自分時間を楽しく過ごす 再婚承認を要求しますの先読みネタバレ付き

子供の頃からマンガが大好き。マンガを読むことで自分時間を楽しく過ごしています。再婚承認を要求します、ハーレムの男たちを初めとして、マンガのネタバレを書いています。

バスティアン 156話 ネタバレ ノベル 原作 あらすじ 海の中へ

156話 オデットはマルグレーテを探し続けています。

休むことなくレースを編んでいた

オデットの手が突然止まりました。

 

椅子の下に向けた視線は、

テーブルの下を通り過ぎて、

暖炉の前に置かれた

クッションの上に届きました。

毛布と布製の人形、

そして、松ぼっくりが

いくつかありました。

 

マルグレーテの痕跡を

ぼんやりと見つめているうちに、

耳元を漂っていた幻聴が

次第に薄れていきました。

 

編み物を置いたオデットは

血の気ない手で、

テーブルに置かれた水のグラスを

握りました。

唇を潤してから、

ようやく息が通りました。

 

今日は二件の情報提供がありました。

午前中には、白い犬が

海水浴場の近くに現れたという

電話がかかってきました。

オデットは、直接その場所へ向かい、

使用人たちと共に周辺を探しました。

 

しばらくして、侍従が

商店街の入口で見つけた野良犬は

マルグレーテとは

全く見た目が違いました。

今や、無駄足に

慣れっこになっていました。

 

夕方には、

マルグレーテのレースのリボンを

見つけたと主張する男性が

訪れました。

オデットは、

メイド長が引き止めるのを振り切り

直接彼に会いました。

一見、捜索願のビラに載っている

絵の中のリボンのように

見えましたが、

模様は全く異なっていました。

自らそのレースを編んだオデットは

すぐに、その事実に気づきました。

 

最後まで、

そのリボンに違いないと主張し、

お金を要求していた男は、

結局、侍従たちに引きずり出される

羽目になりました。

それもまた、今では

慣れっこになった騒動でした。

 

ゆっくりと息を整えたオデットは、

首を回して時計を見ました。

時間は、いつの間にか

真夜中に近づいていました。

バスティアンは、

今日も帰宅が遅くなりそうでした。

 

もうベッドへ行こうと思っていた

気持ちを変えたオデットは、

再び針と糸を握りました。

しかし、すぐに諦めたように

手を離してしまいました。

 

再びマルグレーテの足音が

聞こえて来ました。

耳を塞いでみても

何の効果もありませんでした。

 

もう耐えられなくなったオデットは

冷たい海風と波の音の中へ

逃げ込むかのように、

慌ててバルコニーに出ました。

しかし、今夜は、最後の砦さえも

崩れてしまいました。

 

白い砂浜の向こうから、

マルグレーテが走って来ていました。

オデットが作ってあげた、

あのリボンを結んで。

オデットを

必死で呼んでいるかのように

吠えながら。

 

そんなはずがないことを

分かっていました。

オデットは、自分自身を説得しようと

努力しました。

ほぼ一か月に渡り、

多くの人員を動員して

街中をくまなく探しても

見つからなかったマルグレーテが

このように現れるのは

納得できませんでした。

だから、これは、おそらく幻だろう。

よく分かっていました。

 

しかし、

間違いなくマルグレーテでした。

見た目や身振り、鳴き声までも、

全てがマルグレーテのようでした。

 

見間違いではないという

確信が生まれると同時に、

両足が動き出しました。

静かな廊下と階段を通り抜け、

月明かりに満ちたテラスに

着いた頃には、肩で息をするほど

息が切れていました。

 

「メグ!」

オデットは大声で

懐かしい名前を呼びました。

白い砂浜を走って来た白い犬は

嬉しそうにキャンキャン吠えました。

間違いなくマルグレーテでした。

マルグレーテが戻って来ました。

 

溢れんばかりの笑みを浮かべながら

階段を降りたオデットは、

マルグレーテが待っている

海に向かって夢中で走り始めました。

ヘッドライトが消えると、

周囲は再び深い闇に包まれました。

 

車から降りたバスティアンは

静かな足取りで階段を上りました。

迎えは必要ないという指示を

出したにもかかわらず、

ロビスが玄関の前で立っていました。

 

あまり無理をしないように。

このままだと、

体調を崩してしまうのではないかと

心配だという老婆心から来る助言が

当然の流れのように続きました。

バスティアンは、にっこり笑って

玄関のホールに入りました。

 

もう、残り僅かでした。

本日をもって、父の鉄道会社は

最終的に倒産処理されました。

その傘下にある事業体も、近いうちに

同じ運命を迎える予定でした。

 

階段の踊り場で、

しばらく足を止めたバスティアンは、

窓の向こうに視線を向け、

間もなく消えてしまう

父の世界を見つめました。

一銭も残さず全て奪い取るよう指示し

その計画は、順調に進行していました。

その中で、最も優先したのは

父の領地でした。

すでに全ての準備は整いました。

破産が宣告されると、

すぐに、アルデンの宝石は

バスティアンのものになる予定でした。

 

あれを壊したら、

オデットと一緒に去るつもりでした。

目的地はまだ不明でしたが、

バスティアンの決意は

変わりませんでした。

もしオデットが

最後まで決断できなければ、

まず旅に出るのも

悪くないと思いました。

 

バスティアンが、

ちょうど2階に辿り着いた瞬間、

ロビスは、

マルグレーテを捜索する人員は

現在の規模を維持するつもりなのかと

慎重に尋ねました。

バスティアンは躊躇うことなく

「はい、そうなるだろう」と

淡々と答えました。

 

行方不明の期間が長くなるほど、

マルグレーテの捜索者の数も

増えました。

それだけ人件費も増加しましたが、

バスティアンは気にしませんでした。

 

ロビスは、

すでに時間が、かなり経っていると

反論しましたが、バスティアンは

「今日もお疲れ様でした。

これで休んでください」と

丁重に挨拶することで、

反論を遮りました。

 

低いため息をついたロビスは、

これ以上、何も言わず

頭を下げました。

短い黙礼で応えたバスティアンは、

次の階へ続く階段に向かって

歩みを進めました。

 

その時、

何気なく視線を投げた窓の向こうに

白いネグリジェを着た一人の女が

波の打ち寄せる夜の海へ

歩いて入って行くのを発見しました。

風に揺れる黒髪と華奢な後ろ姿に

見覚えがありました。

ふと、それに気づいた時、女は、

すでに海水が腰まで届いている場所に

達していました。

 

バスティアンは息を止めて

窓の前に近づきました。

幻影を見ているのだと思いましたが、

力を入れて閉じた目を開けても

変わることはありませんでした。

夜の幽霊のような女は、

押し寄せる波をかき分けて、

ますます深い海へと進んで行きました。

今にも泡となって

砕け散ってしまいそうなほどでした。

 

・・・オデット

もはや否定できなくなった名前が

震える唇から新たに流れ出ました。

それと同時に踵を返したバスティアンは

獲物を追う猛獣のように

駆け出しました。

遅れて状況を把握した執事の悲鳴は

瞬く間に遠のいていきました。

 

「オデット!」

あっという間に、

邸宅1階のテラスを通り過ぎた

バスティアンは、

吠えるようにオデットを呼びながら

海岸へ続く階段を駆け下りました。

脱ぎ捨てたコートが

白砂の上に落ちました。

ジャケットとネクタイも、

すぐに、それに続きました。

 

名前を叫び続けても、

オデットは振り返りませんでした。

何かに取り憑かれたように

よろよろしながら、

ただ前に進むだけでした。

 

バスティアンは、

猛烈な勢いで走って来た速度を

落とさずに、海に飛び込みました。

マルグレーテではないことに

気づいたのは、海水が

肩を濡らし始めた後でした。

 

オデットは光を失った目で

海を見つめました。

マルグレーテが消えた場所には、

空気が抜けた白いゴムボールだけが

ぽつんと残っていました。

波に乗って漂っていたボールは、

水面下にゆっくりと沈み、

姿を消しました。

 

愚かなことをしてしまった。

幻影を追いかけていた足を止めた

オデットの顔の上に、

自嘲的な笑みが浮かびました。

顎の下に打ち寄せる波が

突きつける現実は、冬の海のように

冷たく凍てついていました。

 

「オデット!」

広大な海が与えた孤独と絶望の間に

絶叫するように自分を呼ぶ声が

聞こえて来ました。

だんだん近づいて来た、

その声の主に気づいたオデットが

振り向いたのと同時に、

高い波が押し寄せて来ました。

 

バスティアン。

口に出せなかった名前が

激流の中で砕け散りました。

瞬く間に水流に巻き込まれたオデットは

為す術もなく

深い水中へと引き込まれました。

立とうと努力しましたが、

これ以上、足が底に届きませんでした。

必死にもがいている間に、もう一度

激しい波が押し寄せて来ました。

砕ける泡がオデットを飲み込みました。

 

制御不能になった体は

銀色の波に乗って、

ますます遠くへ押し流されました。

もがく腕をつかむ強い力を感じたのは

かろうじて繋ぎ止めていた

最後の意識さえ遠のき始めた頃でした。

為す術もなく、夜の海の中へ

沈みつつあった体が、

再び浮かび上がり始めました。

 

オデットは海の上に横たわり、

白い月を見つめて初めて

バスティアンの存在に気づきました。

彼女をしっかり抱き締めた

バスティアンは、波に逆らいながら

陸地へ向かって泳いでいました。

オデットは、唯一の救いの光を

力いっぱい掴みました。

 

苦痛に満ちた荒い息を吐きながらも、

バスティアンは止まりませんでした。

おかげで彼らは、

すぐに水が浅い所まで

辿り着くことができました。

 

ようやく安堵したオデットが

目を閉じた瞬間、

体が空中に浮かび上がりました。

そして、しばらくすると、

乾いた砂の感触がありました。

すぐに唇の間から流れ込んだ息が

海が奪った温もりを返してくれました。

 

体を小さく震わせていたオデットは

咳をしながら目を開けました。

最初に目に入ったのは、

冷たい炎が揺らめいているような

青い瞳でした。

 

・・・バスティアン

名前を小さく囁くと、

オデットは体を起こしました。

バスティアンは

ようやく、きちんと息を吐き、

砂の上に座り込みました。

ギュッと閉じていた目を開けると、

傷ついた獣の鳴き声のような

うめき声が漏れました。

 

苦痛と怒りに染まった

バスティアンの顔を

ぼんやりと見つめていたオデットは

慌てて首を振ると、

悪い考えをしたわけではない。

そのような気持ちはなかった。

自分はただ、

メグがそこにいるような気がして

だから・・・と

どもりながら説明を続けました。

そんなオデットを

見つめていたバスティアンは、

歪んだ笑みを浮かべながら

濡れた顔を撫でました。

 

そして、

嘘ではないと告げるオデットの

澄んだ目を見た瞬間、バスティアンは

オデットが、

本当にマルグレーテを探すために

海に飛び込んだこと、そして、

その病的な執着が、単に

犬恋しさだけのせいではないことにも

気づきました。

 

オデットは、

マルグレーテの名の陰に隠れて

真実から目を背けていました。

耐え難い苦痛の理由が

ただ、それだけであるかのように

自分を欺きながら。

まるで本質的な苦痛から逃れるために

別の苦痛へ逃避する

自傷行為のように。

 

その苦しみは、オデットを

彼のそばに縛りつけることができる

最後の一筋の糸でした。

バスティアンは、

その事実をよく知っていました。

そして、いつか、その苦しみが

この女を

死に至らしめるだろうということも

分かったような気がしました。

 

バスティアンは赤くなった目を上げて

月明かりが降り注ぐ海を

見つめました。

銀白色の波に沿って流れた視線は

浜辺に届き、砕ける泡を通り過ぎて

再びオデットに届きました。

 

「本当です、バスティアン。」

オデットは改めて潔白を訴えました。

澄んで輝く青緑色の瞳は、

永遠に留まりたい

楽園の海のようでした。

 

バスティアンは片手いっぱいに

銀色の砂を握りしめながら、

その恐ろしくも美しい顔を

見つめました。

そして、オデットが

「メグがあそこに・・・」と

訴えると、彼は、

砂がこぼれ落ちて、

ついに空っぽになった拳を緩めて

「あなたの犬は死んだ」と

ゆっくり口を開きました。

 

オデットは、

そんなことを言わないで。

はっきり、メグではないと言った。

あなたが自分の目で・・と

抗議しましたが、バスティアンは、

嘘をついた。

そうすれば、あなたが

去らないと思ったからと答えると

そっと閉じていた目を開け、

オデットを直視しました。

 

「・・・違う」と否定し、

ぼんやりとした目を

パチパチさせていたオデットは、

逃げるように体を起こしました。

続いて立ち上がったバスティアンは

一気に、彼女を

自分の前に引き寄せました。

 

「離して! 違う!違う!」

オデットは死地へ追い詰められた

獲物のように、

無謀に、もがき始めました。

息を整えたバスティアンは

両手で彼女の顔を

しっかりと包み込み、

自分の方へ向けました。

 

バスティアンはオデットに、

正気に戻って、

自分の言うことをよく聞けと

言いました。

感情を排除したバスティアンの声は

オデットを飲み込んだ夜の海のように

冷たく沈んでいました。

 

「子どもはもういない」

 

バスティアンは、

すでに崩れた祭壇の残骸を

片付けてしまいました。

 

「マルグレーテもいない」

 

そして再び、最後の祭壇さえも

ついに崩しました。

 

血を流す場所を失った犠牲者の

虚ろな瞳は、間もなく

激しい怒りで満たされました。

バスティアンは大胆に

次を待ちました。f:id:myuieri:20210206060839j:plain

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そういえば、

子供が亡くなった後、

オデットが子供のことを思って

嘆き悲しむシーンは、

まだ出て来ていませんでした。

オデットは心の中で

子供が亡くなった事実を封印し、

マルグレーテを探すことで

その封印を

解かないようにしていたのを

バスティアンは気づいた。

彼は彼女を引き留めておくために

そのままにしておこうと思ったけれど

マルグレーテを探すために

オデットが海で溺れかけたことで

彼女が死んでしまうくらいなら

たとえ自分の元から去ることになっても

生きていて欲しいと願った。

それで、バスティアンはオデットに

子供とマルグレーテの死を

認めさせる

荒療治をしたのではないかと

思いました。

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