウヴィッツ

野心を捨てたのか。よくも、まあ

信じられないようなことを

言うものだと呆れました。

 

バスティアンは、

もちろん、

自分の力で成し遂げられるのであれば

喜んで手に入れるけれど、

この機会を、それを得るために

使おうという気持ちはない。

どうか理解して欲しいと言うと

笑顔で頭を下げました。

 

一見、

謙虚な態度のように見えましたが

その裏に込められた意味は、

この上なく傲慢でした。

いわば、

このような方法で手に入れなくても

いつかは自分で勝ち取るという

宣言なわけでした。

その小生意気な自信に

あまりにも呆れて、皇帝は

思わず笑ってしまいました。

 

このくらいなら、

しっかり首輪をはめて飼いならしたと

思っていましたが、どうやらそれは

勘違いのようでした。

しかし、その事実は、

あまり不快ではありませんでした。

あえて皇帝の前で

歯をむき出しにしたという事実は

不埒だけれど、

特に間違った言葉だと言い切るのは

難しいものがありました。

 

いつか、彼は自ら作った翼を付けて

飛び立つだろう。

おそらく、今得られる場所よりも

はるかに高い所へ。

 

皇帝は、

それでは一体何を望んでいるのか。

まだ手に入れてもいない

爵位や提督の地位さえも、

自分のもののように思っている君が

まさか、

すでに有り余るほど持っている

財力を欲しがるはずがないだろうと

怒りの色のない顔で

バスティアンに向き合いました。

 

彼は、

当初のままの平常心を保ちながら

後々のために

返事を保留してもいいかと、

とんでもないことを言いました。

深く悩んでいた様子がなかったのを

見ると、事前に準備しておいた

返事のようでした。

 

皇帝は試しに言ってみろと

言わんばかりに目配せをしました。

バスティアンは、

自分の力では成し遂げられない何か、

必ず皇帝の力を借りなければならない

何かが生じた時に、

このご褒美を貰いたいと思うと

告げました。

 

皇帝は、

つまり、今すぐ自分から、

得るものがないと言うのか。

今、皇帝を

侮辱しようとしているのかと

尋ねました。

 

バスティアンは、

とんでもない。

むしろ自分は、もっと大きな欲を

出したくなったということを

伝えていると返事をすると、

首をまっすぐに伸ばして

皇帝を見つめました。

そして、

その日が来るまで、

この取引を延長するということは、

皇帝との私的な関係を

続けられるようになったという

意味でもあると思うと話しました。

 

皇帝は「それで?」と尋ねました。

バスティアンは、

褒美を大事に取っておく代償として

皇室との親交という利子を

得たいという意味だと答えました。

 

皇帝は眉を顰めながら、

自分との約束が君の預金通帳だとでも

思っているのかと

呆れたように聞き返しました。

ぶつかるように視線が交わりましたが

バスティアンは

皇帝の目を避けませんでした。

 

バスティアンは、

オデットという変化要因によって

狂わされた航路の終着点は

はたして、どこになるのか、

皇宮に来る間ずっと考えていました。

今すぐには

何も確信できませんでしたが、

必ず最大限の利益を得てみせるという

バスティアンの目的は明確でした。

 

そのためには、

将来を期する方が得策だと

判断しました。

生半可な決定で無駄にした機会は

永遠に戻って来ないだろうし、

皇室との親交を深める時間を

稼ぐことができれば、それもまた

大きな利益になるという計算が

加えられた結論でした。

 

中途半端に隠してみても、

皇帝は見抜くだろう。

それなら、むしろ

正面からぶつかった方がいいと

バスティアンは判断しました。

 

皇帝は非情でありながらも

合理的な人でした。

自分にも得になる提案だと思ったら

受け入れるはずでした。

そしてバスティアンは

皇帝が興味を引かれるほどの

利益になる自信がありました。

 

皇帝は、

君は虚飾を知らない商人だ。

なぜ、社交界

あまりにも君を嫌うのか

分かる気がすると言うと、

グラスを空けて、

豪快な笑いを爆発させました。

バスティアンは謙虚な臣下のように

頭を下げました。

 

皇帝は、

フェリアの貴族の婿になるという

野心はどうなったのか。

ラビエル公爵は、決して

爵位のない婿を迎え入れるような

人物ではないということを、

君も知らないはずがないだろうと

言いました。

 

一段とくつろいだ姿勢で座っている

皇帝の目が鋭くなりました。

バスティアンは難なく

その目つきの意味を理解しました。

娘を守るための駒として使った

姪のことを、今になって

思い出したようでした。

そして、皇帝は、

そういえば、

厄介者の義父がいなくなったから

あえて妻を変える必要が

なくなったのかも知れないと、

バスティアンの返事を待たずに

自分の見解を付け加えました。

遠回しに下した命令でした。

 

バスティアンは

愛想笑いをしながら目を伏せました。

習慣的に時間を確認しようとした

静かな瞳に微細な亀裂が生じました。

時計を忘れて来た。

時間を命のように考える海軍にとって

致命的なミスでした。

 

バスティアンは、

少し当惑した目つきで

何もない手首を見つめました。

あの記憶を思い出すだけで

息が熱くなりました。

そんな自分がふと情けなく思えて、

バスティアンは短く失笑しました。

 

皇帝は、

君がその結婚について

どのような決断を下しても、

皇帝としての自分は、理解し、

尊重する準備ができている。

しかし、一個人としては、

君がオデットと

上手くやってくれることを願う

欲が出てしまうのは仕方がない。

いずれにせよ、あの子は

自分の肉親だからと、

ため息混じりの皇帝の声が

葉巻の煙と共に伝わって来ました。

時計のない袖を整えたバスティアンは

淡々とした目で皇帝を見つめました。

 

肉親。

適当に使って捨てたチェスの駒を指す

言葉ではありませんでしたが、

バスティアンは何の反論もせず

「はい、陛下」と返事をしました。

そして、

実はこの一晩中、

あなたの肉親の一糸まとわぬ姿を

考えていたという返事の代わりに

バスティアンは

丁重な笑みを浮かべながら、

肝に銘じると告げました。

 

今も頭の中は、

あの女に乗って

打ち込みたいという欲望で

いっぱいだという不敬な告白は

熱を帯びたため息とともに

飲み込みました。

 

皇帝は満足そうな表情で

呼び鈴を鳴らしました。

影のように静かに戻って来た

侍従たちは、

空になったグラスを満たした後、

再び遠くに退きました。

 

新しい約束には、新しい祝杯が

必要なのではないだろうか。

皇帝が勧めた酒が

夜を照らす光の中で輝きました。


バスティアンは躊躇うことなく

そのグラスを空にしました。

強い酒が流れる腹の中が

熱くなりました。

もしかしたら、すでに溜まっていた

熱気のような気もしました。

ロビスは、

奥様は早く休んだと、

女主人について知らせることで

簡単な報告を終えました。

すでに夜も更けていました。

皇宮でのことが

とても気になりましたが、

今はそれよりも、

主人の安息を優先すべき時でした。

 

バスティアンは、

「お疲れ様でした。

これで休んでください」と

落ち着いた返事をすると、

再び歩き始めました。

いつもより低く沈んだ声からは、

微かな酔いが滲み出ていました。

 

もしかして、着替えの手伝いが

必要かもしれない。

ふと思ったロビスが振り返ったところ

彼の目が大きくなりました。

ゆっくりと廊下を横切って行った

バスティアンは、

妻の寝室の前で足を止めました。

バスティアンは、

それほど酔っていなかったので

酒によるミスであるはずが

ありませんでした。

 

驚いたロビスが息を殺している間に

ドアが開きました。

バスティアンは

一抹の躊躇もない足取りで

敷居を越えました。

その扉が再び閉まったと同時に、

長い一日の終わりを告げる

鐘の音が響き渡りました。

 

ロビスは安堵のため息をついて

振り向きました。

廊下の角の陰に隠れて、

覗いていたメイドたちが

バタバタと逃げる音が

夜の静寂を乱しました。

 

軽率な行動でしたが、

ロビスは、あえて彼女たちを

叱責しないことにしました。

明日の朝、使用人休憩室は

普段とは違う話題で

騒がしくなるはず。

主人夫妻の不和についての噂は

もう消えたと見ても

差し支えないようでした。

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いきなりバスティアンと

体を重ねることになり、

最初、オデットは

ショックだったでしょうけれど

正常な結婚をしていたとすれば、

とっくに

済ませていた手続きであること、

初めて会った裏通りの賭場で

起きたかもしれなかったこと、

そして、バスティアンが

以前と変わってしまった、

狂ってしまったと、すぐに冷静に

考えられるようになったのは

父親のせいで苦労の連続だった

オデットが身に着けた処世術の

為せる業なのかもしれません。

でも、バスティアンが

以前と変わってしまったのは、

自分が裏切ったせいだとは

おそらく、

考えていないのですよね。

だから、バスティアンの望む

罪の代償を払う気がないと

強気になれるのでしょうけれど。

 

バスティアンは、

オデットから子供を取り上げて

サンドリンと一緒に育てることで

オデットに復讐するつもりでいますが

実は、オデットと離婚したくない、

彼女との子供が欲しいという愛情の

裏返しなのではないかと思います。

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