36話 友也と麗奈がやって来たのは記者会見の場でした。
話をしようと言っただけなのに
いきなり、
記者会見をすることになり、
ぷるぷる震える麗奈。
自分たちだけで
話をしようとは言っていないと
美紗。
麗奈は、美紗の態度を見て
今日こそ、彼女を破滅させると
決意しました。
記者から矢継ぎ早に質問が
飛んできました。
記者が、婚約中の部下との
スキャンダルについて
尋ねると、美紗は、
過去に平野友也と
婚約していたけれど
破談にしたのは、鈴木亘のせいでも
お金のせいでもない。
朝昼晩に
必ず新しいご飯を炊きながら、
働きに出て、お金を稼ぎ、
平野家を守るために、
跡継ぎの男の子を産むことを強要され
実の父を弔うことさえ
許してもらえなかったらだと
答えました。
それを聞いた友也は、
大袈裟に言うな。
当たり前のことだ。
それならば、別れてすぐに
部長の隣の部屋に引っ越したことを
どう説明するんだと反論しました。
すると、そこへ
誰も呼んでいないのに、
なぜか未来が登場して、
賃貸契約書を見せながら、
あの部屋は
自分が美紗に紹介した。
家賃も共益費も美紗が払っている。
鈴木亘は1円も払っていない。
自分が急いで部屋を紹介したのは
美紗が友也に
ストーキングされていたからだ。
2人の関係は終わったのに、
隠し撮りまでされた。
プライバシーを侵害していると
証言しました。
友也は、
でたらめを言うな、ふざけるなと
未来を非難し、彼女の耳元で
契約を延長したくないのかと
脅しました。
しかし、未来は友也に
退職金の計算をしたらどうか。
こんな大問題を起こしておいて
まだ会社に居座るつもりかと
言い返しました。
麗奈は、自分だけでも、
うまく逃げようと思い
泣きながら、
なぜ、自分の赤ちゃんを
流産させたのかと美紗に尋ねました。
麗奈がその話を
持ち出して来ると思っていた美紗は、
麗奈を流産させた覚えはないと
答えました。
麗奈は、知らんぷりするのか。
せめて、自分と友也と
死んだ赤ちゃんに謝れと
訴えました。
しかし、美紗は
麗奈が本当に妊娠していたのか
疑っていました。
それを確認するために美紗は、
友也に、
麗奈と一緒に産婦人科へ行ったか。
超音波写真を見たか。
母子手帳を見たかと尋ねました。
麗奈は、病院へは1人で行ったし、
自分が友也に見せなかった。
子供が死んだショックで、
全部焼いてしまったと
主張しました。
美紗は、
麗奈が1人で行ったという
病院の名前を聞き出し、
記者に、その電話番号を聞くと、
そこへ電話をかけ、
麗奈の名前で
産婦人科の再診の予約を
お願いしましたが、
病院からは、
麗奈の受信記録はないという
返事が返ってきました。
記者たちから、
あの告発文の内容は嘘だったのか。
デタラメの文章を
ネットにあげた目的は何か。
法的な責任はどうするつもりなのかと
非難の声が上がりました。
なぜ、自分を責めるのか。
全て美紗のせいだと思った麗奈は
「うるさい!」と叫ぶと
友也にしがみついて、
何とかしてくれと助けを求めました。
しかし、友也は怒りに満ちた顔で
麗奈を払い退け、
妊娠もしていなかったのに
流産したと言った麗奈の顔を
見たくないし、
彼女のせいで、
自分の人生はめちゃくちゃだと
責めました。
そして、一人で出て行きましたが
麗奈はその後を追いかけました。
その後、部長は
U&Kは、この件と一切関係なく、
それぞれの件に関しては、
法的措置と懲戒処分をする予定だと
話しました。
記者から、
美紗と部長は、
本当に何の関係もないのかと
質問された部長は、
それを肯定しようとしましたが、
美紗は、
最近になり自分たちは
互いに行為を抱くようになったと
話しました。
それは、恋人同士ということかと
記者から質問されると、
美紗は、部長が同意するならと
答えました。
彼は、美紗の手を握り、
彼女に感謝の言葉を述べました。
部長の部屋で、
お酒を飲みながら、
美紗は部長にねぎらいの言葉を
かけました。
部長ではなく、
別の呼び方をして欲しいと頼む部長。
ダーリン?わたるん?と聞く美紗。
言われる度に、
矢が突き刺さるように
心臓がズキンとする部長。
彼は、顔を赤くして、
普通に名前で呼んで欲しいと
言いました。
テーブルの上の料理は、
亘が作ったものでした。
美紗は、
毎日食べたいくらいだと褒めると、
彼は、これ以外にも
得意料理はあるし、
片付けもきちんとする。
掃除と洗い物は基本だから、
美紗は、手が荒れるようなことは
絶対しないで、
くつろいでいて欲しいと言って
美紗の手を取りました。
今の美紗の手は、
なめらかで柔らかいけれど、
前の人生では、
骨ばってガサガサだったことを
彼女は思い出しました。
美紗は、恥ずかしがりながら
明日、どんな顔をして
会社に行けばいいのかと
尋ねました。
亘は、
自分が会社を辞める。
祖父の意向で入社したけれど、
元々、辞める予定で、
U&Kを継ぐつもりはない。
自分で作った
警備会社のJNを経営している。
前田もJNの社員で、
企業の警護を請け負いながら、
会社の規模も大きくなったので、
これからは、自分の事業に
集中するつもりだと話しました。
美紗は、
大企業で部長をしながら、
企業までするなんて、
本当にすごい人だ。
そして10年前のように
会社も辞めるのだと思いました。
亘は、美紗に
会社で会えなくなるのが
寂しいのかと尋ねました。
美紗は「はい」と答え
自分のいない所で、
他の女性が亘に迫ったら
どうするのかと尋ねました。
すると渉は、
美紗にキスをして、
自分はもう美紗のものだから、
誰が迫って来ても無駄だと
答えました。
事あるごとに、
酒に酔って暴力をふるう夫も、
苦痛を与えた癌も存在しない。
父親が自分と亘を結び付けてくれた。
彼と結ばれるために生まれ変わった。
これからは、
幸せだけが待っているはずだと、
美紗は思いました。
その美紗へ、住吉が
泣きながら電話をかけてきましたが
美紗は気付きませんでした。
麗奈が嘘の投稿をしたことで、
一時、美紗に
打撃を与えることはできたけれども
浅はかな行動のツケは、
衆目の場で、自分の顔をさらし、
嘘が暴かれるという形で
回ってきました。
麗奈が、こんなことをしなければ
妊娠して、すぐに流産したと言う
嘘もばれなかったのに、
自分で墓穴を掘ってしまいました。
これで、また美紗を
逆恨みするかもしれませんが、
自分で蒔いた種は
自分が刈り取ることを、
麗奈は学ぶべきだと思います。
それに気づけば、
彼女の人生も
変わっていくと思います。