76話 家族の食事の席に、雅紀は璃香を連れて来ました。
麻里子は、
なぜ璃香がここへ来るのかと
怒りました。
しかし、雅紀は麻里子に、
言葉に気をつけるように、
璃香は、自分のお客さんだ。
一緒に食事をしようと思い
連れて来た。
それに話もある。
ちょうど麗奈もいるので、
みんなで食事をすればいいと
話しました。
父親はにこやかな顔で、
うちの麗奈の結婚式以来、
璃香とは会っていないと言って、
彼女に席に着くよう勧めました。
璃香はにっこり笑って
お礼を言いましたが、
心の中では、
父親が「うちの麗奈」と言ったことに
歯ぎしりしていました。
麻里子は、不機嫌な顔で、
雅紀と璃香が、
最近、よく会っているのかと
雅紀に尋ねました。
彼は、だから一緒に来たと答え、
誤解しないで欲しいけれど、
今日は結婚の承諾を得るために
来た訳ではない。
ただ、一緒に
食事をしたかっただけだと話しました。
咲恵は不機嫌そうな顔で、
結婚まで考えているのかと
尋ねると、雅紀は、
璃香が麗奈の妹だから
気になるのか。
けれども、麗奈は養子だからと
意地悪そうな顔で答えました。
怒った智彦は
言葉に注意をするよう
雅紀に忠告しました。
父親も雅紀に
言葉を慎むよう注意しました。
雅紀は笑いながら、
自分が少し無礼だったと
謝りました。
彼の隣に座っている麗奈は、
大丈夫、雅紀が言ったように
自分は養子だ。
自分の妹と雅紀が
真剣に付き合うのは
少し意外だけれど、大丈夫だと
ニッコリ笑って返事をしました。
そして、食事をしようと
皆に声をかけると、
麗奈は箸で料理をつまみ、
口元へ持って行きました。
璃香は腹黒そうな顔で、
麗奈が料理を食べて
慌てる姿が楽しみだと
ほくそ笑んでいました。
そして、雅紀は
麗奈が食べ物に対して、
ひどい潔癖症だと聞いているけれど
もう大丈夫なのかと尋ねました。
その言葉に智彦は腹を立て
何か言おうとしましたが、
麗奈は、
彼の手の上に自分の手を置き、
彼を宥めた後、
皆がいる場所で
話そうと思っていたので
雅紀がいて良かった。
自分は幼い頃、
家でおやつを食べたところ、
ヒ素中毒で倒れた。
それで長い間、
他人からもらう食べ物に
拒否反応を起こしていたと
打ち明けました。
父親は怒って、
誰がそんなひどいことをしたのかと
叫びました。
璃香は、オロオロしながら、
自分の母親ではないと
弁解しました。
麗奈は、智彦の手を握ったまま、
今は大丈夫。
智彦のおかげで良くなったと
話しました。
父親は、
良くなったのは、
本当に幸いだと言いました。
咲恵は麗奈の手を握り、
良かったと心から喜び、
これまで、
とても苦労しただろうと
麗奈を労わりました。
麻里子は、涙を浮かべながら、
本当に良かった。
これから、自分と一緒に
美味しい物をたくさん食べようと
言いました。
宮本は、美味しい店を
紹介すると言いました。
麗奈はにっこり笑って
お礼を言いました。
璃香は、
なぜ、皆、麗奈の味方なのかと
悔しがりました。
雅紀も腹立たしそうに
舌打ちしました。
碧人を助手席に乗せ、
車を運転している璃香は、
怒りのあまり、
ハンドルを思い切り叩き、
悔し泣きしながら、
一体、麗奈は
どんな手を使ったのかと
呟きました。
碧人は璃香に、
泣いているのか。
麗奈に何かされたのかと尋ねました。
璃香は、
今日、雅紀の実家へ行き
麗奈と智彦に会った。
麗奈は元気そうだし、
智彦の家族まで味方にしていたと
答えました。
碧人は、
麗奈のことは気にしないで、
璃香は璃香らしく生きればいい。
なぜ、人を憎んで、
自分をダメにしなければならないのかと
非難しました。
しかし、璃香は、
他の人は知らないけれど、
碧人は自分に
そんなことを言ってはいけない。
これは全て誰のせいなのかと、
逆に彼を非難しました。
碧人は、
また、麗奈と結婚しなかった
自分のせいだと
言いたいのかと言い返しました。
璃香は、他に理由があるのかと尋ね
麗奈と智彦が契約結婚であることを
碧人に再確認しました。
碧人は、確かな事ではない。
自分の推測にすぎないと
答えました。
璃香は、
雅紀も、契約結婚ではないかと
思っているようだと
言いました。
碧人は、怯えながら、
その話を雅紀にしたのかと
尋ねました。
璃香は、
心配しないように。
それを確信するまで、
彼は他では話さないと言っていたと
答えました。
碧人は、璃香の肩をつかみ、
しっかりするように。
麗奈を破滅させて、
璃香が幸せになれる思うのか。
それで、璃香は
何が得られるのかと尋ねました。
璃香は碧人の手を払い退け、
麗奈を破滅させることで
自分は幸せになれる。
だから、碧人は
証拠を持って来るようにと
叫びました。
碧人は、目の前にいる璃香が
自分の知っていた璃香なのかと
自分に問いかけました。
麗奈は、
入院している祖父に会いに行きました。
彼は絵を描いていました。
祖父は、
久しぶりに筆を握ったので、
気分がいいと言いました。
麗奈は、
祖父の健康を害したのは
やはり恵美だと考えました。
祖父は、
もうすぐ麗奈の誕生日だけれど、
何か欲しい物があるか。
プレゼントしたいと言いました。
麗奈は、祖父が
自分の本当の誕生日を知っているのかと
尋ねました。
返事に詰まる祖父に、麗奈は、
自分は、本当の誕生日を知らないと
告げました。
祖父は自分のせいだと謝りました。
麗奈は、大丈夫だと返事をし、
誕生日のプレゼントに、
WJリテールが欲しいと言いました。
いい加減、碧人も
自分の抱いていた璃香のイメージが
幻想だったことに気づくべきだと
思います。
借金のせいで、
自分の家が大変なことになった
直接的な原因は、
麗奈との結婚が
ダメになったからかもしれませんが、
そもそも、
麗奈と結婚して欲しいという
璃香の自分勝手な願いを聞いた碧人に
責任があると思います。
いくら好きな人に頼まれたとはいえ
好きでもない人と結婚するのは
おかしな話です。
碧人は、
麗奈と結婚することで
手に入れられるお金に
目が眩んだのかもしれません。
璃香にひどいことを言われながら
いまだに彼女に付き合うなんて、
もし璃香が奈落の底に落ちたら、
一緒に引きずられそうです。