155話 ラスタの父親がやって来たと、ロテシュ子爵は知らせに来ましたが・・・
◇実の父親◇
ラスタは
部屋の中へ入ってきた
ロテシュ子爵の胸倉をつかみ、
彼を、ろくでなしと罵倒し、
彼のせいで、
赤ちゃんを抱くことができないと
言いながら、
ロテシュ子爵の身体を揺さぶり、
彼女はうなりながら
ロテシュ子爵の顔を
殴り続けました。
ようやくラスタが正気を取り戻すと
ロテシュ子爵は、
ラスタの詐欺師の実の父親が
訪ねてきて
彼女の肖像画を見せると、
露骨にお金をよこせとは
言わなかったけれども
自分たちのラスタが
成功したと言っていたと話しました。
また来たら追い返すように
ラスタは言いましたが
ロテシュ子爵は
ソビエシュに頼んだらどうかと
言いました。
ソビエシュはラスタの出自を
知りながらも
目をつぶってくれているので
ロテシュ子爵は
ソビエシュが
きれいに解決してくれると
思っていました。
ロテシュ子爵は
ルベティと
ラスタの偽親の実の娘を
探すので手一杯だと言いました。
ルベティが行方不明なのはラスタのせいです。
ロテシュ子爵は
旅費の一部と言って
ラスタから宝石をもらい、
帰りました。
赤ちゃんを投げたことで
ソビエシュとの関係が
より悪化している今
ラスタはソビエシュに
助けを求められないので
エルギ公爵に頼むことにしました。
◇妊娠したことは秘密◇
ナビエは身体に良い
苦い薬を飲みながら、
マッケナの話を思い出していました。
鳥一族の赤ちゃんは
義務的に1日に数時間は
鳥に変わらなければならない。
そのために、巣が必要。
そうしないと
いつ、どんな時に
鳥に変わるかわからなくなる。
赤ちゃんは自分の意志で身体をコントロールできないから、なのでしょうね。
ナビエは
ハインリが赤ちゃん鳥を
懐に入れて喜ぶ姿と
柔らかい毛布に包まれて
顔だけ出している
赤ちゃんの姿を思い浮かべました。
良く面倒をみられるだろうかと
心配になりながらも
自然に口角が上がりました。
そんな姿を見ていたマスタスが
心配して、声をかけてくれました。
ナビエは
自分が妊娠したことを
侍女たちに話せば
大喜びしてくれることは
わかっているけれども
妊娠したことを内緒にして
貴族たちに
罠をしかけることにしたので
用心しなければと思いました。
幸いにも
マスタスは話題を変え
コシャールは思ったより
軟弱で清純だと
ナビエに言いました。
コシャールはマスタスの前で
わざと
おとなしくしていたのだろうかと
ナビエは考えました。
◇ティーパーティーの罠◇
2日間、降り続いた雨が止むと
ナビエは窓を開けて
ハインリ風に、
釣り日和だと言ってみました。
ナビエは、
ティーパーティーを
開くために
仲の良い貴族と悪い貴族に
招待状を送りました。
侍女たちは、
ナビエがいきなり
仲の悪い貴族たちを
ティーパーティーに
招待したので心配しました。
招待された人達の中に
危険1等級の
ケトラン家、リバティ家
ズメンシア家。
そして、彼らにヒルのように吸いつき、
それを誇っている
危険2等級の人たちがいたからでした。
今回のティーパーティーは
自分の不妊説を堅固にするための
落とし穴なので
自分を慰めてくれる人だけ招待しても
意味がないと、
ナビエは思っていました。
ティーパーティーにやって来た
危険2等級の人たちは
明るい雰囲気で
飲んだり食べたりしていたので
このまま、何の問題も
起こさなければ
等級が下がるはずでした。
危険2.6~3にダウン。
けれども、パーティーが始まり
30分程過ぎたところで
彼らは、
クリスタが大事にしていた侍女が
結婚してすぐに
妊娠したという話をして
ナビエがまだ妊娠していないことを
(本当は妊娠しているけれども)
遠回しに笑いました。
この人たちは等級を
上げるべきなのではと
ナビエは思いました。
危険1.5等級にアップ。
そして、
危険2等級が
皇后陛下には
いつ良い知らせが聞けるのかと
目で笑いながら言うと
マスタスが
つべこべ口出しするなと
文句を言ったので
口論に発展してしまいました。
その場に
冷たい空気が流れました。
ナビエは、
適度に、その場の雰囲気が
熟するのを待ってから
わざとカップを床に落として
割りました。
そして、ナビエにとって
後継者に関する話題が
不快であると思わせるために
後継者よりも
当面、国を安定させることが
重要だと言いました。
危険2等級の何人かが
嬉しそうに相槌を打ったので
ナビエは
あの人たちの名前を
覚えておかなければと思いました。
◇子育ての不安◇
夕食を終えて
夫婦の寝室に入ると
ナビエは、手帳を取り出し
危険等級リストを
書き出していました。
それは何かと
ハインリが尋ねたので
ナビエはティーパーティーでの
話をしました。
その話を聞いたハインリは
妙な顔をして
下唇を噛みました。
ナビエは、
それを止めさせようとして、
手を伸ばして彼の口に触れると、
ハインリは笑いながら
子供がクイーンに
似ていたら良いと思うと言いました。
ナビエは、
自分は可愛くない子供だったから
ハインリに似た方が可愛くなる。
けれども、可愛くても
猫を被るような性格の子供を
教育するにはどうしたらよいか。
自分の前では
言うことを聞くふりをして
私が見ていないところで
揉め事を起こしたら・・と
心配になりました。
ナビエは、ハインリに
子供の時のことを
聞かせて欲しいと頼みました。
ロテシュ子爵へのラスタの怒りが
爆発しました。
これまで、ロテシュ子爵に
腹を立てることはあっても
暴力をふるうことはなかったので
それだけ、自分の赤ちゃんを
抱けなかったことが
辛かったのだと思います。
なぜロテシュ子爵が
アレンとラスタの赤ちゃんを
別の死んだ赤ちゃんと
すり替えたのか、わかりませんが
息子の子供を奴隷の母親に
育てさせたくなかったのか
息子の子供の母親が
奴隷であることを
知られたくなかったのか
子供を盾にして
ラスタが、色々要求してくるのを
防ぐために
死んだことにしたのではないかと
思いました。
子育ての心配をするナビエ様からは
冷たい氷のような皇后のイメージを
全く感じられません。