自分時間を楽しく過ごす 再婚承認を要求しますの先読みネタバレ付き

子供の頃からマンガが大好き。マンガを読むことで自分時間を楽しく過ごしています。再婚承認を要求します、ハーレムの男たちを初めとして、マンガのネタバレを書いています。

バスティアン 155話 ネタバレ ノベル 原作 あらすじ 静かに崩れつつある二人

155話 オデットは、犬の死骸がマルグレーテではなかったことをバスティアンに確認しています。

期待に満ちたオデットの目が澄んで

輝いていました。

閉じていた目をゆっくり開けた

バスティアンは、

静かな表情で彼女と向き合いました。

ひたすら彼を見つめているオデットは

水に溺れた人のように

必死に見えました。

藁をもつかみたいような

弱々しい希望は、一見すると

苦しみに似ているようにも見えました。

 

バスティアンは

濡れたタオルを置いた手で

オデットの頬を包み込みました。

静かにお互いを見つめる時間が

続くほど、青緑色の瞳に浮かぶ

痛ましい希望の波紋が

より鮮明になっていきました。

 

「バスティアン」

急かすように名前を呼んだオデットが

さらに距離を縮めて来ました。

捨てられた子供のように

寂しくて途方に暮れている顔の上に

プロポーズにしに行った

5月の午後が思い浮かびました。

 

オデットは、

病院の裏庭のベンチに一人で座り、

バラが満開の花壇を

ぼんやりと見つめていました。

障害を負った父と

父に障害を負わせた妹。

到底耐えられない現実の重さを

背負うことになったあの日も、

この女は、

このような顔をしていました。

 

あの事故の真犯人はティラでした。

ついに確認した真実は、

バスティアンの虚無を

さらに深めました。

 

あの日の通話は、

夜が更けるまで続きました。

父親と揉み合いになった状況や、

思いがけず起きた事故、

そして、その後のことまで。

 

怯えたティラは、素直に

あの事故について

全てを告白しました。

作り話の様子はありませんでした。

妹の罪を隠すための

オデットの対応も同様でした。

 

バスティアンは、

ただ黙って耳を傾けました。

姉を売って免罪符を得ようとする

ティラには幻滅しましたが、

一方で納得もできました。

 

ティラは、

自分のものを守るために必死でした。

自分の子供。 自分の夫。

自分の家族の将来がかかっている

製材所。姉は後回しでした。

 

だからといって、

オデットに対する愛情が全くないとは

言い切れませんでした。

そのような選択をせざるを得なかった

オデットを弁護しようと努力し、

ついには自分の罪を代わりに被った

姉の犠牲を知ると、

声を上げて泣くこともありました。

 

ただ、その程度でした。

愛しているけれど、

自分より優先することはできない。

おそらく、ごく普通の愛でした。

異常なのは、

むしろオデットの方だったのだろう。

 

バスティアンは、

ゆっくりと唇を開きましたが、

すぐに言葉を続けられませんでした。

ただ哀れな犠牲者を

じっと見つめるだけでした。

 

妹がいなければ、子供。

子供さえ失ってしまい、次は犬。

オデットは、

まだ自分を捧げる祭壇を探して

彷徨っていました。

 

責任。犠牲。献身。

それがすべての人生でした。

存在の意味を確認する道が

ただ、それだけであるかのように。

 

自分らしく生きる方法を

知らない女でした。

もしかすると、別の生き方を

学んだことがないのかも

しれませんでした。

その考えに至った時、バスティアンは

ようやくオデットを理解しました。

 

家族を復讐に置き換えるなら、

それは、すなわち

彼の人生でもありました。

なぜ、そこまでする必要があるのかと

誰かに尋ねられたら、

答えるのは困難でした。

異常であることは

自分でも、よく分かっていたけれど

この世には、そうするしか

生きられない人生もありました。

そして、その盲目的な人生の慣性は

簡単には折れませんでした。

 

やがてバスティアンは

「うん、そうだ」と返事をしました。

バスティアンは、

メグではなかったと、

オデットの目を見つめながら、

もう一度はっきりと答えました。

 

マルグレーテが戻って来るという希望は

苦痛になるだろう。

しかし、その苦しみは、

オデットを彼のそばに

縛りつけることができる

最後の一筋の糸でした。

 

それならば、バスティアンは

後者を選ぶことにしました。

オデットのための最善については

考えないことにしました。

ただ彼は、自分の欲望に従いました。

 

オデットは、

そうだと思った。 自分がメグを

見分けられないはずがないと言って

笑いました。

バスティアンは、

沈黙で答えを代えました。

真実と嘘の間のどこかに。

ぼんやりとした霧の中に

隠れるように。

 

灰になった薪が崩れる音が

静寂の中に染み込みました。

安心したオデットは、

そのくらいでバスティアンから

体を離しました。

その瞬間、熱い手が、

背中を閉じ込めるように

包み込みました。

抜け出そうと努力しましたが

無駄でした。

 

オデットを胸の奥深くに引き寄せた

バスティアンは、

再び頭を乾かし始めました。

触れ合う胸から伝わる心臓の鼓動が

ぼんやりしていた意識を

呼び覚ましました。

 

力が抜けてしまったオデットは、

壁のように堅固な胸に

寄りかかりながら、

同じ速度で鼓動する心臓の音に

耳を傾けました。

髪に触れるバスティアンの手つきは

彼らしくなく、

慎重で優しいものでした。

ふと、それに気づくと、

虚しい笑いがこぼれました。

 

結局、全てを失った後に訪れた

この灰の山のような平穏が、

ふと耐え難く悲しくなりました。

 

今になって理解し、

今になって哀れみを感じる。

お互いの痛みを映す鏡となって

虚しく、虚しく。

 

髪の毛がすっかり乾いた頃、

唇をピクピクさせていたオデットが

「・・・赤ちゃんのことだけれど」

と口を開きました。

手櫛で乱れた長い髪を整えていた

バスティアンの手が突然止まりました。

 

肩に静かに寄りかかっていた

オデットは、顔を上げて、

「女の子だった?何だか、

そんな気がしていたけれど」と

尋ねました。

 

バスティアンは髪を放して

そっと拳を握りました。

指先の震えが収まると、ようやく

まともに息がつけました。

空中を彷徨っていた

バスティアンの視線は、ようやく

澄んだ目で自分を見つめている

オデットに向かいました。

 

あの白い布の中について、

バスティアンは、最後まで

話すことができませんでした。

 

まだ成長できずに息を引き取った子は

あまりにも小さく、

かろうじて人の形を整えた程度でした。

髪の毛は生えておらず、

弱々しい瞼は

しっかりと閉じられていました。

あまりにも未熟で、

顔立ちを見分けることさえ

無意味に思えました。

 

それでも、何度もその子が

訪ねて来ました。

ある夜は、オデットに似た顔で。

また、ある夜は彼に似た顔で。

嬉しそうにおしゃべりしながら

走り回るいたずらっ子だったり、

ゆりかごに横たわって

ぐっすり眠る赤ちゃんだったり、

そして、また、かごの中に置かれた

冷たい血の塊になりました。

 

逃げるように背を向けると、

四方に赤い野原が広がっていました。

花だと思っていましたが、

よく見ると血でした。

それに気づいた瞬間、

終わりを迎える夢の中で、

吐き気を催すほどの

濃い血の臭いが感じられました。

その悪夢は、

自分一人だけのもので十分でした。

 

静かに目を閉じたバスティアンは、

オデットの後頭部を包み込む手に

力を込めました。

再び肩に顔を預けた

オデットのため息が、

ガウンの中に静かに染み込みました。

 

バスティアンは、

再びオデットの髪を梳きながら、

春が来たら一緒に出かけようと

低く囁きました。

 

オデットは、

一段と落ち着いた声で

「どこへ?」と聞き返しました。

バスティアンは、

「どこへでも」と答えると

ゆっくりと目を開けて、

闇の向こう側を見つめました。

 

もうすぐ、この退屈な人生が

終わる日が来るだろう。

そうなったら、

全てを捨てて去るのも悪くないと

思いました。

この場所の記憶が届かないほど

はるか遠くへ。

ただ、オデット。

あなたさえ、いてくれれば。

 

他の都市でも、外国でも。

あなたが望む場所へ、どこへでも。

バスティアンは、

柔らかい髪を指に絡めて握りながら

小さく囁きました。

 

何度か、ため息が続くうちに、

夜はさらに深まりました。

そして、ガクンと

オデットの首が力なく垂れました。

 

バスティアンは、

気絶するように眠ったオデットを

抱き上げて、立ち上がりました。

ベッドへ向かう足音が止んだ部屋は、

すぐに再び、

水中の世界のような静寂に

包まれました。

ドーラは、

約束の場所が見え始めた道の上で

しばらく足を止めました。

唇から新たに漏れた嘆きが

白い息となって散って行きました。

 

トリエ伯爵家は、

公園の近くにありました。

クラウヴィッツ家のタウンハウスから

それほど遠くない場所でした。

アルデンに引っ越す前までは、

いつも通っていた道が、

突然、見知らぬものに感じられたのは、

おそらく、限りなく気まずい

気持ちのせいだったようでした。

 

結局、ここまで来てしまいました。

ようやく現実感が湧くと、

胸がドキドキし始めました。

 

トリエ伯爵夫人が

助けを求めて来ました。

オデットを連れて行けるよう

協力して欲しいというのが

要旨でした。

もし、バスティアンが、

最後まで意地を張り続ければ、皇帝が

介入することになるだろうけれど、

それは彼女も望んでいない。

オデットが静かに去ることが、

二人にとって最善の道だと

書いてきました。

 

最初に、その手紙を読んだ時は

怒りを感じました。

カール・イリスが孫を引き取る前から

この家のために働いてきました。

そんなドーラにとって、バスティアンは

単に仕える主人以上の意味を

持っていました。

それなのに裏切り者になれだなんて。

頼む人を間違えたとしても

かなり間違っていると思いましたが

侮辱を感じながらも、

どうしても、その手紙を

捨てることができませんでした。

もしかすると、その時すでに

このような瞬間が訪れることを

予感していたのかも

しれませんでした。

 

ドラは深呼吸をして、

止まっていた足を踏み出しました。

夕食の時間までには戻るという

約束を残して出て来ました。

ぐずぐずしている余裕は

ありませんでした。


バスティアンとオデットは

静かに崩れつつありました。

ドーラは、

もはや回避できないその真実を

受け入れることにしました。

 

オデットは、依然として

迷子の犬を探すことに

没頭していました。

そしてバスティアンは、

父を徹底的に打ちのめすために

全力を尽くしていました。

 

それぞれの地獄を彷徨い、

夜が来ると、

互いに寄り添いながら

沈黙の中に沈み込み、

そして太陽が昇ると

再び地獄へと足を向けました。

 

このまま放っておくと、結局二人とも

取り返しのつかないほど

壊れてしまうだろう。

少なくとも、

それだけは防ぎたいという一念が

最後の躊躇いを消してくれました。

 

トリエ伯爵夫人は、

自分に直接会って話をすることを

望んでいました。

それでも、なお断るなら、

その気持ちを十分に尊重するけれど

オデットのために、

一度だけ勇気を出して欲しいと

書いてきました。

ドーラの心を動かした

決定的な一言でした。

 

トリエ伯爵家のタウンハウスの前に

辿り着いたドーラは、

冷静に呼び鈴を押しました。

しばらくして扉が開き、

伯爵家のメイドが姿を現しました。

 

彼女は、

伯爵夫人が待っていると、

丁重な礼儀を尽くして

ドーラを迎えました。

 

クラウヴィッツ家のメイドは

トリエ伯爵家の客となって、

敷居を跨ぎました。

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オデットとバスティアンは

寄り添っているように見えるけれど

実際は、現実から逃げているだけで

互いの傷を舐め合っている

状態ということなのかと思いました。

 

ドーラにとってバスティアンは

半分、子供みたいなものなのですね。

母の愛に恵まれなかった

オデットとバスティアンに

母の代わりに親身になってくれる人が

そばにいてくれたのは

不幸中の幸いだと思いました。

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