159話 ジョエンソンに警告されたラスタでしたが・・・
◇冷たいソビエシュ◇
ラスタは椅子のひじ掛けを
握ったり、離したりしながら
ジョエンソンの警告を
思い出していました。
ジョエンソンの妹を
返したくても返せないラスタは
考えれば考えるほど
頭が痛くなるので
ベッドに横になり
現実を忘れて夢の中へ
逃げ込もうとしましたが
そこへソビエシュがやって来ました。
ソビエシュは冷ややかな態度で
記事に書かれていたことが
本当なのかと
ラスタに尋ねました。
ラスタは素直に答えず
話をはぐらかしていましたが
ソビエシュのきつい問いかけに
彼女は、実の父親ではないと
答えました。
ラスタの返事を聞くと
ソビエシュはすぐに
立ち去りました。
数か月前、ラスタのお腹に
子守歌を歌ってくれた男は
もうどこにもいませんでした。
ラスタの嘘に気づいたソビエシュは
皇女が被害を受けないように
人々の関心が他に移った時
ラスタの父親を
静かに処理するように
カルル侯爵に命じました。
静かに処理するって、どういうことなのでしょうか・・・
◇一人でウィルウォルへ◇
ハインリは、悩んだ末
お腹が大きくなる前に
ウィルウォルへ行くのが良いと
結論を出しました。
妊娠初期は最も気を付けなければ
いけない時期だけれども
お腹が大きくなれば
ナビエの妊娠を誰もが知ることになり
襲撃者が目を光らせるかもしれないと
ハインリは心配していました。
ハインリは、
ナビエのお腹をさすりながら、
大きくて快適な馬車に乗り
旅行だと思って出かけよう。
2人で食事をしたレストランにも
行こうと言いました。
ナビエは久しぶりに
2人で出かけることを考えると
楽しくなりました。
ところが、出発する2日前に
ホワイトモンドの王が
直接、ハインリと話をしたいと言って
西大帝国へ向かっていると
連絡が届きました。
ハインリが出かけてしまうと
ホワイトモンドの王と
会えなくなってしまうので
ナビエは1人で
ウィルウォルへ行くことにしました。
◇まさかの再会◇
ナビエは馬車に揺られながら
ハインリと一緒に来たかったと
思いました。
今回の旅行に出発する前
ナビエは自分が
魔法使いになるかもしれないことを
侍女たちにこっそり話しました。
すると、彼女たちは今までになく
ひどく慌てて、全員、旅行に
付いて来たがりましたが
結局、ジュベール伯爵夫人と
マスタスだけを
連れてくることになり
ローラとローズが
抗議したことを思い出し
ナビエは笑いました。
ウィルウォルへ到着し
馬車が止まると
ランドレ子爵のエスコートで
ナビエは馬車から降りました。
彼が浮かない顔をしているので
その理由を尋ねると
リバティ公爵の長男の
リバティ侯爵が
ニアンのことを好きになったようで
彼女が開くパーティーすべてに
出席しているとのことでした。
リバティ公爵の下の息子はマレーニの義理の弟です。
リバティ侯爵は
自分より身分も高いし
安定しているし
顔立ちも良くて・・・と
ランドレ子爵が呟くと、
マスタスが
ランドレ子爵も十分顔立ちが良いと
慰めてくれました。
そんな2人のやり取りを見て
笑いを堪えていた
ナビエでしたが
物思いに耽りながら歩いていた
ランドレ子爵の顔が
突然、超国籍騎士団の
団長の顔に変わりました。
前方に
ソビエシュが立っていました。
ソビエシュもナビエを見て
顔がこわばりました。
彼の騎士たちも
困った顔をしていました。
しばらく、気まずそうに
互いを見つめ合っていましたが
逃げるわけにもいかないので
ナビエはソビエシュに近寄り
最大限、
皇后としての笑顔を浮かべ
心を伴わない挨拶をしました。
ナビエは、ソビエシュに
赤ちゃんが生まれたことへの
お祝いの言葉を述べ
自分が用意した宝剣は
使えなくなったけれど
捨てたのかと尋ねました。
宝剣には、遊んで暮らすように、という意味が込められていました。
ソビエシュは、
宝剣はラスタがどこかへ
持って行ったのでわからないと
答えました。
ナビエは頷き
このまま、先に進んでも良いのかと
考えていると、ソビエシュは
自分の護衛に後ろに下がるように
指示しました。
そして、
ナビエの後ろの人たちにも
同様に目で合図をしました。
東大帝国の皇帝の指示を
無視するわけにはいかないので
ナビエは、ランドレ子爵と
ジュベール伯爵夫人と
マスタスに
距離を開けるように頼みました。
2人だけになると
ソビエシュはナビエに
幸せに暮らしていると思ったのに
どうして、こんなに痩せたのかと
かなり傷ついているような声で
尋ねました。
最近、ほとんど食べ物を
食べていなかったので
痩せたのは事実だけれども
妊娠して食欲がなくなったとは
言えないので、
ナビエは返答に困り黙っていました。
すると、ソビエシュは
ナビエの夫のせいかと尋ねました。
思いがけず
ウィルウォルで再会した
ソビエシュとナビエ様。
ソビエシュは
ナビエ様に未練たっぷりですが
ナビエ様は
西大帝国の皇后として
きちんと礼儀を尽くせるし
皮肉まで言えるほど。
まだ、ソビエシュのことを
好きだとは思いますが
ナビエ様の中で
ハインリが大きな存在に
なっているのかなと思います。