87話 むしろ自分を苦しめろと言うカルロイに、ルーは、今苦しめていると返事をしましたが・・・
カルロイは、
自分のことが煩わしくて
ルーがそうしているのなら、
今、自分を苦しめればいいと
告げました。
ルーは、その言葉を認め、
カルロイが見ている前で、
自分の首を刺したいと言って、
彼を睨みつけました。
カルロイは地面に座ると、
自分が全て悪かったと謝りました。
そして、ルーの手を握り、
自分で自分を苦しめないで欲しい。
ルーがそんなことをしなくても
彼女を気にしない訳にはいかない。
ルーを一番憎んでいると思った
その瞬間でさえも、
彼女のことを気にせずには
いられなかった。
ルーが嫌いだと信じていた時も
彼女のことを
考えざるを得なかったと言って
泣きながら彼女に謝りました。
ルーも地面に座り込みました。
彼女は、
いっそのことカルロイが
本当に自分を憎んでくれたら
あまり辛くなかったと思いました。
そして、
母親は、もう満足しているだろうか。
こんなに早く逝ったから
楽になっただろうか。
ここは地獄なのに、自分だけ置いて
逝ってしまっていいのか。
母親からの手紙には、
自分を縛るものは何もないと
書いてあったけれど、
本当に、そうなってしまった。
ここには、
自分を縛っておくものが何もないので
安心できる所がないと思いました。
侍女長は、ルーの額に手を触れ、
幸い熱もないし、
咳も出ていないと告げました。
ルーは、
あれだけ雨に濡れたのに、
あり得ないと言いました。
彼女は、
勝手に死ぬこともできないのなら
意識が戻らないほど、
具合が悪くなることを
願っていました。
彼女は、
できることがないと呟くと、
侍女長は、
これで慰められるかどうかは
分からないけれどと言って
ドニスの遺灰が少し収められた
ネックレスを
ルーに差し出しました。
しかし、彼女が受け取らないので
焦った侍女長は、
気に入らないのかと尋ねました。
ルーは、このネックレスを見て
自分が何を感じたらいいのか
全然分からないと答えました。
付いて来いと命令して
腕が傷だらけのルーを
引っ張っていくデルア。
ひたすら謝り、
タワーは嫌だと抵抗するルー。
子供の頃のことを
思い出していたルーは
侍女長に声をかけられて
はっとしました。
彼女はガラスの破片を握りしめて
裸足で外に立っていました。
侍女長は、
「大丈夫です」と言いながら、
慎重にルーの手から、
ガラスの破片を離させると、
デルア公爵は死んだと言って
噴水台に座らせました。
ルーは震えながら
公爵が生きているのではないか。
そうでなければ、
これほどまで、自分を
苦しめに来るはずがない。
公爵の命を奪っていないのに
奪ったと、
カルロイが、また、
嘘をついているのかもしれない。
彼は、いつも、
嘘ばかりついているからと
言いました。
侍女長は、ルーの肩に手をかけ、
公爵は、本当に死んだと告げました。
その時、ルーは思い出したように
なぜ、カルロイは
1週間以上、姿を見せないのかと
尋ねました。
焦った侍女長は、
すぐに返事ができないでいると、
ルーは、
疲れて来るのを止めようだと
指摘すると、
侍女長は、それを否定しました。
しかし、ルーが、
カルロイは結局逃げたと言うと、
侍女長は、本当に違うと否定しました。
ルーは、
侍女長が話してくれないなら、
自分が、直接
カルロイを訪ねると言って
立ち上がり、歩き出しました。
侍女長は、
ルーの後を追いかけながら、
とりあえず、
今日は部屋に戻って寝て、
翌日、訪ねるよう勧めましたが
ルーは無視して歩き続けました。
困った侍女長は、悩んだ末、
カルロイの体調が悪く、
意識もないし、
身動きもできない状態であることを
打ち明け、
だから、翌日行くよう勧めました。
しかし、ルーは、
また嘘をついていると言いました。
ルーはカルロイの部屋の前まで
やって来ました。
侍女長は、ずっと彼女を呼びながら
後に付いて来ました。
自分が来たとは言わないでと
言いながら、
ルーはカルロイの部屋の中に
入って行きました。
おろおろしながら侍女長は
ゴルテンに謝りました。
部屋の中に入ると、
ずっと身体は大丈夫だと
嘘をついていたから、
なかなか治らないと言う医師の声。
本当に良くなった、もう声も出ると
咳込みながら、
返事をする、カルロイ。
一週間以上、休まなければならないと
告げる医師の話が聞こえて来ました。
ルーは、
本当に体の具合が悪かったのかと
思いました。
そして、医師が、
軽く考えてはいけない。
皇后の症状は
かなり深刻な状況だったのに
転移治療でその苦しみを引き受けた。
そして、薬も飲まずに、
また転移治療をすると言い出したと
苦言を呈しているのを聞いたルーは
「転移治療」「また」という言葉に
反応しました。
カルロイは、
たかが風邪を引いたくらいで
人は死なないと返事をすると
ルーは彼らに近づき、
それはどういうことか。
何を言っているのかと尋ねました。
カルロイはルーが苦しむのを
見ていられず、
彼女の苦痛を取り除いてあげたくて、
彼女の病を引き受けた。
けれども、
自分の生きがいだった母親を
失ったことで、生きる目的を失い、
自分の死を願っていると共に
多少なりとも、カルロイに
母親の死の責任があると
思っているルーには、
彼の思いやりが通じるどころか
逆に彼を恨むように思います。
きっと、最後はルーとカルロイに
幸せな未来が訪れると思いますが
今の状況では、
そこにたどり着くまでに
紆余曲折があるのではないかと
感じます。