自分時間を楽しく過ごす 再婚承認を要求しますの先読みネタバレ付き

子供の頃からマンガが大好き。マンガを読むことで自分時間を楽しく過ごしています。再婚承認を要求します、ハーレムの男たちを初めとして、マンガのネタバレを書いています。

問題な王子様 120話 ネタバレ 原作 あらすじ 愛して最善を尽くしたけれど

 

120話 エルナはパジャマを脱ぎ捨て寝室から出て行きました。

ビョルンを乗せた馬車が

大公の橋を渡ったのは、

真夜中過ぎでした。

 

エルナは

とっくに眠っているだろう。

こうするつもりはなかったけれど

不本意ながら、

しきりにエルナを待たせてしまう

現実への苛立ちが

失笑となって漏れ出ました。

 

アレクサンダー王子は

アルコールの強い酒を飲んでも

粘り強く耐えました。

おかげでビョルンも、

予想より多くの酒を

飲むことになりました。

彼は妹と同じくらい

酷いハードフォートでした。

もちろん、その中で一番酷いのは

最後まで茶碗を持って

2人の酒飲みを見守った

レオニードでした。

 

アレクサンダーは

グレディスの名前を呼ぶと、

意識を失いました。

ビョルンは、

その素晴らしい家族愛に

心から驚嘆して、

最後の一口を飲みました。

 

酔い潰したアレクサンダーを

置き去りにして背を向けた時、

レオニードは、

ビョルンの去就について

もう一度よく考えてみろと、

とんでもないことを口にしました。

 

お茶を飲んで

酔っぱらっているかのように振舞う

レオニードを

ぼんやり眺めていたビョルンは、

何の返事もせずに、

足を踏み出しました。

しかし、レオニードは、

これまでにない執拗な態度で

ビョルンの前に立ちはだかると、

自分は真剣に話しているので、

ビョルンも真剣に聞けと言いました。

 

ビョルンは、

自分が望むなら、

その席を返すつもりなのかと尋ねると

レオニードは躊躇なく頷き、

それがレチェンの意思であり、

ビョルンの意思なら、自分はそうする。

だから、軽率になることなく、

自分の心を、

しっかり深く覗いてみてから、

返事をするようにと答えました。

そして、

呆れたように自分を見つめる

ビョルンを直視しながら、

レオニードは落ち着いて、

待っていると言いました。

 

病身のような王太子は、最後まで

かなり孤高のふりをしました。

悪口を思う存分、浴びせようとした

ビョルンの気持ちを変えたのは

そのためでした。

そして、酷い原則主義者で

頑固なレオニードの性格を

誰よりもよく知っているからでした。

 

とんでもないことだと、

そら笑いの混じった

ため息をついたビョルンは、

酒のせいで、

ズキズキする頭を撫でながら

目を閉じました。

 

真実が明らかになったので、

王冠を本来の主人に戻すべきだという

正気とも思えない声を上げる人が

少なくありませんでした。

 

しかし、レオニードは

突然与えられた王冠の重さを

背負うために、この4年間、

常に最善を尽くして来たので

王太子を支持する勢力が大きいのも

当然のことでした。

 

ビョルンが再び目を開けると、

馬車は邸宅の進入路を

走っていました。

 

未練がないので王冠を下ろした。

後悔していないし、そう信じていた。

それなのに、何を深く、

きちんと覗いてみなければ

ならないのか、ビョルンは、

よくわかりませんでした。

 

ビョルンは、これ以上

考えたくありませんでした。

酒の勢いと疲労が混ざり合い、

すでに理性を侵食していました。

だから、エルナのそばで、

彼女を抱いて、

ただ眠りたいと思いました。 

 

そして、

ますます大きくなっていく

その熱望は、

馬車が止まる頃になると

コントロールできない

衝動となりました。

 

ビョルンに付き添おうとして

近づいた侍従に、

彼は大丈夫だと告げると、

邸宅の中へ入りました。

少しめまいはしましたが、

体を支えられないほどでは

ありませんでした。

 

「エルナ、私の妻」と口にするだけで

彼女の甘い体の香りが

鼻先をグルグル回るようでした。

その香油を選んだフィツ夫人の眼識を

褒めたくなった瞬間、ビョルンは

独身パーティーが開かれた夜、

今日よりも、

はるかに、めちゃくちゃに酔って、

噴水台に倒れて意識を失っていた時、

目が覚めると目の前にいた

あの日のエルナも

甘い香りがしました。

 

酒に酔っていた瞬間の記憶は、

酒に酔うと鮮やかになるものなのか。

覚えているとは思わなかった記憶が

少しおかしくて

クスクス笑っている間に、

ビョルンは妻の寝室の前に

たどり着きました。

 

ノックをしようとしましたが、

礼儀を重んじるエルナは、

ぐっすり眠っていると思い

静かにドアノブを回しました。

敷居をまたぐ前に、

ビョルンは深く息を吸い込んで

気持ちを落ち着かせました。

 

ビョルンはエルナを起こす気はなく、

うまくいくかどうかは

分からないけれど、

彼女の眠っている顔だけ見て、

背を向けるつもりでした。

 

それから、ビョルンは、

新しいベッドに向かって

ゆっくり近づき始めました。

しかし、 カーペットの上に

投げ捨ててある服を見て、

ビョルンの足が止まりました。

 

エルナは、決してこんな風に

自分の部屋を散らかすような

女性ではないので、最初は、

少し、酒に酔ったせいだと

思いました。 

しかし、何度見ても、それは服であり、

レースだらけのパジャマだったので

おそらく、エルナのものでした。

 

妻を起こさないという決心を

すっかり忘れたビョルンは

無意識に、彼女の名前を呟きました。

 

彼は目を細めて

ベッドを見回しました。

エルナはいませんでした。

ビョルンはよろめきながら

ベッドに近づき、

布団を持ち上げました。

どこにもエルナはいませんでした。

 

ビョルンは、どんどん大きくなる声で

エルナの名前を呼びながら、

寝室と続きの応接室、バスルームまで

くまなく探しましたが、

どこにもエルナはいませんでした。

 

ひょっとして、あの部屋から

戻って来なかったのではないかと

思いましたが、

脱ぎ捨てられたパジャマと

乱れたベッドが、

そんなはずがないという事実を

明確に証明していました。

 

ビョルンは、

努めて、それを無視しましたが、

少し開いている

クローゼットが目に入りました。

ドアの隙間に挟まっている

ドレスの裾を、

じっと見つめていたビョルンは、

ゆっくり近づいて

クローゼットのドアを開けました。

むやみに乱れた衣類に、

きちんと閉まっていない引き出し。

全くエルナらしくないけれど、

彼女以外、誰も、この大公邸で

行えないことでした。

 

ビョルンは、

長いため息をつきながら

目を閉じました。

そして、再び目を開いた時、

深く沈んだ灰色の瞳には、もはや

混乱しか残っていませんでした。

 

エルナの名を囁く口の端が曲がり

生気のない笑いが流れ出ました。

静かな目には、

もはや酔いが残っていませんでした。

 

何度も失笑したビョルンは、

ベッドに近づきました。

ビョルンが

力いっぱい鐘を引っ張ったことで

始まった騒ぎが

大公邸を揺さぶりました。

バフォード行きの汽車が到着しました。

眠そうな顔で並んでいた乗客たちは

急いで荷物をまとめて

汽車に乗り込みました。

 

大きなトランクを握ったエルナは、

隅っこに立ったまま、

忙しく動く乗客を見つめました。

深くかぶったボンネットの下で

怯えた瞳が、

苛立たし気に揺れていました。

 

ビョルンのために用意された

プレゼントの包装のような

きれいなパジャマを

脱ぎ捨てたエルナは、

むやみに荷物をまとめ始めました。

 

まず、最も大切なものを

集めて入れておいたクッキー缶と

室内用ドレスとストッキング、

そして、下着を手あたり次第

トランクの中に押し込みました。

こんなことをしたら、服が

ぐちゃぐちゃになってしまうなどと

考えられず、

このようには生きられないという

衝動だけに駆られて動きました。

ここから出なければ

息ができないという恐怖が

エルナを追い詰めました。

 

少なくとも、手紙一枚は

残さなければならないという

考えができるようになったのは、

出発の準備をすべて終えた後でした。

 

何を話せばいいのか

分かりませんでしたが、

いざペンを握ると

手が自然に動きました。

しかし自分の書いた手紙の内容さえ

覚えていませんでした。

まるで夢の中をさまよう

幽霊になったような気分でした。

 

ようやく我に返った時、

エルナはトランクを手に、

大公の橋の上に立っていました。

 

とんでもないことをしていると

分かっているけれど、

出て来たシュベリン宮を見つめる

エルナの心は淡々としていました。

 

エルナは最後に「さようなら」と

挨拶をすると、振り向いて

歩き始めました。

 

橋の反対側から近づいて来る

夜警たちの集団に出くわした時は

胸がドキッとして

座り込んでしまいましたが、

幸い彼らは、

エルナの正体を疑いませんでした。

それでも安心できなくて

頭を深く下げていたエルナは、

走るようにして大公の橋を

渡りました。

 

それから、エルナは

駅馬車の隅におとなしく座り、

この駅まで来る間、ただの一度も

振り返りませんでした。 

 

この汽車に乗ろうとしているのでは

ないかと言う駅員の声に、

エルナは、はっとしました。

汽車に乗るために集まった乗客で

賑わっていたプラットホームが

いつのまにか閑散としていました。

 

エルナは、急いで

汽車の前に近づきましたが

なかなか汽車に乗らないエルナを

チラッと見た駅員は

乗らないのかと尋ねました。

 

エルナは、

慌てて首を横に振りながら

「いいえ」と叫びました。

そして、追われるように

汽車に乗って初めて、エルナは

一人でシュベリン行きの汽車に乗った

昨年の春のことを思い出しました。

漠然とした希望と夢に胸を膨らませ、

汽車に乗っていた

世間知らずの田舎の少女は、

結局こんな姿で

逃げることになりました。

愛したい運命はもうない。

愛して、最善を尽くして

努力したけれど、残ったのは、

諦めより悪い傷だけでした。

 

しばらく躊躇いましたが、

エルナは今回も振り返らず

深く息を吸った後、

トランクを持ち、

客車の廊下に入りました。

最後の乗客を乗せた

バフォード行きの汽車は、

すぐにホームを離れました。

ビョルンの命令により

大公妃を探すための捜索は

突然中断されました。

フィツ夫人は、

ただビョルンを呼ぶだけで、

すぐに言葉を続けることが

できませんでした。

 

ビョルンは、

何も聞いていない人のように

静かに立ち止まり、

手に持った手紙だけを

見下ろしていました。

捜索を中断させたのは、

その手紙でした。

 

それでも、フィツ夫人は、

大公妃を早く探さなければと

訴えましたが、

彼女と向き合ったビョルンに、

半狂乱になった人のように

妻を探していた姿は

もう残っておらず、

穏やかにため息をついて

ニヤニヤしていました。

 

乱れた髪をかき上げた彼は、

もう出て行くようにと命令すると

フィツ夫人に背を向けました。

手には、

エルナが残して行った手紙を

握ったままでした。

 

ビョルンは

椅子の奥深くに寄りかかり

目を閉じると、

少し眠気が滲み出る声で、

他の人たちに労いの言葉をかけるよう

フィツ夫人に指示しました。

目を開けて

フィツ夫人を眺めるビョルンの顔には

これ以上、

表情と呼べるようなものが

残っていませんでした。

これ以上何も言えなくなった

フィツ夫人が退くと、

大公の寝室は静かになりました。

 

じっと窓の向こうを

見つめていたビョルンは、

再び虚しい笑みを浮かべながら

視線を下げました。 

夜逃げをした不埒な妻が残した手紙は

「ビョルンへ」いう書き出しで

始まっていました。

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いつも、たくさんのコメントを

ありがとうございます。

 

とうとうシュベリン宮を

出て行ったエルナ。

まさか彼女が出て行くなんて

思いもしなかったビョルンにとって

青天の霹靂だったと思います。

半狂乱になってエルナを探す

ビョルンを見ていたフィツ夫人は

彼が、

どれだけエルナを愛していたか悟り

ビョルンのために、

それでも大公妃を探そうという言葉が

出て来たのだと思います。

 

今まで、ビョルンを追いかけて来た

エルナが彼を捨て、今度は

ビョルンがエルナを追いかける番。

おそらく、今後、エルナは

辛い目に遭うことはないでしょうから

バフォードで、

ゆっくり、心身を癒しながら

もう一度、ビョルンとの人生を

考え直して欲しいです。

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