129話 外伝4話 ルーはお茶の席で、ヘイジー伯爵にさりげなく皮肉を言うので、彼の顔色が暗くなりました。
ルーは、
当然、そうだったと思うけれど、
ヘイジー伯爵は両親と
仲が良かったのかと
笑顔で尋ねました。
彼は、おどおどしながら、
平凡に、普通に育ったと
答えました。
すると、クライドは、
普通であるというのは、
自分たちのような者が
一番、羨ましがっているものだと
皮肉を言いました。
その言葉に、ヘイジー伯爵は
口をパクパクさせ、
何か言おうとしましたが、
今度はルーが、
ヘイジー伯爵が自分の出自について、
多くのことを心配していて、
自分のような身分の者が、
多くの人の前に出るのが
危険だと思うと言っているのを
聞いたけれど、
本当に、そう思うのかと尋ねました。
ヘイジー伯爵は、
モルトン卿は、自分のビジネスに
重大な役割を果たす人で
クライド卿は、
マハに大きな影響力を
行使する人なので、
ここで、ありのまま、
そうだと答えるほど、
バカなことはないと思い、
そうではなく、
皇后が体調を回復してから
間もないのに、無理に事を運べば
心を痛めるのではないかと
心配しただけだと
言い訳をしました。
それを聞いたルーは、
時間が経てば大丈夫だという
意味なのか。
それならば、
自分が顔を出してもいい時は
いつだと思うかと、
冷たい目で尋ねました。
ヘイジー伯爵は唾を飲み込むと、
あえて言うなら、
皇后に後継者ができて、
その後継者が、
ある程度成長した後に
一緒にするなら、
大丈夫だと思うと答えました。
ルーは、
そのような政治的な理由で
子供を持てと言われたことで
気分が悪くなりました。
彼女は、
子供がいない自分では
もの足りないということなのか。
自分の手でデルア公爵の命を
奪ったのに、
相変らず自分は半人前だからと
冷たい目で言い返しました。
ヘイジー伯爵は慌てながら、
自分の考えがそうだというより、
普通のクロイセン人が
どう思うか心配しただけだと
言い訳をすると、キアナは、
普通のクロイセン人とは
睦まじい家庭で育った人と
いうことですねと確認しました。
その言葉にヘイジー伯爵は、
返事をせずに、ため息をつくと
皇后が自分をこの場に呼んだ意味は
よく分かった。
自分が貴族院で、
このテーマについて言及することは
もうないということを約束するので
このように自分に
圧力をかける必要はないと
言いました。
その言葉を聞いたルーは、
なぜティニャがヘイジー伯爵に
難儀したのか分かった。
先程までは、
何も言えなかった人が、
いつの間にか、
自分の言いたいことを言っていると
思いました。
続けてヘイジー伯爵は、
自分がこの話を
持ち出さないからといって
問題がなくなるわけではない。
普通の人々を一掃すれば
解決できることでもないと
言いました。
ルーは、
ヘイジー伯爵が個人的に
自分を尊敬していると
聞いたけれど、
それは本当なのかと尋ねました。
ヘイジー伯爵は「はい」と答え、
皇后が経験したことは、
誰でも克服できることではないと
言いました。
ルーは、
人の心を確信することは
できないけれど、
この人が本気で言っていると
信じなければならない。
人は変われるという希望なしに
前に進むことはできないからと
考えました。
ルーは、
ヘイジー伯爵のような人が、
自分のような者を少しでも
尊敬できるようになったら、
他の人々も十分、
そうすることができるのではないかと
言うと、ヘイジー伯爵は驚き
「え?」と聞き返しました。
ルーは、ヘイジー伯爵こそ、
普通の人の一人ではないか。
そのような人々の心を
変えることができる
最も強力な人も
ヘイジー伯爵だと言いました。
彼は、その言葉に慌てましたが
ルーは、
ヘイジー伯爵のような人が
先に変わらなければ、
誰が変わることができるだろうかと
言いました。
ヘイジー伯爵は「そんな・・」と
言い返しましたが、ルーは笑顔で
ヘイジー伯爵に
圧力をかけているわけではない。
ヘイジー伯爵は、
すでにこの問題について
言及しないと約束しているから。
自分は、これ以上何かを
要求する必要はないと言いました。
しかし、ヘイジー伯爵は、
圧力をかけられていると
思いました。
ルーは、
ヘイジー伯爵がうまくやってくれれば
このように圧力をかけるのではなく
他のものをあげられるかもしれないと
言いました。
ヘイジー伯爵は、
これを言うために、
わざとモルトン卿とミロナ伯爵を
招待したのだと思いました。
ヘイジー伯爵は「はい」と返事をし
考えてみるのは
難しい事ではないと言いました。
夜、寝室で、カルロイはルーに、
彼女が経験したことについて
人々が知ったらどうなると思うかと
尋ねました。
ルーは、
すでに、皆知っているので
大したことないと答えました。
カルロイは、普通の人たちまで
知ることになったらということ。
詳しく知らない人もいるからと
説明しました。
ルーは、
自分が悪いわけではないし、
恥じるべきことでもないので
関係ないと返事をし、
もしかしてヘイジー伯爵のせいか。
彼の言う通り、全ての人に会って、
説得するつもりなのかと
笑いながら尋ねました。
カルロイはルーの手を握り、
やるべきことならやると
答えました。
その言葉に嬉しくなったルーは
カルロイの頬にキスをすると、
自分は構わないと言いました。
数週間後、オリビアは
貴族院の問題は、うまく解決したかと
ルーに尋ねました。
ルーは、
あれ以来、ヘイジー伯爵は、
静かにしているようだ。
ローデン侯爵も
キアナが言い聞かせてくれたのか
おとなしくしていると答えると
オリビアは、
ミロナ伯爵夫人は何と言ったのかと
尋ねました。
キアナは、侯爵が
ミロナ伯爵の悪口を言うのを
やめれば、侯爵を許して会うと
言ったそうだ。
そういうのを見ると、侯爵も娘に
たくさん会いたがっているのだろう
と、ルーは返事をしました。
オリビアはフフフと笑って
同意しました。
それからオリビアは
最近、人々の間で流行っている
演劇があるそうだと
ルーに話しました。
彼女は、どんな内容なのかと
尋ねました。
オリビアは、
皇子を救った勇敢な女の子が、
大きくなってからは
帝国まで救う内容だそうだと
答えました。
ルーはドキッとし、
それは、もしかして自分の話なのかと
尋ねました。
オリビアは笑いながら、
そうではないかと答えました。
ルーは頬を染めながら、
この前、カルロイが話していたのは
この事だったのかと思いました。
ルーはオリビアに
人々の反応はどうなのかと
尋ねました。
オリビアは、
熱狂しているそうだ。
他のことは分からないけれど
クロイセンの人々の言葉を
和らげる能力は
認めてあげなければいけない。
前のあの本も、
思考を麻痺させたけれどとぼやくと
ルーは同感だと言いました。
それから、ルーは
ラ・ソルティオといって
思い出したけれど、
先日、夢の中に母親が出て来た。
メクソス湖で会ったと話しました。
オリビアが「そうなんですか?」と
尋ねると、母親は、
いいことがあると言って、
自分を抱き締めてくれたけれど、
このことを言っていたのか。
何となく、気分が少し変だけれどと
ルーが話すと、オリビアは、
その夢は、もしかして・・・
と呟きました。
オリビアとメアリーに
身支度を整えてもらいながら、
ルーは、昨年、アルバ・ループが
中止になったせいか、人々が、
より盛り上がっているような
気がすると言いました。
オリビアは、
皇后が、特に
気を遣っているからだと言い、
メアリーも、
お祭りに、皇后の手が
かけられていない所はないと
言いました。
ルーは、
モルトン卿を始め、他の人たちも
たくさん助けてくれたからと
謙遜しました。
そこへカルロイがやって来ると、
ルーの額にキスをし、
今日は、いつにも増してきれいだと
言いました。
ルーは、会心のドレスだ。
流行っているという演劇の
ヒロインが着た服を真似て
作ったと話しました。
カルロイはうっとりして
ルーを見つめました。
ルーは、
たとえ結果が少し良くなくても
自分は大丈夫。
心配しないでと言いました。
カルロイは、
心配していない。
ルーがいるからと返事をしました。
そして、二人は大勢の人々の前に
立ちました。
今回のお話で
ルーが妊娠したという話は
出て来ていませんが、
次回のサムネイルに
子供が出て来ているので、
おそらく、妊娠したのではないかと
思います。
ヘイジ伯爵を攻略するのは
難しそうでしたが、
父親からの刷り込みによる
彼の思い込みを、
ルーが上手く利用して、
彼をおとなしくさせることができて
良かったです。