134話 ハインリの頭を抱いて、私のものなのに、と言ったナビエでしたが・・・
◇愛は永遠に続かない◇
軽くキスをするつもりが
あっという間に、
彼が主導権を握り
気が付けば、彼の首筋に
赤い痣がたくさんできていました。
見えるところに、
痕を残さないでと
言っていたのではないかと
ハインリは言いながらも、
痕を残しても良いので
続けるかと尋ねました。
しかし、ナビエは、
まだ夕食を取っていない
と言って起き上がりました。
ハインリは、顔を洗いに行き
戻ってくると
彼は悲しそうな顔をしていました。
そして、
ナビエが手のひらの上に
自分を乗せて反応を見守る、
いたずら好きの
神様のように見えると言いました。
ナビエが、
大神官様が聞いたら、
走って来て、
誓約書を破りそうだと言うと、
ハインリは笑いました。
ナビエは、自分の冗談が通じて
良かったと思いました。
ナビエは、自分の冗談は通じないって思っていますから。
ハインリは
キスをする前にナビエが呟いた
「私のものなのに」という言葉を
もう1度言って欲しいと
お願いしました。
けれども、ナビエは
感情がこみ上げてきた時に
口に出した言葉を
冷静な時に言うのは
きまりが悪いので
覚えていないと言って
目の前のエンドウ豆を
かき回していました。
するとハインリは、
自分の心を受け入れる準備は
できたかと尋ねました。
ナビエは、
よく、わからないと答えた後、
ハインリが他の人と結ばれるのは
気分が良くなかった・・・
と言おうとしましたが
ハインリと目が合い
彼は微笑みました。
ナビエは、彼の愛らしい顔を見て
自分は優しくないのに
なせ、この人は、
自分を妻に迎えたのだろうかと
考えました。
ナビエはハインリに向かって
軽く笑い
エンドウ豆に集中しました。
ナビエは、ハインリが
自分のことを愛していると
信じることができました。
けれども、彼女は
永遠の愛と長く続く愛を
信じていませんでした。
ハインリの愛を受け入れて
一歩踏み出したら
ナビエは、彼に夢中になってしまう。
けれどもハインリの愛は甘いから
その終わりは、冷たいはず。
ソビエシュの時とは
比べものにならないくらい辛くて
身体が壊れてしまう。
一生、彼が自分だけを愛するなんて
思わないで
彼が他の人を愛しても
あまり心が痛まない
今の状態のままでいよう。
クリスタは賢く振舞っていたのに
愛のために、自分自身を台無しにした。
彼女のようになりたくない。
とナビエは思いました。
傷つくことを恐れて、一歩踏み出せないナビエが可哀そうです。
ハインリは、ナビエの寝顔を見ながら
夕食の時、彼女がエンドウ豆を
フォークで突きながら
深刻な顔をしていた様子を
絵にかいてしまいたいくらい
可愛いと思いました。
けれども、ナビエがハインリの前で
暗くて深刻な顔をする度に
彼女が何を考えているのか
とても気になっていました。
ハインリは眠っているナビエの
頬と耳、こめかみに軽くキスをして
愛していると囁きました。
ハインリは、
ナビエのそばにいたいと思いましたが
やるべきことがあったので
ナビエの頬に軽くキスをした後
何も言わずに寝室を抜けだし
廊下へ出ました。
◇クリスタの運命◇
壁にもたれかかって
あくびをしていたマスタスは
ハインリを見て、姿勢を正しました。
ハインリは、彼女と一緒に
階段を下りて、執務室へ入りました。
ハインリは、王子だった時から
育てている地下騎士団を
近衛隊より信じていたので
彼らに秘密の命令を下すことが
ありました。
マスタスはナビエの侍女をしていますが、ハインリの地下騎士団のメンバーでもあります。
ハインリがマスタスに
クリスタのことについて話すと
マスタスは、ナビエが
どれだけ衝撃を受けたか
どれほど毅然に対処したかを
熱心に話しました。
ハインリは
クリスタがコンプシャへ行っても
安心はできない。
ズメンシア公爵を脅したので
今はおとなしくしているけれども
彼が、こちら側についたとは
断言できない。
しかし、クリスタ側の人間を
一度に全員追い払えば
自分が兄を毒殺したという噂が
さらに大きくなってしまうと
マスタスに話しました。
ハインリは、ナビエが再び
クリスタに苦しめられないためには
どうすれば良いか
マスタスに尋ねました。
彼女は、盗賊の仕業に見せかけて
追いかけて殺すと答えました。
先代王妃を、
少しも尊敬していないところが
ハインリの個人騎士団と
近衛隊の違いでした。
ハインリは、マスタスの案を断り
クリスタが嘘をついた時に
彼女の味方をして
一緒にコンプシャへ付いていくと
言った人たちが
彼女と一緒に邸宅に入ったら
彼らが外へ出られないように
門と窓を全て塞ぐように
外からは、
そんな風に見えないように
自分から出てこないように
見えるように。
面倒を見ろという遺言を守るために
きれいな水、おいしい飲み物
様々な酒、好きな食べ物は
毎日欠かさず届けるようにと
命令しました。
ハインリの怖い一面を見た気がします。
ナビエが眠りから目が覚めると
ハインリの温もりを
感じられませんでした。
こんなことは滅多にないので
ナビエはハインリのことが心配になり
廊下へ出て、近衛兵に
ハインリの行方を尋ねると
執務室へ行ったと返事が来ました。
ナビエが執務室へ向かおうとすると
ちょうどハインリが
戻ってくるところでした。
ハインリはナビエに
自分の羽織っていたマントを
かけながら、
寝室を出てきた理由を
ナビエに尋ねました。
ナビエは、
ハインリの温もりを感じられずに
目が覚めて
心配になって出てきたとは
恥ずかしくて言えず
ハインリがいなかったからと
答えました。
◇ルベティの試み◇
東大帝国では、ソビエシュが
エルギ公爵を観察するための
パーティーを開きました。
彼は、表面上、
おかしなところは一つもなく
感じでした。
ソビエシュの近くで
ルベティが彼の気を引こうとして
わざと飲み物をドレスにこぼし
助けて欲しいという視線を
ソビエシュに向けました。
しかし、彼は隣の侍従に
ルベティを助けるように指示しました。
ルベティは、がっかりしました。
ルベティのことが嫌いなラスタは
彼女の、その行動が
以前よりも、いっそう不快に思え、
自分の夫の気を引こうとしたことに
ひどく腹を立てました。
そして、パーティー会場では
ルベティを
どうすることもできないことにも
腹が立ちました。
パーティー会場の外でも
ロテシュ子爵に気づかれるので
表立ってルベティを
いじめることができませんでした。
ラスタは、ロテシュ子爵自身で
自分の娘を台無しにするのは
どうだろうかと
考えました。
ハインリを怒らせると怖いですね。
これが本来のハインリの姿なのだと
思います。
閉じ込められたクリスタは
可哀そうだと思いますが、
彼女が皇帝を相手に嘘をついたことで
クリスタと何とかしたいと思って
できなかったハインリに
良い機会を与えてしまったのだと
思います。
でも、このことがきっかけで
ナビエ様のハインリへの気持ちが
分かったのは良かったと思います。
ナビエ様が愛に溺れることを
怖がらない日が来ますように。
またまたラスタが
良からぬことを考えています。
ルベティがひどい目に会わないと
いいのですが・・・