130話 ルーとカルロイは祭りで国民の前に立ちました。
国民の前に立つルーの前で、
水を使った魔法が
繰り広げられました。
ルーはボーッとした目で、
それを見ていると、
カルロイは、
ミレニンが必ず手紙を書けと
言っていたと話しました。
ルーは、ミレニンが・・・と
返事をして、ニッコリ笑いました。
カルロイは
先端が球状になっている
スティックを手にして、
水を撒きました。
人々から歓声が上がりました。
カルロイはルーにキスをすると
さらに歓声は大きくなりました。
ルーは、
今日がいいだろう。
多くの人々の前で祝福を願い、
祝福を得ている瞬間よりも、
自分が堂々と皆の前に出た
瞬間よりも、
適切な時はないだろうからと
考え、彼女はカルロイに
今日は、自分からプレゼントがあると
告げました。
しかし、ルーの声は
人々の歓声にかき消されてしまったので
カルロイは、
「何があるって?」と聞き返しました。
ルーは「プレゼント!」と叫びました。
カルロイが「プレゼント?」と
聞き返すと、ルーは、
赤ちゃんができたみたいだと
答えました。
すると、カルロイの動きが
ピタッと止まりました。
ルーはカルロイに
「聞いていた?」と言うと、
カルロイは頬を染めながら
「何だって?」と聞き返したので、
ルーは膨れっ面をして、
自分たちに赤ちゃんができたと
大声で叫びました。
その声を聞いた人々は
キョトンとしました。
ルーは、しまったと思いましたが
カルロイは嬉しさのあまり、
ルーを抱き上げました。
しかし、すぐに
ルーが無理をしてはいけないことに
気づき、彼女を下ろしました。
それから、彼はルーに
幸せだと告げました。
ルーは「私も」と返事をしました。
カルロイがルーを抱き締める中、
人々の歓声は上がり続けました。
実は、
リリアンのサプライズ告白を
聞いた人々は少数でした。
その圧倒的な幸せと美しさを見た
人々は、幸せを分かち合うのに
忙しくしていたからでした。
とても美しい一年の始まりでした。
誰も否定できませんでした。
カルロイは廊下を
ウロウロ歩きながら、
「大丈夫かな?」と尋ねました。
メアリーはビクッとしました。
カルロイは、
陣痛が始まってから、
どのくらい経ったのか。
まだ知らせはないのか。
これは、よくあるケースなのかと
メアリーに尋ねました。
彼女は、
正直に言うと、
皇后は健康な方ではないし、
色々、苦労している。
それに、子供を産むのは
簡単なことではないからと
言葉を濁しました。
カルロイの顔色が暗くなりました。
オリビアはメアリーを支えながら、
皇后は、それらを全て経験し
克服したので、
うまく、やり遂げるだろうと
言いました。
ティニャも心配そうな顔で
俯いていました。
一方、アセルは、
赤ちゃんはうるさくて嫌いだし、
小さすぎて怖い。
それなのに、何が良くて、
皆、あんなに大袈裟なのかと
思いました。
カルロイは椅子に座ると頭を抱え込み
ここまで、自分にできることが
何もないなんて、
こうなると分かっていたら・・・と
ブツブツ呟いていましたが、
そこへ、「アアーッ」と
ルーの叫び声が聞こえました。
カルロイはルーを呼びながら
立ち上がりました。
そこへ、ゴルテンがやって来て、
目に涙を浮かべながら、
皇后が皇女を無事に出産したと
告げました。
ルーは目の下にクマができていましたが
赤ちゃんを抱いて、
笑顔でカルロイを迎えると、
「見える?」と聞きました。
カルロイは涙ぐみながら
ルーの手にキスをし、
「うん、見えるよ」と答えました。
メアリーも泣いていて、
ジェインが彼女を支えていました。
ルーは笑いながら、
自分たちに、
こんなことが起きるなんて
思ってもみなかったと言いました。
そして、ルーは娘に
自分は彼女の空になる。
彼女が落ちそうになっても
怖がらずに飛べるようにと
言いました。
ルーは涙ぐみながら、
信じられない。
夢みたいだと言いました。
カルロイはルーの手を握り、
自分もそうだと返事をしました。
カルロイの腕の中にいる
リネット(娘)に、ルーは、
「ママはここにいますよ」
と言いました。
ジェインは目をキラキラさせて、
リネット皇女様は、
こんなに小さいのに、
どうして、こんなに皇帝陛下に
似ているのかと言いました。
そして、
ルーとカルロイとリネットの近くに
オリビアとティニャとジェインは
いましたが、アセルはその様子を
遠くから見ていたので、
ジェインはアセルに、
こちらへ来て見てと誘いました。
しかし、アセルは首を振り、
一体、なぜ赤ちゃんを
一日中、見なければならないのか。
見る度に、見た目が変わるわけでも
ないのにと思いました。
しかし、カルロイが
娘にパンチされて
ニヤニヤしているのを見ながら、
少しバカみたいだけれど、
皇帝がたくさん笑うのはいいと
思いました。
ルーはリネットの頬を突きながら
自分の娘だけれど、とても可愛い。
リネットは自分ではなく、
カルロイに似ているから、
もっと可愛いと思うと言いました。
そして、
皇女様、こっちを見てと
話しかけているカルロイを見て、
ティニャは涙ぐみました。
それを見たジェインは、
そんなにリネットが好きなのか。
誰かが見たら、
ティニャが産んだと誤解すると
言いました。
ティニャは、
そうではないと答えました。
カルロイは、
頬を染めながら
リネットを見ているティニャが
自分の母親のことを
考えているのだと思いました。
カルロイはティニャに
リネットを抱いてみてと言いました。
リネットを抱いているティニャを見て
カルロイは、
もしかして、新しい生命の誕生で
一番、感動的な部分は、
自分の過ちを繰り返さない機会が
生じることではないか。
自分とは違う人生を与える機会が
できるということではないか。
だから、命は贈り物だと
言われているのかもしれないと
思いました。
オリビアは涙ぐみながら、
もう、こんなに大きな愛を受けた
この赤ちゃん皇女が、
どのように育つのか
本当に楽しみだと言いましたが・・・
5歳になったリネット・クロイタンは
膨れっ面をして、
仁王立ちをしていました。
ルーとカルロイが
幸せになったことも嬉しいですが
いつも苦虫を
噛みつぶしたような顔をし
恨みと憎しみに
囚われていたティニャが
ルーとカルロイと一緒に
笑えるようになったのが
本当に良かったと思います。
皆に愛され過ぎて、
リネットがわがままな皇女に
なっていなければ良いと思います。