
122話 ローラはジョンをひどい目に遭わせたのが、イアンであることを聞きました。
ローラの呼吸が乱れました。
彼が、ダルトン氏が
バースにいるの?
自分を追いかけていたのは
彼だったの?
その上、ジョン・アシュトンを
こんな状態にしたの?
彼女の足が
自然とジョンに近づきました。
アシュトン氏は、
あなたをチェルシー夫人の家から
無事に送り出した後、自分は
2時間ほど、
チェルシー夫人の家に滞在してから
街に出た。
商店街を通り過ぎて
人通りが少ない橋の下を歩いていると
誰かが自分の肩を掴んだ。
黒髪で色白の紳士だったと
話しました。
ローラは、
先ほど座っていた椅子に
どさっと座り込みました。
彼は、ヨークシャーの大地主
イアン・ダルトンだと名乗ると、
ローラ・ペンドルトンへの気持ちを
諦めるように。
自分たちはもうすぐ結婚するので、
邪魔せずに消えて欲しいと言った。
自分は直感的に、
彼があなたを追いかけていた男だと
気づいた。
それで彼にいくつか注意をした。
彼は自分の言葉が不愉快だったのか
突然、拳を振り上げたと話しました。
「なんてことでしょう。
まさか・・・そんなことが・・・」
ローラは両手で顔を覆い、
俯きました。
衝撃で頭がぼんやりしました。
イアン・ダルトンが
ジョン・アシュトンを殴って
肋骨を2本も折り、顔全体を傷つけた。
ローラは信じたくないし、信じるのも
容易ではありませんでした。
彼は多分に感情的で、
不快な状況を何よりも嫌う人でした。
しかし、だからといって
軽々しく他人に拳を振るうような
ならず者ではありませんでした。
少なくとも、
ローラが知っているダルトン氏は
そんな人ではありませんでした。
しかし、ジョン・アシュトンが
嘘をついたと信じるのも
難しかったです。
ダルトン氏の存在を知ること自体が
彼の証言に信憑性を与えていました。
ローラは手を下ろして
ジョン・アシュトンを見つめました。
痣だらけで裂けた顔を前にすると、
罪悪感が恨みを
圧倒してしまいました。
ローラはアシュトン氏に
心から謝りました。
彼は首を振りました。
そして、自分は謝罪を受けるために
この話をしたのではない。
あなたの身の周りに危険が迫っている。
十分に注意し、さらに注意を
払わなければならない。
そうでないと、
次はあなたが自分のように・・・
と言うと、ローラは首を振り、
自分は、そうはならないだろうと
答えました。
アシュトン氏は、
なぜ、そう確信しているのかと
尋ねました。
ローラは、
自分は彼を知っている。
彼は自分に
害を及ぼすようなことはしない。
いつも、ぶつぶつ文句を言い、
理不尽な我儘を言い、
嘘もつく悪い男性だけれど、
彼は・・・と言いかけた瞬間
自分がダルトン氏の
味方をしていることに気づき、
口を閉ざしました。
ローラをじっと見つめていた
ジョン・アシュトンは
すぐに頷きました。
そして、2人の関係について
よく知らないのに、自分が
余計なことを言う権利はない。
とにかく、自分はこの事実を
どうしても知らせたかったと
話しました。
ローラは、
それで自分にお茶を飲もうと
誘ったのかと尋ねました。
彼は頷きました。
ローラは、
それを知らずに怒ってしまったことを
謝りました。
アシュトン氏は、
いつ怒ったのかと聞き返すと、
ニコニコ笑いました。
痣のある頬に、えくぼができました。
怪我をしているにもかかわらず、
彼の笑顔は素敵でした。
アシュトン氏は、
ローラが、彼女を最後に見た
17歳のままであることを
知っているか。
いや、以前よりも美しくなった。
12年の歳月は、しわの代わりに
あなたの顔に知性と品格だけを
与えたと話しました。
ローラは淡々と謝意を表しました。
口先だけの言葉だと思いましたが
自分の求婚者にひどく殴られた彼に
礼儀を尽くすべきだと思いました。
アシュトン氏は、
あなたの顔を
また見ることができるだろうかと
尋ねました。
ローラは黙っていました。
アシュトン氏は、
時々・・・見舞いに来てくれないかと
頼みました。
ローラはしばらく考えた後、
すぐに頷き、
週に1度くらいならと答えました。
アシュトン氏はお礼を言い、
ローラが、どの医者よりも
自分の回復に役立つだろうと
言いました。
ローラはぎこちなく微笑むと
椅子から立ち上がりました。
彼女は、
今日はこれで失礼する。
1日も早く良くなるよう
祈っていると告げました。
アシュトン氏はローラに、
気をつけて帰るようにと言いました。
ローラは、
彼と軽く握手を交わした後、
客室を出て行きました。
通りに出たローラは
トボトボと歩きました。
ジョン・アシュトンの住まいを出ると
彼への思いは
洗い流されたように消え、
頭の中はダルトン氏のことで
いっぱいになりました。
彼がバースにいる。 彼が・・・
バースにいる間、ローラは
ふとした時に
彼を思い出すことがありました。
今この瞬間、
彼は何をしているのだろう。
自分の執務室で
事務処理をしているのだろうか。
庭園のリンゴの木の間を歩きながら
秋の涼しい風を
感じているのだろうか。
それとも牧師館で、スター夫妻と
お茶を飲んでいるのだろうか。
しかし、ホワイトフィールドにいると
信じて疑わなかった彼が、
ローラと同じ街にいました。
認めたくなかったけれど
ローラは激しく胸が高鳴りました。
再び彼女の五感は、
舞踏会の夜、馬車の中で
口づけを交わした瞬間に
戻ろうとしました。
ローラは激しく首を振りました。
しかし、真っ赤に染まった頬は
どうすることもできませんでした。
バカね。
あの日のことはもう考えないで。
お願いだから、やめて!
彼は人を殴った。
骨が折れるほど殴ったそうだ。
それは大きな間違いだ。
彼に失望しなければならない。
しかし、男性同士で殴り合うのは
よくあること。
それに、ジョンが、ただ
殴られていたばかりのはずもないし。
ちょっと待って。
それならダルトン氏も、
きっと怪我をしているはず。
ローラはその場に
すっくと立ちました。
ジョンは体格も大きく力も強い。
きっとダルトン氏を殴っただろう。
なんてことだろう。
彼は、どれほどの
怪我をしたのだろうか?
骨が折れただろうか?
肉が裂けてしまっただろうか?
地面に頭をぶつけて
脳震盪でも起こしていたら・・・!
彼女はパニック状態になり、
悲鳴を上げたくなりました。
ダメ、ダメ、
もう考えるのはやめて。
落ち着いて。お願いだから、
いつものローラ・シェルダンに
戻って。
一体、どうしてしまったのか。
なぜこんなに分別のない
愚か者になってしまったの?
ローラは再び足を速めました。
しかし、どんなに速く歩いても
頭の中にこびりついた
彼への心配は消えませんでした。
心地よく吹く新鮮な秋風も、
熱くなった頬を
冷やすことができませんでした。
ローラは首を横に振りました。
怪我はしたけれど、
致命的ではないだろう。
法律家でもある人が
ダルトン氏を死ぬほど
殴ったはずがない。
落ち着いて、ローラ。
そして、
これから何をすべきかを考えて。
うーん・・・
まずハイド嬢とローティス嬢に、
自分たちを追っていたのが
ダルトン氏であることを
伝えなければならない。
ローラは、
続けて考えようとしましたが、
目の前にちらつく
ダルトン氏の顔を見て、
もはや理性的な考えをすることが
できませんでした。
さらには、そばで
何が起きているのかさえ
意識できませんでした。
自分のそばを通り過ぎる
多くの人々も、涼しい秋風も。
そのため、ローラは
ホテルの前に到着した後も
気づきませんでした。
ホテルの真向かいにある
大型帽子店の最上階の窓の前で
1人の男性が、じっとホテルの入口を
見つめているのを。
その男性の顔が
ジョン・アシュトンと同じくらい
ひどい状態だとしても、
体のどこも骨折したり、
陥没していないと分かれば
ローラは安堵のあまり
泣き崩れたかもしれませんでした。
また、ローラを見つけた彼の表情が
どれほど嬉しそうで、かつ
悲しげに歪んだかを見れば、
彼を抱きしめたい衝動を
抑えられなかったはずでした。

ホテルに入ったローラは、
自分が本当に
気を引き締めるべき時だと
考えました。
客室にはローティス嬢がいるだろう。
今日は予定がなく、ホテルで休んだ後
皆で夕食を食べに行く
約束をしていました。
ローラは、
しばらくロビーの前の噴水のそばに立ち
心を落ち着けてから
スイートルームへ上がりました。
客室のリビングには
ローティス嬢が1人で座って
裁縫をしていました。
普段の彼女には
全く似つかわしくない姿でした。
ローラは驚きのあまり、
頭の中を占めていたダルトン氏の顔も
忘れてしまいました。
ローラは彼女のそばに座りました。
そして、
ホテルに修理室があるのに、
なぜ、ローティス嬢自身で
縫い物をするのかと尋ねました。
ローティス嬢は、
布に針を刺しながら、
このホテルの裁縫技術はひどい。
先日、
破れたシルクのストッキングを
預けたけれど、戻って来たのは
縫い物を習い始めたばかりの
12歳の子供が台無しにした
布切れだった。
ペンドルトン嬢も
修理が必要なことがあれば
自分でやるか、自分に任せるようにと
話しました。
ローラは頷きながら、
ローティス嬢が縫っている服を
じっと見つめました。
服は濃い紫色の
秋のジャケットでした。
ローラは首を傾げました。
ローティス嬢の服は、どれも黒でした。
ジャケット、ブラウス、コート、
マフラー、手袋、ストッキング、
帽子、さらにはネグリジェまで。
ローラは
服をじっくり見つめているうちに
その服が、昨日ハイド嬢が着ていた
秋のコートであることに
気づきました。
ローラは、
もしかして、この服は
ハイド嬢のものではないかと
尋ねました。
ローティス嬢は、
縫い目から目を離さずに
「そうです」と答えると、
裾がドアの間に
挟まっていることも気づかずに
そのまま進んでしまい、
破れてしまったそうだ。
ジェーンはいつもトラブルを起こす。
食べ物をこぼし、
石につまずいて転び、
馬に乗っている時に鞍から落ちて
首を捻挫し、
手袋の片方を落として、
もう片方も使えなくしてしまう。
なんて可愛らしいのかと
感嘆しました。
ローラは、
ハイド嬢は幼い頃からそうだった。
なぜ、そんなに不注意なのかと
尋ねたことがあるけれど、
ハイド嬢は、
あらゆる興味深くて楽しい考えが
頭の中から途切れない。
まるで1日中、
物語を読んでいるようだと答えたと
話しました。
ローティス嬢は、
創造的な人々の典型的な特徴だ。
おそらくジェーンが書いた小説は
面白いだろうと言いました。
ローラは、
ハイド嬢が小説を書いているのを
ローディス嬢が知っていることに
驚きました。
ローティス嬢は、
自分に直接話してくれたと
言いました。
ローラは、ハイド嬢がローティス嬢に
その小説を見せたのかと尋ねました。
彼女は「いいえ」と答えました。
ローラは、
それは変だ。ローティス嬢は
ハイド嬢が最も尊敬する
作家ではないかと言いました。
ローティス嬢は、
ジェーンに何度頼んでも
嫌だと言うだけ。
自分はこうして
彼女の服まで縫ってあげているのに
残念だと、
ため息混じりの声で話しましたが、
口元には、
微かな笑みが浮かんでいました。
ローラは、
服を縫うローティス嬢の手つきを
静かに見つめました。
真心のこもった繊細な手仕事でした。
まるで大切な人の服を
縫っているかのよう。
その手つきを見て、ふと浮かんだ考えに
ローラは首を振りました。
ローラはローティス嬢に、
ハイド嬢はどこにいるかと
尋ねました。
ローティス嬢は、
手紙を出しに郵便局へ行ったと
答えました。
ローラは、
いつ頃、戻って来るかと尋ねました。
ローティス嬢は、
帰りに書店に寄ると言ったので、
数時間は帰って来ないだろう。
あの子もペンドルトン嬢に負けず劣らず
本が好きだからと答えました。
ローラはダルトン氏について
いつ頃、話そうか悩みました。
楽しい食事の席には
全く似つかわしくない話でした。
ローラは、
とりあえずハイド嬢には
別に話すことにして、
まずローティス嬢に
打ち明けることにしました。
ローラは、
数日前、自分たちの後を追っていた
男性の正体を突き止めたと話すと
縫い物をしていたローティス嬢の手が
ピタッと止まりました。
彼女は顔を上げて
尋ねるような眼差しで
ローラを見つめました。
ローラは、
彼の名前と居住地。
彼と自分が築いてきた友情と、
それによって得た良い仕事。
その間に芽生えた愛情と
それに続くプロポーズについて
簡潔に説明しました。
ローラは彼が悪い人に見えないように
無謀な行動や嘘などを省きました。
しかしローティス嬢は作家なので
行間を読んで
推測することができました。
ローラの説明が続くにつれて、
ローティス嬢の眉間の幅が
狭くなりました。
彼女は、
つまり、あなたが
そばを離れられないように
偽の仕事を斡旋して
彼のそばに縛り付け、
あなたが彼の気持ちに気づいて
その場を離れると、
ここまで追いかけて来て
周囲をグルグル回りながら、あなたを
怖がらせているということですねと
尋ねました。
ローラは、
そうではなくて・・・と
否定しようとしましたが、
ローティス嬢は、
なんてひどい男だ。
女性が嫌だと言えば
それで終わりだろうにと
すでに激怒していました。
ローラは、
ハイド嬢がそばにいる時に
説明すれば良かった。
彼女なら、ダルトン氏が、
そんなに悪い人ではないことを
ローティス嬢に
納得させられたのにと後悔しました。
ローティス嬢は、
糸を結んで、小さなハサミで
パチンと切り、服を横に置くと
その男は今どこにいるのかと
尋ねました。

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イアンの危機!
まさか、彼が
ホテルの真向かいにいるなんて。
ローティス嬢に見つかったら
大変な目に遭わされそう。
ローティス嬢は、
自分の足をダメにされた経験から
男性に対して不信感があり、
ローラのイアンについての説明を
悪く解釈しているように思います。
どうかイアンが
彼女に見つかりませんように。
そして、ローラはイアンのことを
こんなに心配しているくらい
好きなのだから、
今度、イアンに会ったら
何も考えずに、彼の胸の中に
飛び込んで欲しいです。