自分時間を楽しく過ごす 再婚承認を要求しますの先読みネタバレ付き

子供の頃からマンガが大好き。マンガを読むことで自分時間を楽しく過ごしています。再婚承認を要求します、ハーレムの男たちを初めとして、マンガのネタバレを書いています。

バスティアン 124話 ネタバレ ノベル 原作 あらすじ 棘のような疑問

124話 オデットはフェリアへ逃げようとしています。

オデットは、

見慣れた夢の残像の中で

目を覚ましました。

1年で最も昼が長い日。

ベールをかぶって

6月の日差しの中を歩く夢でした。

 

その道の端に立っている

夏至の太陽に似た男が見え始めると、

オデットは、

繊細で美しいレースの影の下で

首をまっすぐに伸ばして、

息を整えながら、

絶対に傷つかないと決心しました。 

 

オデットは、

静かなため息をつきながら

体を起こして座りました。

人の気配を感じたので目を向けると、

隣に、酒に酔って倒れ込み、

寝てしまったバスティアンが

見えました。

その夢の最後の場面と同じ顔は

闇の中でも、鋭い閃光のように

視界を切り裂きました。

 

ソファーへ移動するために

立ち上がったオデットは、

数歩も踏み出せず、

その場に呆然と立ち止まりました。

思わず目を向けた窓の向こうに

見慣れた明かりが輝いていました。

 

オデットは、

まだ眠気が完全に覚めていない

ぼんやりとした目で、

冷たい夜を照らしている

遊園地の観覧車を眺めました。

あの夢のような光の中で、

今日1日中、

懸命に打ち消し続けてきた、

とりとめのない疑問が

再び頭をもたげました。

 

もしも、遊園地に行こうという

ティラの願いを、

聞き入れていなかったら、

どうなっていただろうか。

ティラと父親の争いは、

あの日のように

激しくならなかっただろうし、

2年間の契約結婚

応じることもなかったはず。

そうなっていたら、

バスティアン・クラウヴィッツの名前は

かつて縁談が持ち上がった

「素敵な男」程度の意味として

残ることができただろう。

本のページの間に挟んだ

押し花の花びらのように。

みすぼらしい人生に残された

特別な思い出の1ページとして。

 

しかし、その光は

オデットの味方ではありませんでした。

 

もし、あの年の秋に

あの観覧車に乗れていたら

何か変わっただろうか。

 

あの日のバスティアンは

とても優しかった。

だから、もしかすると、

出征の知らせについて

率直に尋ねる勇気を

持てたかもしれませんでした。

 

万が一、

あなたは自分の人生とは関係のない

2年間の雇用人に過ぎないと、

あの男が口にしたとしても、

心の痛む言葉を恐れずに、

お互いの本心を

分かち合う機会があれば、

彼への信頼を持つことができたかも

しれないのに、その光さえも

オデットには許されませんでした。

 

それならば、せめて

雨が降るラッツの空を横切る

観覧車の明かりが輝いていた夜に

時間が止まっていたとしたら、

自分たちは、

今とは違う姿でいられたのだろうか。

 

巡り巡った心の行き着いた先は、

結局、この2年間、

心の奥深くに突き刺さっていた

棘のような疑問でした。

 

オデットは、

白くぼやけた光の残像が

残っている目を向けて、

バスティアンを見つめました。

いつの間にか目を覚ました彼が

じっと、

オデットを見つめていました。

 

光と闇の境界の上で、

お互いを映した2人の目が合いました。

その静かな見つめ合いに

先に終止符を打ったのは

バスティアンでした。

 

そっと閉じていた目を開けた

バスティアンは、体を起こして座ると

オデットに、

1人になった気分はどうかと

尋ねました。

だいぶ酔っているのか、

いつもより動作が

明らかに鈍くなっていました。

 

オデットは答える代わりに

窓際のテーブルへ行き、

水を1杯注ぎました。

それをバスティアンに差し出すと、

彼の顔から表情が消えました。

 

バスティアンは、

どういう目的かと尋ねました。

オデットは、

かなり酔っているからと答えました。

 

分かっていると、

バスティアンが、あまりにも

簡単に納得したので

オデットは当惑しました。

適当な答えが見つからず、

躊躇している間に

彼がコップを受け取りました。

 

一気に飲み干したグラスを

下ろしたバスティアンは、

ああ、そうだ。

自分の高貴な奥様が好きな

お金を渡さなければと言って

クスッと笑うと

ベッドから立ち上がりました。

 

オデットは、

その場にまっすぐに立ったまま

彼を見ました。

よろめきながら

寝室を横切って行った彼は、

酔っ払っても、

きちんと片づけてあった

コートのポケットから

財布を取り出しました。

 

オデットは、

頬が熱くなるのを感じましたが、

それを表に出しませんでした。

ただでくれるというお金を

遠慮する理由はありませんでした。

旅費の足しになるはずだから、

むしろ有難いことだと

思うことにしました。

 

しかし、バスティアンは、

片手でギュッと握った紙幣を

じっと見下ろして

立っているだけでした。

時間が止まったかのような静寂は、

正時を告げる鐘の音が、

微かに聞こえるまで続きました。

 

財布とコートを無造作に投げ捨てた

バスティアンは、

テーブルの横に置かれた椅子に座って

荒い息を吐きました。

窓から差し込む冷たい月の光が、

お金を握っている彼の手を

静かに照らしました。

 

表情を整えたオデットは、

落ち着いた足取りで

彼の前に近づきました。

丁重に手を差し出すと、

バスティアンは

ゆっくりと頭を上げました。

ぞっとするほど

冷ややかに沈んだ眼光に

恐怖がよぎりましたが

オデットは退きませんでした。

 

「ください。

ありがたくいただきます」と告げると

観覧車が立っている街の向こうを

見つめていたオデットは、

再び視線をバスティアンに向けました。

 

目的を達成するためには、

彼を刺激してはならないとことを

知りながらも、これ以上、

無視できないほど大きくなった

胸の奥の痛みが、

オデットを無謀にさせました。

 

この男は絶対に、

自分を傷つけることはできないと

信じてきました。

本心が見えなかったからでした。

しかし、息が詰まるほど痛くて

耐えられませんでした。

 

「あなたはいつもこうなんだ」

バスティアンは、

歪んだ笑みを浮かべながら

椅子から立ち上がりました。

あまりにも呆れてしまって

怒りさえ起きませんでした。

 

泣きそうな顔で

生半可な挑発をするオデットが、

彼は、ただ滑稽でした。

明らかに分かっていながらも、

間違いなく巻き込まれてしまう自分も

同じでした。

 

バスティアンは、

よりによってこの女を妻にした

自分の選択を呪いました。

英雄への賜物と称した荷物を

背負わした皇帝の偽善を軽蔑し、

裏通りの賭場でさえ、

あれほどまでに無能で

望まない勝利をもたらした

ディセン公爵を憎悪しました。

 

しかし、

結局はすべて無駄な足掻き。

ふと気がつくと、

騙された愛の残滓の中で、

まるで首輪につながれたまま

主人を待つ犬のように

まだ、その場をうろうろしている

自分に気がつきました。

 

オデットは、

きちんと会計をして欲しいと告げると

手を伸ばして、

バスティアンが握り締めている

紙幣の端をつかみました。

まるでお金が欲しくて施した

親切に過ぎないと

宣言するようでした。

 

バスティアンは鼻で笑うと、

やり切れないといった様子で

顔を両手で拭いました。

この女を傷つけるための努力は、

まるで逆手に握った刃のようでした。

力任せに振り回すほど、

むしろ斬られる方は

自分のような気持ちを

振り払うことができませんでした。

 

どれだけ、もっとぶつかったら

あなたが壊れるのか。


お金を握りしめた

バスティアンの手の甲の上に

青い血管が

鮮明に浮かび上がりました。

 

壊れたあなたの中で

自分が探しているものは何なのか。

 

溢れんばかりの涙を浮かべながらも

最後まで泣かないオデットを

見つめていたバスティアンの顔が

これ以上、抑えられなくなった

激情に歪みました。

 

彼は、ビリビリに破いたお金を

暖炉の炎の中に投げ捨てると、

窓際へ行って

乱れた呼吸を整えました。

暗闇の向こうでは、

あの忌々しい女が愛する

観覧車の明かりが輝いていました。

 

息が詰まりそうになり、

後ろを向いたバスティアンは

つい声を出して笑ってしまいました。

身を屈めたオデットが、

暖炉の前に落ちている紙幣の欠片を

拾っていました。

一羽の白鳥のように、

孤高なその姿の上に、

あの舞踏会の夜の出来事が

浮かび上がりました。

 

超然と、壊れた宝石を拾っていた

オデットを見た皇女が

狂ったように暴れた理由を、

バスティアンは、

今や理解することができました。

 

オデット嬢は、

相手を限りなく卑賤にする

才能のある女でした。

あの日の皇女を嘲笑った

自分の姿が浮かぶと、

口元に浮かんだ自嘲の色が

さらに濃くなりました。

 

つかつかと近づいてくる

バスティアンの足音が

聞こえ始めましたが、

オデットは、破れた紙幣を拾う手を

止めませんでした。

どうせ使えなくなったお金だという

事実など、どうでも良いと思いました。

 

自分でも理解しがたいその意地が、

ふと悲しくなった瞬間に、

自分の体が浮かび上がりました。

ふと気がつくと、オデットは、

いつの間にかバスティアンに

向き合っていました。

肩を包み込む大きな手からは、

暖炉の温もりを忘れさせるほどの

熱が伝わって来ました。

 

「むしろ泣け。

自分の前に跪いて、すがりつけ」

噛みしめるように吐き捨てた命令が

酒の濃い香りのする息に乗って

伝わって来ました。


オデットは、

それは難しいかもしれないと

答えると、顔を背けて

飢えた獣のように光っている

青い目を避けました。

 

オデットは、

すでに、あなたが望む方法で

借金を忠実に返していると

主張しました。

「借金・・・?」と聞き返す

バスティアンの声が低く沈みました。

 

耳たぶはもちろん、

うなじまで広がった熱を

悟られたくないオデットは、

慌てて彼を押しのけて

背を向けました。

しかし、バスティアンは、

強引に彼女を

自分の方へと振り向かせると、

その顔を逃がさぬよう固定し、

真っ向から視線をぶつけて来ました。

 

オデットは、

まるで津波のように襲って来た激憤に

襲われました。

握りしめていた紙幣の欠片を

バスティアンの顔に投げつけ、

力いっぱい、もがきました。

むやみに振り回していた手が

頬を叩いても、

彼は引き下がりませんでした。

その一方的な戦いは

気力を尽したオデットが倒れて

幕を閉じました。

 

体が傾いたのと同時に

硬い腕が体を包みました。

ふと気がついた時、オデットは

床に倒れて横になった

バスティアンの上で

息を切らしていました。

 

苦しい。

オデットは声のない

悲鳴を上げるように

バスティアンを睨みつけました。

 

あなたも自分と同じくらい

苦しんでくれればいいのに。

この男への

最初で最後の欲を認めた瞬間、

再び、世界がひっくり返りました。

 

オデットの顎をつかんで

唇を開かせたバスティアンは

猛烈な口づけを浴びせました。

息を吸い込み、

喉元まで上がってきた嗚咽まで

貪るように飲み込みました。

 

彼を引っ掻いて殴っていた

オデットの手は、いつの間にか

永遠に届かない光に似た髪を

つかんでいました。


彼の熱い吐息が、

凍てつくような虚無を

じわじわと侵食して行きました。

どうしようもなく巻き込まれました。

抜け出す道は見えませんでした。

先に目を覚ましたのは

バスティアンでした。

床で眠っていることに気づいたのと

同時に、ひんやりとした

柔らかな体温が伝わって来ました。

彼に体を密着させて来た

オデットでした。

ゆっくりと揺らめく暖炉の炎が

一つに絡み合ったまま

横になっている2人の

一糸纏わぬ姿を染めていました。

 

バスティアンは、

オデットを起こさないように

慎重に体を起こしました。

まずガウンを羽織ってから、

眠っているオデットを

抱き上げました。

もともと、

あまり健康な体質ではなかった女は

日に日に痩せて行きました。

 

オデットをベッドに寝かせた

バスティアンは、静かな足取りで

バスルームに向かいました。

お湯に浸したタオルで拭いてやった体を

布団で包むと、いつの間にか

夜が明ける時間になっていました。

 

青い夜明けの光に染まった

オデットをじっと見下ろす

バスティアンの眼差しに、

深い虚無が滲みました。

愛が憎しみに変わっても、

依然として美しい女は、

まるでひどい呪いのようでした。

 

ようやく踵を返したバスティアンは

淡々と、今日1日の準備を始めました。

頬にできた傷を見つけたのは、

シャワーを終えて

洗面台の鏡の前に立った後でした。

 

バスティアンは、

シェービングクリームを置くと

オデットが残した傷を撫でました。

やがて、ひび割れ始めた

女の記憶を反芻すると、

陶酔を誘うような幻滅が訪れました。

 

落ち着いて髭を剃ったバスティアンは

狩猟服を着て、

ホテルのロビーに降りて行きました。

電話を使いたいという依頼を受けた

支配人は、ラウンジの奥にある

貴賓用休憩室に彼を案内しました。

 

バスティアンは、

明るくなったばかりの朝日の中で

受話器を取りました。

聞き慣れた声が聞こえて来ると、

彼は、任務を変更すると、

無駄のない話し方で用件を伝えました。

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オデットが観覧車を見つめながら、

「もし~していたら」と

しきりに考えてしまうのは、

バスティアンから離れたくない気持ちが

心のどこかにあるからではないかと。

でも、バスティアンがオデットに

辛く当たるので、

子供を不幸にさせないためにも

彼のもとから

逃げるしかないという思う気持ちは

変わらないのだと思います。

一方、バスティアンが

オデットを辛い目に遭わせるのは

自分だけがオデットの

拠り所になりたいと

思っているからであり、

彼女がバスティアンに許しを請い

彼にすがりついて来るのを

待っているのではないかと思います。

 

オデットが

バスティアンに水を差し出したのは

彼のことを純粋に思いやったから。

けれども、バスティアンは

素直に受け止めることができず

オデットに下心があると思って

お金を差し出した。

オデットは、傷ついたけれど

自分が、

お金に執着するような女だと

思われた方が、

出て行きやすくなると

思っているのかもしれません。

この2人は、

自分の気持ちに気づくのが遅いし

自分の気持ちの意味について

考えてばかりいて、相手に、

それを伝えようとしないのは、

2人が育ってきた環境に

影響されているように思います。

 

「すでに、あなたが望む方法で

借金を忠実に返している」という

オデットの言葉。

これは、それとなくバスティアンに

妊娠を

ほのめかしているのではないかと

思いました。

妊娠をオデットが犯した罪の

代償にされているので、正直に

その事実を伝えられないけれど、

仲睦まじい夫婦のように、オデットは

妊娠したことを、バスティアンに

伝えたかったのではないかと

思いました。

 

次のお話で、

泣き乞うのあのシーンが

出で来ます。

マンガでは74話。

日本での公開ももうすぐですね。

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