125話 ナビエ抜きで両親と話をすると言ったハインリでしたが・・・
◇娘婿に頼みたいこと◇
トロビー公爵夫妻への
公式の歓迎の挨拶が終ると
ハインリは、2人を
ナビエの所へ
連れて行こうとしましたが
夫妻は、ナビエ抜きで
ハインリに伝えたいことがあると
言いました。
最初にナビエ抜きでと言ったのは、トロビー公爵夫妻だったのですね。
トロビー公爵夫妻は
普通の両親が頼むように
娘のことをよろしく
と、ハインリに
言いたいと思っていました。
2人は、コシャールとナビエを
とても愛していました。
コシャールのことは
心配だけれど
彼の問題は
ハインリに頼むことではなく
自分自身で
何とかすれば良いと
思っていました。
しかし、結婚生活は
夫婦のどちらか一方が
めちゃくちゃだと
壊れてしまいます。
夫妻はナビエのことを
心配し過ぎたので
一国の皇帝である娘婿に
恥を忍んで、娘のことを
頼んだのです。
ソビエシュとのことを考えると、夫妻がナビエのことを心配し過ぎても仕方がないですよね。
ハインリは、
妻を愛しています。
正確に言えば片思いですけど。
安心してください。
と真剣な表情で伝えました。
ハインリは心の中で
最初の婿が
めちゃくちゃだったから
2人の不信感を拭うには
行動で示すしかない
と思いました。
ハインリは
ナビエの好きな物
子供の頃の話
嫌いな物
鳥が好きかどうか
子供の頃の肖像画が残っていないか
自分の話をしていないか
と2人に尋ねました。
夫妻は、誠意を持って
答えてくれました。
しかし、ナビエが可愛がっていた
大きな犬については
返答に困りました。
その犬は薄い金色の毛を持ち
背が高くてハンサムだ
と答えようとした時
目の前にいる皇帝と
同じ容貌のように
思えたからです。
雰囲気も良く似ていると
夫妻は思いました。
ハインリは、ニコニコしながら
どうして2人が急に黙ってしまったのか
尋ねました。
彼らはプッと笑いました。
両親との夕食時
父親は、また泣き出したので
母親は彼をなだめていましたが
父親は感情がこみ上げてくるのか
ナイフを握ったり
放したりしていました。
それを見ていたハインリが
奇妙な顔をしても
2人はそれに気づきませんでした。
それでも、2人に会えて
良かったと
ナビエは思いました。
◇復習◇
寝室で、ナビエはハインリに
両親と何の話をしていたか
尋ねましたが
クイーンにもそれは秘密。
両親との間に
義理があるから
と言って
教えてくれませんでした。
けれども、
両親は、徹底的に
礼儀を守ろうとしてはいたものの
東大帝国にいた時より
ハインリと両親の距離が
縮まったように
ナビエは思いました。
ハインリは、自分が
ナビエの両親と親しくするのは嫌かと
彼女に尋ねました。
ナビエは、そんなはずはないと
答えました。
ハインリは、静かに笑った後
ナビエの横をトントン叩きながら
奥さん、
いつまで本を読むのですか?
とナビエに尋ねました。
ナビエは、明け方までに
宮廷人についての資料を
読むつもりだったので
ハインリに先に寝るように
言いましたが
ハインリが
そばにいて欲しいと言ったので
魔力石のベッドで本を読んでいました。
ナビエが、
眠くなるまで
と答えると
ハインリはため息をついた後で
コソコソとナビエの近くへ
移動し
彼女の足の上に頭を置いて
ふくらはぎにキスをしました。
ナビエは、邪魔をされないように
軽くハインリの髪を
引っ張ると
彼は、いやらしく笑いながら
自分のガウンのひもを
ほどきました。
習ったことを全部忘れそうです。
奥さん。
復習をしないといけないし
応用もしないといけないのに
1人で放っておくのですか?
ナビエはハインリを見下ろすと
彼はナビエの手首の内側に
キスをしました。
これでも
ほったらかしにしておくの?
と言われたような気がして
ナビエがため息をつくと
ハインリは勝利の笑みを浮かべて
ナビエの持っていた本を
横に置きました。
あっという間に
ハインリがナビエを見下ろし
彼は、ナビエの額と瞼と
耳元にキスをして
囁きました。
しっかり学んだか
確認してください。
◇愛の痕跡◇
ハインリと朝食を食べた後
自分の部屋に戻ると
お風呂の用意がしてあり
ナビエの世話をするため
ローラが待っていました。
ナビエは、
今日はお風呂に入るのを
助けてくれなくても
大丈夫なので
部屋に戻って休むように
とローラに伝えました。
彼女は、ここで待っていて
服を着替えるのを手伝うと
言いましたが
それも断りました。
代わりにジュベール伯爵夫人に
服を着るのを
助けてもらうことにしました。
ローラは
ぶすっとして帰りましたが
仕方がありませんでした。
ナビエは浴室に戻り
ガウンを脱いで
鏡に映った自分の姿を
見ました。
あちこち、まだらで
鏡を見るのも
恥ずかしいくらいでした。
体のあちこちにキスをするのも
鳥の習性なのだろうか。
それとも、
他の人も、こんなことを
するのだろうか。
こんなことは誰にも
聞けないし・・・
ナビエは明け方のことを
考えると
顔から火が出そうになり
急いで湯舟に浸かりました。
朝、ハインリが
手足の筋肉を
ほぐしてくれたせいか
温かいお湯に浸かっていると
また眠くなってきました。
お風呂の中で何度もウトウトした後
ナビエはシュベール伯爵夫人の
ドアをノックする音に
驚きました。
お風呂に入ってから
1時間が経っていました。
ナビエは急いでお風呂から上がり
大きなバスタオルで体を包みました。
◇妹の行方◇
記者のジョエンソンは、
定期的に連絡を寄こしていた
妹のデリスから、
長い間連絡が来ないので
心配のあまり、家の中を
ウロウロしていました。
全く連絡を寄こさないのは
宮殿に下女として入って以来
初めてのことでした。
皇后には下女が2人しかいないと
妹は話していたので
ソビエシュとラスタが
西大帝国での結婚式に参列する際に
一緒に付いていったのだと思いました。
しかし、2人が帰って来ても
妹から連絡がなく
2番目の側室の話しか
伝わって来なかったので
ジョエンソンは宮殿に行き
妹について尋ねることにしました。
宮殿へは記者として、
何度か取材で訪れていたので
警備兵は、すぐに中へ
入れてくれました。
ジョエンソンは
宮殿内の官吏に
皇后の下女をしている
妹のデリスから
1か月ほど、
連絡が来ないことを話しました。
官吏は面倒くさそうに
舌打ちしながら
騎士の誰かと逃げたのではと
言いました。
ジョエンソンは
叫びたくなるのをこらえて
デリスのことを
調べてくれるように
数枚の銀貨を渡して頼みました。
官吏は名簿を調べた後
彼女はすでに退職していると
ジョエンソンに伝えました。
ジョエンソンは
そんなはずはないと
官吏を問い詰めましたが
答えは同じでした。
次に、ジョエンソンは
直接、皇后宮へ
行ってみることにしました。
下女は2人だけでも
様々な雑事を行う人は
多いと思ったからです。
しかし、
デリスの行方は
わかりませんでした。
何かあるのは明らか
ジョエンソンは、
皇后の住まいである
西宮に入って
調べることはできないので
謁見の時に、直接ラスタに会って
話をすることに決めました。
謁見当日、
皇帝と皇后の玉座の前に
敷かれている
長い赤いカーペットの上に並んで
ジョエンソンは、
自分の順番をイライラしながら
待っていました。
なかなか列が前に進まなくて
足が痛くなるほどでした。
ジョエンソンの前に
四六時中、
足をバタバタさせている
かなり大柄な赤ちゃんを
抱いた男性が
その子をあやしながら
待っていました。
その赤ちゃんは、
かなり大きな帽子を
被っていたので
ジョエンソンは、
帽子を脱がせれば泣き止むのに
と思いました。
そうしているうちに
列が進み、
ジョエンソンの前に並んでいる男性の
順番になりました。
ジョエンソンは
男性がソビエシュとラスタに
挨拶をした途端
ラスタの表情がこわばるのを
見ました。
どうしたんだろう
と思っていると、
その男性は
この子は生まれてから
一度も母親に
抱かれたことがありません。
皇后陛下は東大帝国の
お母様のような方ですから、
どうぞ母親のように一度
この子を抱いて祝福してください。
と言いました。
しかし、ラスタは
身動きもしませんでした。
ざわめきが広がり始めました。
ナビエとソビエシュの
夫婦の関係は
淡泊だったように思います。
最初は戸惑っていても
次第にハインリの愛の形に
慣れていくのでしょうね。
アレンとジョエンソンが
同じ日に謁見に訪れて
しかも、
ジョエンソンの前に
アレンが並んでいたとは・・
ジョエンソンは
早く妹の消息が知りたかったので
自分より早く謁見の順番が来る人に
必死で頼み込んで、
1週間待つところを
2日に縮めることができました。
その結果、ラスタは
続けざまにショックを受ける
ことになるわけですね。