487話 ラティルは、タッシールに下品なことをやって見るかと聞かれましたが・・・
◇愛を交わす◇
ラティルは唾を飲み込み、
タッシールを見つめました。
「そうする」という言葉が
喉元まで上ってきましたが、
そうしてもいいのだろうかという
迷いも、少し残っていました。
ラティルが答えないので、
タッシールは、
それ以上、聞く代わりに
椅子ごと身体を後ろに倒して
両手を広げました。
どうするかは自分で選べというような
余裕のある態度でした。
悩んだ末に、ラティルは
ケーキのクリームをすくって
彼の鎖骨の近くに置きました。
彼女の指先は緊張で震えていました。
タッシールの肌を撫でながら、
ラティルは彼の表情を窺いました。
タッシールは微笑んでいました。
そして目が合うと、彼は、
瞬く間にラティルを持ち上げて
テーブルの上に寝かせました。
タッシールは、
彼女の上着のボタンを外しながら
ケーキは好きかと尋ねました。
ラティルは頷いた後、横を見ました。
顔のすぐそばにケーキが見え、
甘い香りが漂って来ました。
タッシールは、
自分はケーキが好きだと言うと、
ラティルは、自分の肌に、
冷たくて滑らかな感触を覚えました。
前を見ると、
ボタンをはずしたラティルの肌の上に
タッシールが
クリームを乗せていました。
驚く間もなく、
その部分に、彼の唇が触れました。
ラティルは、タッシールを呼び、
慌てて手を上げたので、ケーキを
皿ごと落としそうになりました。
辛うじて拳を握り、
ケーキに手が届かないようにした
ラティルは、もう片方の手で
タッシールの背中をつかみました。
彼がボタンを外しながら、
どんどん下がっていくので、
ラティルの手も、下へ下がりました。
くすぐったいような
熱いような感覚に、ラティルは
体をくねらせました。
ズボンの上ギリギリまで
下りたタッシールが戻ってきて、
ラティルのシャツを
腕まで後ろに脱がせました。
ラティルは、
シャツを全部脱いだ方が楽だと思い
身体を動かしましたが、
横になったまま服を脱ぐのは
大変だったので
上半身を起こしました。
すると、タッシールは
ラティルのお腹に乗せたクリームを
狐のように舐め、
これ見よがしに、目で微笑みました。
ラティルは、腕の力が抜けて
また横になりました。
彼を捕まえたくても、
半分だけ下がっているシャツのせいで
それができませんでした。
そのおかげで、タッシールは
自由にラティルの上半身の上を
行き来しながら、
意地悪く、あちこちを
噛んだり舐めたりしました。
タッシールは、
ラティルが甘い味がすると言いました。
彼女は、
甘いのは自分ではなく
クリームだと抗議しましたが
しかし、タッシールが
ラティルのズボンを下ろしたため、
彼女は口を閉じ、唇を噛みました。
ラティルは、何とかシャツを脱ぎ
前に手を伸ばすと同時に、
タッシールは、今度は
ラティルを味わおうとしました。
羞恥心と快感が同時に湧き上がり
ラティルは唇を噛みました。
飴を舐めるような音がしました。
小さい音だけれど、
ラティルの耳には
大きく聞こえました。
タッシールに刺激される度に
身体が勝手に動くので、
ラティルは彼を蹴らないように
全力を尽くさなければ
なりませんでした。
少しでも緊張を緩めれば、
足でタッシールの首を
絞めてしまいそうでした。
タッシールは、
ラティルにキスをしながら、
やはり陛下は甘いと呟きました。
その言葉にラティルは、
やはりタッシールは下品だと罵り、
顔を真っ赤にして歯軋りしました。
ラティルは、
タッシールを足でそっと押すと、
素早く起き上がり、早速、
彼の残りの服に手をかけました。
自信満々で、
勝手に彼に悪戯をしていると、
タッシールに、
これも自分だと言われました。
ラティルは慌てて手を引っ込めて
目を擦りました。
再び驚いたラティルは目を閉じて
深呼吸をした後、
再び目を開けました。
勘違いではありませんでした。
ラティルは口を開けたまま、
ぼんやりとタッシールを見つめ、
自分の手を、
その横に近づけてみました。
しかし、
すでに比較できる相手がいるので、
ラティルは安心するどころか
さらに驚愕しました。
ラティルは、
未知の生物を探るかのように
彼の身体のあちこちに触れました。
彼自身の肖像画は
誇張されているどころか、
かなり控え目に描かれていました。
ラティルは唾を飲み込むと
真剣にタッシールを見つめながら、
正直に言って欲しい、
タッシールは、
人間でないのではないかと尋ねました。
彼はラティルが、
冗談を言っていると思い、
爆笑しましたが、彼女は本気でした。
ラティルは、
大きすぎないかと思いました。
顔に上がっていた熱が
少しずつ冷めると同時に
ラティルは少しずつ緊張してきました。
彼女は躊躇いながらも、
タッシールを弄り続けていると、
彼はラティルをさっと持ち上げ、
ベッドに寝かせ、
突拍子もないことを考えるなと
ラティルの首筋を噛みました。
お腹に、
主人と同じくらい存在感のある
凶暴な感触があり、彼女は彼の背中を
ギュッと抱きしめました。
ラティルが、
しきりに下を向いていると、
タッシールは彼女の耳元を噛みながら
やめた方がいいかと尋ねました。
ラティルは、
そうではないと答え、
悩んでいましたが
タッシールの頭を押し下げると
もう少し準備した方が良さそうだと
言いました。
そして、
身体の他の部分の感覚が
なくなるほどの時間が経った後、
ラティルは勇気を出して
もう大丈夫だと言って、
タッシールの肩を揉みました。
しかし、どうしても
目で見る勇気が出なくて、
ラティルは枕を手に取り
顔を隠しました。
肌触りだけでも、彼の存在感が
生々しく感じられました。
ラティルは、
呻き声を上げました。
生々しい存在感は、
ますます彼の存在を
強く感じさせました。
彼の存在感が大きくなり過ぎて
ラティルは思わず
布団を足で押し退けました。
床から布団が落ちる音がすると
ラティルは
掴むものがなくなったので、
顔を覆っていた枕を掴みました。
タッシールは笑いながら、
枕を脇に追いやりました。
ラティルは、叱責するように
彼の名を呼ぶと、
タッシールは上半身を屈め、
ラティルが彼の背中を
抱き締められるようにしました。
彼女は彼の身体を
ギュッと抱きしめました。
タッシールはできるだけゆっくりと
愛を分かち合いましたが、
それだけでも、ラティルは
気が遠くなりそうでした。
ラティルは、
彼の身体を抱き締めながらも
タッシールの背中を
さらに引き寄せ続けました。
タッシールは、
しきりに引っ張らないでと
囁きましたが、
彼女は彼と話す気分では
ありませんでした。
ラティルが彼を呼ぶ度に、
タッシールは、ここにいると
返事をするかのように、
ラティルの手を握りました。
全世界が、
彼と彼女だけのものに感じられ
むしろ、別の世界があることが
信じられないほどでした。
吹きすさぶような感覚に
揺さぶられながらも、
ラティルは気がつくと
タッシールを抱き締めました。
いつも狐のように笑うタッシールが
今は笑っていませんでした。
見た目には、彼も
手に負えなさそうに見えました。
彼はずっと眉をしかめていましたが、
気分が悪くて、そのような顔を
しているのではないことは
本能的に分かりました。
ラティルが彼の肩に
頭をこすりつけると、
彼は必ず笑いました。
彼がついに動きを止めた時、
ラティルはただ彼にしがみつきました。
身体は痙攣し続けましたが、
タッシールを抱いていると
その不思議な感覚に
耐えることができました。
しばらくすると、ラティルは
力なくベッドに横たわりました。
少し前に、
全身の気力を使い果たしたのか
彼女は、少しも動きたくなかったのに
敏感になった身体のあちこちを
タッシールが撫でるので、
横になるのも
容易ではありませんでした。
疲れていないタッシールが不思議で
ラティルは彼の髪を撫でながら
疲れていないのかと尋ねました。
タッシールは、
ラティルの手を取り、
手首の内側にキスをしながら、
ラティルは体力が弱いと
からかいました。
ラティルは、
タッシールは体力があると
言いました。
最初は刺激的だった彼の手が
次第に筋肉をほぐすような
心地よさに変わって行きました。
限りなく気分が高揚していた上に、
彼の温かい手が、
筋肉をほぐしてくれると、
ラティルの目の前が
ぼんやりとして来ました。
あっという間に、
眠けが押し寄せて来ました。
彼女は、
まだケーキを切っていないと言うと
タッシールは、
切るものがない。半分くらい、
自分が食べてしまったと答えました。
ラティルは、
本当なのかと尋ねました。
酔っぱらったような気分の彼女は
目に力を入れて、
テーブルを見ようとしましたが、
睡魔に襲われているため、
うまく物を認識できませんでした。
ラティルは、
タッシールを引っ張って横に置き
彼の腰に抱きつき、
彼の胸に顔をもたせかけました。
彼の腕の中にすっぽり収まると、
その温もりが、
さらに眠気を誘いました。
タッシールは、ラティルが、
くっ付いたままであることに
何か言おうとしましたが。
ラティルは、
そのまましがみついていました。
先ほど、布団を蹴ってしまったため
今、彼女の手が届くもので
暖かいのはタッシールだけでした。
ラティルは、
自分がタッシールに
たくさん頼っているみたいだと
言いました。
タッシールは、ラティルが、
自分にとても会いたかったようだと
言いました。
ラティルは、時々、会いたかった。
タッシールは軽いから
好きだったけれど、
今のタッシールは軽くないので
大変なことになった。
でも、重くてもいいと答えました。
タッシールは、
彼女の髪を撫でました。
何か言っているようでしたが、
ラティルは半分、夢うつつで
まともに、
聞くことができませんでした。
睡魔に襲われる中、ラティルは
今日言わなければならないことを
何とか絞り出し、タッシールに
誕生日おめでとうと告げました。
◇緊急の知らせ◇
全身の筋肉を使ったため、
夢も見ることなく、
熟睡していたラティルは
タッシールが自分を呼ぶ声で、
無理やり目を覚まさなければ
なりませんでした。
起きたくなくて、眉を顰めると
目の前にタッシールがいました。
彼は、まだ、
上半身は何も着ていませんでしたが
いつの間にか、
ズボンをはいていました。
ラティルは、
自分が布団をかぶっていることに
気がつきました。
カーテンの向こうが真っ暗なのを見て
ラティルは枕に顔を埋めながら
どうしたのかと尋ねました。
このまま朝まで、
寝ていたいと思いました。
タッシールは、
本宮から、急遽、人が来たと
告げました。
タッシールは
ラティルの首筋を揉みながら
起こし続けましたが、
ラティルは、ぼーっとした気分で
いつもより、ふっくらしたような
彼の唇を撫でました。
ラティルは、
誰が来たのかと尋ねました。
タッシールは、
タナサンの使節団が、
緊急にラティルを訪ねて来たと
答えました。
ラティルは、
海の深い所を泳いでいるような気分で
タナサンの名を呟き続けました。
タッシールは、
そんなラティルを起こして、
枕に寄りかからせて座らせ、
洗面器にお湯を入れて来ました。
そして、お湯で濡らした
柔らかいタオルで
ラティルの身体を拭いている間、
彼女はタナサンと呟き続けましたが、
タッシールが温かいタオルで
彼女の敏感な部分を拭いた時、
ようやくラティルは目を覚まし、
飛び起きました。
顔に上がって来る熱気に
気付かないふりをして、
慌てて「服だ!」と叫びました。
タッシールは、新しい下着と、
楽なズボンとシャツを
持ってきました。
ラティルは服を着て、
手早く髪を1つにまとめて
縛りました。
どうしたのかと尋ねるタッシールに
ラティルは、
タナサンは、
以前、村が丸ごと1つ消えた場所で、
そこにある山で、ザリポルシ姫が
行方不明になったと答えました。
正確には、
アニャドミスが封印された棺も
その山の中の洞窟にありました。
タッシールは、
ラティルが着ていたものよりも
厚手のマントを持って来て、
肩にかけ、
まだ夜だから、寒いだろうと
言いました。
ラティルは、マントに身を包むと、
急いで扉の外へ出ました。
彼女が廊下に出ると、
侍従の一人が、
イライラした顔で立っていました。
ラティルの姿を見るや否や、
侍従は彼女に近づきました。
ラティルは、
どうしたのかと尋ねました。
ラナムン、ギルゴール、
カルレインとのシーンより、
濃厚に感じられた
タッシールとのシーン。
彼の首を
足で絞めてしまうということは
どういうことなのかなと想像して
ドキドキしてしまいました。
そして、タッシールの
大事なところが大きすぎて、
躊躇うラティルが可愛いと思いました。
「再婚承認を要求します」の
ナビエ様とハインリのシーンも
そうでしたが、
作者様は、露骨な言葉を使うことなく
愛を交わすシーンを、美しい言葉で
綺麗に表現しながら、
読者をドキドキさせる手腕は
さすがだと思います。
いつになるか分かりませんが
タッシールと愛を交わすシーンが
マンガで、
どのように描かれるのか楽しみです。
こちらも、以前、アップした記事に
間違いが散見していましたので
修正しております。