自分時間を楽しく過ごす 再婚承認を要求しますの先読みネタバレ付き

子供の頃からマンガが大好き。マンガを読むことで自分時間を楽しく過ごしています。再婚承認を要求します、ハーレムの男たちを初めとして、マンガのネタバレを書いています。

バスティアン 141話 ネタバレ ノベル 原作 あらすじ 招かれざる客

141話 オデットはフランツの手から無事に戻って来ましたが・・・

オデットは、

今日も深い眠りに落ちていました。

静かにドアを閉めたバスティアンは

気配を最小限に抑えた足取りで

寝室を横切りました。

 

オデットの枕元で看病していた

看護師は、そっと立ち上がって

場所を空けてくれました。

何日も繰り返されている

暗黙の交代の儀式でした。

 

脱いだ帽子とコートを片付けると

バスティアンは、

先ほどまで看護師が座っていた椅子に

腰かけ、眠っているオデットを

見つめました。

サイドテーブルの明かりに

染まっている顔は、今朝よりずっと

リラックスしているように見えました。

 

屈することなく耐えていたオデットは

邸宅に到着したのと同時に

気を失いました。

バスティアンの記憶は、

倒れた妻を抱きしめた瞬間で

止まっていました。

再び意識を取り戻したのは、

往診に来た医療スタッフが

診療を終えた後でした。

 

幸いにも、外傷は

それほど深刻ではありませんでした。

割れた窓の破片で切った傷と

事故の衝撃による打撲程度でした。

問題は、弱り切った体と

お腹の中にいる子供でした。

大きな峠は越えたけれど、

まだ安心するのは

難しいとのことでした。

 

今のオデットは、

ひびの入ったガラスの人形のような

状態だとクラーモ博士は言いました。

非常に小さな衝撃でも

粉々に砕ける可能性があるので、

絶対安静を保ちながら

経過を観察すべきだとのこと。

 

ランプの照度を下げたバスティアンは

手袋を外した手で、

オデットの顔にかかっている髪を

優しく払ってやりました。

華奢な首に刻まれた

筋のような傷跡が目に入ると、

眉をわずかに顰めました。

刃物で切られた傷でした。

おそらく、フランツが振り回した

あのナイフに違いありませんでした。

 

幸い深い傷ではありませんでした。

傷跡が残ることはなさそうなので

ホッとしたのと同時に、

キャンキャン犬の吠える声が

響き渡りました。

 

暖炉の前で眠っていたマルグレーテが

いつの間にか、

彼の足元まで近づいていました。

彼のつま先を引っ掻く前足には

包帯が巻かれていました。

主人を守るために戦って得た

栄光の傷だとのことでした。

 

身を屈めたバスティアンが

マルグレーテの頭を撫でると、

犬はビクッとして後ずさりしました。

警戒するように

歯をむき出しにしましたが、

しばらくして、

そっと尻尾を振りながら

近づいて来ました。

よく見ると、首筋と腰にも

絆創膏が貼られていました。

何の役にも立たないという評価は、

どうやら、

訂正した方が良さそうでした。

 

バスティアンは、

全く心の中が読めない犬を

慎重に抱き上げました。

硬直したまま震える小さな体が

失笑を誘いました。

 

バスティアンは、不安に震える犬を

ベッドの端に

そっと降ろしてやりました。

山ぶどうのような目を瞬かせながら

首を傾げていたマルグレーテは

すぐに、また浮かれて

自分の主人のそばへ駆け寄りました。

 

シーッ。

バスティアンは注意しましたが

マルグレーテは気にせず

眠っているオデットの懐に

入り込みました。

事態を収拾しなければならないという

結論を下したバスティアンが

立ち上がったのと同時に、

オデットが、すっと目を開けました。

 

「・・・メグ?」

犬に気づいたオデットの顔の上に

優しい笑みが広がりました。

バスティアンは、

マルグレーテを退かそうとした手を

引っ込めながら一歩後退しました。

甘える犬を撫でるオデットの手からは

他に比べるものがないくらい

大きな愛情が滲み出ていました。

鼻の頭への優しいキスと

温かい眼差しもそうでした。

 

バスティアンは光と闇の境界に立ち

その光景を見守りました。

今日しでかした狂った行いを思い出し

今更ながら虚脱感に襲われました。

 

サンドリン・ド・ラビエルとの婚約は

完全に解消されました。

バスティアン自ら、

最終交渉を終えました。

協業関係は維持したいという

ラビエル公爵の意向は

受け入れられませんでした。

合弁撤回による金銭的損害は、

イリス側が、

快く引き受けることにしました。

理事会の意向に反する

バスティアンの独断的な決定でした。

それによる損失は、

私財で補填しました。

 

頭がどうかなってしまったのでは

ないかと師匠に叱責されても

バスティアンは、

頑なに譲りませんでした。

サンドリンとの繋がりを

断ち切るための決定でした。

たかが、この女1人のために、

与えられた責任と使命に背く

選択をしました。

 

「バスティアン」

物思いに沈んでいたその耳に、

ぼそぼそと名前を呼ぶ声が

聞こえて来ました。


バスティアンはため息を飲み込むと

光の領域に入りました。

目が合うと、オデットは

礼儀正しい他人のように

微笑みました。

 

オデットは、

まるで、再びマルグレーテを

奪われることを心配するかのように

懐の奥深くに犬を隠したまま、

マルグレーテを返してくれたことへの

感謝の言葉を伝えました。

 

長引く沈黙が気まずくなったオデットは

かなり怪我をしたようだけれど

大丈夫かと、再び口を開きました。

バスティアンは顎の先を

ピクッと動かすことで

返事を代わりにしました。

 

夕焼けの残像まで消えると、

寝室は真っ暗になりました。

オデットは息を殺して

バスティアンを探りました。

今日は制服姿ではありませんでしたが

それでも軍人らしい姿勢と雰囲気は

相変わらずでした。

きれいに梳かした髪と、

落ち着いた顔色も、やはり

普段とあまり変わりませんでした。

ひどい傷を負ったとは考えにくい

様子でした。

フランツの名前は

あえて口にしないことにしました。

大きな問題が起きていたなら、

邸宅の雰囲気が、このように

平穏であるはずがないからでした。

 

ようやく一安心し瞬間、

クラーモ博士が到着したと告げる

ロビスの声が聞こえて来ました。

バスティアンは、ようやく

オデットを探っているような視線を

逸らすと、背を向けました。

 

オデットは、やや混乱した眼差しで

遠ざかっていくバスティアンを

見つめました。

規則正しい靴音と共に去っていく

その男の後ろ姿は、今まで見て来た

あの冷酷な支配者と

少しも変わりませんでした。

 

互いを深く見つめ合っていた時間が

夢のように感じられ始めた頃

ドアが開きました。

静かにドアが閉まる瞬間まで

バスティアンは振り返りませんでした。

包帯を解いたクラーモ博士は、

思わず眉を顰めて嘆きました。

血の付いたシャツを見た時、

すでに心の準備はできていましたが

バスティアンの傷は、

予想以上に悪い状態でした。

 

クラーモ博士は、

無理をするなと、

何度も念を押したように

記憶しているけれどと、ぼやくと

深くため息をつきながら、

縫合部が裂けてできた傷を

消毒しました。

 

フランツが振り回したナイフは、

よりによって、

砲弾の破片の除去手術をした

バスティアンの左肩に刺さりました。

幸い骨や筋肉の損傷は免れましたが

だからといって、

安心できる状態ではありませんでした。


クラーモ博士は、

できるだけ慎重に患部を再縫合し、

包帯を巻きました。

かなりの痛みがあるはずなのに、

バスティアンは、

小さなうめき声一つ漏らさず、

黙々と耐え抜きました。

 

処置が終わると、バスティアンは

クラーモ博士にお礼を言った後、

平然と立ち上がって、

新しいシャツを着ました。

傷跡だらけの肉体は、

すぐに高級な生地の下に

姿を消しました。

 

クラーモ博士はバスティアンに

どうか数日だけでも病気休暇を取って

休むようにしろ。

これは、あなたの健康を預かる

主治医としての命令だと言いました。

バスティアンは

「はい、そうします」と答えると

澱みのない笑みを浮かべながら

呼び鈴を鳴らしました。

しばらくして、

鎮痛剤を手にした侍従が

入って来ました。

 

クラーモ博士は、一歩下がった所で

薬を飲むバスティアンを

見守りました。

いつもと変わらず、

強健に見える姿でしたが、

線が鋭くなった顔には、

鮮明な疲労の色が滲んでいました。

 

クラーモ博士は、

ズキズキする額を撫でながら

深くため息をつきました。

怪我をした体を酷使して

忙しい日々を送っている

バスティアンを、

理解できないわけでは

ありませんでした。

どうせ今は、

リラックスできるような時期では

ないのだから。

 

クラウヴィッツ一家の評判は

最悪の状態に陥っていました。

低劣な方法で兄の妻を求め、

さらには拉致事件まで引き起こした

フランツに対する非難が

最も激しかったけれど、

クラウヴィッツ少佐夫妻を

貶めるために、血眼になっている者も

少なくありませんでした。

 

バスティアン・クラウヴィッツは、

帝国の新興資本勢力を代表する名も

同然でした。

快進撃を続ける古物商の孫を

目の敵にしていた旧勢力にとって

このスキャンダルは格好の餌食でした。

それを証明するかのように、

多分に悪意に満ちた噂と憶測が

次々と後を絶ちませんでした。

 

首都の保守的な社交クラブは、

それを口実に、

バスティアンの会員資格を

剥奪する決定まで下しました。

今の傾向が続けば、

状況がさらに悪化するのは

明らかでした。

しかし、だからといって

罪のない妻と子供を

捨てるわけにもいかず、

袋のネズミ同然の状況でした。

バスティアンの政敵が、

鼻高々になった理由も

そこにあるはずでした。

 

バスティアンが

身支度を整え終えた頃、

客が来たという思いがけない知らせが

伝えられました。

ドアの外から聞こえてくる執事の声は

いつもと違って昂っていました。

バスティアンは、返事をする代わりに

寝室を横切り、自らドアを開けました。

ロビスは青ざめた顔で

息を切らしていました。

 

トリエ伯爵夫人が訪ねて来たと

ロビスが伝えた招かれざる客の名前は

バスティアンの予想を

はるかに超えていました。

皇命を伝えに来たという訪問の目的も

同じでした。

トリエ伯爵夫人は、

ピンと背筋を伸ばして

バスティアンを迎えました。

長居するつもりはないと言わんばかりに

帽子と手袋を身に着けたままでした。

 

バスティアンはまず、

丁重で礼儀正しい挨拶で

皇帝が遣わした使者を礼遇しました。

トリエ伯爵夫人は、

頭をまっすぐに立てたまま、

短く目で挨拶をしました。

敵意を隠さない鋭い眼差しが、

頑固な印象を、

一層際立たせていました。

好意的だった過去とは

随分、変わった態度でした。

 

トリエ伯爵夫人は、

長話をしたくないので、

本題から伝えると言うと、

慌てて用意した茶菓子には目もくれず

手に持っていた書簡を

皇命だと告げて差し出しました。

皇帝の印章が押された勅書でした。

 

バスティアンは、

皇帝に謁見する時と

同じ敬意を示しながら

それを受け取りました。

その姿を見守る

トリエ伯爵夫人の眼差しから、

隠す気のない軽蔑が、

はっきりと滲み出ていました。

 

夫に連れ戻されたオデットが

邸宅に監禁されていると聞いた時は

まさかと思いました。

クラウヴィッツ少佐夫妻の仲が

尋常でないのは事実でしたが、

それでも、かつては、

あれほどお互いを大切にし、

愛し会った仲ではなかったか。

自分の子供まで妊娠している妻を

虐待するほど、

救いようのない男ではないと

信じていました。

もしも、あの日、

オデットに何かあったら、

愚かな判断ミスをした自分を

許すことはできなかったと

思いました。

 

トリエ伯爵夫人は深呼吸することで

興奮を鎮めました。

その間に、

バスティアンが勅書を出しました。

離婚を命じられても

淡々としている顔に向き合うと、

オデットが、

さらに可哀想になりました。

 

トリエ伯爵夫人が皇宮を訪れたのは、

とんでもない拉致事件と

兄弟の乱闘劇が、都市全体を

ひっくり返した翌日でした。

オデットを、その泥沼から

連れ出せる名分を得るためでした。

 

生ぬるい反応を見せると思っていた

皇帝は、予想外に、

積極的に協力してくれました。

姪の安否より、

英雄の名誉を心配する態度が

気に入りませんでしたが、

表には出しませんでした。

いずれにせよ目的は同じだったので。

 

心の中では、

汚いクラウヴィッツ一族全員を

悉く罰したかったけれど、

皇帝の意向は違っていました。

バスティアンは、

ベルク海軍の栄光を象徴する存在同様で

皇帝は、そのような英雄の没落を

望んでいませんでした。

そのおかげで、バスティアンは、

何ら損害を被ることなく

苦境を脱することができたので、

彼としては

断る理由のない取引でした。

 

トリエ伯爵夫人は、

十分、理解しただろうから、

そろそろ失礼する。

オデットは自分が連れて行くと

最後の用件を伝えると

席を立ちました。

そして、トリエ伯爵夫人が

一歩踏み出した、まさにその瞬間

申し訳ないけれど、

それは難しいと思うと

予期せぬ返事が聞こえて来ました。

いつの間にか

目の前まで迫って来たバスティアンが

巨大な壁のように

彼女の前に立ちはだかっていました。


トリエ伯爵夫人は、

今、あえて皇命に背くつもりなのかと

厳しく一喝しました。

しかし、バスティアンは

平静さを失いませんでした。

依然として口元に浮かんでいる

丁重な微笑が、さらに彼を

不遜に見せているようでした。

 

バスティアンは、

「そうです、伯爵夫人」と答えると

深い夜のように静かな目で

彼女を直視し、

「服従しません」と告げました。

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オデットがマルグレーテに注ぐ愛を

バスティアンも欲しがっていると

思います。

そして、バスティアンは

皇命に背くほど、オデットのことを

愛しているのですよね。

けれども、バスティアンは

オデットに

嫌われていると思っているから

彼女に愛を伝えることができないし

オデットが子供を産んだら

取り上げて、サンドリンと育てるという

話を撤回していない。

まずは、子供を一緒に育てようと

言うことができればいいのにと

思います。

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