101話 ティニャはカルロイに、一度ルーに会って来いと叱りつけました。
ティニャは、
ルーが皇后を退くという話をしても
カルロイは平気な様子だったので、
何も言わないでいたら、
毎晩、皇后宮へ来て、
自分を憐れんでいるなんて
何をやっているのかと
叱りつけました。
アセルが告げ口したと思った
カルロイは、ティニャに
頭はおかしくなっていないので
出て行くように。
こうしていないと、
おかしくなりそうだからだと
言いました。
ティニャは、
だから顔でも見て来いと言っていると
もう一度言いました。
その言葉にカルロイは黙っていると
ティニャは、
なぜ、行かないのか。
皇后が会いに来てもいいと
言っていないからか。
会いに来るなとも言っていない。
誰も、話をして来いとか、
連れて来いとは言っていない。
今行かないと、
いつ会えるか分からないので
気を引き締めて行って来いと
言いました。
そうしてもいいのだろうかと
返事をするカルロイに
ティニャはイライラしながら
彼が行かなければ、
カルロイの状態を皇后に話すと
脅しました。
そして、準備すると告げると
アセルに、
皇帝と皇后が直接顔を合わせないよう
事前に侍女長に
伝言を送らなければならないので
先にラ・ソルティオへ行くよう
指示しました。
カルロイは無言のまま
腹を立てていましたが、ティニャは
彼の心は、
すでにラ・ソルティオへ
向かっていると思いました。
メクソス湖の近くに
やって来たカルロイとアセル。
アセルは微笑みながら
ここにいれば、侍女長が
皇后を連れて来ると言いました。
カルロイは、一体何をしに
ここまで来たのか。
リリアンに
見つかったらどうするのか。
また彼女を傷つけることになったらと
心配していると、
アセルがカルロイを引っ張りました。
すると、ルーが、オリビアと
侍女長とジェインと一緒に
湖の辺を歩いていました。
美しい笑顔のルーを見て
カルロイの頬が赤く染まりました。
アセルは、皇后の顔色が
良くなったのではないかと
感嘆しました。
カルロイは、
リリアンが泣いていなくて
笑っていることに
心臓がドキドキしました。
そして、アセルに
帰ると告げると、彼は
もう帰るのかと驚きましたが
カルロイは、もう十分だと
言いました。
自分がリリアンの近くに
いてはいけないと
思ったからでした。
立ち去るカルロイの後を
付いて行きながら、アセルは
大丈夫かと尋ねました。
カルロイは、
大丈夫だと答えました。
彼は、
リリアンにこれ以上
会えないとしても
もう、リリアンが泣かないから
大丈夫でなければならないと
思いました。
ルーは何かを感じて、
カルロイが潜んでいた方を見ました。
急にルーが足を止めたので
焦った侍女長は、
どうしたのかと尋ねました。
ルーは何でもないと答えました。
ルーは、ベッドの中で
なかなか眠れませんでした。
彼女は、数日後に
マハに発つことになっていました。
キアナに手紙を送ったら、
彼女は快くルーを招待してくれたので
マハに滞在するのは
難しくなさそうでした。
彼女からの手紙には、
マハを見物させてくれることと
貸した本の完結編もあると
書かれていました。
その身体で、
1人でどこへ行くつもりなのかと
言って、
侍女長とジェインと宮医まで
付いて来ると言ったのには
少し困ったけれど、
その一方で、
1人よりは、ましだと思いました。
ただ、ティニャの言う通り、
カルロイが本当に良くなったのかが
気になっていました。
ルーは、マハに発つ前に、
カルロイに直接会いたいという
衝動に駆られ、
その気持ちを抑えるのを
何度も繰り返していました。
やっと元気になったカルロイが
訳もなく自分を見て
おかしくなることを
心配していたからでした。
ルーはオリビアと話をしていた時、
最近、プルトゥで、
私生児の処遇改善のための法が
制定され、
私生児に対する露骨な差別が禁止され
彼らは国の保護を
受けるようになったと聞き、
ルーは、カルロイが自分のせいで
そのようにしたと思いました。
カルロイは、
約束通り一生懸命生きている。
本当に良くなっているようだから
余計に騒いだりしないでおこうと
思いました。
それに、またカルロイに会って
彼を憎みたくなるのは嫌でした。
ルーがマハへ旅発つ日、
ベクスは、
まだ作ってあげていない料理が
たくさんあるのに、
もう旅立ってしまうのかと
涙を流しながら嘆きました。
オリビアは
ルーが行ってしまうことを残念がり
レクセム・ソルタへ来た時は
いつでも自分を訪ねて欲しいと
言いました。
ルーはそうすると答えました。
他の料理人は
ベクスをなだめていました。
オリビアは、
少しルーの手を握ってもいいかと
尋ねました。
彼女は戸惑いながら承知すると
オリビアは両手で
優しくルーの手を包み込み、
自分は、
ルーが本当に勇敢で賢いことを
短い間でも感じることができた。
できるだけ
たくさんのものを見て欲しい。
ルーは心が広いので、
見れば見るほど、それらを
吸収することができると
言いました。
ルーはオリビアにお礼を言い、
彼女をオリビアと呼びました。
彼女は、ルーを
ラ・ソルティオの皇后と呼び
別れの挨拶をしました。
一方、カルロイは、
リリアンを見て来たのが
良かったかどうかは分からない。
もちろん、元気になったリリアンを
見ることができたのは
良かったけれど、
もっと近くで
リリアンに会いたくなり、
このような気持ちのまま
一生耐えて生きることが
本当に可能なのか悩んでいました。
そこへティニャがやって来ました。
カルロイは、
マハへ行く準備で忙しいはずなのに
どうしたのかと尋ねました。
ティニャは、
年を取って大変なので。
自分がマハへ行くのは難しいと
答えました。
カルロイは、
今さら急に、何を言い出すのかと
非難しましたが、ティニャは
遠いマハまで行くのは無理だ。
船にも乗らなけばならないしと
言い訳をしました。
カルロイは、
ティニャでなければいけないと
言いましたが、彼女は
カルロイが行くようにと告げました。
一方、マハに向かう船上で
船酔いに苦しんでいるルーは
一体誰が、
マハへ行けば気分転換になると
言ったのかと、
恨み言を口にしていました。
きっと、カルロイは
ルーを見に行ったことで
以前より少し元気を取り戻したので
ティニャは彼を
マハへ送ろうとしたのだと思います。
もちろん、ルーの具合が悪ければ
そんなことはしなかったと
思いますが、
直接ルーと会って話したことで
そろそろ、彼女が
カルロイと会っても大丈夫だと
判断したのだと思います。
２人を憎んでいたティニャが、
今は彼らの幸せを
願うようになったのは、
彼女自身も過去のしがらみから
解き放たれ、
いつしか２人に母性を感じるように
なったのかもしれません。
