235話 相変わらず記憶が戻らないソビエシュですが・・・
◇自分の盾◇
ソビエシュは
テラスのテーブルに座り
熱いスープを飲みながら
未来の自分が書いた
日記を広げたものの
心は別のことを考えていました。
カルル侯爵の法廷記録によれば
ラスタという女が
自分の悪口を言っていた。
彼女は奇妙な主張をしていたが
本当だろうか?
ソビエシュの不妊説でしょうか?
近頃、結婚をするか
もしくは、
跡継ぎとしてシャルルを
連れてくるようにという
陳述書が相次いでいました。
大勢の人がいる中
ラスタという女が
とんでもない発言をした。
そして、皇后の座は空いていて
リルテアン大公は
健康を回復しないので
人々が不安に思うのも
仕方がないが・・・
ソビエシュは、
ナビエ以外の女性と
結婚したくなかったので
シャルルを連れてくれば
自分の盾になってくれるのではと
思いました。
ソビエシュは
カルル侯爵を呼んで
シャルルを連れてくるように
指示しました。
カルル侯爵は
驚いた顔をしたものの
夜のソビエシュも
同じ意見だったので
素直に、「はい」と
返事をしました。
そして、カルル侯爵は
西大帝国にいた時に
ソビエシュに指示された
ズメンシア公爵家について
調査したことを報告しました。
ズメンシア公爵と
特に親しかったのは
カトロン侯爵とリバティ公爵。
カトロン侯爵はクリスタ従兄弟、リバティ公爵はクリスタの側近でした。
カトラン公爵は
前王妃の死後、
すぐに親皇后派に乗り換えたおかげで
ズメンシア公爵事件が起こった後も
命をつないだ。
けれども、顔色を窺っていたせいか
最近は引きこもっていることが多い。
リバティ公爵は
事件が起きる前に
親皇后派に乗り換えたので
事件後も活発に活動しているけれど
全盛期よりはおとなしい。
ソビエシュは、悩みました。
外国貴族と結託するには
色々気を使うことが多い。
自分が望んでいるのは
ナビエを傷つけずに
ハインリだけを追い出すこと。
けれども、手を組んだ人が
失敗すれば、恨まれたり、
逆に、この仕事を足掛かりに
再びハインリの
忠僕になりたがるかも・・・
ソビエシュは、彼らを探るように
カルル侯爵に指示しました。
カルル侯爵は立ち去りましたが
すぐに戻って来て
アンを迎えに来た人の来訪を
ソビエシュに伝えました。
アンを探すことは
ナビエの個人的な頼みだったので
やって来た人は、彼女が個人的に
送ってきたかもしれないし
彼女と親しいかもしれない、
その人に親切にすれば
ナビエに良い話を
伝えてくれるかもしれないと思い
ソビエシュは、
その人に会いに行きました。
◇ルベティの来訪◇
やって来たのはルベティでした。
彼女は、直接、
皇帝が来るとは思わなったので
ソビエシュが姿を現すと驚きました。
ルベティはソビエシュに挨拶をし
名前を名乗りました。
ソビエシュは、その名前に
見覚えがありました。
ラスタの仲間であることが
明らかになり、処刑された、
ロテシュ・リムウェルの娘。
自分の血筋を皇帝の血筋に仕立てた
重罪を犯したにもかかわらず
処罰されたのが
ロテシュ子爵と
息子のアレンだけなのを
ソビエシュは不思議に思っていました。
一族全員が処罰を受けてもおかしくないほどの重罪だそうです。アンは元々奴隷の子で父親が重罪を犯したので、自動的に奴隷として売られたのだとか。
その答えは、
日記に書かれていなかったので
夜のソビエシュが
何か裏取引をしたのではと
思いました。
その当事者を
ナビエが送ってよこしたのでした。
ソビエシュは
複雑な関係だと思いました。
そういえば、彼女が
父親の領地を継ぐために
何か書類を送って来て
夜のソビエシュが承認したことを
昼のソビエシュは確認していました。
ルベティとナビエとラスタ
この3人の間に入り込めば
失った記憶を思い出せるのではと
ソビエシュは思いました。
◇赤ちゃんの巣作り◇
いつでも赤ちゃんを見に行けるように
赤ちゃんの部屋は
ハインリとナビエの部屋の向かい側に
用意することにしました。
宮殿内は、
赤ちゃんの部屋を飾ったり
赤ちゃんの物を準備するので
忙しくなっていました。
気がかりなのは
ハインリの作っている
木の枝で作った巣。
小さくて柔らかい赤ちゃんを
その中に入れたくないので
こっそり片付ける方法はないかと
ナビエは考えていました。
しかし、ハインリは
巣作りで忙しいし
マッケナは山ほどのシルクを
集めてきて
それで巣を作ろうと
あちこち飛び回っていました。
巣を作る時は
鳥の姿でなければいけないので
最近、執務室の中に入ると
大きな金色の鳥と
青い小鳥が羽ばたいているのを
しばしば見かけました。
ナビエは、
赤ちゃんを巣に入れるのは
もう少し大きくなってからで
いいのでは?
鳥の姿でいる時に、必ずしも
巣の中にいる必要はないのではと
マッケナに尋ねましたが
彼は
赤ちゃんの時は
何時間も鳥の姿でいないといけない、
鳥の姿の時は
巣の中にいるのが一番楽と
答えました。
ナビエは鳥になったことがないので
反論できませんでした。
ハインリとマッケナは鳥の姿で
ナビエと共に
シルクの巣に使うシルクと
装飾品を選んでいると
ランドレ子爵がドアの外で
ナビエを呼びました。
ナビエはドアに近づき
ランドレ子爵に何の用か尋ねると
ドルシーが訪ねてきたと
彼は伝えました。
ドルシーの名前を聞くと、
マッケナは木の枝をくわえたまま
凍り付き
その姿を見たハインリは
笑い転げていました。
ナビエは、体調が悪いので
会うのが難しいと
ドルシーに伝えるように
ランドレ子爵に指示しました。
ドアを閉めると
マッケナは机の上で
身体をまっすぐにして
うつ伏せになりました。
その姿が可愛くて、
ナビエは笑うと
ハインリはマッケナを蹴飛ばし
自分も同じようにし
自分の方が可愛いでしょう?
と問いかけるように
ナビエを見つめました。
ナビエは、鳥になったら
頭も鳥になるのだと思いました。
◇穏やかな時間◇
シルクの巣に入れる宝石を選び
肌触りの良いシルクを選んだ後
人間に戻った
ハインリとマッケナと共に
食事をしていると
マッケナとドルシーの話を聞いた
ハインリが、マッケナに
結婚したら?とからかったので
喧嘩になりました。
しきりに笑いおしゃべりをした後
庭へ出て、デザートを食べ、
ハインリが赤ちゃんに子守歌を歌うと
マッケナは耳を塞ぐ、
そんな穏やかな時間を過ごしていると
エイフリン卿が
月大陸連合から届いた手紙を
持ってきました。
その内容は、新年祭の時に
みんなで集まる場を設け
じっくり相談したいことがあるので
すべての国の王に
参加してもらいたいという
ものでした。
ハインリは、ナビエの額にキスをし
ナビエのお腹に手を当てて
お母さんの言うことをよく聞くように
と言って、
マッケナとエイフリン卿と共に
本宮へ行きました。
◇愛の告白◇
ナビエは日が暮れるまで
1人で椅子に座っていました。
散歩をしたいと思いましたが
お腹が重いので、以前より
散歩がしにくくなっていました。
お腹は想像していた以上に重く
ナビエは怖いくらいでした。
寝室に戻るために歩いていると
本宮から遠くない所に
背の高い2人が向かい合って立っている
シルエットが見えました。
1人はマスタスのようでしたが
もう1人の背の高い人は誰なのか・・
すると
コシャール卿が大好きだと言う声が
聞こえてきました。
生まれてくる赤ちゃんのために
一生懸命、巣を作っている
ハインリとマッケナの姿が
ほほえましいと思いました。
シルクの巣って
どういうものなのでしょうか?
とてもきれいな感じがしますが
マンガでは、どんな風に描かれるか
楽しみです。