自分時間を楽しく過ごす 再婚承認を要求しますの先読みネタバレ付き

子供の頃からマンガが大好き。マンガを読むことで自分時間を楽しく過ごしています。再婚承認を要求します、ハーレムの男たちを初めとして、マンガのネタバレを書いています。

泣いてみろ、乞うてもいい 161話 外伝9話 ネタバレ 原作 あらすじ 娘になった日

161話 外伝9話 クロディーヌの所から帰る途中、レイラはマティアスに出くわしました。

凍りついたまま道の上に立っている

レイラを見つけた公爵は、

いくらか離れた場所で馬を止めました。

幸いなことに、あの恐ろしい猟銃は

見当たりませんでした。

その後に到着した

公爵の友人たちも同じでした。

 

レイラは、

硬貨を力いっぱい握りしめながら

肩をすくめました。

今日は狩りではなく

乗馬に出かけたようでしたが、

だからといって、公爵が

怖くないわけではありませんでした。

 

「こんにちは、久しぶり」

公爵の後ろにいた、

ある金髪の貴族の青年が

挨拶をしました。

 

公爵のように柔らかいけれど、

それより少し高くて、

温かな感じを与える声音を持つ彼を

レイラはすぐに認識しました。

リンドマン侯爵。

公爵の友人であり、いとこである彼は

毎年夏にアルビスを訪れる顔ぶれの

一人でした。

 

ぺこりとお辞儀をしたレイラは、

急いで道端の木の下に退きました。

胸がどれだけ強く高鳴っているか、

その鼓動する音が、自分の耳元に

全て聞こえるほどでした。

 

こんな風に公爵に会うなんて

運が悪い日だけれど、

それでも公爵が一人ではないという点は

とても幸いでした。

 

ある日から公爵は、

自分を避けて逃げるレイラを

まるで獲物のように追いかけながら

いじめ始めました。

仲間を連れずに、

一人で狩りや乗馬に出て、

レイラと出くわす日には、

それが、とても

面白い遊びであるかのように、

決まってそうしました。

 

並々ならぬ悪人なのに、

その悪い姿を知っている人が

自分だけなので、誰かに

訴えることもできませんでした。

下手をすれば、嘘つき呼ばわりされ

アルビスから

追い出されるかもしれないので、

レイラは癪に触って、悔しくても

じっと我慢することにしました。

 

「誰?」

群れの誰かが尋ねました。

この領地に居候している孤児だそうだ。

庭師が育てることにしたとかと

誰かが答えました。

 

その後もひそひそ話す声が続きましたが

公爵の声は聞こえませんでした。

頑なに、埃のついた靴の先だけを

見下ろしていたレイラは、

再び馬の蹄の音が鳴り始めると、

そっと頭を上げました。

馬に乗って通り過ぎる公爵の姿が、

恐怖と好奇心が共存する

薄緑色の瞳に映りました。

 

公爵がアルビスに帰還してから

もう一週間も過ぎたけれど、

彼をまともに見たのは初めてでした。

彼は依然として美しく、

もう少し大人っぽくなっていました。

大学を卒業すれば、公爵は将校になって

家門の名誉を高めるだろうと、

アルビスの人々が騒いでいた言葉を

ふと思い出しました。

 

そうなると、

軍隊には休みがないだろうから、

公爵は、夏になっても

帰ってこないのだろうか。 

レイラは、

微かな希望を見つけると、

胸がドキドキしました。

 

レイラはしばらくその場に立って、

遠ざかっていく公爵一行を

じっと見つめました。

そして、

公爵が戻って来ない夏が、

どうぞ来ますようにと

切に祈りました。

自分にできることは、

ただそれだけでした。

 

馬を駆り立てた青年たちが姿を消し

馬の蹄が巻き上げた土埃まで沈むと

森は再び平穏を取り戻しました。

 

レイラは、その、のどかな道を

てくてく歩いて小屋に戻りました。

日差しがとても強く感じられました。

どうして、夕方近くになっても、

今日は、こんなに日差しが強いのか

本当に不思議でした。

血痕を目にしたのは、

それから半月ほど経った頃でした。

奇妙で不快な痛みを感じたレイラは

いつもより早い時間に

目を覚ましました。

まだ、ビルおじさんは、

起きていないようで、小屋は、

夜明けの澄んだ静けさの中に

沈んでいました。

 

レイラは小さく丸めていた体を起こし

ベッドから抜け出しました。

何気なく目をやったシーツの上に

残された赤いシミを初めて見た時、

まだ完全に目が覚めていないので、

幻覚を見ているだけだと思いました。

しかし、パジャマと下着にも

同じ痕跡が残っているのを見ると、

これが夢ではないことを

認めなければなりませんでした。

友人たちが、密かに

ひそひそ話していたことが、

自分にも起こったようでした。

 

永遠に、

成長しないわけではなかったという

安堵感と、この事態を、

どう収拾すればいいのか分からなくて

途方に暮れる気持ちの間で

揺れ動いていると、

ドスンドスンと、眠りから覚めた

ビルおじさんの足音が響き渡りました。

 

慌てて部屋のドアを閉めて

鍵をかけたレイラは、まず、

滅茶苦茶になったシーツと衣類を

ベッドの下に隠しました。

中途半端だけれど、

ハンカチで、大まかに処置をした後

ドアを叩く音が聞こえて来ました。

 

「レイラ!起きているか?

もしかして寝坊しているのか?」

と尋ねるビルおじさんに、レイラは

「いいえ!」と、

悲鳴でも上げるかのように答えました。

そして、ビルおじさんに、

起きていると伝えると、彼は、

すぐにカイルの野郎が迎えに来るので

すぐに準備をするよう促しました。

 

カイル!

ようやく思い出した重要な約束が

レイラをさらに当惑させました。

 

今日は、村の子供たちみんなで

ピクニックに行くことに

なっていた日でした。

午後には、演劇の公演も

見ることになっていました。

初めて、劇場に行くことになり、

レイラは、この日を

指折り数えて待っていました。

少なくとも、昨夜まではそうでした。

 

ビルおじさんが、

家畜の世話をしに出かけている間に

レイラは素早く体を洗いました。

下腹部がますます痛くなりましたが、

幸い、この途方に暮れた状況が

痛みを多少、和らげてくれました。

 

カイルは、服を着替えたレイラが

朝食の食卓を整え始めた頃に

小屋にやって来ました。

ピクニックに行かないという

レイラの言葉を聞いたカイルは、

気絶しそうなくらい

驚いた顔をしました。

 

カイルは、レイラがとても

劇場に行きたがっていたのに

どうしたのかと尋ねました。

レイラは、ぎこちない動きで

パンの入った籠を開けると、

もう行きたくなくなったとだけ

答えました。

切られたパンの形は、いつもと違って

曲がりくねっていました。

 

レイラのそばを

グルグル回っていたカイルは、

突然、眉間にしわを寄せると、

嘘だ。信じない。

本当の理由は何なのか。

もしかして、

具合が悪いのではないか。

幽霊みたいな顔をしていると

言いました。

レイラは、違うと答えました。

 

しかし、カイルは、

違うわけがない。

レイラが具合が悪くても、

馬鹿みたいに我慢するだけなのを

自分は全部知っている。

待っていて。

自分がすぐに父親を・・・と

言いましたが、

レイラは「ダメ!やめて!」と

大声で叫びました。

本当に手に持っているパンで

カイルを叩くこともできそうな

気分でした。

 

「えっ、レイラ?」と尋ねるカイルに

レイラは謝ると、パンを置いた手で、

しきりに熱くなる頬のあたりを

こすりました。

 

レイラは、

少し具合が悪いけれど、

ひどくはない。

家で休めば良くなると思うと

言いました。

 

カイルは、

どこの具合が悪いのか、

それだけでも教えてくれないか。

レイラが嫌なら、父親に話さない。

自分だけ知っておくことにすると

言いました。

 

カイルは、

レイラの最も大切な友人であり、

また家族でしたが、だからといって、

こんな話まで、

できるわけではありませんでした。

 

レイラは、

このままだと、

カイルも遅れてしまうので

どうか、早く行ってと、

今、本当に泣きたい気持ちで

頼みました。

自分があなたを、

パンで殴ってしまう前にという

気持ちを一生懸命込めながら。

 

ようやくカイルを帰すと、

ビルおじさんが戻って来ました。

ピクニックへ行っていない

レイラを見た彼は

とても驚きましたが、

幸いにも、具合が悪いという嘘を

信じてくれました。

本当にお腹が痛かったので、

厳密に言えば、

嘘ではありませんでした。

 

ビルおじさんは、

それなら、

ゆっくり休まなければならない。

もしかして、かなり具合が悪いのか?

それならエトマン博士を・・・と、

カイルと同じ言葉を口にすると、

レイラはおじさんに向かって、

さらに切実な気持ちを込めて

「いいえ!」と叫びました。

 

レイラは、

きちんと食べて、無駄にうろうろせず

仕事もしないで休むので、

大丈夫だと言いました。

 

自分が言った言葉を

そのまま繰り返すレイラを

ぼんやりと見つめていたビル・レマーは

豪快な笑いを爆発させました。

 

ごついけれど優しい手つきで

レイラの頭を撫でた彼は、

すぐに仕事場に向かいました。

 

一人になると、

より鮮明に感じられる痛みの中で、

レイラは、

あれこれ考えを巡らせながら、

午前を過ごしました。

誰かに話すのは

とても恥ずかしかったし、できれば

世話にもなりたくなかったけれど、

一人で、うまくやり遂げるのは

難しそうでした。

 

そう結論を出すと、

レイラは小屋を出ました。

かなり暑い日でしたが、

厚手のストッキングをはいて

ペチコートを何枚もはきました。

それでも、しきりに気になり、

数歩ごとに一度ずつ

スカートを確認したため、

公爵邸に行くまで、

普段の倍の時間がかかりました。

 

使用人の休憩室にやって来た

レイラを見つけたモナ夫人は、

こんな所まで来てどうしたのかと

尋ねると、

驚いた顔で立ち上がりました。

 

公爵家の昼食会が終わり、

一息ついていた

他の使用人たちの視線も、

ドアの間から、

こっそり顔をのぞかせた

レイラに集中しました。

レイラは何度か躊躇いましたが、

おばさんに話があると、

ようやく口を開きました。

 

静かにレイラを見下ろしていた

モナ夫人は、廊下に出て

休憩室のドアを閉めました。

それでも気軽に言葉を続けられない

レイラの気持ちに気づいたのか、

彼女はレイラを廊下の端へ連れて行き

向かい合いました。

 

モナ夫人は、

「さあ、もう大丈夫でしょう?

どうしたのか話してみて」

と促しました。

 

「それは・・・」と呟いたレイラは

痛いほど強く握り合わせた手を

捻りながら、

繰り返し息を整えた後、

自分も、もう娘になったようだと

打ち明けました。

 

とんでもない話を、

悉く聞いたというように「娘?」と

聞き返すモナ夫人を見ると

レイラは目の前がくらっとするほど

恥ずかしかったけれど、

それでもレイラは、力強く頷き、

でも、どうすればいいのか

よく分からなくて・・・と話しました。

 

「ちょっと待って。

つまり、あなた、今・・・」

じっくり何かを考えていた

モナ夫人の目が丸くなりました。

 

「あらまあ!」

季節に合わない服を重ね着している

レイラを、じっくり観察した彼女は

ため息をつきました。

 

「あらまあ、レイラ」

何度もその言葉を呟く

モナ夫人の顔の上に

複雑な感情が浮び上がっては

消えるのを繰り返しました。

 

もしかして、

何か間違っているのだろうか。

不安になったレイラが

泣きそうな顔になった頃、

モナ夫人は、

明るい笑みを浮かべました。

そしてレイラを胸に抱き、

震えている小さな背中と肩を

優しく撫でであげました。

 

ようやく安心したレイラの

小さなため息が、

モナ夫人の暖かい懐に染み込みました。

あまりにも恥ずかしくて

頭の中まで赤くなりそうなことを

たくさん話したモナ夫人は、レイラに

これからは男たちに

気をつけなければならない。

分かった?

と、力を込めて頼みました。

 

娘を三人も育てた母親らしく、

彼女はこのようなことに長けており

憚ることもありませんでした。

白紙状態のレイラには、

実際、理解できない言葉が

ほとんどでしたが、

どうしても聞き返す勇気がなく、

ただ頷くことを繰り返しました。

 

モナ夫人は、

めでたいことだけれど、

心配でもあると言うと、

同情のまなざしで、

じっとレイラを見つめました。

 

美しい花が野原に咲くと、

その人生は疲れるのが当然。

子供に到底言えなかった

その言葉を、モナ夫人は

ため息とともに深く飲み込みました。

 

目に見えてきれいな子でした。

初めて、このアルビスに来た時は

あまりにも、

みすぼらしく痩せていたので

気づきませんでしたが、

かなり成長して

肉付きも良くなったレイラは、

ビル・レマーが育てる

美しいバラのように咲きました。

 

まだ可愛らしい少女に過ぎないけれど、

娘たちの母親である彼女は

あっという間に、

少女を女に変えてしまう歳月の魔法を

知っていました。

それでも、ビル・レマーという

心強い盾に出会ったので、

この子の人生は、

それ程、悪くはならないだろう。

そこまで考えが及ぶと、モナ夫人は

再び微笑むことができました。

 

学校であれ、村であれ、

とにかく周りの男どもは皆

泥棒だと思え。

そんなに間違った言葉ではないと

もう一度、頼むと、

レイラはビクッとして眉を顰めながら

「カイルも?」と尋ねました。

 

モナ夫人は、

とにかく、あの子も男になるので

気をつけて悪いことはないと

答えました。

 

あの善良なエトマン博士には

申し訳ないけれど、

彼女はカイルも、

とりあえず泥棒の範疇に

入れておくことにしました。

 

子供に、さらにいくつか教えてやると

いつの間にか、夕食の準備する時間が

近づいていました。

 

モナ夫人は、自分が用意した

小さな籠を持った子供と一緒に

家を出ました。

公爵邸まで続く道を歩いている間、

念を押すのも忘れませんでした。

 

挨拶をして去ろうとする

レイラを呼び止めたモナ夫人は

つかつかとレイラに近づくと、

いきなり手を伸ばして

胸を触りました。

同時に噴き出したレイラの悲鳴と

彼女の笑い声が

午後のうだるような空気を

揺さぶりました。

 

「驚いたわ。そうね。 あなたも、

もう娘だということね」

全身が真っ赤になったレイラを見る

彼女の目からは、憐憫混じりの温情が

滲み出ていました。

 

モナ夫人は、

必要な物が、まだありそうなので

自分がレマーさんに・・・と

言いかけましたが、

今週末に、

街に出かける用事があるので、

レイラも一緒に行けばいいと

言い直しました。

レイラは腰を下げて

モナ夫人に心からお礼を言いました。

 

笑みが浮かぶと、

子供の優しい目元が

きれいに下がりました。

じっと、

その顔を見つめていたモナ夫人は、

子供の背中を何度か叩いた後、

急いで公爵邸に帰りました。


彼女の後ろ姿が消えると、レイラも、

そろそろ歩き始めました。

異物感と腹痛は相変わらずでしたが、

途方に暮れていた午前中よりは

気分が、ずっと楽になりました。

 

うまくやっていけるだろうと

自らを慰めながら歩いていた

レイラが再び立ち止まったのは、

ちょうど邸宅の裏手に続く角を

曲がった頃でした。

風に乗ってクロディーヌの笑い声が

聞こえて来ました。

低くて柔らかい男の声も続きました。

ブラントの令嬢と

ヘルハルト公爵でした。

 

慌てたレイラは、

反射的に壁の後ろに身を隠しました。

どうか別の所へ行ってくれれば

良いのにと思いましたが、彼らの足音は

レイラが隠れている所に

だんだん近づき始めました。

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本編を読んでいた時、

母親に捨てられたレイラは、

初潮や、

女性が気をつけるべきことについて

誰にも教えてもらえないと

思っていたのですが、

近くに、親切で世話焼きの

モナ夫人がいたではないですか。

本編で描かれている以上に

モナ夫人は、あれこれレイラの面倒を

見てくれていたのですね。

そして、レイラがきれいだから、

何かあるのではないかと、

心からレイラのことを

心配していてくれていたことが、

よく分かりました。

レイラも、モナ夫人に

聞きに行こうと思えるくらい

彼女のことを信頼していたのですね。

楽しみにしていたピクニックの日に

初潮を迎えたのは残念でしたが

母親のような、

モナ夫人の優しさと温かい気持ちに

触れられたのは

良かったのではないかと思います。

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