自分時間を楽しく過ごす 再婚承認を要求しますの先読みネタバレ付き

子供の頃からマンガが大好き。マンガを読むことで自分時間を楽しく過ごしています。再婚承認を要求します、ハーレムの男たちを初めとして、マンガのネタバレを書いています。

バスティアン 176話 ネタバレ ノベル 原作 あらすじ 適正線

176話 オデットと一緒に過ごす日の終わりが刻一刻と近づいています。

雨は、一時的に止んだり

再び降ったりを繰り返しながら、

一晩中続きました。

 

バスティアンは裏庭のポーチに出ると

タバコを咥えて火を点けました。

霧雨が降る田舎の朝の風景は

静かで平和でした。

 

バスティアンは、

深く吸い込んだ最後の一服の煙を

嘲笑と共に吐き出しました。

緊迫している情勢と

目前に迫った戦争の危険が、

突然、遠い世界の出来事のように

感じられました。

永遠に、このように穏やかな日々を

生きていけるようにも思えました。

そんなことを考えているのを

上層部が知れば驚くだろうけれど。

 

タバコを消したバスティアンは

腕時計に視線を落としました。

包帯を巻いていなかったという事実に

ようやく気づきました。

普段は犯さないミスでした。

 

バスティアンは、まず、

まくり上げていた

シャツの袖を下ろして傷を隠しました。

毎晩、悪化する傷は

なかなか治りませんでした。

大雑把に手当てをして台所に入ると

古い階段が軋む音が

聞こえ始めました。

 

静かにため息をついたバスティアンは

大股で廊下を横切って行きました。

すでにオデットは

階段をほとんど降りていました。

彼を見つめる真っ直ぐな眼差しから

あなたの助けは遠慮するという

意固地さが

はっきりと滲み出ていました。

 

ここまで。

オデットが引いた適正線を、

今は、はっきりと

理解できたように思えました。

バスティアンは、

その線の外に退くことで、

不必要な争いの余地を

断ち切りました。

 

「体調はどう?」と

道を開けたバスティアンは

淡々と尋ねました。

オデットはようやく緊張を解き、

残りの階段を降りました。

 

オデットは

もう大丈夫だと答えると、

息を整え、淑やかに微笑むことで

混乱した心を隠しました。

まだ微熱はありましたが、

病人を自認するほどの症状では

ありませんでした。

 

幸いにもバスティアンは

素直に納得しました。

一晩中、ろくに眠れず、

夜明けと共に起きて、

身支度を整えた甲斐のある

成果でした。

 

オデットは、慎重な足取りで

台所へ向かいました。

2階へ上がるバスティアンの足音が

聞こえると、

長々と安堵のため息が漏れました。

 

バスティアンの提案を受け入れたことは

痛恨のミスでした。

しかし、すでに

取り返しのつかないことでした。

そうであれば、

少なくとも残りの3日間は

後悔のない時間にすることが

今の最善でした。

滅茶苦茶な遠足を終えて帰宅し、

引きこもっていた昨日の夜から、

この階段を降りる決心をした

今朝に至るまで、

長く悩んだ末に出した結論でした。

 

良い別れをしたいと思っていました。

オデットは、その願いを胸に

朝食の準備を始めました。

いつも、卑怯に逃げるだけの

関係でした。

愚かな未練を

全て断ち切れなかったのは、

おそらく、きちんとした結末を

迎えられなかったからかも

しれませんでした。

残りの3日間を無事に過ごし、

笑顔でさよならを告げられれば、

この結婚を、

完璧に精算できると思いました。

 

急いでパン生地を仕込んだオデットは

台所を漁って、

残った食材を見つけました。

バスティアンが再び現れたのは、

それでも卵が十分にあるという事実に

安堵した瞬間でした。

 

「手伝うよ」と言って、

袖をまくり上げたバスティアンが

足早に台所の中に入って来ました。

オデットは、

2階で待っていてくれないかと、

遠回しに断りの意志を伝えましたが

バスティアンは

平然と調理台の前に近づき、

これを下処理すればいいのかと

尋ねました。

悩んでいたオデットは「はい」と答え

それでは、

野菜を少し下処理して欲しいと

一番簡単な仕事を任せることで

妥協しました。

茹でようと思っていた卵は

すべて殻を割って

解き解してしまいました。

衝動的な選択でしたが、

後悔はしませんでした。

 

本格的な料理が始まった台所は

すぐに熱気で満たされました。

形を整えて作ったパンを

オーブンに入れたオデットは、

すぐにソーセージを焼きました。

バスティアンは、

まだジャガイモと格闘中でした。

包丁さばきが、

どれほど不器用なことか。

剥いた皮は、

少なくともジャガイモの半分ほど

あったように見えました。

 

助けどころか

邪魔になるだけの手助けでしたが

オデットはあえて

言い争いませんでした。

猫背で立ち、ジャガイモの皮を剥く

戦争の英雄だなんて。

呆れ過ぎて、フッと笑いが漏れました。

 

剣術にも長けているというのは、

どうやら根も葉もない噂だったようだと

オデットがつまらない冗談を言うと、

バスティアンの口元にも

クスッと笑みが浮かびました。

彼は、

包丁でジャガイモを

相手にしたことがないと答えました。

 

不器用にジャガイモの皮を剥く

手を見つめていたオデットは、

包帯を巻いた手首に視線を移すと

その手首はどうしたのかと

尋ねました。

ずっと心に引っかかっていましたが

越権行為のように思えて

飲み込んで来た質問でした。

 

バスティアンは、

訓練中に少し怪我をしたと、

気のない返事をしながら、

次のジャガイモを手に取りました。

 

オデットは、

ひどい怪我なのかと尋ねました。

バスティアンはそれを否定し、

軽い擦り傷程度だと答えました。

オデットは目を細めて、

手首を見つめながら、

本当なのかと尋ねました。

新しく巻いたばかりの

きれいな包帯でした。

海軍省に休暇をもらってから

もう数日経ちましたが、

その程度の傷で

包帯を巻いているはずのない

男でした。

 

「嘘だと思う?」と

予想外の反問を投げかけた

バスティアンが視線を上げました。

異様に静かな瞳を

じっと見つめていたオデットの

頬の辺りが微かに赤くなりました。

 

オデットは、

いいえ。そういう意味ではなかったと

適当にごまかしながら

背を向けました。


ちょうど

ソーセージが焼き上がったおかげで

自然と、その場を

離れることができました。

2人は、再び訪れた沈黙の中で、

それぞれの仕事に専念しました。

 

野菜の下処理を終えたバスティアンは

応接室に行って食卓を整え、

オデットは、

でこぼこになった野菜を細かく切って

オムレツを作りました。

その間にパンが焼き上がり、

スープも煮立ちました。

オデットは最後に湯を沸かし、

コーヒーの瓶を取り出しました。

 

台所に戻ったバスティアンが

自分はお茶を飲むと、

思いがけない要求をしました。

「あなたは?」と

静かで低い声が

再び境界を越えて来ました。

しばらく躊躇っていたオデットは

再び戸棚を開けて

茶筒を取り出しました。

 

朝の食卓には、

1杯のコーヒーと1杯のお茶が

それぞれ置かれていました。

オデットが再び引いた

明確な線でした。

静かに降る雨のように

過ぎ去った1日でした。

朝食を終えた後は、

それぞれの時間を過ごしました。

オデットは応接室の窓際に座って

レースを編み、

バスティアンは向かいの席で

本を読みました。

 

この家には、

彼の好みに合う本が一冊もないことを

知っていましたが、オデットは

あえて干渉しませんでした。

良い別れという最後の願いのために

一線を保ちたかったからでした。

 

風邪の兆しを伴う疲労感に

勝てなかったオデットは、

知らず知らずのうちに、

すっと眠りに落ちてしまいました。

それに気づいたのは、すでに、

あまりにも長い昼寝をした後でした。

午後の遅い時間という状況以上に

オデットをさらに困惑させたのは、

体を包んでいる毛布でした。

 

今からでも

昼食を準備しようという気持ちを

変えたオデットは、

再び椅子に深く体を預けました。

そっと目を上げると、

椅子に座ったまま眠っている

バスティアンが見えました。

一緒に昼寝をする日曜日の午後。

彼らの間に存在するとは

思えなかった平穏でした。

 

オデットは、

これ以上、夕食の準備を

先伸ばしにできない頃になって

ようやく席を立ちました。

バスティアンは、

まだぐっすり眠っていました。

ひどく疲れ果てて

疲弊しているように見えました。

窓の外が暗くなった分、

鮮明になった明かりが

痩せた顔の輪郭を

さらに際立たせました。

 

いかに長年熱望して来た復讐に

成功したとしても

クラウヴィッツ家の悲惨な最期が

ただ喜ばしいだけだったはずが

ないことを、

オデットはよく知っていました。

もし2年前に、

計画通りに父親を倒していたら、

今とは違う結末を

迎えたかもしれないということも。

 

お互いに最悪の傷を与えた

関係だという事実を改めて実感すると

自嘲的な笑みがこぼれました。

 

オデットは、

ようやく苦しい地獄から抜け出した男の

新しい地獄に

なりたくありませんでした。

どうか過去の傷を忘れて

幸せでいて欲しいと願いました。

同様に、自分も

そのような人生を歩みたいと

思っていました。

だから、お互いのためにも、

ここまで。

 

眠っているバスティアンを

じっと見つめていたオデットは、

慎重な足取りで

応接室を後にしました。

今日1日が、

もうすぐ終わるという事実が

とても有難く感じられました。

 

残された時間はわずか2日。

オデットは、

適正線を守る自信がありました。

確かにそうでした。

その騒ぎが起こったのは

真夜中を過ぎた深夜でした。

風邪薬を飲んで早めに寝たオデットは

雷が鳴るような音に驚いて

目を開けました。

急いで窓の前に近づいてみましたが、

雨雲が晴れた夜空は、

ただただ澄み渡っていました。

 

おそらく幻聴だったのだろうと

結論づけたオデットが

再びカーテンを閉めたのと同時に

ドンドンと、

さらに大きくはっきりとした轟音が

響き渡りました。

バスティアンが泊まっている部屋から

聞こえてくる音でした。

 

ショールを羽織ったオデットは

急いで寝室を出ました。

古びた床板を伝わって来る振動は、

バスティアンの部屋に近づくにつれて

ますます大きく、

はっきりして行きました。

 

「バスティアン?」

オデットは慌ててノックしました。

しかしバスティアンの返事は聞こえず

むしろ騒音だけが

さらに大きくなりました。

じっと耳を澄ますと、

それは体重を乗せて

踏みしめるような足音でした。

重い何かを引いているような音も

同時に聞こえました。

 

「バスティアン!」

その間から聞こえて来る

苦しげな呻き声を聞いたオデットは

もはや躊躇うことなく

ドアノブを回しました。

しかしドアは、内側から

しっかり閉まっていました。

どんなに力を込めても

開きませんでした。

 

自分の声が聞こえているか。

大丈夫かと尋ねながら、

オデットは拳を握った手が

真っ赤になるほど

激しくドアを叩きました。

お願いだから、返事をしてと

叫びました。

 

オデットは鍵を取りに行こうとして

振り返った時、

大丈夫だと、荒い息が混じった返事が

聞こえて来ました。

オデットは、

ようやくまともに息を吐きながら、

胸を撫で下ろしました。

 

オデットは、

これは一体どういうことなのかと

尋ねました。

バスティアンは、

悪夢を見た。もう大丈夫だから

戻ってもいいと答えました。

確かに声が近づいたのに、

なぜかバスティアンは

施錠されたドアを開けませんでした。

 

「嘘みたい」

必死に飲み込んだ答えが

ため息のように漏れました。

先に線を引いておいて、

先にその線を越えました。


そのような自分が

情けなくなりましたが、

オデットは結局、

背を向けることができませんでした。

 

「ドアを開けてください」

オデットは断固たる力を込めて

再びドアを叩き始めました。

「早く、バスティアン!」

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おそらくバスティアンは

テオドラが登場するまでは、

クラウヴィッツ家で

穏やかな生活を送れていたと

思います。

でも、オデットは幼い頃から

一度も穏やかな生活を送ったことが

なかったのではないでしょうか。

だから、

ロスバインで生活するようになって

初めて穏やかさというものを

経験するようになったのではないかと

思います。

その穏やかさを壊したくなくて

バスティアンを遠ざけたかったけれど

彼がいても、穏やかな時間を

過ごすことができた。

オデットは、

自分が彼の新しい地獄になりたくないと

思うことで、

自分の本心に蓋をしているけれど

もしかしたら、彼と一緒にいても、

傷つかずに済むかもしれないという

気持ちが芽生えたのかもしれません。

そんな心の揺らぎが、適正線を越える

後押しをしたのかもしれないと

思いました。

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