136話 下女に椅子で叩かれたラスタでしたが・・・
◇冷たくなったソビエシュ◇
下女が振り上げた椅子は
ラスタの額に当たりました。
騒ぎを聞きつけた護衛が
部屋の中に入ってきて
下女を取り押さえました。
ラスタの額が割れて
血がだらだらと流れていました。
下女の怒りは大きく
どんな手を使っても
ラスタを殺したいと
思っていましたが
護衛の力には勝てませんでした。
15分後、宮医がやって来て
その15分後
ソビエシュがやって来ました。
ラスタは傷が痛いと
ソビエシュに訴えましたが
下女の口から
父親の絞首刑の話が出るのではと
心配になりました。
デリスの時は、
彼女が話す前に舌を切れと
命じたけれども
今回は、口封じのための
タイミングを逃しました。
口封じのために、また下女の下を切るつもりだったのでしょうか
宮医は、ラスタの額に
少し傷が残るとソビエシュに
告げました。
彼は、少し傷が残っても
無事なら良かったと
ラスタに話すと
彼女は、傷が残って何が良いのか
と叫びたくなりました。
ソビエシュが宮医に
赤ちゃんのことを尋ねると
大丈夫だけれど
注意した方が良いと
答えました。
ソビエシュは安心すると
下女が閉じ込められている
部屋へ行きました。
手を縛られて、
護衛に捕らえられている彼女は
許しを請う代わりに
ラスタが腹いせに
自分の父親を絞首刑にしたと
叫びました。
死刑を執行する場合
ソビエシュが最後に
確認の手続きをするので
下女の父親は
絞首刑にされていないと
伝えました。
後から慌ててやって来たラスタは
その下女がラスタについて
変な噂を広めたから怯えただけ。
ラスタは人を殺してなんかいない。
そんな恐ろしいことをするはずがない。
と訴えました。
その言葉に下女の顔は
真っ青になりました。
ソビエシュは、この件について
詳しく調べるように
護衛に目配せをしました。
大体の状況はわかるものの
次期皇帝となる子供を
妊娠している女性を
椅子で攻撃したことは
死刑になるほどの大罪でした。
ソビエシュは下女を
刑務所に閉じ込めるように
命じました。
ソビエシュは
ラスタを連れて寝室に戻ると
皇后であっても
皇族殺害と関係がない限り
みだりに人を殺すことはできない。
と忠告しました。
ラスタは、
自分が側室だった時に、
ランドレ子爵に刺されたことを
持ち出しましたが
ソビエシュは、
彼は剣で刺して
現場で取り押さえられたので
と答えました。
そして、
死刑を実行する権限があると
思われている人が
嘘であっても
死刑にすると言えば
それは本当のことだと思われる。
とラスタに苦言を呈しました。
ソビエシュはベルディ子爵夫人と
護衛たちを呼び
今後、ラスタが皇后として
誰かを傷つける決定をした時は
その命令に従う前に
自分に知らせるように。
それを破った場合は
全ての責任をその人が負うことになる。
と命じました。
以前に比べて、ラスタへの気持ちが冷めて、ソビエシュが冷静に考えられるようになってきたと思います。
人前で
そんなことを言われたラスタは
侮辱されたと思いました。
自分が皇后の権力を
行使できないことを
宮廷人に知られてしまう。
被害者の自分を
叱って侮辱したソビエシュを
冷たいと思いました。
以前は冷たくなかったソビエシュが
変わったのはエベリーのせい。
自分と離婚して
彼女が3番目の皇后になるかもしれない。
ナビエは、不倫相手がいて
すぐに乗り換えたけれど
自分には誰もいないので
惨めな境遇になる。
自分にはエルギ公爵がいる・・・とはならないのですね。
ラスタは宝石箱から
サファイアのネックレスを取り出し
下女仲間が口を滑らせたことを
教えてくれた下女に渡し
ソビエシュの言った
他人を害する権限に該当しない
皇后に与えられている
年に3回の免責特権を使い
その下女の母親を釈放すると
伝えました。
彼女は、ラスタに
生涯、忠誠を尽くすと約束しました。
下女が出て行った後
ベルディ子爵夫人は
彼女の母親は3人も毒殺した
凶悪犯なので
絶対に出所させてはならないと
ラスタに伝えましたが
知っている。
下女たちは道徳心ではなく
自分への忠誠心で善悪を判断する。
そして鏡を見て
大きな傷跡は残らないですよね?
と言いました。
ラスタの自分勝手な理屈
◇2人の報告書◇
ナビエは、
仕事の効率が上がり
いくつかの業務を
並行して行っても
大丈夫だと判断したので
ルイフトとの交易について
カフメン大公と手紙で
やり取りをしました。
副官たちは、
2人が直接会って話をしないことを
不思議に思い
2人は喧嘩をしているのかと
心配しましたが
ナビエは適当にごまかしました。
カフメン大公と顔を合わせると、大変なことになるので。
副官たちの疑念が深まる前に
マレーニとウィヤンが
ナビエが頼んでいた報告書を
持ってきました。
報告書を読み終えた後
ナビエは2人に
互いの報告書を読ませました。
彼らは当惑しました。
2通の報告書は酷似していて
間違っているところも
一緒でした。
どちらが真似をしたか
知らないけれど、
良い選択ではなかった。
しかも、この報告書には
間違って調査した数値が多い。
がっかりした。
この仕事は、私が
うまく取り計らう。
と言って、ナビエは
2人を帰しました。
夜になり、その話を
ナビエから聞いたハインリは
マレーニとウィヤンが
そんな人だと思っていなかった。
意外だ。
と言って、笑いました。
ナビエはハインリの頬を
横に引っ張りました。
2人のうち、後で訪ねてくる人が
報告書を真似て書いたと
思うわけですね。
のハインリの質問に対し
ナビエは頷き
訪れる人がマレーニでないことを
祈りながら
先ほどから触っていた
ハインリの頬を口に入れました。
ハインリは、
深刻な顔で頬を噛んでいると
ちぎって食べようとしているようで
恐い。
とナビエに訴えました。
◇幽霊騒動◇
3日が過ぎ
マレーニとウィヤンは2人共
ナビエを訪れませんでした。
これからどうしよう・・・
と考えながら歩いていると
何人もの人が
頭に王冠を被った男の幽霊を見た。
皇帝が先王を毒殺したという
噂があるから
先王の幽霊ではないか。
そのような、ひそひそ話が
聞こえてきました。
ナビエは
宮殿に残っている
クリスタを支持する貴族たちが
先王毒殺説と幽霊の噂を一緒にして
流しているのではと思い
危険を感じました。
ハインリも噂を知っていましたが
彼は、これを、クリスタの勢力と
関連付けている気配はありませんでした。
ハインリは、ナビエに
幽霊が怖かったら
日が暮れてから朝まで
一緒にいてあげる。
と言うので、
ナビエは怖くないと答えると
ハインリは
自分は幽霊が怖いから
日が暮れてから朝まで
一緒にいてください。
と言いました。
ナビエが、クリスタの支持者たちと
関連があるのではと尋ねると
ハインリは
調査はしないといけないけれど
幽霊の存在を信じているので
恐い。
と鬱々とした声で言いました。
ハインリは、日が暮れると
ナビエの部屋にやって来て
彼女のそばから
片時も離れませんでした。
ナビエは怪しいと思いながらも
ハインリが幽霊を
怖がっているようなので
ナビエは、ハインリのために
幽霊の正体を突き止めようと
決心して、護衛を連れて
幽霊が出るという場所へ
行くことにしました。
ナビエ、強いです。
しかし、幽霊が出ると言う場所へ
行ってみると、
すでにハインリとマッケナが
来ていました。
ハインリは、
何か装置があるはずだと
マッケナに探すように命じ
彼が、
幽霊が出たらどうしますか?
の問いに、ハインリは
そんなことないよ。
出ても別にいいし。
と答えました。
ナビエの知っているハインリは
幽霊が怖いと言って
ブルブル震えていたのに
自分の夫と同じ顔をして
幽霊はいないと
堂々と言う、この男は
誰だろうと思いました。
もし、先王殿下の幽霊が出たら
先王殿下として
扱わなければならないのか?
とマッケナが尋ねると
ハインリは
塩をかけて
と答えました。
ハインリはナビエの前では
可愛い夫でいたいと
思っていたのかもしれませんが
とうとうナビエは
ハインリに別の人格があることを
知ってしまいました。
有能なナビエは、
ハインリを立てつつ
良い方向へ引っ張っていくのかなと
勝手に想像しています。