自分時間を楽しく過ごす 再婚承認を要求しますの先読みネタバレ付き

子供の頃からマンガが大好き。マンガを読むことで自分時間を楽しく過ごしています。再婚承認を要求します、ハーレムの男たちを初めとして、マンガのネタバレを書いています。

バスティアン 144話 ネタバレ ノベル 原作 あらすじ 悪夢

144話 オデットはクラーモ博士から、バスティアンの母親の死んだ理由について聞かされました。

オデットの寝室を照らす明かりは

夜遅くまで消えませんでした。

クラーモ博士が定期的に訪れて

患者の状態を診た後、

メイドたちが近づいて来て

熱を冷ましました。

オデットは暖炉の前の椅子に座り

その光景をじっと見つめました。

 

クラーモ博士は、結局、

真実を話してくれました。

全てを捧げて愛した男に

裏切られた女の悲劇と

一人残された息子の残酷な物語でした。

到底信じられないほど惨い話でしたが、

クラーモ博士は、決して、

そんな恐ろしい想像を

できるような人ではなかったので

信じざるを得ませんでした。

 

裏切られた事実を知った

バスティアンの「なぜ!」という絶叫と

傷ついた眼差しが、

今のことのように生々しく蘇りました。

 

オデットは初めて、

あの日のバスティアンを

理解することができました。

なぜ、あれほど激しく怒ったのか。

なぜ、これほどまでに

残忍な復讐をしようと決意したのか。

互いを破滅させているこの関係を

断ち切れない理由は何なのか。

その全てを。

 

幸い、これ以上、

熱が上がらないようだと、

バスティアンの病状を知らせる声が

闇を通り抜けて聞こえて来ました。

 

オデットは、

ようやく想念から覚めました。

いつの間にか、

再び回診に来たクラーモ博士が

バスティアンの腕から

注射針を抜いていました。

 

決意を固めたオデットは、

立ち上がって

ベッドのそばに近づきました。

バスティアンは、相変わらず

意識を失ったままでした。

熱を冷ますために

布団を剝いでいたため、

傷跡にまみれた体が

露わになっていました。

 

静かに近づいて来たドーラは、

他の部屋に寝床を用意するので

ここは自分たちに任せて、

これで休むようにと

慎重にオデットに勧めました。

 

しかし、淡々と首を横に振った

オデットは、

ベッドのそばに置かれた椅子に座って

息を整えました。

 

クラーモ博士が退くと、

洗面器とタオルを持ったメイドたちが

近づいて来ました。

オデットは道に迷った子供のように

途方に暮れた眼差しで

バスティアンを見つめました。

 

荒い呼吸に合わせて上下する胸には、

深く切り裂かれて、

そのまま塞がったかのような

傷跡が残っていました。

息が詰まるような苦痛に耐えかねて

視線を落としましたが、何一つ

変わることはありませんでした。

 

肩と腕、お腹、腰。

目が届く全ての所に

傷跡が残っていました。

目頭がだんだん熱くなるのが

感じられましたが、オデットは

どうしても視線を逸らすことが

できませんでした。

 

バスティアンの体は、

まるで傷跡の地図のようでした。

見て見ぬふりをして、

知ろうとしなかった真実が、

巨大な津波となって

オデットを飲み込んで来ました。

 

どうせ蜃気楼に過ぎない

関係だったのだから、

不必要な関心は毒だと信じていました。

その虚像に取り憑かれた砂漠の旅人に

成り下がりたくありませんでした。

目を閉じて耳を塞いででも

自らを守ろうとしたのでした。

 

しかし、あれほど必死に逃げて

辿り着いた所は、

結局、砂漠の真ん中でした。

美しい幻想さえも消えてしまった

砂嵐の中でした。

オデットは、

震える唇にそっと力を入れながら

両手を組みました。

 

現実から逃げることに必死だった

過去を後悔しました。

徹底的に自分を隠したバスティアンを

恨めしく思いました。

独断的な判断を下し、

最悪の手段を取った自分が憎くて、

何も取り戻せない今になって知った

真実に、悲しくなりました。

 

どう呼べばいいのか分からない

その熱い感情の塊を飲み込む間に、

メイドたちが

バスティアンの体を拭き始めました。

その様子を見守るオデットの瞳に

微かなひびが入りました。

 

何事にも完璧を期する男でした。

ごく僅かな隙も許さず、

自らを厳しく追い詰める姿が

時には修道者のように

見えたりもしました。

無力な状態で、

他人の手に委ねられた強健な肉体は、

それゆえ、

一層、異質に映りました。

まるで鉄壁の要塞が陥落するのを

目撃したかのような気分でした。

 

オデットは、

そろそろ、下がってくださいと

衝動的に命令すると

椅子から立ち上がりました。

間違いを犯したことに気づきましたが

取り消そうとはしませんでした。

 

ドーラは、

まだご主人様の状態が・・・と

反論しましたが、オデットは、

メイドたちに労いの言葉をかけ、

自分に任せてゆっくり休むようにと

断固として告げました。

そして、後ろを振り返って

クラーモ博士に向き合うと、

自分が直接夫を看護したい。

その方が、バスティアンも

落ち着いて体を休められると思うけれど

博士の見解はどうかと尋ねました。

 

クラーモ博士は、

重篤な状態ではないので、

大きな問題にはならないと思うけれど

クラウヴィツ夫人の健康が心配だと

答えました。

 

オデットは、

無理をしないように気をつける。

もし手に負えないようだったら、

助けを求めるので、

その点はあまり心配しないで欲しいと

落ち着いて話しました。

 

哀れな子供に向き合うような眼差しで

彼女を見つめていたクラーモ博士は、

諦めのため息をつきながら頷き、

それならクラウヴィッツ夫人の

意向を尊重すると返事をしました。

 

オデットは、

クラーモ博士が理解してくれたことに

丁重にお礼を言うと、

再びベッドの横に戻りました。

 

いくつかの注意事項と共に

緊急用の薬を渡した

クラーモ博士が去ると、

顔色を窺っていたメイドたちも

急いで、後を追いました。

2人きりになった寝室は、

瞬く間に水中の世界のような静寂に

包まれました。

 

オデットはメイド長が準備しておいた

濡れタオルで

バスティアンの体を拭きました。

頭からつま先まで、

せっせと手を動かしても、

彼は目を覚ましませんでした。

 

熱を冷やした体を、

布団で包んだオデットは、

椅子に座って一息つきました。

唸りながら

ベッドの周りをうろついていた

マルグレーテは、勝手に疲れて、

暖炉の前に置かれたクッションに

戻りました。

 

これは不公平だ。

オデットは、赤くなった目で

深い眠りについている

バスティアンを睨みつけました。

よりによって、

こんな時に、こんな姿で、

こんな気持ちにさせるのは卑怯でした。

 

これ以上、憎むことも、

許すこともできない自分を

こんな苦しみの中に放り出したまま

あなただけ、このように

自分の痛む心を引き裂くなんて。

 

オデットは、

悲鳴でも上げたい衝動を抑えながら

椅子から立ち上がりました。

窓辺をうろうろしてから戻り

バスティアンの熱を冷やし、

また、果てしなく闇に沈んだ海を

眺めるのを繰り返すうちに

夜が更けて行きました。

 

もう限界だ。

洗面器に浸かった濡れタオルを

じっと見下ろしていたオデットの唇から

新たに諦めのため息が漏れました。

 

まだ体が

完全に回復していない状態でした。

今は自分自身をいたわり、

お腹の中の子供を

気にかけるべき時でした。

この男を優先するのは愚かでした。

 

濡れた手を拭いたオデットは

助けを求めようとして、

呼び鈴の紐を握りました。

しかし、すぐに引くことができず、

躊躇している間に、

風に散る花びらのような影が

ちらつき始めました。

 

オデットは窓ガラスの方へ

ゆっくりと首を回しました。

雪が降っていました。

 

オデットは、

世の中のすべての音が消えたような

静寂の中で、

海の上に降るぼたん雪を見つめました。

 

結局、引っ張れなかった呼び鈴の紐を

放した手は、いつの間にか、

膨らんだお腹を、

そっと包んでいました。

 

オデットは雪片のように

静かにバスティアンのそばに

近づきました。

また熱が上がって苦しいのか、

息遣いが荒くなっていました。

 

ゆっくりと閉じていた目を開けた

オデットは、タオルを濡らす代わりに

ショールを外しました。

腰紐をほどいたガウンも、

すぐにショールの後を追いました。


しばらく躊躇ったオデットは、

結局、ネグリジェの襟元を結んでいた

紐まで解きました。

滑らかな肌を伝って流れ落ちる

薄い生地の音が、

雪の降る夜の静けさの中に

静かに染み込んで行きました。

焼けつくような傷の痛みが

死のように深い眠りを覚ましました。

バスティアンは、

うめき声を飲み込みながら

失笑しました。

幻影がもたらした感覚異常の症状。

意識が混濁した状態でさえ、

その病名を、正確に

思い浮かべることができました。

 

この苦痛は偽り。

バスティアンは、

このような夜が訪れる度に、

繰り返してきた呪文を頼りに

息を整えました。


しかし、今夜の悪夢は

まるで泥沼のようでした。

抜け出そうと努力すればするほど

ますます深くはまって行きました。

 

痛い。

バスティアンは、

追われる獣のように喘ぎながら

身を縮めました。

その泥沼の底で野犬に会いました。

凍てついた冬の森。

狩りの授業が真っ最中の午後でした。

 

枯れた茂みの間から姿を現した

野犬を先に発見したのは

家庭教師でした。

真っ黒に沈んだ瞳が

不気味にぎらりと光りました。

苛烈な責め苦の始まりを告げる

予兆でした。

 

顔色を窺っていた犬は、

彼らに向かって、

そっと近寄り始めました。

 

関心と愛情を求めるように

毛が抜けて、みすぼらしい尻尾を

小さく振りました。

射撃命令が下されたのは、

その犬と目が合った瞬間でした。

逆らえないふりをして

引き金を引けばいいことでした。

鳥やウサギを撃つのと

本質的に変わらないということも

バスティアンは、よく知っていました。

 

それにもかかわらず、

不服を申し立てました。

自分でも理解しがたい選択でした。

 

「嫌です」

落ち着いて返答してからまもなく、

ライフルの銃床が

顔面へ飛んで来ました。

バスティアンは、馬の背中から落ちて

地面を転がった後に、

自分に起こったことを理解しました。

 

鼻と唇から流れた血が顔を濡らしても

バスティアンは、

それほど驚きませんでした。

退役将校出身の家庭教師は、

体罰こそ、

最も効果的な訓育の方法だという

持論を持っていました。

 

目つきが不遜だから。

口答えをしたから。

身の程を知らないから。

様々な無理な理由をつけて

毎日のように手を上げました。

もし、あの犬が現れなかったら

他の言い訳を探したはずでした。

 

袖口で血を拭ったバスティアンは、

まっすぐな姿勢で立ち、

次を待ちました。

 

馬から降りた家庭教師は、

予想通り、怒った雄牛のように

荒い息を吐きながら

近づいて来ました。

いつもより荒々しく

頬を叩きつける音を皮切りに

暴行が始まりました。

 

バスティアンは、

悲鳴一つ上げずに、

無慈悲な殴打に耐え抜きました。

その騒ぎに驚いた犬は、

森の向こうへ逃げました。

その事実に安堵した瞬間、

軍靴が腹部を蹴り上げました。

それが、あの日の最後の記憶でした。

 

再び意識を取り戻した時、

バスティアンは

ベッドに横たわっていました。

いつものように、傷は

丁寧に治療されていました。

 

痛みのせいで眠れなかったあの夜

バスティアンは、

また野犬に出会ったら、

必ず引き金を引くと決心しました。

 

しかし、凍りついた森が解け

若葉が芽生え、

花が咲く頃になっても、その犬は、

依然としてバスティアンの世界に

留まっていました。


そのおかげで、何度も家庭教師の命令に

逆らわなければならず、

その度に、体罰を装った暴行に

苦しめられました。

ある瞬間からは、

周りをうろつくその犬に

うんざりしました。

 

あの事件が起こったのは、

明日こそ、必ず犬を始末してやると

決意を固めた日でした。

 

手に負えない量の宿題に

疲れて果てて眠りについた

バスティアンは、

月明かりに染まった森の小道で

目を覚ましました。

新春の柔らかな葉を揺らす風の音が

深い闇に沈んでいた意識を

呼び覚ましました。

 

手首を縛っていなかった。

泥だらけになった裸足と

パジャマを見たバスティアンは、

一歩遅れて、

自分のミスに気づきました。

 

不注意だった自分を責めながら

踵を返したのと同時に、

ワンワンと

犬の吠える声が聞こえて来ました。

夜が明けたら、

撃って死なせようとした

まさにその野犬でした。

 

自分を湛えている澄んだ瞳と

目が合った瞬間、バスティアンは

自分が眠ったまま

夜の森を彷徨っている間、

ずっとその犬が

そばにいてくれたということが

分かりました。

 

バスティアンが茫然としている間に

犬が近づいて来ました。

愛情のこもった瞳が

月明かりの中で明るく輝きました。

もう背を向けなければ

ならないということを

分かっていながらも

結局、バスティアンは、

その犬に注いでいる視線を

逸らすことができませんでした。

 

傷ついた足を舐めてくれた犬は

震えるバスティアンの手に

そっと頭を預けて来ました。

その温かくて柔らかい感触が、

ひび割れた心の防壁を崩しました。

 

野犬をギュッと抱きしめた瞬間

バスティアンは、

実は自分がとても寂しかったことに

気づきました。

それを知った犬が憎かったけれど

それはバスティアンが

その犬を愛した理由でもありました。

 

あとは命を奪うことだけか。

 

フランツが投げかけた嘲りの言葉が、

あの美しくて悲しい春の夜の

記憶の中に流れ込みました。


それが、お前の愛のやり方なんだよね。

そうだろう?

 

クスクス笑う声と共に、

銃声が鳴り響きました。

悪夢の終わりに近づいたということを

知らせる音でした。

 

古い傷口から血が流れるという

幻覚がもたらした痛みに

蚕食されていった意識の中に

バスティアンと

低く名前を呼ぶ声が聞こえて来ました。

 

「バスティアン」

もう一度。「バスティアン」

傷を撫でる手と共に。

 

バスティアンは熱い息を切らしながら

目を覚ましました。

暗闇の中でも、一気にその声の持ち主を

見つけることができました。

彼の妻、オデットでした。

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オデットは、

テオドラとバスティアンの関係が

ヘレネとティラの関係と同じくらいか

もしくは、それよりも

少しひどい程度にしか

思っていなかったのかもしれません。

だから、名誉を失うくらいなら

取り戻しやすいお金を失う方が

いいだろうと、独断的な判断を

下してしまったのだろうと思います。

 

バスティアンが

実家と対立している理由を

オデットに隠していたのは、

冷たい言い方かもしれませんが

オデットとは無関係なことだから

知らせる必要がない。

知らせたところで、

彼女には何もできないと

思ったからなのかもしれません。

 

オデットは

ようやく、それを知ったことで、

太陽のようなバスティアンにも

傷があることを知り、

体の傷のことも

見て見ぬふりをしなくなった。

バスティアンとの間にあった

壁が取り除かれて、

ようやくオデットの心が

バスティアンの心に

寄り添う準備ができたのではないかと

思います。

 

バスティアンは長男なので

対外的には彼が跡継ぎであると

ジェフ・クラウヴィッツは

表明していたけれど、

ジェフもテオドラも、フランツを

跡継ぎにするつもりだったので

バスティアンを潰すために、

あるいは死なせるために

過酷な跡継ぎ教育をしたのでしょう。

いきなり母親を奪われた後は

虐待の連続。

バスティアンは、

本当に辛かったと思います。

でも、それが彼の復讐の

原動力となったことは

否めないと思います。

バスティアンを跡継ぎにしたら、

仕事の上で、

心強いパートナーになれたのに

ジェフとテオドラは、

自分たちを破滅に導く敵を

自ら作り出してしまったのだと

思います。

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