117話 結婚式が終わり次はドキドキの・・・
◇初めての夜◇
披露宴が終わり、
恐れていた時間がやって来ました。
ナビエがリードをしなくてはいけない
初夜が迫っていました。
果たして
うまくやりこなせるだろうか
リードした経験はないし、
しようと思えば
できるかもしれないけれど・・・
心の中で、
大変だ、大変だ
の言葉が繰り返されるうちに
時間が経ち
結婚式をしていないという理由で
入れてもらえなかった皇后の部屋へ
案内されました。
寝室は共用で使うと聞いていましたが
部屋に入ると、
個人のベッドもありました。
そして、ハインリが
金色に飾ってくれた部屋全体が
金色に輝いていたので、
侍女たちは感嘆の声を上げました。
そして、侍女たちはローズに案内されて
彼女たちの部屋を見に行きました。
ナビエは、ふかふかの布団を押しながら
この部屋の扉を開けた時の
ユニムの顔を思い出して、笑いました。
意外に平然と振舞っていたので
自分に対する敵愾心も
抑えられてきたのかなと
思いました。
侍女たちが戻ってくると
彼女たちの部屋も、
とても豪華であると
楽しそうに教えてくれました。
その後、一瞬、静かになったかと思うと
彼女たちは、にやにやし始めました。
そろそろお風呂に入って
寝室に行く時間だと考えていることが
わかりました。
早くお風呂に入りましょう。
最近流行っている
バラとユリの香りの香水があります。
雲に入っているような入浴剤が
あります。
侍女たちが話しながら
ナビエの背中を押しましたが
彼女は、堪えました。
ナビエは
まだ陛下はお部屋に入られていないし
少し風に当たりたいです。
と言って、ベランダに出ました。
ナビエは、顔の火照りを
夜風で冷ましたいと思いました。
今日を起点に
ハインリと私の仲も少し変わるだろう。
それが正しいかどうかは
わからないけれど。
ナビエは、その前の最後の瞬間の
くすぐったい気持ちを
楽しみたいと思いました。
ナビエは披露宴が行われている
パーティー会場を見ました。
楽しんでいる人々の様子が
見えました。
すると、カフメン大公が1人で
ぼんやりとベランダに立っているのが
見えました。
顔は見えないけれども
とても寂しそうに見えました。
ナビエは
カフメン大公の独り言と
直接話している言葉が
混ざっているのは
面白いと思っていました。
けれども
強制的に恋煩いにさせてしまう
恋の妙薬は、本当に怖い薬だと
思いました。
もっとも、カフメン大公が
恋煩いになったのは
彼の責任なのですが・・・
その時、カフメン大公が
ナビエの方を見ました。
遠くからでも
彼と目が合ったような気がしました。
ナビエは
カフメン大公が、自分に
どのような気持ちを抱いているか
知りながら
ハインリとの初夜を控えている自分が
彼と挨拶をすることはできないと思い
近くを少し歩き回った後に
部屋の中に入りました。
ナビエは、
雲のように泡がいっぱい広がっている
浴槽に入りました。
浴槽から上がった後は
バラとユリの香りの香水を塗り
再び水で身体を洗った後
ウェディングドレスと一緒に用意した
ガウンを着ました。
鏡を見ると
いつもより、
色情的な顔をしているような
気がしました。
ナビエは、意を決して
侍女たちに出ていくように命じました。
寝室は、
ナビエの部屋と
ハインリの部屋の間にあり
寝室から廊下へ出る扉はありません。
寝室に入るには、ナビエの部屋か
ハインリの部屋を通る必要があり
侍女たちも許可なしで
その中に入ることはできないと
ナビエは聞いていました。
扉の内側から物音がしたので
ナビエは深呼吸をしてから
ゆっくりと歩いてドアノブに手をかけ
勇気を出して、扉を開きました。
寝室にはベッド以外の家具はなく
その下には柔らかな
カーペットが敷いてありました。
元々、
皇帝と皇后のベッドは大きいのですが
寝室においてあるベッドは、
それよりもさらに大きいものでした。
あちこちに、
カスミソウの花束が置かれているので
索漠とした感じはありませんでした。
理由はわかりませんが
ベッドからほのかな光が出ていました。
部屋を見回すと
クイーン
とナビエを呼ぶ声がしました。
ハインリは、
ナビエと同じような
ガウンを着ていましたが
腰ひもを緩く結んでいたので
上半身のほとんどが
見えている状態でした。
ナビエは
ハインリの視線を避けていましたが
ハインリは、
ナビエの後ろから腰を抱いて
耳元にキスをし、頬にキスをし
再び耳元にキスをしながら
早く教えてください。
と囁きました。
ナビエは気まずくて涙が出そうでした。
彼女が、
ベッドへ行きます。
と言うと
ハインリは、小さく笑って
ナビエを見ながら
後ろに下がり
ベッドに座って膝を広げ
両手を伸ばしました。
ナビエはハインリに近づき
彼の膝の間に立ちました。
ハインリは、
何も知らないという眼差しで
ナビエを見上げました。
ナビエはハインリの
神秘的な瞳を見て
固唾を飲みました。
彼の首筋にかかっている
まだ乾いていない髪が
いつもより妖艶に見えました。
ナビエはゆっくりと手を伸ばして
ハインリの首にかかっていた髪を
避けました。
ハインリは、ナビエが
思い通りにしてといった風に
目を閉じて、顔を上げました。
その姿は、
大きくておとなしい子犬のようで
ナビエは可愛いと思いました。
少し勇気が出てきました。
ナビエは何度か、
ハインリの額に軽くキスをして
ベッドに上がります。
と囁きました。
ハインリがベッドに上がり
横になると
激しくしても大丈夫です。
と言いました。
ナビエは、
激しくても大丈夫なのか
激しくして欲しいのか
笑いながら尋ねると
彼はどちらでもいいと
答えました。
ナビエはガウンの腰ひもをほどき
上半身が露わになると
ベッドへ上がり
ハインリのお腹の上に座りました。
ハインリは、
もう耐えられないといった様子で
ナビエの太ももに手を置きました。
ハインリが
上から見下ろすとどうですか?
奥さん
と尋ねたので、ナビエは
きれいです、いやらしいわ。
と答えました。
ハインリは、
もっといやらしくして欲しいと
言いました。
ナビエが、
ゆっくりとハインリの身体に触れると
彼は感嘆の声を上げましたが
ハインリも、
コソコソ手を動かしているので
ナビエは、彼の腕をつかんで
ハインリの顔の横に押し付けました。
そして、
今日は、私がリードするって
言ったでしょ。
と言って、
驚いているハインリの頬に
何回か軽くキスをして
ゆっくりと彼の唇に
自分の唇を重ねました。
そして、ガウンの下に隠れた
ハインリのズボンを掴み
撫でました。
そちらの準備はできていました。
ナビエは、
私の悪賢いワシ
と言って笑いだすと
ハインリは耳まで真っ赤になり
ナビエの服の裾を
それとなく引っ張りながら
恥ずかしいので
キスをしながらやってください。
と言いました。
ドキドキしちゃいました。とても素敵なシーンです。
◇ナビエを探すソビエシュ◇
ソビエシュは
ナビエが出て行ってすぐに
自分の部屋へ戻りました。
頭がクラクラして
気分が悪くなりました。
吐き気がして、
心臓が破裂しそうでした。
ハインリの手を握って笑っていた
ナビエの姿が
目の前にちらつきました。
今頃、初めての夜を過ごすために
部屋に入ったのだろうか。
そう考えると、
目の前が真っ白になりました。
ナビエがハインリのそばで笑い
彼と踊り
ハインリが
ナビエに親しそうにするのが
嫌でした。
怒りが抑え込まれるほど
ソビエシュの心臓は痛くなりました。
私の隣で笑っていた妻が
他の男のそばにいるなんて
そう考えただけで
彼の頭の中は
血でいっぱいになったような
気がしました。
その血が目から
流れ落ちそうな気がしました。
目から血は流れなかったけれども
鼻血が出ました。
ソビエシュはハンカチで
血を拭いました。
ソビエシュは、幾度となく
ナビエの名前を呼びました。
ソビエシュは、
自分がラスタを連れてきた時
ナビエも、
こんな気持ちを感じていたのかと
思いました。
ナビエが、
何のそぶりも見せない姿に
腹が立ったけれども
こんな気持ちを抑えていたのかと。
今さら気づいても遅いです。
いや、こんな気持ちを
抑えることはできないから
ナビエは自分に
関心がなかったのだろう。
だから平気だったのだろう。
むしろ、その方が幸いだ。
ナビエがこんな気持ちになったら
あまりにも恐ろしいことだ。
と思いました。
ナビエは皇后なので平静を装っていただけで、こっそり苦しんでいました。それを慰めていたのがクイーンでした。
ソビエシュは、
酒に酔っているせいか
目の前に、
戴冠式の日のナビエの姿が
見えました。
端正な顔をしわくちゃにして
叱るように
お急ぎください、陛下。
みんな、来ています。
と言うナビエ。
足に力が入らない。
とソビエシュが言うと
何しているの?
とぶっきらぼうな声で
ソビエシュを
じろじろと
睨みつけるふりをして
早く来てください。
と言って、また手を差し出す。
ソビエシュが、
本当に歩けないと言うと
手をつなげばいいでしょ。
と言って、また手を差し出すナビエ。
これは戴冠式の日の記憶では
ありませんでした。
ソビエシュは戴冠式を
堂々と準備していました。
この記憶は、それより少し前の
ソビエシュが、
初めて酒に酔った時の出来事でした。
ソビエシュは手を伸ばして妻の手を
握ろうとしましたが
手と手がかさなる瞬間、
ナビエの幻が消えました。
起き上がろうとした彼は、
後ろに倒れて
窓枠に頭をぶつけました。
頭の痛みよりも、
ナビエの幻が
消えてしまったことの方が恐ろしく、
ソビエシュは、ナビエの名前を
何度も呼んで
ナビエを探しました。
ソビエシュは
ナビエの名前を叫びながら
慌てて扉を開けて
外へ出て行きました。
驚いたカルル侯爵が
ソビエシュを無理やり
部屋へ戻らせ
ベッドに寝かせました。
ソビエシュは、カルル侯爵に
ナビエが行ってしまった。
と訴えました。
カルル侯爵は
酔いを醒ます薬を持ってくるように
護衛に指示しました。
子守歌を歌ってもらおうと
ソビエシュを訪ねてきたラスタは
その様子を見て、
廊下に立ち尽くした後
慌てて、戻っていきました。
失ってはじめて
ナビエの大切さがわかったソビエシュ。
自業自得とはいえ
今回のソビエシュは、ちょっぴり
可哀そうだと思いました。
ソビエシュはラスタを連れて来た時に
あからさまに、ナビエに
嫉妬して欲しかったのでしょうか。
ソビエシュは
自分に笑いかけて
自分を気にかけて、優しくしてくれて
自分を愛してくれる人が
欲しかったのかもしれません。
ナビエとソビエシュは
子供の頃からずっと一緒だったので
2人の間に、
甘い関係がなかったことが
悲劇だったのかも
しれません。