196話 いよいよラスタの裁判の日がやって来ました。
◇裁判の前◇
側室出身で、
皇帝の寵愛を一身に受け
正当性のある皇后を追い出し
皇帝を騙して
他の男との子供を皇女とし
皇帝が他の女性に
目を向けようとすると
罪のない女性を殺そうとし
他国の色男に港を渡そうとし
裁判が怖くて逃げたけれども
捕まってしまった
かつて、平民の希望だった
皇后の裁判を見に
人々は裁判所に駆け付けました。
ナビエはハインリと
母親と共に
前の晩にトロビー公爵家に
到着していましたが
自分は
西大帝国の皇后としてではなく
元妻として、
裁判を参観するので
自分を見つけないようにと
カルル侯爵に話していました。
エルギ公爵は
宮殿を出た後も
首都に留まっていました。
彼はベルディ子爵夫人に
グローリーエムを連れて
外国へ逃げることを
提案していました。
その話を聞いたソビエシュは
エルギ公爵が準備した人を
自分の準備した人にすり替えて
グローリエムを
適当な所へ
連れて行こうと思いました。
グローリエムは
あまりにもラスタに似ているので
東大帝国の貴族には
育てられないし
その子の顔がラスタの顔に
変わっていくのを見るのは
耐えられないと
ソビエシュは思いました。
ソビエシュは
グローリエムを
本当に愛していたので
その子がアンのように
奴隷になるのは耐えられず
外国の小さな貴族の
令嬢になれる身分と
一生、平安に暮らせるお金を与えて
グローリエムへの思いを
断つつもりでした。
◇裁判の直前◇
ナビエは
ロテシュ子爵とアレンが
死刑になるという記事を
新聞で読んで
彼女はルベティのことを
心配しました。
ルベティを見つけるように
ナビエは使いを出しました。
裁判の当日
ナビエとハインリは
地味な服を着て
家紋を外した馬車に乗り
裁判所へ向かいました。
裁判を参観するナビエのことを
ハインリは心配していましたが
ナビエが人前で
ソビエシュから
離婚して欲しいと言われた瞬間と
東大帝国の皇后の座から降りた
その瞬間に
ラスタがナビエを見ながら
笑ったように、
彼女は、気まずい思いをしても
ラスタが廃位になるのを
見たいと思いました。
ナビエのこの気持ち、すごくよくわかります。
裁判所に到着すると
ナビエとハインリは
2階の貴族席の
一番後ろの席に座りました。
しばらくすると
ソビエシュが中に入ってきて
皇家の専用席に座りました。
続いて、ラスタが
2人の騎士に伴われて
中へ入ってきて
ソビエシュの隣に座りました。
ラスタの裁判が始まりました。
◇裁判◇
初めに、ロテシュ子爵と
イスクア子爵夫妻が
彼らの裁判の時の
陳述を繰り返しました。
アレンは、
父親とラスタの2人が
やったことで
何も知らないと訴えました。
次に、ベア商団の会長が
ナビエの手形を
ラスタが自分の手形として
使用したことを証言しました。
ナビエは、
ソビエシュの秘書たちの中で
唯一、ラスタに心から接していた
ラント男爵だけがいなかったので
不思議に思いました。
次はデリスが証言しました。
彼女は、
ソビエシュがナビエに贈った
青い鳥の羽を
ラスタが抜いてしまったのに
それを、ナビエが抜いたと
嘘をついたことを話しましたが
彼女の言葉は、
プツプツと切れて
ひどく苦しそうに話していました。
1人の観客が
デリスに文句を言うと
彼女は、
その事実を知ったことで
舌を切られて首になったと
証言しました。
観客席のあちこちから
ラスタへの非難の声が
上がりました。
ラスタは、デリスの証言を
認めませんでした。
次に、エベリーが出てきて
ラスタがいつも自分を
侮辱して苦しめていたことと
西大帝国へ向かっている途中の
馬車の事故について
証言しました。
次に、ランドレ子爵が
ニアンの汚名を注ぐために
調査したことを説明しました。
次にカルル侯爵が
ラスタがエルギ公爵に
借金をして
アレンと第一子のために
使ったことと
エルギ公爵へ
港を渡す約束をしたこと、
彼とのスキャンダルについて
証言しました。
判事は、証言が出る度に
ラスタに事実かどうか
確認をしましたが
彼女は、常に否定しました。
その時、ジョエンソンが
公開したいことがあると
叫びました。
彼が、証人席に上がると
人々は、彼の名前を連呼しました。
ジョエンソンが持ってきた書類を
判事が読むと
彼の顔が歪みました。
ジョエンソンが見せたのは
詐欺罪で奴隷刑を言い渡された
犯罪者に対する法廷文書でした。
ジョエンソンは
その犯罪者の名前は
かつて皇后陛下の実父だと
主張していた男と同じ名で
彼の娘の名はラスタ、
年齢は皇后陛下と一緒
そして、奴隷刑を宣告されて
行くことになったのは
リムウェルと言いました。
ラスタが奴隷だったということが
知れ渡り
人々は大騒ぎし
ラスタに罵詈雑言を浴びせました。
ソビエシュは
表向きは無表情に見えましたが
ひどく怒っていることが
ナビエにはわかりました。
そして、
ジョエンソンの爆弾発言と
人々の抗議のせいで
とうとう
ラスタの忍耐力も切れました。
彼女は皇后席から立ち上がって
証人席へ行き
ジョエンソンを押して
皇帝陛下は不能だと叫びました。
ソビエシュは
ラスタの奴隷売買証書を
燃やしてしまいましたが
それに代わるものを
ジョエンソンが
手に入れていたので
結局、ソビエシュの行動は
無駄になってしまいました。
ラスタとの恋に溺れてからの
ソビエシュは、
失うものが多くて
得られたものは
何もないように思います。
隠し事をせずに
ラスタが
逃亡奴隷だったことを認めて、
彼女との子供を
跡継ぎにしようと考えなければ
少なくとも、自分の子供だけは
失わなかったのではないかと
思います。