221話 ナビエはランドレ子爵から、ルベティが見つかったと報告を受けました。
◇ソビエシュが池に?!◇
ローラは、ルベティについて
ランドレ子爵に矢継ぎ早に質問すると、
ルベティはリムウェル領地の
すぐ隣の村にいて、
ケガをしているという報告は
受けていないと
ランドレ子爵は答えました。
安心したナビエは
ルベティを自分のところへ
連れてきてほしいと
ランドレ子爵に頼みました。
社交界にデビューしたばかりで
領地運営について
学んだことのないルベティが
一人で領地を切り盛りできるか
ナビエは、心配していました。
ランドレ子爵は快諾しました。
ローラとジュベール伯爵夫人が
ルベティが来るかどうか
話しているのを聞いた後で
ナビエは、廊下に出ました。
ルベティが領地経営について
学ぶように
自分も、ハインリが留守の間
彼の業務を代行する方法を
学ばなければと
歩きながら考えていると
ソビエシュが
池のほとりギリギリに
立っているのが見えました。
ナビエは、彼が
池に飛び込むような気がして
ナビエはランドレ子爵に
ソビエシュを捕まえるように
指示しました。
ランドレ子爵に捕まれた
ソビエシュは怒りましたが
ナビエが、
そのように命じたと聞いて、
ソビエシュは
照れくさそうに笑いました。
19歳のソビエシュは
記憶を失う前のソビエシュより
生存意欲が強いはずなのに、
なぜ、彼が池に飛び込むと
思ったのか。
そんなことを考えた自分に呆れ
プライドが傷ついたナビエは
追いかけてこようとする
ソビエシュの方を
振り返ることなく
池のほとりから離れました。
ランドレ子爵以外
誰もついてこないとわかると
ナビエは、
庭の奥のベンチに座りました。
◇もう一人の自分を消したい
ソビエシュとカルル侯爵は
彼らが滞在している部屋へ戻ると
カルル侯爵はソビエシュに
池に飛び込もうとしたのかと
尋ねました。
彼は、否定しました。
けれども、
池のほとりでランドレ子爵が
ソビエシュをつかんだ時
彼の後ろにいたカルル侯爵は
ソビエシュの顔を
見ていなかったし
ランドレ子爵が理由もなく
ソビエシュを引っ張ったとは
思えなかったので
もしかしたら、
19歳のソビエシュが
本物のソビエシュを消そうとして
池に飛び込もうと
したのではないかと思いました。
カルル侯爵の考えは
当たっていました。
ソビエシュは、数日前の
桃の一件以来
夜のソビエシュに
不満を抱いていました。
彼こそ、
すべての事件の元凶なのに
重要な情報を共有しないので
役立たずだと思っていました。
だから、ソビエシュは
池を見ていた時に
もう一度、衝撃を与えれば
夜のソビエシュが
消えるのではないかと思いました。
夜のソビエシュは
記憶が完全だし
知っていることが多いので
カルル侯爵たちは
そちらが本物のソビエシュだと
思っている。
カルル侯爵は信頼できる人だが
彼は、今の自分より
夜のソビエシュを信頼している。
はたして、自分は
カルル侯爵を信頼できるだろうか。
と自問したソビエシュは
カルル侯爵を
信頼できないと思いました。
◇ドルシーの絵の意味◇
ルベティからの連絡を待つ、
ソビエシュが東大帝国へ
帰るのを待つ、
ハインリが出かけるのを待つ
赤ちゃん鳥が生まれるのを
待つ、
待つことだらけの日々の中
ナビエはドルシーの絵を
解析できずにいました。
あえて絵を描いた理由を
考えていたものの
やはり意味がわからないので
ナビエは、絵を裏返し
いくつかの案件を
確認した後で庭へ出ました。
何歩か歩いたところで
後ろから
冷たい息遣いを感じたかと思うと
腕に鳥肌が立ち
足元の芝生が凍りました。
驚いたランドレ子爵が
ナビエに近づき
腕を伸ばしたので
ナビエは後ろに下がると
何か固い物に頭をぶつけて
バランスを崩してしまいました。
フラフラするナビエを支えて、
身体を起こしてくれた人がいました。
ドルシーでした。
ランドレ子爵が剣を抜こうとすると
ドルシーは、
彼のどこかを凍らせたので
ランドレ子爵は声も出さずに
そのまま寝てしまいました。
ナビエは、
ドルシーの素晴らしい腕前を
びっくりしながら見ていると
彼は
自分が送ったあれを見たか?
できそうか?
だめそうか?
どの部分が良くないか?と
尋ねました。
ナビエは散歩をしながら
ドルシーの絵を
解析するつもりだったので
それを持っていました。
彼女はドルシーに絵を差し出して
何が描かれているかわからないと
言いました。
ドルシーは、
ナビエが絵を理解できないことに
驚いたふりをしながら
侍女たちが「壁」と推測した部分を
指差して
「ダム」と言いました。
そして、
キラキラ輝いている部分を
指差して「たくさんの宝石」
と言いました。
そして、再び壁を指して
「たくさんの宝石のダム」
と言いました。
◇宝石のダム◇
ドルシーは自分の正体を明かさず
何箇所か絵の説明をしていきました。
ナビエは部屋へ戻ると
画家と建築士を呼んで
絵の中のダムを
もっと豪華で頑丈に
設計し直させました。
ナビエは、彼の正体について
いくつか思いつくものが
ありました。
けれども、ドルシーが、
新しい設計図を気に入ってくれれば
ナビエの魔法が上達するのを
助けてくれるので
彼が誰なのかは
関係ありませんでした。
ナビエは、新しい設計図を
応接間の窓枠に挟んで寝ました。
翌朝、絵は消えていました。
ナビエは、
あれで良かったのかと
思いました。
ランドレ子爵は、
ナビエを守るどころか
あっという間に
ドルシーに制圧されたのが
大きな衝撃だったのか
硬い表情をしていました。
◇雷雨の朝◇
朝から雷がゴロゴロなっていたので
ナビエは書類に集中できませんでした。
そんな中でも、胎動を感じないので
自分とハインリの赤ちゃんは大らかね?
と、お腹を撫でながら尋ねると
赤ちゃん鳥が答えているようでした。
気を取り直して
ナビエは再び書類に向かうと
扉がドンドンと叩かれ
外で鐘が鳴っていました
ナビエは入るように言うと
副官が、真っ青な顔で
服をまともに身に着けていない状態で
部屋の中へ入ってきました。
ナビエは、何があったのかと
副官に尋ねました。
19歳のソビエシュは
決してナビエ様を
裏切るつもりは
なかったと思います。
それなのに、
未来のソビエシュは
父親同様に側室を持ち
しかも、
彼女を側室にするために
ナビエ様を追い出して
しまいました。
そんな彼に対して怒りを覚え
彼を
消してしまいたいと思う気持ちは
理解できますが
消したところで
未来は変わらないし
ナビエ様に嫌われる
一方なのですよね・・・
ソビエシュに
ありのままの現実を受け入れる
潔さがあればと思います。