自分時間を楽しく過ごす 再婚承認を要求しますの先読みネタバレ付き

子供の頃からマンガが大好き。マンガを読むことで自分時間を楽しく過ごしています。再婚承認を要求します、ハーレムの男たちを初めとして、マンガのネタバレを書いています。

問題な王子様 92話 ネタバレ 原作 あらすじ ドナイスタは負けるゲームをしない

 

92話 おばあ様はエルナに、ビョルンと一緒に村の祭りへ行って来いと言いましたが・・・

その話を聞いた瞬間、エルナは

祖母が嘘をついたと思いました。

決して、ビョルンは、

そんなことを気にする男では

なかったからでした。

それでも知らないふりをして

一緒に馬車に乗ったのは、

もしかしたらという

期待感のためでした。

もしかしたら今日は

少し違うかもしれないし、

ここはシュべリンとは別世界で、

ここでのビョルンは、いつもより

優しい夫だったからでした。

しかし、それが、

どれほど愚かな思い込みであったかを

知るには、

それほど時間はかかりませんでした。

 

ビョルンは、

村の入り口に立っている

銅像を指差しながら、

1時間後くらいに、ここへ来るようにと

淡々と指示ました。

それを聞いたエルナとリサの眉間が

同時にしわくちゃになりました。

 

エルナは、

一緒にいてくれるのではなかったのかと

尋ねましたが、ビョルンは、

片付けなければならないことがあると

答えました。

エルナは勇気を出して、

一緒に行っても大丈夫だと

申し出ましたが、

ビョルンは軽く笑って、

メイドと遊んでいるようにと

指示しました。

 

そして、時計を確認したビョルンは

エルナに背を向けると、

「また後で」と

優しいけれど、

無関心に感じられる挨拶を残し、

侍従と共に電信局に向かいました。

 

エルナは、その場にぽつんと立って

ビョルンの後ろ姿を見守りました。

エルナは、もう一度

名残惜しそうな様子を見せましたが

彼はただの一度も

振り返りませんでした。

 

バフォードの奇跡は終わった。

エルナは静かなため息をつき、

その事実を受け入れました。

それをよく分かっていながらも、

エルナは、

ぼんやりと立ち止まったまま、

ビョルンが消えていった方向だけを

眺める自分が嫌になる頃、

決然とした表情のリサが

突然、前を塞ぎ、

自分たちで楽しく遊ぼうと

落ち込んでいるエルナの目を直視し、

しっかり力を込めて言いました。

 

リサは、

祭りを見物して

美味しいものをたくさん食べて

思う存分遊ぼうと言いましたが、

あの罪深い王子様のことは

きれいに忘れてと、

どうしても口に出すことが

できませんでした。

リサは、その言葉を

目に、ギュッと詰め込みました。

 

幸い、エルナは頷き、

いつものように明るく笑いました。

銅像の前には誰もいませんでした。

まだ約束の時間になっていないことを

ようやくビョルンは悟りました。

20分。

残りの時間を確認したビョルンは、

賑やかな広場の方に

そっと目を向けました。

それでも、この田舎町では

一番賑やかな所なのか、

かなりの人が集まっていました。

メリーゴーランドに乗る

子供たちの笑い声と、

客を集める露天商たちの雄叫びが、

花の香りが漂う風に乗って

伝わって来ました。

 

しばらく、

物思いに耽っていたビョルンは、

そちらへ向かって歩き出しました。

そして、影のように

後を付いて来る侍従に

1人で行くと、淡々と命じました。

 

侍従は心配しましたが、ビョルンは、

自分のことも分からない人々の中で

何か起きると思うのかと尋ねました。

 

ビョルンの、

あまりにも、あっさりした態度に

侍従は、それ以上、

言葉を加えることができませんでした。

護衛なしに街を歩いても

集まって来る人がいないのを見ると、

確かに、ここの人たちは

王子のことを知らないようでした。

どこへ行っても

群衆が集まる首都とシュベリンでは

想像できないことでした。

 

ビョルンは、

大股で歩いて広場に向かいました。

田舎の祭りには、

あまり興味がないけれど、

このまま帰るのは、

どうも気が進みませんでした。

どういうわけかイライラして

喉が渇きました。

孫娘を委ねたバーデン男爵夫人と

一緒に外出することができて

喜んでいたエルナのことを思い出すと

ずっとそんな気分でした。

 

もしかして、

急いで仕事を終えた理由が

そこにあるかも知れないという

考えがよぎる頃、

ビョルンは祭りの真っ最中の

広場に入りました。

チラチラ見られたものの、

ただそれだけ。

すぐに、その無垢な好奇心は

騒音の中に散らばって行きました。

 

ビョルンは、一層軽い足取りで、

屋台が並ぶ街角に入りました。

アーモンドを炒める釜から、

立ち上ったハチミツと

シナモンの香りが漂って来ました。

 

ジュージューと

ソーセージが焼ける音と

ジョッキを持った男たちの

豪快な笑い声。

空中を漂うシャボン玉の中を

通り過ぎると、

見物人たちが並んだ

小さな舞台が現れました。

バイオリンと

アコーディオンが奏でる、

楽しいポルカの旋律が

響き渡っていました。

 

ゆっくりとその光景を見ていた

ビョルンの視線が、

群れの一番端に立っている

小さな女性の上で止まりました。

エルナ。一目で分かる彼の妻でした。

ビョルンは、静かにそこに近づき、

エルナの後ろに立ちました。

そばにいたメイドが

驚いて頭を下げましたが、

エルナは、ひたすら

公演にだけ没頭していました。

挨拶をしようとするリサに向かって

ビョルンは、

小さく首を横に振って見せました。

察しが悪くないのか、

メイドはびくっとして

唇を閉じました。

そして、ビョルンは、

もう行くようにと、顎でしゃくって

その命令を伝えました。

従順だと思ったメイドは

今さら何をと

知らんぷりをしました。

追う者と追われる者の視線が

激しく行き交う間も、

エルナは音楽に合わせて

踊り始めた人々を見物するのに

余念がありませんでした。

打楽器のリズムに合わせて

首を傾げる度に、

つばの広い帽子を飾った

花やリボンがひらひらと揺れました。

 

その無言の戦いは

結局、メイドの敗北で終わりました。

膨れっ面をしたリサは、

持っていたエルナの日傘を

ビョルンに渡した後、

すぐに人混みの中に

姿を消しました。

 

ビョルンはその場に近づき、

妻を見下ろしました。

ほぼ同時に、エルナは頭を上げ、

「ねえ、リサ・・・」と

話しかけましたが、

興奮していたエルナの顔は

一瞬にして呆然としました。

消えたメイドを探すように

周囲を見回したエルナは、

信じられないような目で

再び彼に向き合いました。

 

子供たちが吹くシャボン玉一つが

次第に熱気を帯びていく

踊り場まで流れて来ました。

それが起こった瞬間、エルナは

まるで5月のお祭りのように

澄んだ声で笑いました。 

奇跡は本当に気まぐれ。

手に取ると、すぐに消え、

諦めかけると、再び訪れて

甘い夢を見させてくれる。

まるでこの男、ビョルンのように。

 

エルナは甘いアーモンドを

頬張りながら、

向かいの席に座っているビョルンを

見ました。

彼はワイングラスを軽く握ったまま

広場を眺めていました。

酒を飲むには

あまりにも早い時間でしたが、

露天カフェに集まった、

すべての男たちがそうしているので

問題視しないことにしました。

 

テントの陰の下でも

煌びやかに輝く

薄い金髪と細く開いた目、

微かな笑みを浮かべた

赤い唇を見ていたエルナは、

少し恥ずかしくなって

視線を下げました。

 

ビョルンが買ってくれた

蜂蜜アーモンドは

いつの間にか底を見せていました。

それがなんとなく残念なエルナは

紙袋の端をくるくる巻いて

封じました。

 

エルナは、

奇跡のようにやって来てくれた

ビョルンと一緒に

五月祭を見物しました。

一緒に歩きながら露店を見物し、

雑談を交わし、

おやつを買って食べました。

ここに集まっている全員が

楽しんでいる平凡なことだけれど

エルナにとっては

非常に特別な瞬間でした。

 

エルナは、

いつも関心のないふりを

していましたが、

実はこの祭りのことが

とても気になっていました。

たまに、こっそり

一度見物に来てみようかという衝動に

駆られましたが、エルナは結局

そうすることができませんでした。

祖父母が

バフォードの五月祭を嫌う理由が

何なのか、

よく知っているためでした。

 

かつて、無邪気な田舎娘が

両親の目を避けて

密かに村の祭りに遊びに来ました。

その好奇心旺盛な娘は、

そこである青年に出会いました。

近隣の小都市の親戚の家を

訪ねて来た子爵家の後継者でした。

彼は、その田舎娘に一目惚れし、

熱心に求愛しました。

両親はその青年を

快く思わなかったけれど、

結局結婚を許しました。

娘のお腹の中で、

すでに彼の子供が

育っていたからでした。

 

もしも、その年の春、母親が、

このお祭りを訪れなかったら

どうなっただろうか。

 

思わず思い浮かんだ思いで

エルナの胸がひりひりと痛くなる頃

ビョルンが軽く手を上げて

ウェイターを呼びました。

 

徐々に賑わいを見せ始めた

広場を見渡したビョルンが

どうしたのかと尋ねると、

空のグラスを満たしに来た

中年のウェイターは、くすくす笑い、

外から来た人は、

知らないかもしれないけれど、

まもなく「バフォードの男」を決める

レースが開かれる。

バフォードの春祭りの

花形とも言えるイベントだと

答えました。

 

「バフォードの男?」と

ビョルンが聞き返すと、

ウェイターは、

妻を背負って走る競技で、

とても大きな賞品がかけられている。

そして、

バフォードの最高の男という名誉も

一緒に与えられると、

真剣な表情で説明しました。

それから、彼は誇らしげな表情で

ビョルンの空のグラスを

満たしてくれました。

 

最高の男・・・

その言葉を繰り返すビョルンの目が

徐々に細くなっていきました。

 

ビョルンは、妻さえいれば

誰でも参加できるということかと

尋ねました。

広場とエルナを交互に見つめる

ビョルンの目の色が変わりました。

ウェイターは、

背負って走る奥さんさえいれば

誰でも参加できると

豪快に答えると、ウェイターの視線も

エルナに向けられました。

 

おとなしく座って

お茶を飲んでいたエルナは

眉をしかめて「嫌です」と言うと

ティーカップを投げるように置いて

首を振りましたが、その間に、

ビョルンは席から立ち上がりました。

 

エルナは、

品位を保ちさないと

きっぱり言いましたが、

ビョルンは笑いながら

さりげなく近づいて来ました。

その笑顔は、人の話を

耳の端でも聞く気がない時にする

美しい悪魔の微笑でした。

自分は嫌だとはっきり言ったと

頑なに拒否する妻の手を握りながら

ビョルンは、さらに甘い笑みを浮かべ

「行きましょう、奥さん」と

誘いました。

スタートラインに立った

ビョルンとエルナを

チラッと見た男が、

いくらなんでも、これはないと

真顔で声を荒げました。 

 

自分の奥さんの

半分しかないような奥さんに、

あの若者は、あんなに大きくて

がっしりしている。

これでは優勝者が決まっているも

同然の試合ではないか。

これは不公平だと、

別の男性も抗議しました。

 

のんびりと彼らを一瞥したビョルンは

まあ、人生はそういうものだと

平然とした態度で言い返しました。

他の参加者の不満に油を注いだ

発言でした。

 

自分の妻も

若い時は羽のようだったとか、

若い頃に、一度でいいから

人生を美しく生きてみろと

あちこちから、

激しい抗議が殺到し始めると、

レースの司会者が、

困った顔で近づいて来ました。

 

このままでは困ると、

外から来た若い夫婦を丹念に観察した

司会者の目つきが厳しくなりました。

彼はスタートラインから、

優に10歩は後ろに下がった所を指差し、

若者は、

あそこからスタートするようにと

指示しました。

 

ビョルンは、

眉間をしわだらけにすることで

不満な様子を見せましたが、

ライバルたちは

待っていたかのように

歓声を上げました。

仕方がないというように

頷いたビョルンは、

エルナを連れて、

自分たちのスタートラインに

移りました。

思う存分、

彼らをよそ者扱いをした男たちは

ようやく満足した様子でした。

目つきが悲壮になった参加者たちが

一人二人と妻を持ち上げ始めると、

騒いでいた広場が

静かになり始めました。

 

妻を荷物のように

肩に担いだ男たちを見ていたエルナは

驚愕した顔でビョルンを見つめ、

このまま行ってしまおうと

頼みました。

ビョルンは、

「今になって?」と聞きながら、

ニヤニヤ笑い、

ジャケットを脱ぎました。

カフスボタンを外して

ベストのポケットに入れて

袖をまくり上げる動作には、

もはや、軽い遊び心は

残っていませんでした。

 

エルナは、

一体、どうしたのか。

王室の品位を

守らなければならないと、

抗議しましたが、

ビョルンは、

いいではないか。

どうせ、自分が誰なのか

分かる人もいない。

そして、最高の男という名誉と共に

とても大きな賞品を

もらえるらしいと言って、

いたずらっぽくクスクス笑いました。

 

そして、エルナの帽子を脱がし、

しっかり握りしめている

レースの日傘も奪うと、

ジャケットと帽子の横に置きました。

 

エルナは、

自分はできないと抵抗しましたが

ビョルンは、

自分がやるので、

奥さんはじっとしているようにと

言い聞かせました。

その言葉にエルナは驚愕し、

まさか自分を、

あのように背負うという意味かと

尋ねると、ビョルンは答える代わりに

まるで小麦粉の袋のように、

瞬く間にエルナを

自分の肩に担ぎました。

エルナの大きな悲鳴が、

見物人たちの笑い声と

入り混じりました。

 

ビョルンはエルナに、

ドナイスタは負けるゲームをしないと

告げると、無意味にもがく妻を担いで

不利なスタートラインに立ちました。

ゴールを見つめる眼差しには、

真剣な勝負欲が漂い始めました。

 

「だから奥さんも協力してくださいね」

と、ビョルンが言い終わるや否や、

スタートの銃声が鳴り響きました。

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なぜ、エルナの母親が

ウォルター・ハルディみたいな男と

結婚したのか不思議だったのですが、

その卑劣な男は、

世間知らずで純朴な田舎娘を

たぶらかしたのですね。

その話を祖父母がエルナに

話すわけがないので、

前話で出て来た、お喋り屋さんが

エルナに話したのでしょう。

 

バーデン家にとって

辛い思い出のあるお祭りに

おばあ様が

ビョルンと一緒に行くよう勧めたのは

祖父母のために

お祭りに行きたくても行けなかった

エルナの気持ちを

理解してくれていたのだと思いました。

おばあ様の深い愛情を感じました。

 

ビョルンは、百貨店に行った時のように

エルナを見捨てたのかと思いましたが、

良心の呵責を感じ、

エルナの元へ来てくれて良かったです。

ビョルンと一緒に行動できることが

嬉しくてたまらないエルナが

本当に可愛いと思います。

 

たとえ田舎であっても

最高を目指すビョルンに笑えました。

もしかして、ビョルンは

村の人々が自分を認識しないことを

煩わしくなくていいと思っている一方、

自分が一番でないことが

気に入らなかったのかも。

どこにいても、

最高の男を目指すビョルンは

根っからの王なのだと思いました。

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