70話 智彦は、麗奈が浅井と一緒にいるところの写真を、父親に見せられました。
父親は、
浅井が知り合いかと尋ねました。
智彦は、知り合いではないけれど
麗奈にとって、男は自分だけだ。
断言できると言いました。
父親は、智彦がそう言うなら
その通りだろうけれど、
このまま見過ごすわけには
いかない。
誰かが、麗奈と智彦を
尾行しているようなので、
人を付ける方がいいかもしれない。
自分は、
この写真を送って来た人を
捜してみる。
麗奈と智彦夫婦のことは
気にしないので、
心配しないようにと言いました。
智彦は、心配をかけたことを
謝りました。
カフェで雅紀と璃香が会っていました。
璃香は、異母兄弟とはいえ、
雅紀と智彦は、
全然、雰囲気が違うと思いました。
雅紀は、
自分は破談したことがあるけれど
それでも、本当に自分と
結婚するつもりなのかと尋ねました。
璃香は、もちろんだ。
それが、ここへ来た理由だと、
答えました。
そして、少しためらいがちに、
けれども、正彦の様子を探りながら
麗奈と智彦が
契約結婚のようだと話しました。
それを聞いて、驚いた雅紀は、
テーブルの上で
拳を握りしめながら、
そのように考える理由が
気になると言いました。
璃香はそれを見て、
引っかかったと思いました。
璃香は、
結婚を控えていた姉が、
急に破談を宣言した。
その後、まもなく、
智彦との結婚を急に進めたと
説明しました。
雅紀は、
それが問題になるのかと尋ねました。
璃香は、
智彦は祖父に投資してもらうために
結婚しようとしていて、
結婚後、投資を受けたと答えました。
雅紀は、
あり得なくもないと言いました。
璃香は、
やはり雅紀と会って良かったと
思いました。
そして、璃香は
麗奈が幼い頃、毒物を食べて
死にそうになったことがあるので
その後、
他の人から貰った食べ物を
食べられないことも話しました。
雅紀は、
特に気をつけなければならないと
言いました。
麗奈が帰宅すると、
先に帰っていた智彦が、
とびきりの笑顔で
出迎えてくれました。
智彦は、麗奈に
何か変わったことはないかと
尋ねました。
彼女は、何が変わったか
分かりませんでした。
すると、智彦は、
家の中を掃除した。
料理もしたと言いました。
麗奈は、そうなのかと
返事をしましたが、
智彦が期待に満ちた目で
自分を見ているのは、
どうしてなのかと
不思議に思いました。
麗奈は智彦に
褒められたいのかと尋ねると、
彼は、
別にそういうわけではないけれど
誉め言葉の意味で、
一度だけ抱き締めてくれないかと
頼みました。
麗奈は、両手を広げて、
自分の胸に抱かれるようにと
言いました。
麗奈に抱かれた智彦は、
彼女にお礼を言いました。
そして、
誰にも麗奈を傷つけさせない。
自分が必ず彼女を守ると
心に誓いました。
麗奈は、智彦が
いつもと違うような気がしました。
しばらくして、
麗奈が智彦の様子を見に行くと
智彦はテーブルに突っ伏して
寝ていました。
こんな時間まで、
何をしているのかと思いましたが、
彼の寝ている姿は
かっこいいと思いました。
智彦が風邪を引くのを心配して
麗奈は自分の着ていた上着を
智彦に掛けようとした時、
彼の腕の下に、
浅井と一緒に写っている写真を
見つけました。
一体誰が撮ったのかと驚く麗奈。
そして、彼が身動きした時に、
手首に刻まれている
20211120の文字を
見てしまいました。
どうして、智彦の手首にも
その数字があるのか。
麗奈は驚愕しました。
麗奈は婚約者以外にも
付き合っていた男性がいたと
ネットに投稿された直後に、
浅井と一緒に写っている写真を
見せられたら、智彦の父親が、
ネットの記事は本当ではないかと
疑っても仕方がないと思いますが
智彦が
きちんとフォローしてくれたので
疑いは晴れたように思います。
けれども、
麗奈を信じながらも
智彦は不安だったのだと思います。
お掃除と料理を頑張ったのも、
不安を紛らわせるためかも
しれません。
麗奈が躊躇うことなく手を広げて
智彦を抱き締めても、
やはり不安で、
ついつい写真を見てしまったのかも
しれません。
智彦の不安をなくすためには、
麗奈が浅井に頼んでいることを
正直に話すしかないと思います。