188話 エベリーが実の娘だと聞かされたイスクア子爵夫妻でしたが・・・
◇イスクア子爵夫妻の決意
牢獄にいるイスクア子爵夫妻は
魂が抜けたかのように
やつれていました。
2人は、エベリーが
本当に自分たちの娘かどうか
話し合っていました。
ロテシュ子爵の言うことは
信じがたいし
資料も不足しているけれど
自分たちと
直接関わったことのない彼が
わざわざ言いに来るのだから
本当なのではないかと
思いました。
そのように考えると
エベリーは2人に
似ているところがあるし
エベリーがラスタの敵だと
思っていた時は
エベリーが悪い子にしか
見えなかったけれど
今は、賢い子に見えると
思いました。
貴族である彼らは
平民の子供を殺そうとしただけでは
大きく処罰されることはないので
牢獄から出たらエベリーと会って
彼女との関係を修復しようと
思いました。
その時、牢獄の階段を
誰かが降りてくる音がしました。
鉄格子の前にやって来たのは
エベリーでした。
イスクア子爵夫人は
必死で笑顔を作り、震える声で
どうして訪ねて来たのか
尋ねました。
エベリーは、その質問に
すぐには答えず、
以前の2人は
意気揚々としていたのに
ここでは、意気消沈している、
自分のことを下品な名前で
呼ばなくなったと言いました。
そして、イスクア子爵夫人が
エベリーに謝ろうとすると
それを、拒絶しました。
そして、エベリーが
2人に会いに来たのは
以前、彼らが
エベリーを見に来て
彼女に悪口を言ったように
自分も、彼らを見物に来て
悪口を言いに来たと
告げました。
エベリーの言葉は短剣のように
彼らに刺さりました。
ただ、エベリーは
一体、
自分の何が気にいらなくて
殺そうとまでしたのかは
少し気になると言いました。
彼らは、自分たちは無関係だと
主張しましたが
エベリーは意に介さず、
親を見れば子がわかる。
二人とラスタを見ていると
その言葉がぴったり合う。
別々に暮らしていたのに
二人の悪いところを
ラスタは受け継いでいるので
二人の2番目の子供も
二人同様ゴミだと思うと言いました。
イスクア子爵夫人は
涙を流し続け
何か言いたくても喉がつまって
声が出ませんでした。
エベリーが帰ると
イスクア子爵は号泣しました。
しばらく泣いた後
イスクア子爵夫人は、
自分は、あの子の親にはならない。
自分たちが、親だと
あの子が知れば、
自分たちがあの子に言ったことと
あの子が自分たちに言ったことで
彼女は苦しむことになると
言いました。
イスクア子爵は
妻の言葉に同意しました。
そして、イスクア子爵夫人は
エベリーには真実を知らせず
本当のことを知っていながら
それを隠して、実の親子を
仲違いさせたラスタを始末すると
言いました。
イスクア子爵夫妻は
今回の馬車の件について
法廷で主張したように
エベリーを遠くに
追い払って欲しいとは
言いましたが
殺すようにとは
頼んでいませんでした。
だから、ラスタが
事を大きくしたのではないかと
思いました。
ラスタは、それをするのに
十分な悪党だと思いました。
しかし、彼らは
ラスタの指示で
馬車事件を起こしたと
嘘をついても
皇后であるラスタへの罰は
形式的なものになるので
この程度では
彼女に復讐できないと思いました。
彼らは、
エベリーの人生から
ラスタを片づけなければならない
と思いました。
◇元気のないマスタス◇
ハインリは、
デビュタントをしていない
令息と令嬢を呼んで
簡単な武術と学識を
試してみると
突然発表しました。
貴族たちは
それぞれ家風に応じて
子供たちを教育しているのに
あえて、ハインリが
このようなことをする
必要があるのかと
ナビエは思いました。
その話を聞いた
ジュベール伯爵夫人は
ズメンシア老公爵を
怒らせるためだと
言いました。
実際、ズメンシア家の
2人の子供に
招待状は送られていませんでした。
ナビエも
ジュベール伯爵夫人の意見に
賛成でしたが
彼女はハインリの
猫かぶりの性格について
素直に話せなかったので
適当に
生れてくる赤ちゃんの
ためではないかとごまかしました。
そのことについて
侍女たちと、盛んに話していた時
フリルがたっぷりの
クリーム色のドレスを着て
メガネをかけたシャーレット王女が
やってきました。
その姿は
宮廷で働く学者のようでした。
ナビエはシャーレット王女と
話している間
なぜか、マスタスの方を
見てしまいました。
マスタスは自分の靴に付いた
シミをみていました。
シャーレット王女が帰った後
ますます元気がなくなった
マスタスを
侍女たちが、慰めました。
ナビエは、マスタスが
本気でコシャールのことを
好きなのではないかと
思い始めました。
◇恋愛問題◇
ナビエは、ハインリとの
夕食の時まで
そのことを考えていたので
彼は、ナビエに何か悩みがあるのか
尋ねました。
ナビエは、かつてハインリが
プレーボーイとして
有名だったことを思い出し
彼に、恋愛問題に精通しているか
尋ねました。
ハインリは否定しました。
彼にとって、女性は
ナビエだけだし
ナビエのことも
よくわからないのに
他の女性のことが
わかるわけがないと答えました。
ナビエは何度か
ハインリを問い詰めましたが
彼は答えをはぐらかしました。
ナビエは、
ハインリの過去について
聞きたいのではなく
恋愛問題で
聞きたいことがあると尋ねると
彼は、恋愛問題については
門外漢なので
答えるのが難しいと答えたので
ナビエは思わず
この猫かぶりが?
と言ってしまいました。
ハインリは目を丸くし
ナビエは慌てて
スプーンを口にくわえて
食べる振りをしました。
◇ニックネーム?◇
翌朝、
クイーンは可愛いと歌いながら
執務室の机の前で
踊っているハインリを見て
マッケナは
「やめてください!」と
悲鳴を上げました。
ハインリは、マッケナのことも
可愛いと言ったので
彼は、普通の従兄であれば
ハインリの背中を
一発殴りたいと思いました。
初めマッケナは
クイーンは鳥になっている時の
ハインリのことだと
誤解していました。
しかし、クイーンは
ナビエのことで
彼女がハインリのことを
猫かぶりと言ったことに
ハインリは感動して
クイーンは可愛いと
言っていることがわかると
氷と鉄を半分ずつ混ぜたような
ナビエ皇后のことを
ハインリが可愛いと言うことに
マッケナは鳥肌が立ちました。
ナビエがニックネームを
付けてくれたと
浮かれているハインリに
マッケナは、
ただ悪口を
言っただけではないのかと
非難しました。
知らなかったとはいえ
長年、探し続けていた娘に
ひどいことを言われた
イスクア子爵夫妻は
辛かったと思います。
けれども、いくら
知らなかったとはいえ
エベリーに
ひどいことを言っていたのは
彼らに落ち度があると
思います。
もっとも
エルギ公爵が
彼らをラスタの偽親にしなければ
こんなことには
なりませんでしたが・・・
運命は残酷だと思います。