自分時間を楽しく過ごす 再婚承認を要求しますの先読みネタバレ付き

子供の頃からマンガが大好き。マンガを読むことで自分時間を楽しく過ごしています。再婚承認を要求します、ハーレムの男たちを初めとして、マンガのネタバレを書いています。

問題な王子様 ネタバレ 原作 81話 あらすじ 自分の子供を産む女性

 

81話 もうすぐ父親になるという、あの日と同じお祝いの言葉をビョルンは聞きましたが・・・

 

エルナは漠然とした気持ちで

虚空を見つめました。

人の好さそうな笑みを浮かべた

主治医のエリクソン医師は

あまり気にしなくていいと

慰めの言葉をかけました。

状況が状況であるだけに、

彼もやはり

困っているだろうけれど、

そんなそぶりをしないよう

努めている様子でした。

主治医と並んで立っている

フィツ夫人も同様でした。

 

こっそりと

後ずさりしていたリサは、

いつの間にか

寝室の外へ出てしまったのか、

もう姿が見えませんでした。

自分のこのような姿を見る人が

一人でも減ったという事実に

エルナは、ほっとしました。 

 

主治医は、

偶然ではあるけれど、大公妃の体に

大きな異常がなかったということで

本当に幸いだと言うと、

フィツ夫人に同意を求めました。

彼女も、主治医の機嫌を窺いながら、

もちろん、当然だと返事をしました。

 

どうにかしてエルナを慰めようとする

2人の気持ちが感じられ、

エルナも、ぎこちなく微笑みました。

 

よりによって、

妊娠したかもしれないと

主治医を呼んだ日に、

予定より数週間も遅れていた

月経が始まりました。

エルナがそれに気づいたのは

エリクソン医師が、

すでにこの部屋に入った後でした、

どうしても

不吉な予感がしたエルナは

診察をしばらく中断し、

浴室に行ったところ、

信じたくない恥ずかしい現実に

直面しました。

煙のように消えてしまいたい

気持ちでしたが、

結局、エルナは

自分の口で、この状況を説明し、

理解を求める屈辱を

甘受しなければなりませんでした。

 

ようやく顔を上げたエルナに、

主治医は、

結婚してまだ半年だし、

二人共、若いので、

焦る必要は全くないと

アドバイスをしました。

エルナは「はい」と返事をすると

布団の襟をつかみました。

病人ではないのに、病人として

ベッドに横になった自分が、

あまりにも滑稽で情けなくて、

むしろ泣きたい気分でした。

 

しかし、主治医は、

胃けいれんが

習慣的に繰り返されている上、

症状がひどくなったことを

とても心配しました。

彼は、前より強い薬を

処方するけれど、

いくら良い薬を使っても

神経が敏感になると

なかなか治らない病気なので、

気持ちを楽にするようにと

アドバイスしました。

エルナは、か細い声で

「はい」と答えて頷きました。

 

妊娠ではないことが

明らかになりましたが、

つわりと勘違いするほど

嘔吐の症状がひどくなっていたため

エリクソン医師は、

当然のごとく、

エルナを診察したのでした。

確かに、彼は立派な医者でしたが、

エルナは、今日は、

その真面目すぎるところを

恨めしく思いました。

 

いくつかの注意事項を伝えた主治医が

診療カバンを片付け始めると、

エルナは初めて

安堵のため息をつきました。

しかし、ノックもなしに

突然扉が開き、

二度と顔を見られないと思えと

大口をたたいた夫が

部屋の中に入って来て、

エルナが横たわっている

ベッドのそばに立ちました。

 

扉を開けたその瞬間から今まで、

ビョルンの視線は、

ただエルナにだけ、

向けられていました。

エルナは途方に暮れて

彼と向き合いました。

その冷徹な表情と

まなざしのどこにも、

自分と神経戦を繰り広げて来た

幼稚な夫の痕跡は

残っていませんでした。

 

彼はエルナに

妊娠したのかと尋ねました。

エルナは息が詰まるような気持ちに

捉われたまま、

ぼんやりとした目を瞬かせました。

ゆっくり瞬きする度に、

意識も明滅する気分でした。

いっそのこと、

このまま意識を失うことが

できたらいいのにと思い、

プロポーズされて気絶した瞬間を

思い起こそうとしましたが

思い通りにいかず、

さらに絶望感だけが深まりました。

 

ビョルンは、

困っている主治医とフィツ夫人に

視線を移し、どういうことなのか

説明するよう命令しました。

 

エリクソン医師が口を開くと、

エルナは両手を上げて顔を覆い、

この夫が嫌だ、 本当に嫌だと

心の中で嘆くと、

死んだように横になって

天井だけを見つめました。

青白い顔色と白い服、

胸の下にきちんと

重ね合わせた手まで、

このまま棺桶の中に横たわり、

安らかに眠っても、

おかしくない様子の妻を、

ビョルンは、椅子に深く腰掛けて

鑑賞しました。

 

エルナは何気ないふりをし、

意地を張って、

彼に背を向けていましたが、

焦った目つきと、

もぞもぞする手先まで

隠すことはできませんでした。

 

目をぎゅっと閉じたり開けたりを

繰り返していたエルナは

ビョルンに、

どうして帰らずに、そこにいるのかと

恨みがましい質問をして

沈黙を破りました。

 

エルナは、もう余裕ができたのか、

睨みつけるような目で

ビョルンを見ていましたが、

ぐったりしているよりは

ずっとましな姿でした。

 

エルナをじっと見つめていた

ビョルンは、

エルナが恥ずかしがっているからだと

答えると、

片方の口元をさっと上げて笑いました。

 

「何てことなの!」と

震える声で呟いたエルナは、

急いで置き上がって座りました。

ぼさぼさの髪に、

しわくちゃのパジャマ。

あまり見栄えは良くないだろうけれど

こんな男に、

きれいに見せたい気持ちなど

少しもないので、

どうでもよいと思いました。

 

エルナは、

本当にひどい。

こんな自分を見たら、

胸がすっきりするかと尋ねました。

ビョルンは「まだ」と答えた後、

もう少し恥ずかしがってみてと

エルナに要求しました。

その言葉にエルナが抗議すると、

ビョルンは、

エルナが赤くなって、あたふたして

足をバタバタさせるのが

上手だからと、からかいました。

 

エルナは、

少しも恥ずかしくないと主張すると

覚悟を決めたように

首をまっすぐに上げました。

そして、いつの間にか

手にも力を入れながら、

自分のせいではない。

エリクソン医師を呼ぼうと言ったのは

フィツ夫人で、

誤った噂を広めたのはリサだと

言い訳をすると、ビョルンは、

他人のせいにするのかと尋ねました。

 

エルナは、

そんな意味ではないと

怒りながら叫ぶと、

ビョルンは笑いを爆発させました。

大恥をかいた妻の心情がどうであれ

彼は、ただ、この騒動を

面白がっているようでした、

 

涙が溢れたまま、

夫を睨んでいたエルナも、ある瞬間、

ニヤリと笑ってしまいました。

胃は痛いし、

下腹部はズキズキするし、

この件をどうしようかと思うと、

依然として目の前が真っ暗でしたが

ふと、この全てが

良くなったように感じられました。

それは、おそらく

ビョルンのせいでした。

 

主治医とフィッツ夫人に

事の顛末を聞いたビョルンは、

「なるほど」と言いました。

その、全く大したことではないという

態度に当惑したのは、

むしろエルナでした。

そして、ビョルンは

「お疲れ様でした」と短い挨拶で

事態を収束させました。

 

ビョルンが笑うのを止めると、

再び静寂が訪れました。

しかし、

先程のように、ぎこちなさがなく

穏やかな沈黙でした。

 

サイドテーブルに置かれた

ランプを灯したビョルンは、

再び椅子に戻って座ると、

エルナに横になるよう勧めました。

エルナは、病人ではないので

大丈夫だと断りましたが、

痛むのではないかと

心配するビョルンの顔に、

温かい笑みが浮かんでいました。

しかし、

妊娠ではないけれど、

意地悪にからかう言葉は

温かくありませんでした。

 

熱っぽい頬をこすったエルナは、

再びベッドに横になって

布団を引き上げました。

天井を見ていた視線は、

まもなく、

そっとビョルンに向けられました。

目が合っても、

全く驚かない彼が憎らしいけれど

視線を逸らしませんでした。

 

実際に一緒にいると

こうやって震えたり緊張する

不愉快な男なのに、

なぜか苦境に立たされると、

つい、彼を思い出してしまうことを

エルナは変だと思いました。

 

エルナを一番恥ずかしくさせたり

悲しませたりする人は

ビョルンでしたが、

それでも、先程、彼が来てくれて

良かったし、安心しました。

 

エルナは、穏やかな声で、

騒ぎを起こしたことを

ビョルンに謝りました。

 

この部屋に入ってくる

ビョルンに向き合った瞬間、

エルナは、

あの男と自分は夫婦であることに

気づきました。

自分たちは結婚し、

いつか子供が産まれ、親となり、

一緒にその子供を育てていく。

彼の手を握るということは

こんなに大きな意味を

持つことなのだと思いました。

 

そう思った瞬間の、

数多の感情と考えを思い出すと、

エルナは、これ以上無意味な争いを

続けたくありませんでした。

 

ビョルンは、

エルナのせいではないと

返事をすると、

にこっと微笑みました。

一見軽そうに見えても、

習慣的にしている笑いとは

明らかに違っていました。

 

エルナは、

ビョルンが間違った噂を聞いた時、

ビョルンがどう思ったか、

気になると言いました。

 

物思いに耽ったビョルンの目が

細くなりました。

侍従からエルナの妊娠の知らせを聞き

この部屋の扉を開けた瞬間までの記憶は

意図的に消してしまったかのように

空白のままでした。

その代わりに4年前の

あの日の記憶が

その場に取って代わりました。

 

庭から吹いてきた熱い風から

滲み出て来たような嫌な草の匂い。

喉を締め付けている

ネクタイの結び目。

奇妙に歪んだ物体の影。

それでも完璧に作って見せた

最初の子供を持つ父親の

微笑のようなもの。

 

エルナの部屋の扉を開ける前に、

ビョルンは、

しばらくドアノブを握りしめたまま

その場に立ち止まりました。

決して、あの日と

同じではないということを

分かっているけれど、

あの日の記憶に囚われている

自分に対して苛立ち、

冷ややかに自嘲しました。

 

ビョルンは、その混乱を全て

きれいに消し去って初めて

扉を開けました。

鈍い妻と、

以前はなかった老婆心を

発揮したフィツ夫人。

それに口が軽くて、

おっちょこちょいなメイドが

共同で作り出した騒乱という

事実を知った瞬間の虚しさは

それゆえ一層大きかったけれど

別に腹を立てるようなことでは

ありませんでした。

 

フィツ夫人と主治医から聞いた言葉は

一様に荒唐無稽でおかしかったし、

耳まで真っ赤になったエルナが

可愛いと思いました。

 

ただ、ビョルンは、

「おめでとうございます。

もうすぐ父親になります」

という言葉を思い返した時、

これ以上、あの蒸し暑い夏の日を

呼び起こすことは

ありませんでした。

ただ恥ずかしくて涙ぐんでいた

エルナと、けだるい日差し、

その風景の中に染み込んだ

自分の笑い声だけが

柔らかな春風のように

漂うだけでした。

そして、いつかまたその言葉を

聞くようになる日、

彼は目の前にいる女性が産む子供の

父親になるはずでした。

 

ビョルンがエルナと向き合うと、

緊張した顔をしているエルナは

枕カバーを握りしめ、

息を殺して、彼を見つめていました。

 

皇太子の座にいた時は、

自分に与えられた責務の一部だと

考えていました。

しかし、その場から降りた今は、

彼の知ったことではないし、

結婚をすれば、

子供という付随的な要素が

付いて来るくるかも知れないという

考えはしてみたものの、

ただそれだけでした。

実は今でもよく分からないけれど

この女性と自分との子供は

一体どんな存在なのか、

それが少し気になったくらいでした。

 

ビョルンは、

「さて、どうだろう」と

まとまらない考えを、

笑って伝えました。

そして、エルナに

休むようにと伝えて、立ち上がり、

妻の頬にキスをした。

彼女と、これ以上喧嘩を続けるという

幼稚な意地のようなものは、

残っていませんでした。

 

焦ったエルナは、

「行ってしまうの?」と

尋ねると、衝動的に手を伸ばして

彼女に背を向けようとした

ビョルンをつかみました。

 

彼は、体を半分ぐらい

エルナに向けたまま、

エルナのベッドは高いのではないかと

皮肉を言いました。

しかし、エルナは、

そうだけれど、

ビョルンはお金持ちだと

指摘しました。

ビョルンの指を握ったエルナの手に

力が込められました。

 

その手をじっと見下ろしていた

ビョルンは、

ため息をつくようにニヤニヤしながら

ベッドの端に座りました。

「戻ってくれるの?」

と尋ねたエルナは、

期待に満ちた目でビョルンを見ました。

彼の視線は、

ベッドを照らす明かりのように

温かく感じられましたが、

ビョルンは、

胸を触らせてくれればと

甘く囁きながら笑ったので、

エルナは、

どうやら勘違いだったと思いました。

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エルナが妊娠していなかったのは

残念でしたが、

今回の妊娠騒動で、

とりあえず、

エルナとビョルンの喧嘩が

収まったようで良かったです。

 

ビョルンの人生は

一点の曇りもない

完璧なものになるはずだったのに

グレディスが彼の人生の

汚点となってしまった。

それでも、ビョルンは

グレディスが

妊娠していたことを知らずに

結婚したことを

人々に知られるよりは、

浮気して子供を捨てた男だと

思われる方が、

プライドが傷つかないと

思ったのではないかと感じました。

 

ビョルンが受けた傷は

まだ、彼の心の中に

暗い影を落としているようですが

いつしかエルナによって

癒されるような気がします。

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