398話 ゲスターはカルレインに、そのままザイシンを帰らせてもいいのかと聞きましたが・・・
◇コンセプト◇
カルレインは、
隠れて見ているだけのゲスターよりは
役に立つと言いました。
ゲスターは
隠れていたわけではない。
アニャドミスは
自分の顔を知らないのに、
自分が狐の巣窟を使ったら
正体を見破られてしまうので
ここにいたと言い訳しました。
カルレインは、
やはり、ゲスターは
隠れていたのではないかと
指摘しました。
そして、折れた手首を触りながら
ゲスターをちらりと見て、
それとも、自分が連れて行かれるのを
待っていたのかと尋ねました。
しかし、ゲスターは、
その質問を無視して、カルレインに
顔を洗うように言いました。
カルレインは、
ゲスターの話し方も気に入らない。
仮面を被っている時は
普通に話すのに、なぜ仮面を脱ぐと、
そんなに、おどおど話すのかと
尋ねました。
ゲスターは、
コンセプトだからと答えると、
なぜ、そんな当たり前のことを
聞くのかというように、
口元を手で隠して
照れくさそうに笑ったので、
カルレインは怒って
唇をぎゅっと閉じました。
ゲスターはその姿を見つめ、
再び仮面を被ると、
にっこり笑って姿を消しました。
◇商人タッシール◇
ラティルとの話が終わり、
ハーレムに戻る途中、
ラナムンは、
タッシールは、自分が皇配になるのを
手伝うことになったのだから
気をつけろと、
あからさまに警告しました。
訳が分からないメラディムは、
いつ、そんなことを言ったのかと
割り込んで来ましたが、
ラナムンは、彼を無視して
タッシールだけを見ました。
彼はにっこり笑いながら、
どうやって気をつけろというのかと
尋ねました。
ラナムンは、
皇帝と一緒に寝るのを避けろと
断固たる態度で答えました。
その言葉に、
タッシールは驚いたふりをして、
自分が皇帝と一緒に寝るのと
ラナムンが皇配になるのは
何の関係もないと主張すると、
ラナムンは、
最初の子供の父親が
皇配になる確率が一番高いことを
知らないわけがないはずだと
皮肉を言いました。
けれども、タッシールは
ラナムンが
皇配になったからといって、
自分が側室から
退くわけではないのに、
なぜ皇帝と一緒に寝るのを
避けなければならないのか、
相変らず意味が分からないと、
ニコニコ笑いながら言うと、
ラナムンは、さらに何か
言おうとしましたが
隣でメラディムが、
歌を歌っているので
眉を顰めました。
メラディムは、
自分は側室になると呟き、
手を見つめながら、
ラナムンが
聞き取れない歌を口ずさむのが、
とても気になりました。
ラナムンが軽蔑するように
メラディムを眺めると、
遅ればせながら、
その視線に気づいた彼は
にっこり笑いながら、
自分たち人魚は歌とダンスが好きだと
言いました。
ラナムンは、
好きなのは構わないけれど、
廊下では歌わないでほしい、
特に自分と並んで歩いている時はと
忠告しました。
メラディムは、
ラナムンの心には
ビートが足りないので、
自分のリズムを
少し分けてあげようかと
残念そうに聞くと、ラナムンは
風を切る音がするほど
彼の横を通り過ぎながら、
足りないところで暮らすと
答えました。
メラディムは、
その後ろ姿をぼんやり見ていると、
タッシールは、
あまり傷つかなくてもいい。
ラナムンは
音楽もダンスも下手なので
嫉妬していると、耳元で囁きました。
ラナムンの冷たい態度に
少し心を痛めたメラディムは、
すぐに気分が良くなり、
タッシールを優しい目で見ると、
彼は、とても良いことを話すと、
言いました。
タッシールは、
これから仲よくしようと言って、
さりげなくメラディムと腕を組み
笑うと、彼は最初、
少し驚きましたが、
すぐに自然に笑いながら、
タッシールのはめている指輪の中で
どれが、誓約式の時の指輪なのか
尋ねました。
タッシールはメラディムに、
前もって準備するつもりかと
尋ねると、彼は、
いいものにしたいと答えました。
タッシールは、
お金をたくさん持っているかと
尋ねました。
メラディムは、
きょとんとしていましたが、
笑いながら親指を立てました。
タッシールは、
自分たちの商団でも
高級品をいくつか扱っているけれど
人魚の王様は
自分の兄弟のようなものだから、
その中でも最高に良いものを
いくつか見せると、
さらに親しみを込めて話しました。
自分たちは兄弟なのかと
尋ねるメラディムに、
タッシールは、
もちろんだと答えました。
ラナムンは、
後ろから聞こえてくる声を聞いて
首を横に振りました。
ラナムンは、
タッシールを警戒しなければならない。
あの舌で、
どこまで皇帝を牛耳るか分からない。
実際に皇帝が、何人かの側室を呼ぶ時、
タッシールは、よく割り込んでくる。
排斥されるのは、
いつもクラインと大神官と自分。
自分もうまくやらなければならないと
決意しました。
◇ザイシンの苦悩◇
その時刻。
自分の部屋に戻ってきたザイシンは、
顔を洗うことも考えられず、
ぼんやりとソファに座って
つま先だけを見つめていました。
あの時、カルレインの部屋の方から
暗くて怪しいオーラを感じ、
そちらに駆けつけ、
許可も得ずに扉を開けると、
ある女性が、カルレインを
拉致しようとしていました。
最初、これは何事かと思いましたが、
その女性は筋肉が多くないのに、
力が強過ぎて、
彼女が手を振ると石の壁が割れ、
その上、彼女は
自分の胸も勝手に触ったので、
本当に悪い女に違いありませんでした。
カルレインが、
神聖力を使えと叫んだので、
彼女は人間ではないはず。
彼女の正体は何なのか。
なぜ、カルレインを
連れて行こうとしたのか。
カルレインは吸血鬼なのに、
なぜ、あんなに
手も足も出なかったのか。
カルレインが吸血鬼だと知って
驚いた心は、それを考えると、
すぐに収まりました。
カルレインは吸血鬼でも、
少し弱そうに見えた。
あの人間ではない女性の
相手にならなかったし、
自分は害を及ぼさないという
カルレインの主張は事実。
彼は吸血鬼の中でも
弱い吸血鬼であることは
明らかだと思い、
ため息をつきました。
吸血鬼たちの中に溶け込めない
弱い吸血鬼であるカルレインを
人ではないという理由で
追い出すのは正しいことなのか。
彼が言ったように、
カルレインは、
お金も正当に稼いでいるし、
いつもラティルのために
走り回っていた。
偽皇帝事件の時もそうだったと
考えていた時、
どこからか、化粧を落とす化粧品を
手に入れて来たクーベルが、
百花が戻って来たことを
教えてくれました。
百花と聞いて、ザイシンは
さらにカルレインのことが
気になってたまりませんでした。
自分は、
カルレインが弱いことを
知っているので、
彼を受け入れることができても、
百花は闇の存在を
とても嫌っていました。
彼が話しているのを聞くと、
彼は、闇の存在を、
敵だと思っているような感じを
受けました。
500年前の人ならともかく、
今の人たちは、闇の存在を
伝説としてしか
聞いていないはずなのに、
百花はひときわ
恐れ慄いていました。
そんな百花が、果たして
カルレインが吸血鬼だということを
受け入れるのだろうか。
人魚を受け入れたのは、
元々、童話のようなイメージを
抱いていたからではないかと
考えているうちに、
百花が中へ入って来ましたが、
ザイシンを見るや否や
「うっ」とうめき声を上げました。
そして、なぜ顔に
油を塗ったのたかと尋ねました。
クーベルは唇をかみしめて、
目を伏せました。
ザイシンは、油ではなく、
化粧だと答えましたが、
百花は優しく笑いながら、
油のようだと指摘したので、
ザイシンは衝撃を受けました。
百花は、
遠い道のりを行ってきて大変だった。
最近の聖騎士たちは、
体力がなさすぎる。
早く帰って来たかったけれど、
祭りのせいで道が混んでいたと
しきりに愚痴をこぼした後、
突然、カルレインは無事かと
尋ねました。
ザイシンは思わずビクッとしましたが
もちろんだと、
平気なふりをして答えました。
百花は妙な顔で
分かったと返事をすると、
外へ出て行きました。
ザイシンは、
訳もなくドキドキする心臓を
押さえながら、
なぜ、百花は
急にカルレインのことを聞いたのか。
もしかして百花は、
もうカルレインのことが怪しいと
感じているのかと思いました。
◇アニャドミスが怖い◇
ラティルは
心身ともに健康でしたが、
対外的なイメージのために
2日間寝室に閉じこもって
ゆっくり休みました。
サーナット卿から
ゲスターが帰ってきたという話も
聞きましたが、すぐに彼を呼ばず、
3日目になって、ようやく彼を呼び
一緒に朝食を取ることになりました。
ラティルは、
ゲスターが自分の顔色を窺いながら
子供の話をするのを聞いて
気まずい雰囲気に耐えられず、
出かけていた間はどうだったか。
いつもそばにいたのに
急にいなくなったから、
とても心配していたと話すと、
ゲスターは顔を赤くして、
自分のことが心配だったのかと
尋ねました。
ラティルは、
もちろん、心配だった。
2人が同時に出かけて
帰って来なかったし、
ギルゴールも、今、
どこにいるのか分からないからと
答えました。
ゲスターは、ギルゴールには
全く興味がないので、
その言葉は自然に聞き流し、
かなり良い成果があった。
いくつかの皇帝に役立つ情報を得たと
話しました。
ラティルは、
アニャドミスに会ってみて
どうだったかと尋ねました。
ラティルがドミスの夢で見た
義妹のアニャは、
貴族として育ち、自尊心が強く
少し傲慢な人でした。
しかし、同じくらい傲慢な
貴族の青年たちは、
今の時代にも多いので、
義妹のアニャが
特別なわけではありませんでした。
その、義妹のアニャは
あんなに嫌がっていたドミスと
取り引きをして、
今は彼女の身体を乗っ取っていました。
ラティルは、
アニャドミスは、
カリセンの宮殿へ行って、
アイニを窓の外に
投げ捨てたようだけれど、
以前は、そんなことを
しなかったのではないかと
尋ねました。
ゲスターは、
しばらく天井を見つめた後、
500年も経てば性格が変わるのも
無理はない。
今は、少し自分の欲望に
素直になったような気がすると
答えた後、アニャドミスが、
ある瞬間突然倒れることと、
アニャドミスもアニャも、
その原因が分からないことを
話しました。
ラティルは好奇心が湧いて来ました。
力で優位を占めているアニャドミスに、
そんな致命的な弱点があるのは
良い事だと思いました。
ゲスターは、
そのために、アニャドミスが
外での活動を自制していることと、
ドミスと対抗者のアニャが
盟約を結んだ時に、
百花が仲立ちをしたこと、
そして、彼が
アニャドミスを訪ねてきたことを
話しました。
ラティルは驚き、
百花はアニャドミスと
手を握ろうとしているのかと
尋ねました。
ゲスターは、それを否定し、
百花は、アニャドミスが
ただのドミスだと思っている。
そして、アニャドミスが目覚めたのは
盟約を破ったからだと思っていて、
そのせいで2人の仲が悪くなったと
答えました。
ラティルは、
百花とアニャドミスの仲が
悪くなったら、
こちらがそれを利用することは
できないだろうかと考えました。
続けてゲスターは、
百花はアニャドミスを
再び封印させたがっていると
話すと、ラティルは
さらに驚きました。
ラティルは、
それは可能なのかと尋ねると、
ゲスターは、
最も純粋な魂が必要だけれど、
百花は500年間生きているうちに
汚れたらしいと答えました。
ラティルは、
それでは、再び封印することは
不可能なのではないかと
尋ねました。
ゲスターは、
アニャドミスは
不可能だと言ったけれど、百花は
別の純粋な魂を見つけたら
封印できると言っていたと
答えました。
ラティルは、
「純粋な魂」という言葉に
呆然としていると、ゲスターは
アニャドミスは、
姿を見えなくする能力が
あるようだったので、
気をつけなければならないと
話しました。
ゲスターが、
たくさん良い情報を話してくれたので
ラティルは感動して
彼を見つめました。
この時ほどゲスターを
信頼に値すると思ったことは
ありませんでした。
ラティルはゲスターに
何か欲しいものはあるかと
尋ねました。
ゲスターは、
ラティルの言葉が意外だったのか
彼女の顔色を窺っていましたが、
彼は、アニャドミスが怖くて
ずっと悪夢を見ていた。
ラティルがそばにいてくれれば
大丈夫だと、
躊躇いながら話しました。
ザイシンは皮脂の分泌量が
多そうなので、
化粧をしてから時間が経つうちに
顔がキラキラではなく、
テカテカになってしまったのですね。
百花にけなされたのは
可哀そうでしたが、
何とかカルレインを受け入れようと
真摯に考えている姿は
とても素敵だと思います。
同じ側室として
一緒に過ごしている間に、
カルレインの人柄が
分かって来ているので、
吸血鬼だからと言って、
直ちに悪だと考え、排斥するのは
いけないと思っているのでしょう。
ゲスターは相変わらず下衆ター。
悪夢を見るほど、
本当にアニャドミスが怖かったら
彼女のそばにも行けなかったはず。
けれども、
ゲスター本人が言っていたように
狐の仮面のあるなしで、
コンセプトが違うなら、
狐の仮面を被っていたゲスターは
怖いもの知らずだけれど、
狐の仮面を外すと、
怖がりになるというのを、
言い訳として
使えなくはないかもしれません。
かなり無理があるとは思いますが
ラティルなら、あっさり
信じそうです。