161話 執務室の外で思いがけない言葉を聞いてしまったナビエでしたが・・・
◇ペンダントを取り返せ◇
夜中にマッケナを呼び出した
ハインリは
魔力のペンダントについて
問題が起こったことを
伝えました。
魔法使いの魔力は
簡単な理屈で
奪うことができるけれども
条件を合わせるのが
かなり難しく
普通はその理屈に
気づくことができません。
ハインリは子供の頃
偶然起こった事故により
その条件を
知ることができました。
マッケナは、
自分が状況を調べに行くと
ハインリに提案しましたが
マッケナは目立つし
矢で撃たれたこともあるので
目立たないカラスを
送ることにしました。
マッケナは青い鳥ですから。
もしも、ペンダントのせいで
魔力の減少のことが
ばれるようであれば
どんなことをしても
ペンダントを回収すること、
運ぶのが難しいのであれば
捨てても構わないと指示するよう
ハインリは
マッケナに命じました。
用事が済み、
執務室から出ようとした
ハインリはドアの前に立ち
白く凍ったドアノブを
見つめました。
それを見たマッケナも驚き
氷系魔法使いと呟きました。
マッケナが知る限り
宮殿内に
氷系魔法使いはいないし
そもそも、
西大帝国に所属している
氷系魔法使いそのものが
ほとんどいませんでした。
慌てたマッケナは
誰かが自分たちを偵察している。
東大帝国が
スパイを送ってきているのかもと
言いましたが
ハインリは平然としていました。
◇ナビエの願い◇
ハインリが話していた
カラス、ペンダント、ばれる。
この3つの言葉が
ナビエの頭の中を
グルグル回っていました。
部屋の中に入って
何の話をしているか
聞かなければいけなかったのに
逃げてしまったことを
ナビエは後悔しました。
ベッドに横になっても
ハインリの言葉が
頭から離れないナビエは
彼は、本当に魔力消失に
関係しているのだろうか?
もし、そうだったら
どうしようと考えました。
自分が役立たずになったと
泣いていたエベリーを
思い浮かべました。
その時、ドアノブを握る音が
聞こえたので
ナビエは慌てて
寝ているふりをしました。
寝ている?と言った
ハインリの声は
いつもと変わりませんでした。
彼は「いい夢をみてください。」
と言って注意深く
ナビエの横になり
大きな腕で彼女を引き寄せ
彼女を抱きかかえたまま
寝てしまいました。
ハインリは西大帝国の皇帝で
東大帝国をライバルだと
思っているから
彼が魔法使いの魔力を
奪っていたとしても
彼のせいにはできない。
自分はハインリを愛するように
西大帝国を愛するつもりだし
東大帝国の国民を愛するように
西大帝国の国民を愛するつもり。
両国が1つの利得をめぐって
争う時は
西大帝国に有利になるように
力を尽くす覚悟もできている。
けれども、西大帝国を
愛するために
自分の愛している東大帝国を
家族や親類、友達のいる、
東大帝国を
踏みつけることはできない。
もしも、ハインリが
魔法使いの魔力を
奪っているとしたら
理性的に彼を咎めることは
ないけれども
感情的には彼を恨むかもしれない。
だから、
ハインリではないようにと
ナビエは願いました。
◇カリカリのパン◇
朝、目を覚ますや否や
ナビエは空腹を覚え
ハインリが焼いてくれる
薄いカリカリのパンが
食べたいと思いました。
すると、ハインリが
持ってきてくれた
食事の中に
ナビエの食べたかった
パンがあったので
彼女はパンをちぎって
スープに浸して
あっという間に
一皿たいらげてしまいました。
空腹が収まると、ナビエは
ホワイトモンドとのことは
どうなったか
ハインリに尋ねました。
本当は、マッケナと
話していたことについて
聞きたかったのですが
東大帝国を
侵略する準備をしていたという
返事を聞くのが
恐かったので、やめました。
ホワイトモンドの王は
港を貸す条件として
港の使用を口実に
侵略をしないという協定を
結んで欲しい、
そして、協定書を
月大陸連合側に
公証してもらいたい
と言ったとのこと。
しかし、その協定の内容が
曖昧なのでもっと考えてみると
ハインリは言いました。
◇娘に会いたい◇
ズメンシア公爵家の家臣は
ナビエが不妊かもしれないという
噂が広まる中
主人が何の行動も起こさないことを
いぶかしく思っていました。
カトロン侯爵家では
侯爵夫人が
前王妃との間の義理より
自分の子供たちの未来の方が
大事だと言って
侯爵に黙っているように
言ったらしい。
自分たちも、復讐するか
乗り換えるか
立場を決めないといけないと
家臣が言うと
ズメンシア老公爵は
不妊の問題は罠の可能性が高い。
すでに妊娠しているかもしれない。
まずは、口を閉じて
今の立場を守らなければならないと
言いました。
ズメンシア老公爵は
幼いクリスタが彼の膝に乗って
笑っている絵を見ながら、
ひとまず娘に会いたい。
彼女から連絡はないのかと
家臣に尋ねました。
連絡は来ていないという
家臣の返事を聞き
ズメンシア老公爵は
自分からクリスタに
会いに行くことにしました。
◇デローズ孤児院◇
ロテシュ子爵は
以前、盗賊集団の常時泉が
盛んに活動していた
パルメ地方から
イスクア子爵夫妻の娘の
捜索を開始しました。
彼らは東大帝国で
子供を見失ったわけではありませんが
彼らは常時泉の襲撃に
巻き込まれたというので
子供がパルメ地方へ
流れ込んできた可能性は
ありました。
数日間、そのように過ごした後
ロテシュ子爵は
イスクア子爵夫妻の
実の娘が、里親2人を経て
デローズ孤児院に移ったという情報を
得ました。
年齢や身体的特徴などが書かれた
イスクア子爵夫妻が
娘を見失った時の記録を
見ている間
ロテシュ子爵は
院長室に飾ってある
ナビエの肖像画を妙な気持ちで
眺めていました。
そこは
ナビエが後援していた孤児院で
後にラスタが
ナビエのお金を使って
恩着せがましく
振舞った所でもありました。
院長が調べた結果
イスクア子爵夫妻が
子供を見失った時に
孤児院に入ってきた女の子は
2人だけということが
わかりました。
そして、院長は
子供を描いた肖像画を
ロテシュ子爵に見せながら
そのうち1人は
実の親が見つかり
引き取られたので
もう1人を確認すれば良い。
その子は、自分たちの誇り、
エベリーだと言いました。
ラスタの偽親イスクア子爵夫妻の
実の娘がエベリーかもしれない、
まさかの展開になりました。
イスクア子爵夫妻は
エベリーに対して
辛く当たっていたので
彼女が実の娘だと知った時
どうなるのかなと思いました。
このブログを書いている時
ちょうどお腹が空いていたので
私もカリカリトーストが
食べたくなりました。