195話 ナビエについて謎の声を聞いたカフメン大公でしたが・・
◇カフメン大公の心配◇
カフメン大公が歩いていた庭は
比較的、
誰もが出入りしやすい場所で
四方から、多くの人々の心の声が
聞こえてくるので
先程の心の声の主を探すのは
大変でした。
カフメン大公は、急いで庭を出て
ナビエが
足を凍らせた使用人を調べている
調査官に会いに行きました。
しかし、
国の恥となりかねない調査結果を
別の大陸の外国人に
話したがる調査官は
いませんでした。
カフメン大公は、おとなしく
引き下がりましたが、
数人の調査官の心の声から
お金をもらったが
皇后を殺そうという意図では
なかったので
お小遣い稼ぎのためにやった。
お金をくれた人は
マントで顔を隠していたので
誰だかわからなかったという情報を
得ることができました。
カフメン大公は、直接、
その使用人に会ってみれば
役に立つかもと思っていると、
何かを知っていて、
あのようにしているのでは
ないだろう?と、
庭の中で聞こえてきたのと
同じような心の声が聞こえてきました。
カフメン大公が立ち止まると
声も止まりました。
彼は、後ろを振り返りました。
◇妻を捨てたバカな男◇
ソビエシュは、塔の中ほどにある
鉄の扉を叩くと
中から、デリスが出てきました。
ソビエシュは、
彼女に労いの言葉をかけると
金貨の詰まった袋を渡しました。
そして、今後、デリスが
危害を加えられることはないので
それを持って、
家に帰るように伝えました。
ソビエシュはデリスをかくまっていたのですね。
デリスは、ソビエシュに
助けてくれたことと、
かくまってくれた礼を言いました。
執務室に戻ったソビエシュに
カルル侯爵は、
なぜ、ラスタが逃げたことを
トゥアニア公爵に教えたのか、
裁判の前に、
彼はラスタに
危害を加えるかもしれなかった。
むしろピルヌ伯爵を
送った方が良かったのではと
尋ねました。
ソビエシュは
ラント男爵がそばにいたので
トゥアニア公爵が、
どんなに怒っても
危害を加えないし
トゥアニア公爵は
バカだからと答えました。
ソビエシュは、
トゥアニア公爵が自分と同じくらい
バカだと心の中で思いました。
神殿では、
ラスタとの結婚を無効にしないし
無効にしたとしても
ナビエとの離婚まで無効にするのは
不可能でした。
ナビエは他の国の皇后となり
その後継者を妊娠中なので
ソビエシュが泣いて懇願しても
彼女は帰ってくることは
ありません。
トゥアニア公爵は
妻を愛していたのに
バカなことをして
彼女を手放したので
ソビエシュは、彼を見る度に
自分自身を見るようで
ひどく動揺しました。
だから一度だけ
彼の背中を
押してあげたのでした。
◇ラスタ vs. デリス◇
久しぶりに宮殿を出たデリスは
自由を満喫しながら歩いていました。
すると、大通りで
人々のざわめき、
悪口が聞こえてきました。
騒ぎに近づくと
兵士たちがラスタを
無理やり引き連れていて
見物人たちは、
ラスタの後を追いかけて
彼女を非難していました。
兵士たちに
捕まえられているラスタは
身体を動かすことができず
その周りは、
彼女を攻撃しようとする人たちで
いっぱいでした。
そんな大勢の人達がいる中
ラスタとデリスは目が合いました。
デリスはできる限り
ラスタに近づき
彼女の前で、にっこり笑い、
舌を出しました。
◇ラスタの絶望◇
ラスタが気絶したまま
連れられてきたと
ソビエシュはピルヌ伯爵から
報告を受けました。
ソビエシュは
ラスタが気絶をした時のことを
思い出し、
彼女が何かひどい物を
見たのかもしれない、
もしかしたら
デリスと出くわしたかもと
思いました。
ラスタがデリスの舌を切るように
命じたことを知ったソビエシュは
すぐに牢獄へ行きましたが
デリスは、すでに舌を半分
切られた後でした。
エベリーの治癒魔法で
直そうとしましたが
切られた舌は
つながりませんでした。
ピルヌ伯爵は
ラスタが目を覚ます度に
ソビエシュを呼んでいるが
どうするかと尋ねました。
ラスタは笑っていても
物悲しそうに見えるし
生まれつき、
可愛そうな雰囲気なので
2人だけの時に
ラスタに泣いてすがられると
ソビエシュは気が重くなりました。
初めは、ラスタと会うことを
拒んだソビエシュでしたが
一度は話をしないといけないので
ラスタの所へ行くことにしました。
ソビエシュは宮医に
ラスタの様子を聞いた後
人払いをしました。
ソビエシュは、
ラスタが逃げたことは
良い選択ではなかったと責めると
彼女は、ソビエシュが
そのように自分を追い込んだと
反論しました。
ソビエシュは、
ラスタはいつも
人のせいにするので
彼女が選択したことについては
自分で責任を負うように
言いました。
このセリフは、かなり命令口調で言っている感じです。
ラスタは、
ソビエシュがナビエ皇后を呼びながら
泣くのを見た。
彼は、ナビエ皇后と別れた腹いせに
自分を追い詰めているのではないかと
反論しました。
ソビエシュはため息をついて
立ち上がると
ラスタを皇后にしたこと、
ナビエと別れたこと、
ラスタを信じたことは
自分のせいだと言いました。
そして、
ラスタが罰を受けるのは
彼女が犯した罪のせいだと言うと
ラスタは
自分が何をしたのかわからないと
言いました。
ソビエシュは、
ラスタの寝室から出ようとすると
彼女は彼の後を追いかけ
ソビエシュの腰に抱きつき
素直に廃位になる。
離婚もする。
だから、自分はグローリエムと
静かな田舎で
暮らせるようにして欲しい。
裁判を受けたくない。
人々が怖いと訴えました。
しかし、ソビエシュは
ラスタの手を振り払い
彼女の要求を突っぱねました。
すると、ラスタは
ソビエシュは罪を犯しても
罰を受けない、
自分は何もしていないのに
罰を受ける。
ソビエシュは、
自分が逃亡奴隷だと知っていて
他の人をだましたことを
すべて話すと脅しました。
ソビエシュは、
そんなことを言っても
何の証拠もないし
人々は、自分のことを
愛に目がくらんだ
間抜けな皇帝くらいにしか
思わないと言いました。
そして、そんなことを言えば
本当に被害を受けるのは
ラスタの子供たちだと
言いました。
そして、ラスタの1番目の子は
両親が重罪を犯したので
奴隷になると言いました。
その言葉にショックを受けた
ラスタは、
ソビエシュはエルギ公爵より悪い
皇帝なら何をやってもよいのか。
とソビエシュに罵声を浴びせ
彼に飛びかかろうとしましたが
ソビエシュは、それをかわし
部屋の外へ出て行きました。
ラスタがデリスの舌を
切るように命じたことを知ると
ソビエシュは、すぐにデリスを
助けようとしたのですね。
ルベティとデリスが
ラスタから再び危害を
加えられないように
ソビエシュが秘密裡に
2人をかくまったのは
評価できると思いました。
それだけの配慮を
ナビエにもやってあげていたら
彼女を失うことは
なかったかもしれませんが
恋に溺れた男は
理性も思いやりも
吹っ飛んでしまい
ソビエシュ自身が言っているように
間抜けな男なのでしょうね。