自分時間を楽しく過ごす 再婚承認を要求しますの先読みネタバレ付き

子供の頃からマンガが大好き。マンガを読むことで自分時間を楽しく過ごしています。再婚承認を要求します、ハーレムの男たちを初めとして、マンガのネタバレを書いています。

バスティアン 119話 ネタバレ ノベル 原作 あらすじ 茶色の封筒

119話 オデットはマクシミンに連れて行ってもらったラッツで、彼の目の前で倒れてしまいました。

最初に目に入ったのは

見慣れない天井でした。

午後の日差しが、

装飾を最小限に抑えた

ライトグレーの天井を染めていました。

天蓋から垂れ下がった

レースの影の下で目覚める

オデットの部屋とは違う風景でした。

 

「良かった」と

ため息の混じった男の声が、

ぼんやりとした意識の向こうから

聞こえて来ました。

声の音色の温度が違っていました。

聞き慣れたあの声より

温かくて柔らかでした。

日差しが心地よい春の日を連想させる

つまり、まるで・・・

 

「ジェンダス卿?」

オデットは乾いた唇で

その名前を囁きました。

ゆっくり首を回すと、

予想していたその顔が

視野に入って来ました。

ベッドの傍らに座ったマクシミンが、

物思いに満ちた目で

彼女を見つめていました。

 

マクシミンは、

オデットが車から降りて間もなく

意識を失って倒れたので、

とりあえず自分の家に連れて来たと

説明しました。

 

オデットはお礼を言うと、

濡れた綿のように重く感じられる体を

辛うじて起こして座りました。

自ら水を注いだグラスを渡した

マクシミンは、窓辺へ行き

カーテンを調節しました。

光がオデットの顔に

直接触れないようにする

細やかな配慮でした。

 

水を飲んで我に返ったオデットは、

じっくりと記憶を辿ってみました。

 

ジェンダス伯爵が訪問する前から

体調が良くありませんでした。

寒くて鳥肌が立ち、

冷や汗が流れました。

それでも何とか耐えられたけれど

車で移動している間に

状態が急激に悪化しました。

今や、食べ物が目の前になくても、

吐き気を堪えるのに必死でした。

 

マクシミンは、

海軍省に連絡しておく。

それほど遠くない所なので、

クラウヴィッツ少佐が、

すぐに来るだろうと言いました。

その言葉にオデットは、ひどく慌て

そうしないで欲しいと言って

マクシミンを制止しました。

疑いを招くような言動だということは

分かっていたけれど、

そんなことを計算するだけの余裕は

残っていませんでした。

 

オデットは、

夫は、あまりにも忙しい人なので

余計なことで

心配させたくないと言いました。

しかし、再びベッドの横に戻った

マクシミンは、

妊娠は余計なことではない。

妻を愛する夫なら、

むしろ、この世で

最も大きな祝福だと思って

喜ぶニュースだと反論すると、

複雑な心情を隠さない顔で

オデットを見つめました。

 

オデットは、

それは、どういうことかと

尋ねました。

 

マクシミンは、

ジェンダス家の医師が診察に来た。

確信はできないけれど、

妊娠の可能性があるので

薬は処方できないとのことだった。

目が覚めたら、もう一度、

主治医の診察を受けるように

勧められたけれど、

自分の考えも同じだと答えました。

 

虚ろな目を瞬かせていたオデットは、

慌てて首を振り、

そんなわけがないと反論しましたが

マクシミンは、

よく考えてみるように。

アルマを妊娠していた時、

自分の妻も今のあなたと同じ症状を

見せていたと話しました。

 

しかし、オデットは、

ジェンダス卿は、

何か大きな誤解をしている。

そんなことはない。

自分の体は

自分が一番良く知っていると、

再考の余地すらないかのように

断言しました。

 

オデットは、

マクシミンが助けてくれたことに

お礼を言うと、

自分はこれで失礼すると告げ、

逃げるようにベッドの下に降りました。

しかし、一歩もまともに

踏み出すことができず、

体をふらつかせました。

 

マクシミンは落ち着いて

彼女を支えました。

オデットの震えが、

触れ合った体を通して

鮮明に伝わって来ました。

 

しばらく物思いに耽っていた彼は、

暖炉の前の椅子に

オデットを連れて行きました。

立ち上がろうとするオデットの肩を

そっと押す彼の手には、

かつてない断固たる力が

込められていました。

 

マクシミンは、

話したくないことなら、

あなたの意思を尊重する。

むやみに介入して干渉しないと

約束する。

その代わりに、もう少し休んでから

自分と一緒に行くことにしようと

言いました。

 

オデットは、

「ジェンダス卿、それは・・・」

と反論しようとしましたが、

彼は姿勢を低くし、

オデットと視線の高さを合わせながら

こんな状態で一人で道に出るのは

危険だ。 目的地まで同行した後、

また家まで送ってあげると

言いました。

 

当然、夫を呼ばなければならない

状況だということを

知っているけれど、

とても怖がっているオデットを

無視することはできませんでした。

だからといって、

ただ傍観するわけにもいかないので

残された方法は一つだけでした。

 

しばらく躊躇っていたオデットが

小さく頷いた瞬間、

「そろそろ出発の時間です」と

緊迫したノックの音が

聞こえて来ました。

マクシミンは、

忘れていた学長との約束を

ようやく思い出しました。

 

マクシミンは、

遅くとも5時までには

帰って来ることができるだろうと

告げると、

炎の前でも震えているオデットの肩に

毛布を掛けた後、

急いで客間を出ました。

 

廊下の角を曲がると、

昼寝をしているとばかり思っていた

アルマが走って来て、

クラウヴィッツ夫人は

旅行に行くようだ。

カバンに可愛い服と靴が

たくさん入っていると、

大はしゃぎしながら

ペチャクチャ喋りました。

どうやらオデットの荷物を

開けてみたようでした。

 

マクシミンは、

他人の物を、

許可なく勝手に触ってはいけないと

厳しい口調で娘を叱りました。

 

驚いたウサギのような目をしたアルマは

悔しそうに首を振りながら、

違う、カバンが倒れたので

起こしてあげただけ。

悪いことではないと、

今にも泣きだしそうな顔で

抗議しました。

 

そのアルマを見つめていた

マクシミンの視線が

煌めく何かを握っている小さな手に

向かいました。

 

彼が、それは何かと尋ねると、

アルマは、

小さなメグがカバンから落ちて

怪我をした。

クラウヴィッツ夫人の所へ

連れて行ってあげると答えました。

そして、アルマは

生きている命を扱うように

慎重に手に持った子犬の人形を

差し出しました。

それを受け取ったマクシミンの眼差しが

深くなりました。

 

それは、

オデットが飼っている犬に似た

クリスタルの置物でした。

旅に出る貴婦人が

持って行くようなものでは

ありませんでした。

目的地が近づくにつれて、

オデットの歩みは

ますます速くなって行きました。

いつの間にか日が暮れていました。

 

闇が降りて、

裏通りが活気づき始める前に、

用事を済ませるためには、

一刻を争う必要がありました。

 

今頃、ジェンダス伯爵は

戻って来ただろうか?

夕焼けに染まった空を見ると

心が乱れましたが、それでも

オデットは振り返りませんでした。

 

ジェンダス伯爵は秘密を守ってくれる。

バスティアンに

連絡を取るつもりだったら

とっくに、そうしていただろうから。

 

辛うじて理性を取り戻し、

状況を判断したオデットは、

その足で、ジェンダス家を去りました。

これ以上、

迷惑をかけるわけにはいかないので、

感謝の気持ちだけ、大切に胸の中に

しまっておくことにしました。

 

蟻の巣のような路地を通って

質屋にたどり着いた時は、

息が喉元まで上がっていました。

しばらく立ち止まり、

呼吸を整えたオデットは

落ち着いてドアを開けました。

 

店の隅に座って居眠りしていた老店主は

ドアチャイムの音に驚いて

ぱっと目を覚ましました。

 

カウンターの前に近づいたオデットは

持って来たカバンを、

その上に置くことで用件を伝えました。

首に掛けていた片眼鏡を掛けた老店主も

何の返事もなしに、物を見始めました。

時々、黒いベール越しの顔を

チラチラ見る視線が

感じられたりもしましたが、

オデットは動揺しませんでした。

 

売り物を慎重に調べていた老店主は

これも売るのかと尋ねました。

彼は、茶色の封筒を持っていましたが

このカバンの中に

入れた覚えのない物でした。

 

オデットは「いいえ」と答えると

とりあえずそれを返してもらいました。

謝って入れてしまった手紙だと

思いました。

しっかり密封された封筒に押された

印影を目にするまでは。

 

飛翔する鷹。

ジェンダス家の紋章を見た

オデットの目に、

当惑の色が浮かびました。

 

いくら考えても解消されない疑問を

反芻していたオデットは、

今日の最後の光が差し込んでいる

窓辺へ行って、封筒を開けました。

 

驚いたことに、

お金が入っていました。

その間に挟まれている

メモを見つけたオデットは

急いでそれを広げました。

 

アルマが誤ってカバンを倒して

奥様の物を傷つけてしまいました。

娘の過ちを代わりにお詫びいたします。

このお金は壊れた子犬の置物代です。

 

急いで書いたのか、

普段より筆跡が乱れていましたが

間違いなく

ジェンダス伯爵の筆跡でした。

 

ようやく、オデットは

売るために持ってきた装飾品を

思い出しました。

カバンの中身を見られてしまった

事実より、もっと当惑したのは、

すべてを知りながらも

目をつぶってくれる

ジェンダス伯爵の態度でした。

しかもこんな大金だなんて。

 

マルグレーテに似ていたので

大切にして来たけれど、

あの置物は、路上の屋台で買った

安物に過ぎませんでした。

決して、このような代価を払うほどの

物ではないということを

ジェンダス伯爵が

知らなかったはずがありませんでした。

 

考えがそこまで及ぶと

手紙の末尾に添えられた追伸を

理解することができました。

 

私は、いつでも、

あなたを助ける準備ができています。

 

その文章を

何度も繰り返して読んでいるうちに

売り物の鑑定が終わりました。

 

主人の老人の咳払いを聞いたオデットは

手紙ときれいにたたんだお金を

ハンドバッグの奥深くに

押し込みました。

目元が熱くなり、喉が詰まりましたが

耐え難いほどではありませんでした。

 

再びカウンターの前に戻ったオデットは

いつものように冷静な態度で

交渉に臨みました。

こちらの立場の方が弱いので、

希望する金額を全て受け取ることは

できませんでしたが、

それでも妥協可能な線は

守ることができました。

 

オデットはカバンまで全て

渡してしまった後、質屋を出ました。

夕闇が濃く降りた裏通りは

歓楽の光に

徐々に染まりつつありました。

最も華やかな照明を灯した

向かい側の賭場に向かい合った

オデットの顔の上に

自嘲の色が過りました。

 

情けない偽善的な振る舞いをしながら

歳月を浪費し、

今日に至ることになった自分を

憎たらしく思いました。

自分の手で

全てを台無しにしておきながら

責任と義務を口にするなんて

滑稽なことでした。

いっそ全て投げ捨てて逃げていたら

こんな悲劇は

起こらなかったはずでした。


人としてなすべき最低限のことを

やり尽くしたいという罪悪感だと

信じて来ましたが、今になって思えば

ただの自己満足に

過ぎなかったような気もしました。

その無駄な欲のせいで、

もっと大きな罪を犯すことになるとは

夢にも思いませんでした。

 

ギュッと閉じていた目を開けた

オデットは、逃げるように

狭くて暗い道に入りました。

 

その病院は、

路地の一番奥の薄暗い所に

ありました。

まともな看板一つない

怪しい外観とは違って、

実力だけは信頼できると

言われていました。

そのおかげで長年、

同じ場所で同じ仕事で

金儲けをしているそうでした。

 

躊躇していたオデットが、

ようやく一歩を踏み出したと同時に

ドアが開きました。

腫れた目を

まともに開けることもできない女が

友人に助けられながら

病院を出て来ました。

 

オデットをチラッと見た女は、

死ぬほど痛いそうだ。

一人で行ったら、

這いずって出て来る羽目になると

ぶっきらぼうに警告しました。

彼女にしがみついている女は

苦痛に満ちた悲鳴を上げながら

すすり泣いていました。

 

「おい、そこの」

遠ざかっていく2人の女を

見守っているオデットの背後に

痰が絡んだ声が飛んで来ました。

 

オデットはビクッとして

振り返りました。

開いたドアの向こうで、

老婆が手招きしていました。

エプロンについた血が

目に飛び込んで来ました。

おそらく、

先ほどの女の痕跡のようでした。

 

すぐに逃げたい気持ちを

必死に抑えたオデットは、

みすぼらしい建物に向き合いました。

無意識に

下腹を撫でていた手を引っ込めて

大きく息を吸いました。

 

ツケはダメ。

どういう意味か分かるだろう?と

こけおどしをする老婆の目が

冷たく光りました。

頷いて見せたオデットは、

お金が入ったカバンを

力強く握しめながら歩き出しました。

f:id:myuieri:20210206060839j:plain

f:id:myuieri:20210206071517p:plain

「情けない偽善的な振る舞い」は、

いつの頃からのことを

言っているのでしょうか。

賭場を見て、そう思ったということは

バスティアンに初めて会った時に、

彼に虚勢を張ったことも、

そうだと思っているのでしょうか。

そうであるにしろ、ないにしろ

全ての事の発端は、

オデットがティラを庇ったこと。

でも、オデットは、

それを後悔していないし、

反省もしていないのですよね。

 

「自分の手で

全てを台無しにしておきながら

責任と義務を口にするなんて」

これは、

バスティアンへの裏切りのことを

言っていて、

反省しているようにも思えるのですが

正直、オデットが何を考えているのか

よく分からないし、

バスティアンには

感情移入できるのですが

オデットに対しては

それができません。

 

せめて、

自分の子供を取り上げられて

サンドリンに育てさせたくないという

気持ちを露わにしていれば

オデットを理解できそうですが、

なぜ子供を葬ろうとしているのか

私には理解不能でした。

ジェンダス伯爵は

バスティアンのせいで

オデットが疲弊していることに

気づいているので、

彼に全てを打ち明けて

助けてもらえばいいのにと思います。

彼は、きっと

受けれて入れてくれるはずです。

f:id:myuieri:20210206060839j:plain