自分時間を楽しく過ごす 再婚承認を要求しますの先読みネタバレ付き

子供の頃からマンガが大好き。マンガを読むことで自分時間を楽しく過ごしています。再婚承認を要求します、ハーレムの男たちを初めとして、マンガのネタバレを書いています。

バスティアン199話 ネタバレ ノベル あらすじ セイレーンの歌

199話 瀕死のバスティアンは、どうなったのでしょうか?

夜が明けると、

戦場の一日が始まりました。

オデットは、

青い夜明けの光の中で

目を覚ましました。

夜遅くまで寝つけませんでしたが

頭の中は奇妙なほど

冴え渡っていました。

 

静かにため息をついたオデットは

躊躇うことなく立ち上がると

ベッドを整えました。

顔を洗い、服を着替えて、

身だしなみを整えている間に、

いつの間にか辺りは

すっかり明るくなっていました。

 

最後に看護帽をかぶったオデットは

温かい濡れタオルを持って

病床に近づきました。

目を閉じて横たわるバスティアンは

まるで眠っているかのように

穏やかに見えました。

 

「おはよう、バスティアン」

オデットはにっこり笑いながら

バスティアンの頬に

キスをしました。

呼んでも返事のない名前がもたらした

悲しみは、深く飲み込みました。

 

ベッドのそばに置かれた椅子に座った

オデットは、優しい手つきで

バスティアンの顔を拭いてあげました。

ぼそぼそ話す声は、

暖炉の火影のように

温かな音色を帯びていました。

 

時折、声が詰まったり、

唇が震えたりもしましたが、

オデットは黙々と、

バスティアンとの会話を続けました。

 

手術は成功しました。

深く刺さっていた砲弾の破片まで

全て取り除き、幸いにも、

最も懸念されていた内臓の傷も

予想していたほど

深刻な状態ではありませんでした。

ただ、

あまりにも出血が多量であった上に

低体温症も併発しているため、

予断を許さない状況でした。

まずは患者が、無事に

意識を取り戻すのを待ってみようと

主治医は告げました。

 

たとえ半分に満たない希望であっても

オデットは、この世の全ての神々に

感謝しました。

バスティアンは強い人なので

必ず目覚めると信じて

疑いませんでした。

意識不明の状態が続いている今も

変わりませんでした。

 

1週間が過ぎると、主治医でさえも

目に見えて、

焦りを見せ始めましたが、オデットは

毅然として待ち続けました。

 

バスティアンの状態は

明らかに好転していました。

体温と脈拍、そして呼吸まで、

全てのバイタルサインが

正常な範囲に戻りました。

胸に耳を傾けると、

心臓の鼓動が聞こえました。

手を握ると温かでした。

主治医は、

それでも意識が戻っていない点を

心配していましたが、

オデットの考えは違っていました。

 

バスティアンは、

ただ長い眠りについているだけ。

一生休むことなく走り続けて

生きてきた男なので、

疲れ果てていても、

おかしくありませんでした。

十分に休息を取れば

帰って来てくれると信じていました。

だから、オデットは、ただ信じて

待つだけで良かったのでした。

簡単なことでした。

 

顔を全て拭いたオデットは

慎重に布団をめくって

バスティアンの傷口を確認しました。

意識がない間も、着実に骨が癒合し

傷が癒えて行きました。

眩い朝日が、決して崩れることのない

その強健で美しい体を包み込みました。

まるで、

祝福が降り注いでいるかのような

光景でした。

 

おかげでオデットは、

笑顔を絶やすことなく

包帯を巻くことができました。

やむを得ず、

目頭が熱くなる瞬間もありましたが

よく耐えました。

 

手術が無事に終わったという

知らせを聞いた夜明けに、

オデットは決心しました。  

彼が目を覚ますまでは

絶対に泣かないと。

むやみに弱々しい姿を見せて

不吉な影を落とすのは嫌でした。


バスティアンは、

立派に戦い抜いていました。

だから、自分も

立派にやり遂げられるはず。

再び崩れそうになる心を

引き締めたオデットは、

心を込めて

バスティアンの体を拭きながら

話を続けました。

すでに10日間続いている独り言が、

ふと悲しくなっても 

止めることはありませんでした。

 

主治医は感覚を刺激することが

患者を目覚めさせるのに

役立つ場合もあると助言しました。

その日からオデットは毎朝、毎晩、

自らバスティアンの体を拭きながら

話しかけました。

言葉に詰まると歌を歌い、

それさえも辛くなると

彼の名前を囁きました。

 

きれいに拭いたバスティアンの体を

再び布団で包み込んだオデットは、

病床の横の椅子に座って

一息つきました。

窓の外は雪と氷の世界で、

赤く染まったオデットの額には

汗が滲んでいました。

 

少し間違えると、

症状を悪化させる恐れがあるため、

バスティアンに触れる際は

細心の注意を払わなければ

なりませんでした。

神経を尖らせたまま

体格のいい男を扱うのは

容易なことではありませんでしたが、

それでもオデットは

バスティアンのために何かできる

この瞬間が幸せでした。

 

久しぶりに雲が晴れて、

空が本当に綺麗。

まるで、あなたの瞳のよう。

寝坊している夫の代わりに

天が自分に会いに来てくれたようだ。

 

オデットは、

赤くなった目で窓を見つめました。

澄み渡ったトロサ諸島の空を見上げると

バスティアンの視線が

一層恋しくなりました。

 

あなたを恨んでいるわけではない。

ゆっくり休みたい気持ちも

理解している。

いつも、すごく忙しくて

大変だったから。

でもバスティアン、

もう戻って来てもらえない?

 

涙を浮かべたオデットの瞳が

再びバスティアンを映し出しました。

頬と顎の先にある傷を見て、

どうしても胸が痛みました。

カミソリの刃で切った跡でした。

よく見なければ分からない

ただの切り傷に過ぎませんでしたが、

オデットの胸には

深い傷跡を残しました。

傷だらけの男に、

また傷を与えてしまったような

気がしました。

 

その気持ちも知らずに

ぐっすり眠っているバスティアンを、

実は少し恨めしく思いました。

 

理髪師を呼んで頼めばいいことは

分かっていましたが、

オデットは毎日、自ら

バスティアンの髭を剃ってあげました。

英雄の無力な姿を世間に見られるのは

嫌だったからでした。

我儘と言われても構いませんでした。

 

オデットは、

バスティアンを守りたい、

慈しみながら世話をしたい、

できることは何でもしてあげたいと

思っていました。

あなたは自分の家族だから。

足枷のように課せられた責務ではなく

自ら選び、切実な思いで手に入れた

大切な家族だから。

 

見ての通り、

自分の髭剃りの技術はひどい。

だから、もう起きてくれないか。

このままだと自分の散髪の技術まで

確認することになった日が来たら

どうするつもりなのか。

 

オデットは、つまらない冗談で

憂鬱な気持ちをなだめました。

きれいに梳かした

プラチナブロンドの髪を撫でる指先が

細かく震えました。

 

乱れた息を整えたオデットは

顔を向けて時計を確認しました。

いつの間にか、仕事を始める時間が

近づいていました。

 

オデットは立ち上がると、

看護服のマントを身に着けました。

目的が何であれ、

看護ボランティアの一員になると決めて

ここへ来ました。

だからオデットは、与えられた任務を

おろそかにしたくありませんでした。

 

愛とは責任を負うこと。

その信仰が絶望に耐える力を

与えてくれました。


オデットは

バスティアンを愛していました。

だからこの愛に対する責任を

果たしたいと思いました。

彼が愛する女性を

いい加減に放っておかなかったことも

オデットに与えられた

重要な役目の一つでした。

 

バスティアンの頬にキスをした

オデットは静かに病室を出ました。

北海の水色に似たマントの裾が、

仕事場へ向かう足取りと共に

柔らかく波打っていました。

暗闇の中に光が差し込みました。

真昼の太陽のように

明るく輝いたかと思ったら、

ほのかな月明かりになり、

再び闇の中に消えて行きました。

そして、再び訪れた未明の中で

夢が始まりました。

 

バスティアンは幼い少年となり

その夢の中を歩きました。

黒い森に入ると、

狼のように大きな野犬が

尻尾を振りながら駆け寄って来ました。

 

バスティアンが、

ポケットの中に、こっそり隠していた

卵とパンを取り出すと、

野犬は嬉しそうに跳ね回りました。

じゃれつく野犬を見ていた子供は、

卵の殻を剥く速度を

こっそり遅らせました。

無垢な愛情と切望が込められた

獣の眼差しが好きだからでした。

まるで愛のようだから。

 

台所から盗んだ食べ物を

ちっぽけな権力にした自分の姿に

遅ればせながら気づいた子供は、

突然恥ずかしくなって

頬を赤らめました。

そして急いで殻を剥いた卵を

野犬に与えました。

自分の分として持って来た食べ物も

全て野犬に差し出すと、

気分がずっと良くなりました。

 

ただ、自分が与える餌を

待っているのだろう。

おとなしくて優しい野犬が

ふと愛おしくなる瞬間ごとに、

子供は考えました。

ただそれだけだと、線を引くと

心がずっと楽になりましたが、

その一方で、

もしかすると本当に自分を

愛しているのではないかと

いつも疑問に思っていました。

漠然とした期待と、

それと同じくらいの恐怖を抱かせる

疑問でした。

 

そしてしばらくして、

子供はその答えを見つけました。

自分に噛みつく獣の鋭い牙の下で

生身が引き裂かれる苦しみの中で

叫びながら。

 

死地へと追い詰められた子供は、

結局、握りしめていた猟銃に

弾を装填しました。

 

そして、バンという銃声が

響き渡りました。

古い傷から血が流れる、

あの馴染みのある悪夢でした。

ただ一つ変わったのは、

その苦しみの後に訪れた悲しみに

ようやく向き合えるように

なったということでした。

 

バスティアンは崖っぷちに立たされた

子供のように、

自分が撃った野犬を見つめました。

光を失いつつある澄んだ瞳が

子供を映していました。

息が絶える瞬間まで

野犬はその子を見つめながら

尻尾を振りました。

子供の手には、もう食べ物がないのに。

自分を撃った銃だけなのに。

 

子供は、ぼんやりと

その様子を見つめてから

歩き始めました。

前ではなく後ろへ。

崖の果てへ向かって。

 

体が宙に浮かび上がると、

子供はようやく安堵しました。

そして冷たい海の深みに沈みました。

子供を助けに来た叔母の存在を

消し去ると、ようやく夢は

平安に包まれました。

 

良かった.

もうゆっくり休めると安心した少年は

静かに目を閉じて

海の懐に身を委ねました。

 

バスティアン。

音が消えた世界の中へ、

静かに囁く声が流れ込んで来ました。

耳を塞いでいた子供は

青年に成長しました。

 

バスティアン。

再び美しい魔女が歌いました。

 

耳をさらにしっかりと塞いだ青年は

男に成長しました。

そして目を開けました。

深い海ではなく、

一面、真っ赤な花で覆われた

野原の上で。

1人の幼い少女の手を握ったまま。

 

子供は澄んだ笑顔で彼を見つめました。

夜のように黒い髪と対比をなす

真っ白な肌を持つ少女は、

人形のように美しく愛らしかったです。

 

バスティアンは、

その子としばらく一緒に

花が咲く野原を散歩しました。

おんぶして歩きながら、

子供が好きな花を摘んであげて、

のんびりした午後の日差しの中で

ボール遊びもしました。

なぜか、その子に見覚えがあることに

ふと気づいた瞬間、ワンワンと

犬の鳴き声が聞こえてきました。

少年が愛し、また少年を愛してくれた

まさに、あの野犬でした。

 

バスティアンが、

ぼんやりと立ち尽くしている間に、

野犬と子供が出会いました。

すでに知り合いであるかのように

互いに喜び合うと、

赤い波がうねる花畑を

一緒に駆け回りました。

 

バスティアン。

名前を呼ぶ懐かしい声が

風に乗って流れて来ました。

バスティアンが、

その風が吹いて来た方向を

見ている間に、

子供と野犬は、地平線の彼方へ

遠ざかって行きました。

そして二度と戻って来ませんでした。

 

バスティアンは、

1人残された野原の真ん中に立ち、

一面に広がる赤い波を

見つめました。

花だと思っていましたが、

よく見ると血でした。

それに気づいたのと同時に、

血の海が

バスティアンを飲み込みました。

 

バスティアン。

彼を呼ぶ声がさらに近づきました。

バスティアンは耳を塞いだまま

海の深くに沈んでいきました。

 

痛い。

魔女の歌が鮮明になるにつれて、

全身が引き裂かれて

砕けるような痛みが、

激しくなって行きました。

 

バスティアンは、

むしろ再び眠りたいと思いました。

もう疲れました。

このまま海の懐に抱かれて

永遠の夢を見るのも

悪くないような気がしました。

 

バスティアン。

それなのに、なぜ「惑わしの歌」は

止まらないのだろうか?

 

バスティアン。

自分はすでに座礁してしまったのに。

 

バスティアンはゆっくりと目を開け、

次第に遠ざかる水面を見つめました。

炎の影が、黒い水流の下まで

差し込んでいました。

 

バスティアンは耳を塞いでいた手から

そっと力を抜きました。

そしてセイレーンの歌を聴きました。

美しかった。つまり、愛のように。

オデットは、普段より早い時間に

バスティアンの病室に戻りました。

勤務時間を短縮してくれた

看護団長の配慮のおかげでした。

 

手を丁寧に洗ったオデットは、

病室の窓を覆っているカーテンを

開けました。

囁くように口ずさむ歌声が

午後の金色の日差しの中に

静かに染み込んで行きました。

 

病室の片付けを終えたオデットは

ゆっくりと、

ベッドのそばに近づきました。

バスティアンの状態は、

仕事をしながら、隙間時間に

見に来ていた時と

大きく変わっていませんでした。

 

病床の横に置かれた椅子に座った

オデットは、

しばらく歌うのを止めて

こみ上げて来る思いを

飲み込みました。

 

ここへ来る途中で

主治医に会いました。

深刻な表情をしたハラー大佐は、

バスティアンの意識不明の状態が

長引いているのを見ると、

致命的な損傷を

受けたのかもしれないと、

しばらくしてから、

ようやく口を開きました。

 

胸が潰れそうな気持ちになりましたが

オデットは動揺しませんでした。

そんなはずはないと断言すると、

ハラー大佐は、まるで

哀れな子供を見ているかのような

表情をしました。

そして静かに退きました。

到底、会話は不可能だと

判断したかのように。

 

「バスティアン」

もう歌うことができなくなると、

オデットは涙声で

名前を囁きました。

 

本当は、すごく怖くて寂しい。

だから、どうか早く起きて

自分を抱き締めて欲しい。

 

舌の先まで出かかっていた

弱音を懸命に飲み込んだオデットは

眠っているバスティアンの上に

身を屈めました。


そして、元気に鼓動する心臓の音に

静かに耳を傾けました。

心が弱くなる度に繰り返して来た

一種の儀式のようなものでした。

 

「バスティアン」

口にできる言葉を見つけられず

ただ名前だけを繰り返しました。

背中を包み込む手の温もりを

感じたのは、もう泣くのを

我慢できなくなった頃でした。

ただ、ぼんやりとした目を

パチパチさせている間に、

大きな手が背中を撫でました。

 

オデットはゆっくりと顔を上げて

バスティアンを見つめました。

晴れた日の空に似た青い瞳が

オデットをいっぱいに

映し出していました。

目が合うとバスティアンは

ニッコリと微笑みました。

やつれた顔で。

少年のように瑞々しく。

 

「ただいま、オデット」

乾いた唇の間からこぼれ出た

バスティアンの声は、

ひどく掠れていましたが、

オデットは、はっきりと

聞き取ることができました。

「愛している」と

ため息をつくように囁いた

告白まで全て。

 

決して幻想ではないと

オデットは今や確信できました。

このような美しい奇跡は、

夢でさえ見ることが

できないのだから。

 

「お帰りなさい、愛しい人」

オデットは花が咲くように

明るい笑顔で返事をしました。

輝く水面のように煌めく

青緑色の瞳に込められた感情は愛、

全てが愛でした。

 

自分のもとに戻って来てくれて

ありがとう。

 

涙が溢れ出して、

伝えきれなかった気持ちは、

バスティアンの額や頬、

唇へのキスで代えました。

胸いっぱいの喜びで微笑む

オデットの顔は、溢れ出る涙で

びしょ濡れでした。

 

バスティアンは優しい手つきで

オデットの涙を拭ってあげました。

そして両腕いっぱいに

愛を抱き締めました。

長く険しい航海を終えた英雄の船が

錨を下ろしました。

ついにたどり着いた楽園の海、

愛を歌うセイレーンの胸の中で。

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バスティアンが手を繋いでいた

女の子は、亡くなってしまった

子供ではないかと思います。

子供と野犬と共に

バスティアンは

旅立つところだったけれど

オデットの声が彼を

呼び戻したのですね。

長い眠りから覚めた時に

目の前に愛する女性がいたら

すごく嬉しかったのでは

ないでしょうか。

オデットは

バスティアンへの手紙の中で

「戻って来て」と書いたので、

その答えが「ただいま」なのですね。

簡潔な言葉ですが、

様々な思いが込められていると

思いました。

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