108話 ミレニンにパーティーへ誘われたルーは、お願いでなければ、あえて自分が返事をする必要はないのではないか。答えは一つだけだからと言いました。
それを聞いたミレニンは
プッと吹き出し、
確かにそうだ。
そんなことは、
考えたことがなかった。
それでは、その時会おう。
出席してねと言いました。
ルーはキアナに、
ミレニンは、
頭がおかしい人なのかと
尋ねました。
キアナは、
たまに、ああなると答え、
いずれにせよ、ルーは
このまま帰るように。
自分がきちんと話すと言いました。
しかし、ルーは
パーティーに行った方がいい。
自分が面白くない人だと分かれば
興味も冷めるだろうと言いました。
しかし、ミレニンは、
やはり面白いと思っていました。
カルロイはブレイズを睨みながら
なぜ、また
ティーパーティーを開くのかと
尋ねました。
ブレイズは、一度、姉の前でも
そう言ってみて欲しい。
カルロイなら楽勝ではないかと
顔を引きつらせながら答え、
姉が待っていると急かしました。
カルロイは、
分かったから、少し黙れと言って
ため息をつきました。
ブレイズは、
ところで、カルロイは
何のせいで、
さらに顔色が悪くなったのか。
パーティーの時も、
黙って消えてしまったと
指摘しました。
その質問にカルロイは返事をせず。
ミレニンとブレイズの姉弟は
自分を一時も
放って置いてくれないと
文句を言いました。
ブレイズは、
正直、予想外のことでは
ないのではないか。
クライド卿が、ここへ来て以来、
姉は、
自分が好きなクロイセン人たちを
一か所に集めて楽しむ
この瞬間だけを待っていたと思う。
そして、もう1人、
クライド卿の奥さんの友達を
とうとう呼んだと話しました。
その言葉に、
カルロイの足が止まりました。
ブレイズは、
舞踏会の時に見たら、
そんなに美人でもなかったのに、
何の爵位もない女を、
なぜ、この場に呼ぶのか分からない。
姉は何を考えているのか。
このままだと、彼女まで
マハに居るよう言うのではないかと
心配だと、不平を漏らしましたが
ティーパーティーの席に
ルーが座っているのを見て、
ブレイズは、
自分は何か見間違いをしたようだと
言って、頬を染めました。
ルーはカルロイを見て
ビクッとしました。
ルーのことを
最高の美人だと褒める
ブレイズに、
カルロイは腹を立て、
浅はかな奴だと非難しました。
ブレイズは、
訳が分かりませんでした。
2人を見たミレニンは、
やっと来たと言い、
同郷の人を喜ばせようと思い
一同に呼んだと
嬉しそうに話しました。
カルロイは気まずそうな顔で
席に着きました。
ミレニンは、
新しい友達の名前を聞きました。
ルーは頬を染めながら
オリビア・チェルだと答えました。
しかし、ルーは
カルロイが来ることを
予想していなかったので、
彼の前で、嘘をつくことを
恥ずかしく思い、
これは、どういう状況なのかと
複雑な気分でした。
ミレニンは、
チェル夫人は
マハ語に慣れていないので
ブレイズに気をつけるよう
忠告しました。
彼はニコニコしながら、
当然、配慮すると返事をしました。
ブレイズはルーに
旦那さんは今どこにいるのかと
尋ねました。
ルーはビクッとし、
カルロイをチラッと見ました。
彼は静かにお茶を飲んでいました。
ルーは、
随分前に死別したと答えると
カルロイはお茶を吹き出しました。
ブレイズは、
独り身になったのは残念だ。
マハには、
どのくらい滞在するのかと
笑顔で尋ねました。
ルーは、
近いうちに去ると答えました。
ブレイズは、
どうしてなのか。
マハは見るものが多いので、
もっと楽しんでから
帰って欲しいと言いました。
ミレニンは、
フレルムは必ず見て行くようにと
勧めました。
ルーは、
フレルムとは何かと尋ねました。
カルロイは、
この姉弟は
2人してならず者だと
腹を立てながら、
毎回、人が死ぬ危険な試合を
見て行けと言うのか。
数年前には、
貴族も死んだと聞いている。
そんな危険な試合を。
なぜ、まだ禁止しないのかと
非難しました。
ルーは小声で、キアナに
本当なのかと尋ねると、
彼女は「はい」と答えました。
ミレニンは、
ケーキにフォークを突き刺しながら
カルロイもマハ人の性格を
知っているはずだ。
たまたま、
不運だったということだけで
楽しさを諦めるのは意味がない。
安全については、
競技場を再整備したから
問題ないだろうと言いました。
そして、ミレニンは、
なぜ、カルロイが
ずっと突っかかって来るのか。
何か良くないことでもあるのかと
尋ねました。
カルロイは、
このティーパーティーが
問題ではないかと答えました。
ミレニンは、
カルロイのために開いたのに
寂しいと言って笑いました。
ルーは、お茶を飲みながら
この2人は、仲良さそうに見えると
思っていると、
ミレニンはルーに、
チェル夫人の国の皇帝は、
妻たちを失ってから
神経質になっていることを
理解していると、言ったので、
ルーとキアナはギョッとしました。
そして、ミレニンは、
キアナは契約相手だったから
大したことなかったと思うけれど
皇后とは、
かなり仲が良かったのだろうか。
デルアの娘なのにと言うと
ルーは血の気が引きました。
すると、カルロイは、
そうでなくても神経質な自分は、
マハでの、この過分な歓迎が
不愉快だ。
彼女の話まで出たら、
会談など放りだして、
クロイセンに帰りたくなりそうだと
言うと、ミレニンは、
それはいけないと言いました。
すると、カルロイは、
それならば、
ミレニンの話でもしてみたらどうか。
前の夫を気に入っていたのに、
なぜ、命を奪ったのか
気になっていた。
肝が据わっていて、
どんな女と浮気をしたのかと
尋ねました。
ブレイズは、
その話はするなと言うと、
ミレニンは、
死んだ人の話をすると
不愉快になるだけなので
その辺にしておいてと答えると
立ち上がりました。
そして、
自分のティーパーティーなのに
退屈な話ばかり聞かせたまま
帰らせるのは申し訳ないと
言いました。
すると、キアナは
ルーを呼びました。
彼女は訳が分かりませんでした。
ブレイズは咳ばらいをしながら
ルーの隣に行こうとすると、
カルロイは、退けと言って
ルーとブレイズの間に
割り込みました。
ミレニンはルーを呼ぶと、
これは、自分の招待に応じてくれた
お礼だと言って、
水で花を象る魔法を見せてくれました。
ルーが歓声を上げていると、
カルロイは、
ミレニンの言うことを
あえて聞く必要はない。
断りたければ断ってもいい。
そうしても、
大したことないだろうから
心配しないでと、
小声で忠告しました。
ルーは、
そうでなくても、
近いうちに去ろうとしたと
言いましたが、心の中では、
どこに行くのか、
カルロイは聞こうともしないと
思いました。
その2人の様子を見ていた
ミレニンは、
意味ありげに微笑みました。
カルロイとミレニンが
話しているのが気になったり、
自分がどこへ行くのか
カルロイが聞いてもくれないことを
残念に思えるようになるくらい、
ルーの気持ちは再び、カルロイに
傾いているのではないかと思います。
2人の間のわだかまりが解けるには
もう少し、時間が
かかるかもしれませんが、
2人に幸せな未来が訪れることを
楽しみにしています。